古典力学 · 第13回 · 動画7 · インタラクティブ教材

自分の燃料を押して進む:ロケット方程式を導く

I重要な公式

公式名称必要なもの
Δmr=−Δmf\Delta m_r = -\Delta m_f質量の整理[t, t+Δt][t,\ t+\Delta t] を通して質量が一定の系を1つ
F⃗ext=mr(t)dv⃗rdt−dmrdt u⃗\vec{F}_{\text{ext}} = m_r(t)\dfrac{d\vec{v}_r}{dt} - \dfrac{dm_r}{dt}\,\vec{u}ロケット方程式u⃗\vec{u} はロケットに対して測る
Fthrust,x=−dmrdt u=dmfdt uF_{\text{thrust},x} = -\dfrac{dm_r}{dt}\,u = \dfrac{dm_f}{dt}\,u推力燃焼率と排気の速さ(どちらも正)
mr(t)dvr,xdt=Fext,x+Fthrust,xm_r(t)\dfrac{dv_{r,x}}{dt} = F_{\text{ext},x} + F_{\text{thrust},x}ニュートンの第二法則の形外力と推力の和。質量は減っていく

ポイント: 推力は新しい力ではありません。周りの何もロケットに触れていないからです。推力とは、ロケットが質量を投げ捨てることで自分の手もとに残す運動量であり、式を変形して力の側に移しただけのものです。

II1つの排気、2つの座標系

ロケットに乗って見ると排気は uu で出ていき、地面から見ると u⃗+v⃗r\vec{u} + \vec{v}_r で動きます。

III導出をステップごとに

[t, t+Δt][t,\ t+\Delta t] を通して質量が一定の系を1つ選べば、運動量の整理がそのままロケット方程式になります。

ステップ1 — 質量が一定の系を選ぶ

msys=mr(t)=mr,d+mf(t)m_{\text{sys}} = m_r(t) = m_{r,d} + m_f(t)

IV反動としての推力

推力とは反動です。uu で後ろへ投げ出される 1 kg ごとに、ロケットは前へ押されます。

💡 砂が漏れる貨車では、同じ項がゼロになりました。砂粒は貨車自身の速度で離れていくので相対速度は 00 で、反動は生じなかったのです。

V確認クイズ

問1 · 燃焼率と排気の速さから推力を求める

条件: エンジンが燃料を dmfdt=250 kg/s\dfrac{dm_f}{dt} = 250\ \text{kg/s} で燃やし、ロケットに対して u=2800 m/su = 2800\ \text{m/s} で噴き出しています。ロケットのその瞬間の質量は mr=1.4×104 kgm_r = 1.4\times10^{4}\ \text{kg} です。推力 Fthrust,xF_{\text{thrust},x} を求めてください。

✅ 正解です! 燃焼率 × 排気の速さで (250)(2800)=7.0×105 N(250)(2800) = 7.0\times10^{5}\ \text{N} です。その瞬間の質量は推力には入りません。質量が決めるのは、推力が生む加速度 a=50 m/s2a = 50\ \text{m/s}^2 だけです。
❌ それは m˙fu\dot{m}_f u ではなく mrum_r u です。 推力は毎秒出ていく質量から生まれます。かけるのは機内に残る 1.4×104 kg1.4\times10^{4}\ \text{kg} ではなく、250 kg/s250\ \text{kg/s} です。
❌ 第三法則の対を二重に数えています。 ロケットが燃料を押す力は燃料にはたらきます。ロケットの式に入るのは、その相手である、燃料がロケットを押す力だけです。
❌ 演算を確かめましょう。 Fthrust,x=(dmf/dt) uF_{\text{thrust},x} = (dm_f/dt)\,u は積です。割り算をすると m/s÷(kg/s)\text{m/s} \div (\text{kg/s}) となり、N(ニュートン)になりません。
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推力の項は、質量の変化率にロケットに対する排気の速さをかけたものです。

Fthrust,x=−dmrdt u=dmfdt u=(250 kg/s)(2800 m/s)=7.0×105 NF_{\text{thrust},x} = -\frac{dm_r}{dt}\,u = \frac{dm_f}{dt}\,u = (250\ \text{kg/s})(2800\ \text{m/s}) = 7.0\times10^{5}\ \text{N}

符号の確認: dmf/dt>0dm_f/dt > 0 かつ u>0u > 0 なので Fthrust,x>0F_{\text{thrust},x} > 0 です。推力は前向き、つまり燃料を投げ出す向きと反対を向きます。

質量の役割: 何もない宇宙空間では、質量が決めるのは推力ではなく加速度です。

ax=Fthrust,xmr=7.0×105 N1.4×104 kg=50 m/s2a_x = \frac{F_{\text{thrust},x}}{m_r} = \frac{7.0\times10^{5}\ \text{N}}{1.4\times10^{4}\ \text{kg}} = 50\ \text{m/s}^2

問2 · 推力に入るのはどの速度か

条件: ロケットが地面系で vr,x=4000 m/sv_{r,x} = 4000\ \text{m/s} で飛んでいて、エンジンは 200 kg/s200\ \text{kg/s} の燃料をロケットに対して u=3000 m/su = 3000\ \text{m/s} で噴き出しています。推力を求めてください。

✅ 正解です! (200)(3000)=6.0×105 N(200)(3000) = 6.0\times10^{5}\ \text{N} です。このロケットは自分の排気を追い越していて、排気は地面系で 4000−3000=1000 m/s4000 - 3000 = 1000\ \text{m/s} で前へ流れていきますが、推力にはまったく影響しません。
❌ それは積の微分法則を安易に使った結果です。 mrv⃗rm_r\vec{v}_r を不用意に微分すると、u⃗\vec{u} が入るべき場所に v⃗r\vec{v}_r が入ってしまいます。それでは慣性系ごとに値が変わる答えになりますが、本物の力にそんなことは起こりえません。
❌ それは地面系での排気の速度です。 4000−3000=1000 m/s4000 - 3000 = 1000\ \text{m/s} は噴き出された燃料がどう流れていくかを表しますが、反動を決めるのは、エンジンが燃料を投げ出す速さ u=3000 m/su = 3000\ \text{m/s} です。
❌ 速さを足すのではありません。 地面系での排気の速度はベクトルの和 u⃗+v⃗r\vec{u} + \vec{v}_r で、u⃗\vec{u} は後ろ向きなので 3000+40003000 + 4000 ではなく −3000+4000-3000 + 4000 です。しかも、どちらの和も推力には入りません。
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ロケット方程式で質量の変化率にかかるのは、ロケットに対する排気速度 u⃗\vec{u} です。

Fthrust,x=dmfdt u=(200 kg/s)(3000 m/s)=6.0×105 NF_{\text{thrust},x} = \frac{dm_f}{dt}\,u = (200\ \text{kg/s})(3000\ \text{m/s}) = 6.0\times10^{5}\ \text{N}

排気の速さはエンジンの性質、つまり燃焼の化学やノズルの形で決まります。ですから同じエンジンなら、ロケットがのろのろ進んでいても猛スピードで飛んでいても、同じ推力を生みます。

地面系が実際に現れるところ: 噴き出された燃料の地面系での速度は

u⃗+v⃗r=(−3000+4000) i^=+1000 i^ m/s\vec{u} + \vec{v}_r = (-3000 + 4000)\,\hat{i} = +1000\ \hat{i}\ \text{m/s}

です。ですからこの場合、排気は実際には前へ流れていきます。ただ、それを落としていったロケットより 3000 m/s3000\ \text{m/s} だけ遅いのです。排気がどちら向きに流れるかを、計算が問うことはありません。

問3 · 重力に逆らう打ち上げ

条件: その瞬間の質量が mr=3.0×105 kgm_r = 3.0\times10^{5}\ \text{kg} のロケットが真上へ上昇していて、燃料を 1500 kg/s1500\ \text{kg/s} で燃やし、u=2500 m/su = 2500\ \text{m/s} で噴き出しています。g=9.8 m/s2g = 9.8\ \text{m/s}^2 とし、+x+x を上向きにとります。推力と加速度を求めてください。

推力はいくらですか?

加速度はいくらですか?

✅ 正解です! 推力 3.75×106 N3.75\times10^{6}\ \text{N} は重さ 2.94×106 N2.94\times10^{6}\ \text{N} を 8.1×105 N8.1\times10^{5}\ \text{N} しか上回らないので、この重いロケットは 2.7 m/s22.7\ \text{m/s}^2 というゆるやかな加速度で発射台を離れます。
❌ 質量の変化率ではなく、質量そのものを使っています。 (3.0×105 kg)(2500 m/s)(3.0\times10^{5}\ \text{kg})(2500\ \text{m/s}) は力ではなく運動量です。推力に必要なのは dmf/dt=1500 kg/sdm_f/dt = 1500\ \text{kg/s} です。
❌ それは推力ではなく合力です。 8.1×105 N8.1\times10^{5}\ \text{N} は重力が取り分を差し引いたあとに残る分です。推力そのものは (1500)(2500)(1500)(2500) のすべてです。
❌ 推力を確かめましょう。 Fthrust,x=(dmf/dt) uF_{\text{thrust},x} = (dm_f/dt)\,u、つまり燃焼率 × 排気の速さで、gg はまったく関係しません。
❌ 重力はまだはたらいています。 12.5 m/s212.5\ \text{m/s}^2 は Fthrust,x/mrF_{\text{thrust},x}/m_r だけの値です。打ち上げの式は mrax=Fext,x+Fthrust,xm_r a_x = F_{\text{ext},x} + F_{\text{thrust},x} で、Fext,x=−mrgF_{\text{ext},x} = -m_r g です。
❌ どちらが大きいか確かめましょう。 推力は重さを上回る(3.75×106>2.94×106 N3.75\times10^{6} > 2.94\times10^{6}\ \text{N})ので、合力も加速度も上向きです。
❌ 加速度を確かめましょう。 質量で割る前に、推力から重さを引きます。
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ステップ1 — 推力。 推力はエンジンだけで決まります。

Fthrust,x=dmfdt u=(1500 kg/s)(2500 m/s)=3.75×106 NF_{\text{thrust},x} = \frac{dm_f}{dt}\,u = (1500\ \text{kg/s})(2500\ \text{m/s}) = 3.75\times10^{6}\ \text{N}

ステップ2 — 外力。 周りから加わるのは重力だけです。

Fext,x=−mrg=−(3.0×105 kg)(9.8 m/s2)=−2.94×106 NF_{\text{ext},x} = -m_r g = -(3.0\times10^{5}\ \text{kg})(9.8\ \text{m/s}^2) = -2.94\times10^{6}\ \text{N}

ステップ3 — ロケット方程式のニュートンの第二法則の形。

mr(t)dvr,xdt=Fext,x+Fthrust,x=−2.94×106+3.75×106=8.1×105 Nm_r(t)\frac{dv_{r,x}}{dt} = F_{\text{ext},x} + F_{\text{thrust},x} = -2.94\times10^{6} + 3.75\times10^{6} = 8.1\times10^{5}\ \text{N} ax=8.1×105 N3.0×105 kg=2.7 m/s2 (上向き)a_x = \frac{8.1\times10^{5}\ \text{N}}{3.0\times10^{5}\ \text{kg}} = 2.7\ \text{m/s}^2 \ \text{(上向き)}

注意: タンクが空になっていくにつれて mrm_r は減り、Fthrust,xF_{\text{thrust},x} は一定のままなので、燃焼のあいだ axa_x は増え続けます。

問4 · 砂が漏れるホッパー貨車での同じ項

条件: 摩擦のない水平な線路を 15 m/s15\ \text{m/s} で走るホッパー貨車から、床の穴を通して砂が 20 kg/s20\ \text{kg/s} で漏れています。砂粒はどれも貨車自身の速度で離れていくので u=0u = 0 です。漏れ出る砂が生む推力を求めてください。

✅ 正解です! (20 kg/s)(0)=0(20\ \text{kg/s})(0) = 0 です。砂は投げ出されるのではなく落とされるだけなので反動はなく、貨車は軽くなりながら 15 m/s15\ \text{m/s} で走り続けます。
❌ 項に入れる速度が違います。 15 m/s15\ \text{m/s} は地面系での貨車の速度です。推力の項に必要なのは乗り物に対する噴出速度で、ここではゼロです。
❌ それは推力ではなく重さです。 (20 kg/s)(9.8 m/s2)(20\ \text{kg/s})(9.8\ \text{m/s}^2) は力の単位をもちますが、砂の重さは鉛直にはたらき、線路が支えます。貨車を xx 方向に押すことはありません。
❌ 質量を失うことはブレーキではありません。 貨車を後ろへ押すものは何もありません。離れていく砂粒はもとの速度を保つので、運動量と質量をちょうど vxv_x が変わらない比率で持ち去ります。
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推力の項は、いつでも質量の変化率に乗り物に対する噴出速度をかけたものです。

Fthrust,x=dmfdt u=(20 kg/s)(0 m/s)=0F_{\text{thrust},x} = \frac{dm_f}{dt}\,u = (20\ \text{kg/s})(0\ \text{m/s}) = 0

水平方向の外力もないので、ロケット方程式は次のようになります。

m(t)dvxdt=0+0⟹vx=15 m/s (ずっと一定)m(t)\frac{dv_x}{dt} = 0 + 0 \quad\Longrightarrow\quad v_x = 15\ \text{m/s}\ \text{(ずっと一定)}

対比: 穴の代わりに、同じ 20 kg/s20\ \text{kg/s} を u=3000 m/su = 3000\ \text{m/s} で後ろへ投げ出すエンジンをつけると、まったく同じ項が次のようになります。

Fthrust,x=(20)(3000)=6.0×104 NF_{\text{thrust},x} = (20)(3000) = 6.0\times10^{4}\ \text{N}

質量の変化率も乗り物も同じです。惰性で進むか加速するかの違いは、すべて相対速度で決まるのです。

正解数:0 / 4