古典力学 · 第13回 · 動画3 · インタラクティブ教材

自然はだませない:ファインマンとチャレンジャー号、カーブフィットが隠す不確かさ

I重要な公式

公式名称意味
E=C Q0.58E = C\,Q^{0.58}経験的な侵食モデルよどみ点での熱 QQ から侵食の深さ EE を求める。指数は法則からではなく、あてはめから来た
log⁡E=log⁡C+0.58log⁡Q\log E = \log C + 0.58\log Q両対数の形べき乗則は対数軸の上で直線になり、指数はその傾きである
12Efit≤E≤2Efit\tfrac{1}{2}E_{\text{fit}} \le E \le 2E_{\text{fit}}2倍のばらつき点は直線の2倍上にも2倍下にもあるので、予測の2倍の侵食はごく普通のことである
3×13r=r3 \times \tfrac{1}{3}r = r余裕の計算観測された最も深い侵食はリングの半径 rr の 13\tfrac{1}{3} で、その3倍は半径全体になる

ポイント: よどみ点までは物理は妥当ですが、その先のモデルはカーブフィットです。あてはめは、すでに見た事例のあいだを補間するだけです。そして、そのばらつきこそが、あてはめが知らないことを正直に測った値なのです。

II冷えたシールから機体の喪失までの連鎖

チャレンジャー喪失の連鎖のどの環もありふれた物理で、どの環もその前の環を必要とします。

III指数 0.58 はどこから来たか

指数は法則ではありません。散らばった点からのずれがいちばん小さくなる傾きにすぎないのです。

💡 物理が妥当なのはよどみ点まででした。熱から侵食への一歩は、Oリングのゴムそのものではなく、似た材料のデータから示唆された式なのです。

IV2倍のばらつきが許すもの

点が2倍の幅でばらつくあてはめが予測するのは、一つの数値ではなく、侵食の深さの範囲です。

💡 侵食はそれまでの飛行でも見つかっていて、余裕がある証拠だと受け取られていました。ファインマンの評価はこうです:「侵食は、何かがおかしいという手がかりだった。侵食から安全を推論できるはずはなかった」

V確認クイズ

問1 · べき乗則を読む

条件: あてはめたモデル E=C Q0.58E = C\,Q^{0.58} があります。よどみ点での熱 QQ を 1010 倍にすると、予測される侵食の深さ EE は何倍になりますか?

✅ 正解です! 100.58=3.810^{0.58} = 3.8 です。指数が 11 よりかなり小さいので、熱を10倍にしても削れは4倍に届きません。
❌ それは指数が 11 のときの答えです。 あてはめた指数は 0.580.58 なので、倍率は 10110^{1} ではなく 100.5810^{0.58} です。
❌ 惜しい! 指数はかける数ではなく、べきです。EE は 100.5810^{0.58} 倍になります。
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2つの熱でのモデルの値の比をとると、定数 CC は約分されます。

E2E1=C(10Q)0.58C Q0.58=100.58=3.80\frac{E_2}{E_1} = \frac{C(10Q)^{0.58}}{C\,Q^{0.58}} = 10^{0.58} = 3.80

対数軸の上で言い換えると、log⁡Q\log Q が1桁ぶん増えると log⁡E\log E は 0.580.58 だけ上がり、100.58≈3.810^{0.58} \approx 3.8 です。

問2 · ばらつきが許すもの

条件: ある熱で、あてはめた曲線は Efit=0.10 rE_{\text{fit}} = 0.10\,r と予測します。測定された12例は直線のまわりに2倍の幅でばらつき、直線の2倍上にある点も、2倍下にある点もあります。その熱で、データと矛盾しない侵食の深さはどれですか?

✅ 正解です! 上下に2倍の幅なので、範囲は Efit/2=0.05 rE_{\text{fit}}/2 = 0.05\,r から 2Efit=0.20 r2E_{\text{fit}} = 0.20\,r までです。予測の2倍の深さの侵食は、外れ値ではないのです。
❌ 2倍の幅は 20%20\% の帯ではありません。 2倍上とは 2×0.10 r2 \times 0.10\,r、2倍下とは 0.10 r÷20.10\,r \div 2 のことです。
❌ 帯は上下の両方に広がっています。 点の雲の半分はあてはめた直線より下にあるので、区間は 0.05 r0.05\,r から始まります。
❌ 惜しい! 「2倍上にも2倍下にも」とは、予測を 22 倍したものと、半分にしたもののことです。
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ばらつきはかけ算の形なので、線形の目盛りではなく、対数軸の上で対称になります。

12Efit≤E≤2Efit⟹0.05 r≤E≤0.20 r\tfrac{1}{2}E_{\text{fit}} \le E \le 2E_{\text{fit}} \quad\Longrightarrow\quad 0.05\,r \le E \le 0.20\,r

両対数グラフでは、これはあてはめた直線の上下に一定の幅 log⁡2=0.30\log 2 = 0.30 をもつ帯になります。そして12点のうちいくつかは、ちょうどその縁にあります。

問3 · グラフから指数を読み取る

条件: あてはめた直線上の2点 (log⁡Q, log⁡E)=(1.0, −1.27)(\log Q,\ \log E) = (1.0,\ -1.27) と (2.0, −0.69)(2.0,\ -0.69) があります。EE はリングの半径 rr を単位として測ります。

この直線から得られる指数はどれですか?

log⁡Q=2.0\log Q = 2.0 で、この直線から得られる侵食の深さはどれですか?

✅ 正解です! 対数軸の上での傾き 0.580.58 が、そのまま指数です。そして 10−0.69=0.2010^{-0.69} = 0.20 です。
❌ 横の変化を確かめましょう。 2.02.0 ではなく 2.0−1.0=1.02.0 - 1.0 = 1.0 です。
❌ 向きを確かめましょう。 −0.69-0.69 は −1.27-1.27 より大きいので、直線は右上がりで、傾きは正です。
❌ 傾きを確かめましょう。 2つの log⁡E\log E の値の比ではなく、対数どうしの「縦の変化 ÷ 横の変化」を使います。
❌ 対数をもとに戻しましょう。 log⁡E=−0.69\log E = -0.69 は E=10−0.69E = 10^{-0.69} という意味で、負の深さではなく、rr より小さい深さです。
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ステップ1 — 両対数グラフ上の直線の傾き:

0.58=−0.69−(−1.27)2.0−1.0=0.581.00.58 = \frac{-0.69 - (-1.27)}{2.0 - 1.0} = \frac{0.58}{1.0}

log⁡E=log⁡C+nlog⁡Q\log E = \log C + n\log Q なので、この傾きが指数 nn です:E∝Q0.58E \propto Q^{0.58}。

ステップ2 — 深さに戻す:

E=10−0.69 r=0.20 rE = 10^{-0.69}\,r = 0.20\,r

0.580.58 という値を決めた物理的な根拠は何もありません。散らばった点の雲にいちばん近い傾き、というだけです。

問4 · 次の飛行(応用)

条件: これまでに測られた最も深い侵食は 13r\tfrac{1}{3}r で、そのときのよどみ点での熱は Q0Q_0 でした。次の飛行ではもっと熱く、Q=2Q0Q = 2Q_0 になります。あてはめには相変わらず2倍のばらつきがあります。

あてはめによれば、侵食は何倍になりますか?

ばらつきを考えに入れると、2Q02Q_0 でデータと矛盾しない最も深い侵食はどれですか?

✅ 正解です! 20.58=1.52^{0.58} = 1.5 なので、あてはめの予測は 13r×1.5=0.50 r\tfrac{1}{3}r \times 1.5 = 0.50\,r です。そしてばらつきだけでもその2倍、つまりリングの半径全体に達する削れまで許されます。
❌ それは指数を 11 と仮定しています。 QQ を2倍にすると、EE は 22 倍ではなく 20.582^{0.58} 倍になります。
❌ 0.580.58 はかける数ではなく、指数です。 倍率は 2×0.582 \times 0.58 ではなく 20.582^{0.58} です。
❌ べきを確かめましょう。 QQ が2倍になったときの増加の倍率は 20.582^{0.58} です。
❌ ばらつきは直線の2倍上にも及びます。 予測の 0.50 r0.50\,r を2倍しましょう。
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ステップ1 — 測定された最も深い事例を、あてはめたべき乗則で拡大する:

E(2Q0)E(Q0)=20.58=1.49⟹E≈13r×1.49=0.50 r\frac{E(2Q_0)}{E(Q_0)} = 2^{0.58} = 1.49 \quad\Longrightarrow\quad E \approx \tfrac{1}{3}r \times 1.49 = 0.50\,r

ステップ2 — あてはめがもともと抱えている不確かさを加える:

Emax⁡=2×0.50 r=1.00 rE_{\max} = 2 \times 0.50\,r = 1.00\,r

予測は 0.50 r0.50\,r ですが、正直な報告は「0.25 r0.25\,r から 1.00 r1.00\,r」で、その上端はリングの半径全体に等しいのです。ファインマンも自分の倍率で同じ計算をしています。観測された最も深い事例の3倍ひどい侵食、3×13r3 \times \tfrac{1}{3}r も、やはり半径全体になります。

精密に見える指数は、この広がりを少しも狭めませんでした。それができたのは、ゴムがどう侵食されるかについての物理的な理解だけです。

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