古典力学 · 第1回 · 動画8 · インタラクティブ教材

どんな量でも見積もれる:フェルミ推定の考え方

I重要な公式

公式 名称 説明
個数=全体1つあたり\text{個数} = \dfrac{\text{全体}}{\text{1つあたり}} 連鎖のルール わかっている量どうしを掛け算・割り算する
V≈4πR2dV \approx 4\pi R^2 d 薄い球殻 半径 RR の球を包む、深さ dd の殻の体積
m=ρ Vm = \rho \, V 密度から求める質量 密度 × 体積
(1−aN)N→e−a\left(1 - \tfrac{a}{N}\right)^N \to e^{-a} 指数関数の極限 「最期の息」の確率に使う(a=Npa = Np)

真の値から10倍以内(10のべき乗1つ分以内)に収まれば、その結果は成功です。「成功の範囲」は100倍の幅にわたります。

IIインタラクティブな可視化

可視化1 — 成功の範囲

ひと息に含まれる分子の真の数 102210^{22} から、推定はどこまで離れても「桁が合っている」と言えるでしょうか。

可視化2 — ピアノ調律師の連鎖

シカゴには何人のピアノ調律師がいるでしょうか。見積もれる量をつないで、直接は見積もれない量にたどり着きます。

💡 どれか1つの入力を2倍にしても、桁はほとんど動きません。スケールを決めるのは、1つひとつの見積もりの精度ではなく、連鎖の組み立て方です。

可視化3 — 薄い球殻としての海

海を深さ dd の薄い球殻とみなします。推定した質量は、仮定した深さにどれだけ左右されるでしょうか。

💡 仮定した深さを2倍や3倍にしても、推定値は認められている値 1.4×10211.4 \times 10^{21} kg から10倍以内に収まります。

III確認クイズ

問1

1セント硬貨を一列に並べて 1 km にするには、何枚必要でしょうか。N=全体の長さ硬貨の直径N = \dfrac{\text{全体の長さ}}{\text{硬貨の直径}} を使い、1 km=105 cm1\ \text{km} = 10^5\ \text{cm}、1セント硬貨の直径を約 2 cm2\ \text{cm} としてください。

✅ 正解です!10^5 / 2 = 5 x 10^4 枚です。

❌ 惜しい!長さを直径で割りましょう:10^5 cm ÷ 2 cm。

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解答:

全体の長さを1セント硬貨1枚の直径で割ります。 N=105 cm2 cm=5×104 枚N = \frac{10^5\ \text{cm}}{2\ \text{cm}} = 5 \times 10^4 \text{ 枚}

実際の直径 1.9 cm を使うと ≈5.3×104\approx 5.3 \times 10^4 となり、大ざっぱな見積もりとの差は約 5% にすぎません。大事なのは入力の精度よりも、推論の組み立て方です。

問2

ひと息に含まれる分子の真の数は約 102210^{22} です。友人は 102410^{24} と見積もりました。正しいか誤りか:成功とは真の値から10倍以内に収まることなので、この推定はフェルミ推定の「成功」に数えられる。

✅ 正解です!10^24 は2桁ずれています。10^21 から 10^23 までの成功の範囲の外です。

❌ 惜しい!指数を比べましょう:24 − 22 = 2 で、1桁を超えています。

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解答:

成功の範囲は、目標の両側に10のべき乗1つ分ずつ、つまり 102110^{21} から 102310^{23} までです。

102410^{24} という推定は、真の値 102210^{22} より10のべき乗2つ分大きいので、成功の範囲の外にあります。10倍以内ではなく、100倍ずれています。

したがって、この主張は誤りです。

問3

薄い球殻のモデルを使って、地球の海の質量を見積もります。RE=6×106 mR_E = 6 \times 10^6\ \text{m}、深さ d=103 md = 10^3\ \text{m}、覆う割合 f=0.75f = 0.75、密度 ρ=1000 kg/m3\rho = 1000\ \text{kg/m}^3 とします。

球殻の体積は V≈0.75⋅4πRE2 dV \approx 0.75 \cdot 4\pi R_E^2 \, d です。質量はおよそいくらでしょうか。

✅ 正解です!体積 ≈ 3 x 10^17 m³ に 1000 kg/m³ をかけて、≈ 3 x 10^20 kg です。

❌ 惜しい!それは m³ 単位の体積です。さらに密度(1000 kg/m³)をかける必要があります。

❌ 惜しい!まず体積を計算し、それに密度 ρ = 1000 kg/m³ をかけましょう。

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解答:

まず体積です。 V≈0.75×4π×(6×106)2×103≈3×1017 m3V \approx 0.75 \times 4\pi \times (6\times 10^6)^2 \times 10^3 \approx 3 \times 10^{17}\ \text{m}^3

次に密度をかけて質量を求めます。 m=ρV=1000×3×1017≈3×1020 kgm = \rho V = 1000 \times 3\times 10^{17} \approx 3 \times 10^{20}\ \text{kg}

これは認められている値 1.4×10211.4 \times 10^{21} kg と同じ桁です。よくある落とし穴は、体積(3×10173 \times 10^{17} m³)で止めてしまい、密度をかけ忘れることです。

問4

「最期の息」の問題で、分子1つあたりの一致の確率を p≈2.5×10−22p \approx 2.5 \times 10^{-22}、ひと息に含まれる分子の数を N≈3×1022N \approx 3 \times 10^{22} とします。a=Npa = Np として (1−p)N≈e−a(1-p)^N \approx e^{-a} を使うと、あなたの息の分子が老子の最期の息に1つも含まれていなかった確率 PP はいくらでしょうか。

✅ 正解です!a = Np ≈ 7.5 なので、P ≈ e^-7.5 ≈ 5 x 10^-4 で、およそ2000分の1です。つまり、共通の分子があることはほぼ確実です。

❌ 惜しい!a = N·p = (3 x 10^22)(2.5 x 10^-22) ≈ 7.5 を計算してから、P ≈ e^-7.5 としましょう。

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解答:

指数は a=Np=(3×1022)(2.5×10−22)≈7.5.a = N p = (3 \times 10^{22})(2.5 \times 10^{-22}) \approx 7.5.

すると P=(1−p)N≈e−a=e−7.5≈5×10−4,P = (1-p)^N \approx e^{-a} = e^{-7.5} \approx 5 \times 10^{-4},

となり、およそ2000分の1です。したがって、老子の最期の息と少なくとも1つの分子を共有していることは、ほぼ確実です。あなたは今この瞬間も、ほぼ確実に老子の原子を吸っているのです。

ひっかけの選択肢 e−0.0075e^{-0.0075} は、a=Npa = Np を間違った指数で計算した(N≈3×1019N \approx 3\times 10^{19} や p≈2.5×10−25p \approx 2.5 \times 10^{-25} とした)ときに出てきます。

まとめ:フェルミ推定は、物理の小技ではなく、考え方の習慣です。見積もれる手がかりを見つけ、それらをつなぎ、単位が打ち消し合うことを確かめ、誤差は釣り合う傾向があると信じましょう。答えようのなかった問いが、答えられる問いに変わります。これが、あなたの新しい超能力です。

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