古典力学 · 第10回 · 動画1 · インタラクティブ教材

速い運動と遅い運動:流体の抗力の二つの法則

I重要な公式

領域抗力(大きさ)比例する量
速い領域 — 空気中の物体F=12CDAρv2F = \tfrac{1}{2} C_D A \rho v^2v2v^2(二次)、粘性によらない
遅い領域 — 粘り気のある流体中の小さな球F=6πηRvF = 6\pi \eta R vvv(一次)、粘性がすべて
沈降抗力質量∝1R2\dfrac{\text{抗力}}{\text{質量}} \propto \dfrac{1}{R^2}半径が大きいほど小さくなる

ポイント: どちらの力も運動に逆らいます。ストークスの法則にマイナスの符号がつくのはそのためです:F⃗=−6πηR v⃗\vec{F} = -6\pi\eta R\,\vec{v}。2つの領域で変わるのは速さへの依存のしかたで、速いときは v2v^2、遅いときは vv です。

II2つの領域:線形抵抗と二次抵抗

速い領域の抗力は v2v^2 で増え、遅い領域の抗力は vv でしか増えません。同じ速さでも、力は大きく違います。

💡 物体がどちらの法則にしたがうかは、その速さと大きさ(レイノルズ数)で決まります。投げたボールは二次、沈んでいく砂粒は線形です。

III抗力係数 — 形が抗力を決める

F=12CDAρv2F = \tfrac{1}{2} C_D A \rho v^2 の抗力係数 CDC_D は、形だけでどれほど変わるでしょうか?

💡 F=12CDAρv2F = \tfrac{1}{2} C_D A \rho v^2 のなかで形によって決まる因子は、この係数だけです。残りは断面積 AA と密度 ρ\rho が受け持ちます。

IV沈降 — 大きさが沈み方を決める理由

分子 BB は全体として大きな抗力を受けるのに、なぜ小さな分子 AA より速く沈むのでしょうか?

💡 超遠心分離機は、この 1/R21/R^2 のスケーリングを利用して、分子を分子量ごとに分けています。

V確認クイズ

問1 · 二乗のスケーリング

条件: ボールが空気中を飛んでいて、高速での抗力は F=12CDAρv2F = \tfrac{1}{2} C_D A \rho v^2 です。ほかの条件はすべてそのままで速さが3倍になると、抗力は何倍になりますか?

✅ 正解です! F∝v2F \propto v^2 なので、速さを3倍にすると抗力は 32=93^2 = 9 倍になります。
❌ 惜しい! それは線形(遅い領域)の答えです。高速での法則は v2v^2 に比例するので、倍率は 33 ではなく 32=93^2 = 9 です。
❌ 惜しい! 速さは v3v^3 ではなく v2v^2 の形で入るので、倍率は 33=273^3 = 27 ではなく 32=93^2 = 9 です。
❌ 惜しい! F∝v2F \propto v^2 なので、vv を3倍にすると FF は 32=93^2 = 9 倍になります。
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変わるのは vv だけなので、ほかの因子は定数として扱います:

F=12CDAρv2  ⇒  F∝v2F = \tfrac{1}{2} C_D A \rho v^2 \;\Rightarrow\; F \propto v^2

vv を 3v3v に置き換えると、FF は 32=93^2 = 9 倍になります。抗力は9倍に増えます。これが二次の領域の特徴です。

問2 · 速さの何乗か?

条件: 砂粒が水の中をゆっくり沈んでいて、ストークスの法則 F=6πηRvF = 6\pi\eta R v にしたがいます。沈む速さが2倍だったとすると、抗力は ___。

✅ 正解です! ストークスの抗力は vv に比例するので、速さを2倍にすると力も2倍になります。
❌ 惜しい! 4倍になる(v2v^2)のは速い領域の規則です。ストークスの法則 F=6πηRvF = 6\pi\eta R v は vv に比例するので、vv を2倍にしても FF は2倍にしかなりません。
❌ 惜しい! 速さによらないのは、固体どうしのすべり摩擦の性質です。流体の抗力は速さに強く依存し、ここでは F∝vF \propto v です。
❌ 惜しい! F=6πηRvF = 6\pi\eta R v は vv に比例します。速さが2倍なら、力も2倍です。
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ストークスの法則では、速さは1乗で現れます:

F=6πηRv  ⇒  F∝vF = 6\pi\eta R v \;\Rightarrow\; F \propto v

したがって v→2vv \to 2v なら F→2FF \to 2F で、力は2倍になります。(速い領域なら4倍になり、固体どうしの摩擦ならほとんど変わりません。)

問3 · ストークスの抗力を計算する

条件: 半径 R=1.0×10−3 mR = 1.0\times10^{-3}\ \mathrm{m} の球が、グリセリン(η=1.2 Pa⋅s\eta = 1.2\ \mathrm{Pa\cdot s})の中を v=5.0×10−3 m/sv = 5.0\times10^{-3}\ \mathrm{m/s} で沈んでいます。

抗力を支配するのはどの法則ですか?

抗力の大きさは?

✅ 正解です! 粘り気の強いグリセリンの中をゆっくり進むミリメートルサイズの球は遅い領域にあり、6πηRv≈1.1×10−4 N6\pi\eta R v \approx 1.1\times10^{-4}\ \mathrm{N} です。
❌ 領域が違います。 粘り気の強いグリセリンの中をゆっくり進む小さな球は、遅く粘性が支配的です。v2v^2 の法則ではなく、ストークスの法則を使ってください。
❌ 惜しい! π\pi が抜けています。 ストークスの法則は 6ηRv6\eta R v ではなく 6πηRv6\pi\eta R v です。π\pi を戻すと 1.1×10−4 N1.1\times10^{-4}\ \mathrm{N} になります。
❌ 計算し直してください。 因子 6π6\pi を落とさず、10の累乗の指数を足し合わせて、6πηRv6\pi\eta R v を丁寧に計算してください。
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ステップ1 — 領域を選ぶ。球は小さく(R=1 mmR = 1\ \mathrm{mm})遅いので、粘性による(線形の)抗力が支配します。ストークスの法則を使います。

ステップ2 — 代入する。

F=6πηRv=6π (1.2) (1.0×10−3) (5.0×10−3)F = 6\pi\eta R v = 6\pi\,(1.2)\,(1.0\times10^{-3})\,(5.0\times10^{-3}) =6π (6.0×10−6)≈1.13×10−4 N= 6\pi\,(6.0\times10^{-6}) \approx 1.13\times10^{-4}\ \mathrm{N}

π\pi を落とすと 3.6×10−5 N3.6\times10^{-5}\ \mathrm{N}、66 を落とすと 1.9×10−5 N1.9\times10^{-5}\ \mathrm{N} になってしまいます。正しい大きさは 1.1×10−4 N\mathbf{1.1\times10^{-4}\ \mathrm{N}} です。

問4 · 沈降のスケーリング(応用)

条件: 2つの球形の分子が同じ流体の中を沈んでいて、分子 BB の半径は分子 AA の2倍です。単位質量あたりの抗力 ∝1/R2\propto 1/R^2 を使うと、BB の単位質量あたりの抗力は AA と比べてどうなりますか?

✅ 正解です! 抗力/質量∝1/R2\text{抗力/質量} \propto 1/R^2 なので、RR を2倍にすると (1/2)2=14(1/2)^2 = \tfrac{1}{4} になります。大きな分子のほうが速く沈みます。
❌ 惜しい! 1/R1/R ではありません。抗力そのものは RR に比例し、質量は R3R^3 に比例するので、単位質量あたりでは 1/R21/R^2 となり、倍率は 12\tfrac{1}{2} ではなく (1/2)2=14(1/2)^2 = \tfrac{1}{4} です。
❌ 逆です。 質量あたりの抗力は 1/R21/R^2 で小さくなるので、大きいほうの球は 4×4\times ではなく 14\tfrac{1}{4} 倍です。
❌ 惜しい! 質量は R3R^3 で増えますが、抗力は RR でしか増えないので、質量あたりの抗力は 1/R21/R^2 に比例します。2つの大きさで等しくはなりません。
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質量は体積に比例し、ストークスの抗力は半径に比例します:

質量∝R3,抗力∝R  ⇒  抗力質量∝RR3=1R2\text{質量} \propto R^3, \qquad \text{抗力} \propto R \;\Rightarrow\; \frac{\text{抗力}}{\text{質量}} \propto \frac{R}{R^3} = \frac{1}{R^2}

RB=2RAR_B = 2R_A とすると:

(抗力/質量)B(抗力/質量)A=(RARB)2=(12)2=14\frac{(\text{抗力/質量})_B}{(\text{抗力/質量})_A} = \left(\frac{R_A}{R_B}\right)^2 = \left(\frac{1}{2}\right)^2 = \frac{1}{4}

大きな分子のほうが単位質量あたりの抗力は小さいので、より大きく加速し、速く沈みます。これが、遠心分離で分子を分子量ごとに分ける原理です。

正解数:0 / 4