古典力学 · 第13回 · 動画5 · インタラクティブ教材

こぼれる砂と吹き込む穀物:質量が変わる貨車の運動

I重要な公式

公式名称前提
Fext=m(t)dvdt+dmdt (v−u)F_{\text{ext}} = m(t)\dfrac{dv}{dt} + \dfrac{dm}{dt}\,(v - u)質量の流れがあるときの運動方程式uu = 地面の座標系での、移動する物質の速度
vc(t)=Fbln⁡ ⁣[mc+msmc+ms−bt]v_c(t) = \dfrac{F}{b}\ln\!\left[\dfrac{m_c + m_s}{m_c + m_s - bt}\right]空になっていく貨車 — 砂は u=vcu = v_c で出る一定の FF、こぼれる割合 bb、静止から動き出す
vA(t)=btmA,0+bt uv_A(t) = \dfrac{bt}{m_{A,0} + bt}\,u満たされていく貨車 — 穀物は uu で入る線路に沿った外力はなく、静止から動き出す
(mA,0+bt)vA(t)=bt u\left(m_{A,0} + bt\right)v_A(t) = bt\,u満たされていく貨車の運動量の帳簿穀物はどの1キログラムも、届いたときにもっていた運動量を受け渡す

ポイント: p=mvp = mv は決まった物質の集まりについて定義されたものなので、質量が変わる系でそれを積の微分法則で微分するのは誤りです。余った v dm/dtv\,dm/dt は、基準系を変えると値まで変わってしまいます。代わりに同じ物質を Δt\Delta t のあいだ追いかければ、残るのは dmdt(v−u)\dfrac{dm}{dt}(v - u)、つまり質量流量 × 相対速度だけです。

II砂が出る:運動方程式が気づかない流出

砂は貨車自身の水平速度をもったまま落ちるので、F=mc(t) dvc/dtF = m_c(t)\,dv_c/dt に残るのは減っていく mc(t)m_c(t) だけです。

III穀物が入る:質量が2倍になったときの速さは?

穀物は uu をもって届きます。その穀物で質量が2倍になったとき、貨車 A の速さはいくらでしょうか?

💡 質量ではなく時間で積分しても、まったく同じ曲線が得られます:dvAu−vA=b dtmA,0+bt\dfrac{dv_A}{u - v_A} = \dfrac{b\,dt}{m_{A,0} + bt}。原始関数から出る因子 1/b1/b が、分子の bb と打ち消し合います。

IV1つの項が決める

質量の流れの問題はどれも、1つの項で決まります。質量流量と相対速度 u−vu - v の積です。

V確認クイズ

問1 · 貨車を空にする

条件: ms=2000 kgm_s = 2000\ \text{kg} の砂を積んだ質量 mc=3000 kgm_c = 3000\ \text{kg} の貨車が、一定の力 F=2000 NF = 2000\ \text{N} を受けて静止状態から動き出します。同時に、砂が床の口から b=100 kg/sb = 100\ \text{kg/s} でまっすぐ下に流れ出します。最後の砂が出きった瞬間の貨車の速さを求めてください。

✅ 正解です! 質量が 5000 kg5000\ \text{kg} から 3000 kg3000\ \text{kg} へ減るにつれて、同じ 2000 N2000\ \text{N} で得られる加速度は刻々と大きくなります:(F/b)ln⁡(5/3)=20(0.511)=10.2 m/s(F/b)\ln(5/3) = 20(0.511) = 10.2\ \text{m/s}。
❌ それは質量一定の場合の答えです。 Ft/(mc+ms)=2000(20)/5000Ft/(m_c+m_s) = 2000(20)/5000 が成り立つのは、貨車がまったく軽くならない場合だけです。実際の貨車は最後には 8.0 m/s8.0\ \text{m/s} より速くなります。
❌ それは貨車をはじめからずっと空として扱っています。 Ft/mc=2000(20)/3000Ft/m_c = 2000(20)/3000 は上限です。本当の答えは、満載の質量での見積もりと空の質量での見積もりのあいだにあるはずです。
❌ 分母が何になるかを確かめましょう。 t=ms/bt = m_s/b で残っている質量は、ms=2000 kgm_s = 2000\ \text{kg} ではなく mc+ms−bt=mc=3000 kgm_c + m_s - bt = m_c = 3000\ \text{kg} です。
❌ 惜しい! vc=(F/b)ln⁡[(mc+ms)/(mc+ms−bt)]v_c = (F/b)\ln[(m_c+m_s)/(m_c+m_s-bt)] を t=ms/b=20 st = m_s/b = 20\ \text{s} で計算しましょう。
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砂は貨車自身の水平速度をもったまま床から出ていくので、dm/dtdm/dt の項は現れず、ニュートンの第二法則は、質量が時間の関数になっただけのおなじみの形のままです。

F=mc(t) dvcdt,mc(t)=mc+ms−bt=5000−100tF = m_c(t)\,\frac{dv_c}{dt},\qquad m_c(t) = m_c + m_s - bt = 5000 - 100t

変数分離して、静止状態から積分します。

∫0vc(t)dvc′=∫0tF dt′mc+ms−bt′  ⟹  vc(t)=Fbln⁡ ⁣[mc+msmc+ms−bt]\int_0^{v_c(t)} dv_c' = \int_0^t \frac{F\,dt'}{m_c + m_s - bt'} \;\Longrightarrow\; v_c(t) = \frac{F}{b}\ln\!\left[\frac{m_c+m_s}{m_c+m_s-bt}\right]

砂がなくなるのは bt=msbt = m_s、つまり t=ms/b=20 st = m_s/b = 20\ \text{s} のときで、分母は空の貨車の質量 mcm_c になります。

vc=2000100ln⁡ ⁣[50003000]=20ln⁡ ⁣(53)=20(0.5108)=10.2 m/sv_c = \frac{2000}{100}\ln\!\left[\frac{5000}{3000}\right] = 20\ln\!\left(\frac{5}{3}\right) = 20(0.5108) = 10.2\ \text{m/s}

妥当性の確認。 満載の貨車(5000 kg5000\ \text{kg})なら 8.0 m/s8.0\ \text{m/s}、空の貨車(3000 kg3000\ \text{kg})なら 13.3 m/s13.3\ \text{m/s} に達したはずです。10.2 m/s10.2\ \text{m/s} はそのあいだにあり、一方から他方へ減っていく質量にふさわしい値です。

問2 · 積の微分法則のわな

条件: 砂がこぼれているその同じ貨車が、ある瞬間に質量 mc(t)=4000 kgm_c(t) = 4000\ \text{kg}、速さ vc=5.0 m/sv_c = 5.0\ \text{m/s} で、F=2000 NF = 2000\ \text{N} はまだ加えられたまま、dmc/dt=−100 kg/sdm_c/dt = -100\ \text{kg/s} です。その加速度を求めてください。

✅ 正解です! 砂は貨車自身の水平速度で離れるので vc−u=0v_c - u = 0 となり、質量の流れの項は消えて、F=mc(t) dvc/dtF = m_c(t)\,dv_c/dt から 2000/40002000/4000 が得られます。
❌ それは積の微分法則を使った近道です。 F=m dv/dt+v dm/dtF = m\,dv/dt + v\,dm/dt と書いて解くと (F−v dm/dt)/m=(2000+500)/4000(F - v\,dm/dt)/m = (2000 + 500)/4000 になります。しかし p=mvp = mv は決まった物質の集まりについて定義されたもので、余った項は推力ではありません。基準系を変えると値まで変わってしまいます。
❌ 同じ近道を逆の符号で使っています: (F+v dm/dt)/m=1500/4000(F + v\,dm/dt)/m = 1500/4000。この項は符号を変えるのではなく、そもそも現れないはずです。
❌ それは空の貨車の質量 3000 kg3000\ \text{kg} を使った F/mcF/m_c です。 この瞬間、貨車にはまだ 1000 kg1000\ \text{kg} の砂が積まれているので、分母の質量は 4000 kg4000\ \text{kg} です。
❌ 惜しい! u=vcu = v_c なので、運動方程式はただの F=mc(t) dvc/dtF = m_c(t)\,dv_c/dt です。
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決まった物質の集まり、つまり貨車と、時刻 tt にまだ中にある砂を追いかけます。こぼれ落ちる部分は、水平方向には貨車と一緒に動きながら離れるので、t+Δtt + \Delta t では2つの部分が同じ速度 vc+Δvcv_c + \Delta v_c をもち、質量の変化は打ち消し合います。

Δpsys=(Δms+mc+Δmc)(vc+Δvc)−mcvc=mc(t) Δvc(Δmc=−Δms)\Delta p_{\text{sys}} = \big(\Delta m_s + m_c + \Delta m_c\big)(v_c + \Delta v_c) - m_c v_c = m_c(t)\,\Delta v_c \quad (\Delta m_c = -\Delta m_s) F=mc(t)dvcdt=20004000=0.50 m/s2F = m_c(t)\frac{dv_c}{dt} = \frac{2000}{4000} = 0.50\ \text{m/s}^2

近道がうまくいかない理由。 質量の流れの項は一般に dmdt(v−u)\dfrac{dm}{dt}(v - u)、つまり質量流量と相対速度の積です。床から落ちる砂では u=vcu = v_c なので、この項はぴったりゼロです。ところが積の微分法則では v dm/dt=(5.0)(−100)=−500 Nv\,dm/dt = (5.0)(-100) = -500\ \text{N} が残り、500 N500\ \text{N} という架空の力が生まれます。しかもその値は、動いている台の上から vcv_c を測ると変わってしまいます。法則ではないという確かな証拠です。

帰結。 F=0F = 0 とおくと dvc/dt=0dv_c/dt = 0 になります。砂をこぼしながら転がる貨車は、どれだけ砂を失っても、速さをぴったり保ち続けます。

問3 · 貨車を満たす

条件: 貨車 A が mA,0=2000 kgm_{A,0} = 2000\ \text{kg} で静止状態から動き出します。貨車 B から吹き込まれる穀物が、貨車 B の水平速度 u=12 m/su = 12\ \text{m/s} をもったまま b=50 kg/sb = 50\ \text{kg/s} で届きます。線路に沿った外力ははたらきません。

t=20 st = 20\ \text{s} での貨車 A の速さはいくらですか?

貨車 A が vA=9.0 m/sv_A = 9.0\ \text{m/s} に達するには、どれだけの穀物が積まれている必要がありますか?

✅ 正解です! vA/uv_A/u は、貨車 A のいまの質量のうち穀物として届いた分の割合です。20 s20\ \text{s} では 1000/30001000/3000 で、0.75u0.75u に達するには、8000 kg8000\ \text{kg} の貨車の中に 6000 kg6000\ \text{kg} の穀物が必要です。
❌ uu は極限であって、その時刻の値ではありません。 vA=[bt/(mA,0+bt)]uv_A = [bt/(m_{A,0}+bt)]u は貨車 B の速さに向かって増えますが、達するのは t→∞t \to \infty のときだけです。
❌ 分数が逆さまです。 vA/u=bt/(mA,0+bt)=1000/3000v_A/u = bt/(m_{A,0}+bt) = 1000/3000 は質量のうち穀物が占める割合で、貨車本体が占める割合 mA,0/mA=2000/3000m_{A,0}/m_A = 2000/3000 ではありません。
❌ 最初の質量で割っています。 bt u/mA,0=12000/2000bt\,u/m_{A,0} = 12000/2000 では運動量をすべてもとの貨車に渡してしまいます。積まれた穀物も運動量を分け合うので、mA(20)=3000 kgm_A(20) = 3000\ \text{kg} で割ります。
❌ 帳簿を確かめましょう。 mA(t) vA(t)=bt um_A(t)\,v_A(t) = bt\,u で、mA(20)=2000+1000=3000 kgm_A(20) = 2000 + 1000 = 3000\ \text{kg}、bt u=12000 kg⋅m/sbt\,u = 12000\ \text{kg}\cdot\text{m/s} です。
❌ それはその瞬間の貨車 A の全質量です。 積まれている穀物は 8000−2000=6000 kg8000 - 2000 = 6000\ \text{kg} です。
❌ 穀物が足りません。 3000 kg3000\ \text{kg} 積まれていると質量は 5000 kg5000\ \text{kg} で、vA=(3000/5000)(12)=7.2 m/sv_A = (3000/5000)(12) = 7.2\ \text{m/s} です。
❌ それは 0.75 mA,00.75\,m_{A,0} です。 比 0.750.75 はいまの質量に対する割合で、その質量は穀物自身によって増えています。
❌ 惜しい! bt/(mA,0+bt)=9.0/12=0.75bt/(m_{A,0}+bt) = 9.0/12 = 0.75 を穀物の質量 btbt について解きましょう。
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系は、貨車 A、すでに積まれた穀物、そしてこれから届く小さな部分 Δmg\Delta m_g です。どちらの時刻でも同じ物質です。線路に沿った外力はないので、

0=mA(t)dvAdt+dmAdt(vA−u)0 = m_A(t)\frac{dv_A}{dt} + \frac{dm_A}{dt}\big(v_A - u\big)

時間ではなく質量について変数分離して積分すると ln⁡[u/(u−vA)]=ln⁡[mA/mA,0]\ln[u/(u - v_A)] = \ln[m_A/m_{A,0}] となるので、

vA=mA−mA,0mA u=btmA,0+bt uv_A = \frac{m_A - m_{A,0}}{m_A}\,u = \frac{bt}{m_{A,0} + bt}\,u

前半。 t=20 st = 20\ \text{s} では、積まれた穀物は bt=1000 kgbt = 1000\ \text{kg}、mA=3000 kgm_A = 3000\ \text{kg} です。

vA=10003000(12)=4.0 m/sv_A = \frac{1000}{3000}(12) = 4.0\ \text{m/s}

帳簿で確認:(3000)(4.0)=12000=(1000)(12)(3000)(4.0) = 12000 = (1000)(12)。貨車は、穀物が運び込んだ運動量をぴったりもっています。

後半。 vA/u=9.0/12=0.75v_A/u = 9.0/12 = 0.75 とします。

bt2000+bt=0.75  ⟹  1500+0.75 bt=bt  ⟹  bt=6000 kg\frac{bt}{2000 + bt} = 0.75 \;\Longrightarrow\; 1500 + 0.75\,bt = bt \;\Longrightarrow\; bt = 6000\ \text{kg}

したがって mA=8000 kgm_A = 8000\ \text{kg} で、そうなるのは t=6000/50=120 st = 6000/50 = 120\ \text{s} です。帳簿で確認:(8000)(9.0)=72000=(6000)(12)(8000)(9.0) = 72000 = (6000)(12)。

問4 · 静止したホッパーからの砂

条件: 2000 kg2000\ \text{kg} の貨車が水平な線路の上を 4.0 m/s4.0\ \text{m/s} で自由に走っているところへ、線路の上に静止してつるされたホッパーから、砂が 50 kg/s50\ \text{kg/s} で注がれはじめます。力は加えられていません。20 s20\ \text{s} 後の貨車の速さを求めてください。

✅ 正解です! 砂は u=0u = 0 で届くので v−u=vv - u = v です。この項は生きていて、貨車にブレーキをかけます。水平方向の運動量は保存され、(2000)(4.0)=(3000)v(2000)(4.0) = (3000)v です。
❌ それは砂がこぼれる貨車の答えです。 あれが成り立ったのは、出ていく砂が貨車自身の速度で離れたからです。u=0u = 0 で届く砂は速さまで引き上げなければならず、その代価を払えるのは貨車の運動量だけです。
❌ 質量の比が逆さまです。 v=v0 m0/m(t)v = v_0\,m_0/m(t) なので、2000 kg2000\ \text{kg} から 3000 kg3000\ \text{kg} に増えれば、貨車は速くではなく遅くならなければなりません。
❌ 加わったのは 2000 kg2000\ \text{kg} ではなく 1000 kg1000\ \text{kg} だけです。 質量は 2000→3000 kg2000 \to 3000\ \text{kg} と変わるので、速さは 1/21/2 倍ではなく 2/32/3 倍になります。
❌ 惜しい! 静止したホッパーから落ちる砂は水平方向の運動量をもち込まないので、m(t)v(t)m(t)v(t) は最初の 8000 kg⋅m/s8000\ \text{kg}\cdot\text{m/s} のままです。
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質量が届くので、移動の項はあります。大事なのは、届くときの速度です。ここでは u=0u = 0 で、線路に沿った外力はありません。

0=m(t)dvdt+dmdt(v−0)  ⟹  mdvdt=−bv0 = m(t)\frac{dv}{dt} + \frac{dm}{dt}\big(v - 0\big) \;\Longrightarrow\; m\frac{dv}{dt} = -bv

これはまさに d(mv)/dt=0d(mv)/dt = 0 です。入ってくる砂は水平方向の運動量をもち込まないので、貨車と砂を合わせた水平方向の運動量は保存されます。

m(t)=2000+50(20)=3000 kgm(t) = 2000 + 50(20) = 3000\ \text{kg} v=m0v0m(t)=(2000)(4.0)3000=2.7 m/sv = \frac{m_0v_0}{m(t)} = \frac{(2000)(4.0)}{3000} = 2.7\ \text{m/s}

3つの場合を並べてみましょう。 床から出ていく砂では u=vu = v で、この項は消え、速さは保たれます。貨車 B から吹き込まれる穀物では u>vu > v で、この項は前向きの推力のようにはたらき、速さは uu に向かって増えます。静止したホッパーから注がれる砂では u=0<vu = 0 < v で、この項はブレーキとなり、速さは 1/m(t)1/m(t) のように減っていきます。dmdt(v−u)\dfrac{dm}{dt}(v-u) という1つの項が、3つすべてを決めているのです。

正解数:0 / 4