古典力学 · 第13回 · 動画1 · インタラクティブ教材

絶対静止は存在しない:ガリレイ変換と動く観測者の物理

I重要な公式

公式名称必要なもの
r⃗ ′=r⃗−R⃗\vec{r}\,' = \vec{r} - \vec{R}ガリレイ座標変換SS 系での位置と、原点どうしのずれ R⃗\vec{R}
V⃗=dR⃗dt\vec{V} = \dfrac{d\vec{R}}{dt}基準系どうしの相対速度R⃗\vec{R} が時間とともにどう変わるか
v⃗ ′=v⃗−V⃗\vec{v}\,' = \vec{v} - \vec{V}速度の合成則SS 系での速度と、基準系の速度 V⃗\vec{V}
V⃗\vec{V} が一定なら a⃗ ′=a⃗\vec{a}\,' = \vec{a}互いに等速直線運動をする慣性系dV⃗/dt=0⃗d\vec{V}/dt = \vec{0}

ポイント: V⃗\vec{V} は SS 系に対する S′S' 系の速度で、これは引かれます。速度をめぐる二人の観測者の食い違いは、すべてこの一つのベクトルに行き着きます。

II二つの原点、一つの物体

二人の観測者は同じ物体について異なる位置ベクトルを測り、その差はちょうど R⃗\vec{R} です。

💡 二つの位置ベクトルの差をとると R⃗\vec{R} は打ち消し合います。だから変位、ひいては速度と加速度は、原点をどこに置くかによりません。

III互いに等速直線運動をする慣性系

V⃗\vec{V} が一定なら等速直線運動は等速直線運動のままです。だから、どちらの観測者も自分こそが本当に静止していると主張できません。

💡 V⃗\vec{V} が一定のとき v⃗ ′=v⃗−V⃗\vec{v}\,' = \vec{v} - \vec{V} をもう一度微分すると a⃗ ′=a⃗\vec{a}\,' = \vec{a} となります。等速直線運動に限らず、どんな運動でも二つの基準系はまったく同じ加速度を測るのです。

IV飛行機 B から見えるもの

飛行機 B の操縦士が測る飛行機 A の速さは 256256 m/s で、どちらの飛行機の対地速度よりも速くなります。

ステップ1 — 軸を選び、角度を読む
i^ 東,j^ 北\hat{i}\ \text{東},\qquad \hat{j}\ \text{北}
θA=π4=45°,θB=−π4=−45°\theta_A = \tfrac{\pi}{4} = 45\degree, \qquad \theta_B = -\tfrac{\pi}{4} = -45\degree

V確認クイズ

問1 · 位置を変換する

条件: SS 系で物体は r⃗=9i^+5j^\vec{r} = 9\hat{i} + 5\hat{j} m にあり、S′S' 系の原点は R⃗=6i^+j^\vec{R} = 6\hat{i} + \hat{j} m にあります。S′S' 系の観測者が測る位置ベクトル r⃗ ′\vec{r}\,' を求めてください。

✅ 正解です! r⃗ ′=r⃗−R⃗=(9−6)i^+(5−1)j^=3i^+4j^\vec{r}\,' = \vec{r} - \vec{R} = (9-6)\hat{i} + (5-1)\hat{j} = 3\hat{i} + 4\hat{j} m なので、S′S' 系の観測者には物体が 55 m 離れたところに見えます。
❌ 符号を確かめましょう。 それは r⃗+R⃗\vec{r} + \vec{R} です。三角形から r⃗=R⃗+r⃗ ′\vec{r} = \vec{R} + \vec{r}\,' なので、r⃗ ′\vec{r}\,' は R⃗\vec{R} の分を取り除いた残りです。
❌ 逆です。 それは R⃗−r⃗=−r⃗ ′\vec{R} - \vec{r} = -\vec{r}\,' で、物体から O′O' へ戻る向きの矢印です。
❌ 惜しい! r⃗ ′=r⃗−R⃗\vec{r}\,' = \vec{r} - \vec{R} を成分ごとに当てはめましょう。
解答を見る

三つのベクトルは三角形をつくります。OO から物体へ直接行くと r⃗\vec{r}、O→O′→O \to O' \to 物体と行くと R⃗+r⃗ ′\vec{R} + \vec{r}\,' です。どちらの道も同じ点に着くので、

r⃗=R⃗+r⃗ ′⟹r⃗ ′=r⃗−R⃗\vec{r} = \vec{R} + \vec{r}\,' \quad\Longrightarrow\quad \vec{r}\,' = \vec{r} - \vec{R}

成分ごとに計算すると、

r⃗ ′=(9−6)i^+(5−1)j^=3i^+4j^ m\vec{r}\,' = (9 - 6)\hat{i} + (5 - 1)\hat{j} = 3\hat{i} + 4\hat{j}\ \mathrm{m}

その大きさは ∣r⃗ ′∣=32+42=5\left|\vec{r}\,'\right| = \sqrt{3^2 + 4^2} = 5 m ですが、SS 系の観測者は ∣r⃗∣=81+25≈10.3\left|\vec{r}\right| = \sqrt{81 + 25} \approx 10.3 m と報告します。位置は原点から測るものなので、二人の観測者の位置は食い違うのです。

問2 · 引くのはどのベクトルか

条件: 川が東へ 33 m/s で流れています。岸(SS 系、i^\hat{i} は東向き)から測ったボートの速度は v⃗=5i^+2j^\vec{v} = 5\hat{i} + 2\hat{j} m/s です。流れに乗って漂ういかだに S′S' 系を固定します。いかだから測ったボートの速度を求めてください。

✅ 正解です! いかだの速度は V⃗=3i^\vec{V} = 3\hat{i} m/s なので、v⃗ ′=v⃗−V⃗=2i^+2j^\vec{v}\,' = \vec{v} - \vec{V} = 2\hat{i} + 2\hat{j} m/s です。
❌ 符号の取り決めに注意。 V⃗\vec{V} は SS 系に対する S′S' 系の速度で、合成則ではこれを引きます:v⃗ ′=v⃗−V⃗\vec{v}\,' = \vec{v} - \vec{V}。
❌ それは v⃗\vec{v} そのものです。 いかだは動いているので、岸と同じ基準系ではありません。変換しても速度が変わらないということはありえません。
❌ 逆です。 計算したのは V⃗−v⃗\vec{V} - \vec{v} で、これはボートから見たいかだの速度です。
❌ 惜しい! まず V⃗\vec{V} を見きわめましょう。いかだは水と一緒に漂うので、V⃗=3i^\vec{V} = 3\hat{i} m/s です。
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S′S' 系はいかだに乗っていて、いかだは流れに乗って漂うので、SS 系に対する S′S' 系の速度は

V⃗=3i^ m/s\vec{V} = 3\hat{i}\ \mathrm{m/s}

速度の合成則では、この基準系の速度を引きます。

v⃗ ′=v⃗−V⃗=(5−3)i^+(2−0)j^=2i^+2j^ m/s\vec{v}\,' = \vec{v} - \vec{V} = (5 - 3)\hat{i} + (2 - 0)\hat{j} = 2\hat{i} + 2\hat{j}\ \mathrm{m/s}

いかだがすでに観測者を東へ運んでいるので、東向きの成分は小さくなります。一方、V⃗\vec{V} には j^\hat{j} 成分がないので、北向きの成分は変わりません。

問3 · 2機の飛行機

条件: 飛行機 A は北東へ 160160 m/s で、飛行機 B は南東へ 200200 m/s で飛んでいます。i^\hat{i} を東向き、j^\hat{j} を北向きにとり、角度は +x+x から反時計回りに測ります(動画の例題)。B に乗った観測者の基準系での A の速度を求め、次にその向きを求めてください。

速度ベクトルはどれですか?

その向きはどれですか?

✅ 正解です! B の操縦席から見ると、A は 256256 m/s で、東から 96.3°96.3\degree、つまり真北から西へわずか 6.3°6.3\degree 傾いた向きに駆け抜けていきます。
❌ 足してしまっています。 そのベクトルは v⃗A+v⃗B\vec{v}_A + \vec{v}_B です。速度の合成則では基準系の速度を引きます。
❌ 逆です。 それは v⃗B−v⃗A\vec{v}_B - \vec{v}_A、つまり B から見た A ではなく、A から見た B の速度です。
❌ マイナスの引き算に注意。 B の j^\hat{j} 成分は −1002-100\sqrt{2} なので、802−(−1002)=180280\sqrt{2} - (-100\sqrt{2}) = 180\sqrt{2} です。−202-20\sqrt{2} ではありません。
❌ 惜しい! まず両方の速度を地上の座標系で書き、それから V⃗=v⃗B\vec{V} = \vec{v}_B を成分ごとに引きましょう。
❌ それは電卓の値そのままです。 arctan⁡\arctan が返す角度はいつも第一象限か第四象限です。ここでは x′<0x' \lt 0 かつ y′>0y' \gt 0 なので、ベクトルは第二象限にあります。
❌ 惜しい! y′/x′y'/x' の arctan⁡\arctan をとり、成分の符号を使って象限を補正しましょう。
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ステップ1:地上の座標系での成分。 北東は θA=45°\theta_A = 45\degree、南東は θB=−45°\theta_B = -45\degree で、cos⁡45°=sin⁡45°=22\cos 45\degree = \sin 45\degree = \tfrac{\sqrt{2}}{2} なので、

v⃗A=802 i^+802 j^,v⃗B=1002 i^−1002 j^\vec{v}_A = 80\sqrt{2}\,\hat{i} + 80\sqrt{2}\,\hat{j}, \qquad \vec{v}_B = 100\sqrt{2}\,\hat{i} - 100\sqrt{2}\,\hat{j}

ステップ2:基準系の速度を見きわめる。 観測者は B に乗っているので、V⃗=v⃗B\vec{V} = \vec{v}_B です。

ステップ3:引き算する。

v⃗A ′=(802−1002)i^+(802+1002)j^=−202 i^+1802 j^ m/s\vec{v}_A\,' = \big(80\sqrt{2} - 100\sqrt{2}\big)\hat{i} + \big(80\sqrt{2} + 100\sqrt{2}\big)\hat{j} = -20\sqrt{2}\,\hat{i} + 180\sqrt{2}\,\hat{j}\ \mathrm{m/s}

ステップ4:大きさ。 (202)2=800\big(20\sqrt{2}\big)^2 = 800、(1802)2=64800\big(180\sqrt{2}\big)^2 = 64800 なので、

∣v⃗A ′∣=800+64800=65600≈256 m/s\left|\vec{v}_A\,'\right| = \sqrt{800 + 64800} = \sqrt{65600} \approx 256\ \mathrm{m/s}

これがどちらの対地速度よりも大きいのは、二機の南北方向の動きが逆向きだからです。

ステップ5:象限を確かめて向きを求める。

tan⁡θA′=1802−202=−9⟹arctan⁡(−9)=−83.7°\tan\theta_A' = \frac{180\sqrt{2}}{-20\sqrt{2}} = -9 \quad\Longrightarrow\quad \arctan(-9) = -83.7\degree

x′=−202<0x' = -20\sqrt{2} \lt 0 かつ y′=1802>0y' = 180\sqrt{2} \gt 0 なので、ベクトルは第二象限にあり、

θA′=180°−83.7°=96.3°\theta_A' = 180\degree - 83.7\degree = 96.3\degree

問4 · 変換で変わらないもの

条件: 列車がまっすぐな線路を、地面に対して一定の V⃗=25i^\vec{V} = 25\hat{i} m/s で走っています。乗客がボールを投げ、列車の基準系 S′S' でのボールの加速度は a⃗ ′=−2i^+3j^\vec{a}\,' = -2\hat{i} + 3\hat{j} m/s2^2 です。地上の観測者が測る加速度を求めてください。

✅ 正解です! V⃗\vec{V} が一定なら dV⃗/dt=0⃗d\vec{V}/dt = \vec{0} なので、加速度は二つの基準系でまったく同じです。そして、二人の観測者は同じ合力を導きます。
❌ 変換する量が違います。 V⃗\vec{V} がずらすのは加速度ではなく速度です。しかもここで足すと、m/s と m/s2^2 が混ざってしまいます。
❌ 変換する量が違います。 V⃗\vec{V} を引くのは速度の法則です。加速度は dV⃗/dtd\vec{V}/dt で変換され、ここではそれがゼロです。
❌ それは基準系どうしの相対加速度です。 A⃗=dV⃗/dt=0⃗\vec{A} = d\vec{V}/dt = \vec{0} はボールではなく、二つの基準系の関係を表しています。
❌ 惜しい! V⃗\vec{V} を一定として、v⃗=v⃗ ′+V⃗\vec{v} = \vec{v}\,' + \vec{V} を1回微分しましょう。
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速度の合成則から出発し、二人に共通の時間 tt で微分します。

v⃗ ′=v⃗−V⃗⟹dv⃗ ′dt=dv⃗dt−dV⃗dt\vec{v}\,' = \vec{v} - \vec{V} \quad\Longrightarrow\quad \frac{d\vec{v}\,'}{dt} = \frac{d\vec{v}}{dt} - \frac{d\vec{V}}{dt}

列車の速度は一定なので dV⃗/dt=A⃗=0⃗d\vec{V}/dt = \vec{A} = \vec{0} であり、

a⃗ ′=a⃗=−2i^+3j^ m/s2\vec{a}\,' = \vec{a} = -2\hat{i} + 3\hat{j}\ \mathrm{m/s^2}

二つの基準系は、互いに等速直線運動をする慣性系です。ボールの位置と速度については食い違いますが、加速度は完全に一致します。したがって、ボールにはたらく合力 ma⃗m\vec{a} についても一致します。この一致が相対性原理です。

正解数:0 / 4