古典力学 · 第13回 · 動画8 · インタラクティブ教材

対数の非情:ロケットが段を切り離し、一気に燃やす理由

I重要な公式

公式名称必要なもの
vr,x,f=vr,x,i+uln⁡R,R=mr,imr,dv_{r,x,f} = v_{r,x,i} + u \ln R, \qquad R = \dfrac{m_{r,i}}{m_{r,d}}何もない宇宙空間でのロケット方程式噴出速度 uu と質量比 RR
mr(t)=mr,i−b t,vr,x(t)=vr,x,i+uln⁡mr,imr,i−b tm_r(t) = m_{r,i} - b\,t, \qquad v_{r,x}(t) = v_{r,x,i} + u \ln\dfrac{m_{r,i}}{m_{r,i} - b\,t}一定の燃焼率燃料が噴き出される割合 b=− dmr/dtb = -\,dm_r/dt
vr,x,f=uln⁡R1+uln⁡R2=uln⁡(R1R2)v_{r,x,f} = u \ln R_1 + u \ln R_2 = u \ln (R_1 R_2)二段式の燃焼各段の質量比(それぞれ切り離しのあとの質量から測る)
vr,x(tf)=uln⁡R−g tfv_{r,x}(t_f) = u \ln R - g\,t_f鉛直方向の打ち上げ(gg は一定)燃焼時間 tft_f

ポイント: 速さは足し算で増え、質量比は掛け算で増えます。対数は各段で得る速さの和を、各段の質量比の積に変えます。そして重力が 1 秒ごとに税金を取り始めるまで、tft_f は答えのどこにも現れません。

II速さの対数的な代価

速さを uu だけ増やすごとに、質量比はさらに ee 倍必要になります。

💡 上限を決めるのは構造です。タンクやエンジンの重さはゼロにはできないので、一段式ではこの曲線をどこまでも登ることはできません。さらに右へ進む唯一の方法は、mr,dm_{r,d} の一部を運ぶのをやめることです。

III多段式 — 2つの質量比が掛け合わさる

燃料も uu も同じです。空になった第一段のタンクを 150 s150\ \text{s} で切り離すと、何が得られるでしょうか?

IV重力の税金

重力は 1 秒ごとに税金を取ります。uln⁡Ru \ln R は一定ですが、g tfg\,t_f は燃焼が 1 秒続くごとに増えていきます。

💡 税金がかかるのは g⃗\vec{g} の速度に沿った成分だけです。そのため実際の打ち上げでは、できるだけ早く機体を傾けます。ここでの −g tf-g\,t_f のすべては、真上にだけ上昇する最悪の場合です。

V確認クイズ

問1 · 質量比から終わりの速さへ

条件: 遠い宇宙空間で静止している探査機の全質量は mr,i=6.0×105 kgm_{r,i} = 6.0\times10^{5}\ \text{kg} で、そのうち 4.8×105 kg4.8\times10^{5}\ \text{kg} が推進剤です。推進剤は u=2500 m/su = 2500\ \text{m/s} で噴き出されます。タンクが空になったときの終わりの速さを求めてください。

✅ 正解です! 乾燥質量は 1.2×105 kg1.2\times10^{5}\ \text{kg} なので R=5R = 5、vr,x,f=2500ln⁡5=2500(1.6094)≈4020 m/sv_{r,x,f} = 2500\ln 5 = 2500(1.6094) \approx 4020\ \text{m/s} です。80%80\% が推進剤のロケットでも、得られるのはわずか 1.6 u1.6\,u なのです。
❌ それは uln⁡Ru \ln R ではなく uRuR です。 dvr,x=−u dmr/mrdv_{r,x} = -u\,dm_r/m_r を積分すると対数が出てくるので、速さは ln⁡R\ln R に比例して増えます。質量比 5 で得られるのは 5u5u ではなく 1.609 u1.609\,u です。
❌ 対数の種類が違います。 ∫dmr/mr\int dm_r/m_r から出てくるのは自然対数です。ln⁡5=1.609\ln 5 = 1.609 ですが、log⁡105=0.699\log_{10} 5 = 0.699 です。
❌ 比が逆さまです。 計算したのは uln⁡(mr,d/mr,i)u\ln(m_{r,d}/m_{r,i}) です。対数の中の比をひっくり返すと符号が反転します。ロケットは速くならなければならないので、大きいほうの質量を分子に置きます。
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ステップ1 — 乾燥質量。 推進剤以外のすべてです。

mr,d=6.0×105−4.8×105=1.2×105 kgm_{r,d} = 6.0\times10^{5} - 4.8\times10^{5} = 1.2\times10^{5}\ \text{kg}

ステップ2 — 質量比。

R=mr,imr,d=6.0×1051.2×105=5.0R = \frac{m_{r,i}}{m_{r,d}} = \frac{6.0\times10^{5}}{1.2\times10^{5}} = 5.0

ステップ3 — ロケット方程式(静止状態から動き出すので vr,x,i=0v_{r,x,i} = 0)。

vr,x,f=uln⁡R=(2500)(ln⁡5)=(2500)(1.6094)=4023 m/sv_{r,x,f} = u \ln R = (2500)(\ln 5) = (2500)(1.6094) = 4023\ \text{m/s}

確認:mr,i>mr,dm_{r,i} > m_{r,d} なので R>1R > 1、したがって ln⁡R>0\ln R > 0 となり、ロケットは速くなります。

問2 · 燃焼時間は関係するか

条件: 何もない宇宙空間に同じ探査機が2機あり、どちらも静止状態から、同じ量の推進剤と同じ uu で動き出します。探査機 A は一定の割合で 60 s60\ \text{s} かけてタンクを空にし、探査機 B は 600 s600\ \text{s} かけて空にします。2機の終わりの速さを比べてください。

✅ 正解です! 積分したのは時間ではなく質量についてでした。Δv=uln⁡(mr,i/mr,d)\Delta v = u\ln(m_{r,i}/m_{r,d}) には tt がまったく含まれません。何もない宇宙空間では燃焼時間は答えに現れず、重力場があるときにだけ −g tf-g\,t_f を通して再び現れます。
❌ uln⁡Ru \ln R の中に bb とともに変わるものはありません。 燃焼率が 10 倍なら推力は 10 倍ですが、はたらく時間は 1/10 です。積み重なる ∫u dmr/mr\int u\,dm_r/m_r はまったく同じです。
❌ 推力は大きくても、そのぶん時間は短くなります。 A の加速度は 10 倍ですが、続く時間は 1/10 です。2機はまったく同じ順序で同じ質量を通っていきます。
❌ 時間は長くても、推力は 1/10 です。 B の推力 ubub は A の 1/10 なので、余分な 540 s540\ \text{s} では何も得られません。同じ推進剤が同じ uu で出ていくだけです。
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変数分離をすると、各辺に変数が1つずつになります。

dvr,x=−u dmrmrdv_{r,x} = -u\,\frac{dm_r}{m_r}

点火から燃焼終了までの積分は、質量について mr,im_{r,i} から mr,dm_{r,d} までです。

vr,x,f−vr,x,i=uln⁡mr,imr,d=uln⁡Rv_{r,x,f} - v_{r,x,i} = u\ln\frac{m_{r,i}}{m_{r,d}} = u\ln R

時間の上端・下端はどこにも入っていません。燃焼率 bb が一定のとき、途中の経過は確かに bb によります。

vr,x(t)=uln⁡mr,imr,i−b tv_{r,x}(t) = u\ln\frac{m_{r,i}}{m_{r,i} - b\,t}

しかし燃焼終了時には、どちらの探査機でも b tf=mr,i−mr,db\,t_f = m_{r,i} - m_{r,d} なので、どちらも同じ uln⁡Ru \ln R に達します。動画の一段式ロケットの例で与えられた 510 s510\ \text{s} が計算に一度も出てこなかったのは、まさにこのためです。

問3 · 2つの段、1つの積

条件: 何もない宇宙空間で静止しているロケットの全質量は 1.00×105 kg1.00\times10^{5}\ \text{kg} です。第一段が 6.0×104 kg6.0\times10^{4}\ \text{kg} の推進剤を燃やしたあと、空になった第一段の構造(1.0×104 kg1.0\times10^{4}\ \text{kg})が切り離されます。続いて第二段が残りの 2.0×104 kg2.0\times10^{4}\ \text{kg} の推進剤を燃やします。どちらの段も u=3000 m/su = 3000\ \text{m/s} で噴き出します。

積 R1R2R_1 R_2 はいくらですか?

終わりの速さはいくらですか?

✅ 正解です! R1=2.5R_1 = 2.5、R2=3.0R_2 = 3.0 なので vr,x,f=3000ln⁡7.5=6045 m/sv_{r,x,f} = 3000\ln 7.5 = 6045\ \text{m/s} です。同じ推進剤を一段で燃やすと 3000ln⁡5=4828 m/s3000\ln 5 = 4828\ \text{m/s} なので、ちょうどよいときに 1.0×104 kg1.0\times10^{4}\ \text{kg} を捨てたことで、およそ 1215 m/s1215\ \text{m/s} 得をしたことになります。
❌ それは一段式の質量比です。 5.0=1.00×105/2.0×1045.0 = 1.00\times10^{5} / 2.0\times10^{4} は、空になった第一段の構造を燃焼終了まで運び続ける場合です。切り離せば、その不要な質量が第二段の分母から除かれます。
❌ 質量比は足し算ではなく掛け算です。 足し算になるのは速さ(uln⁡R1+uln⁡R2u\ln R_1 + u\ln R_2)で、対数がその和を積 uln⁡(R1R2)u\ln(R_1R_2) に変えます。
❌ 2つの質量比を別々に確かめましょう。 R1R_1 には1回目の燃焼の前後の質量を使います。R2R_2 は切り離しのあとに残った質量から始まります。
❌ それは切り離さない場合の結果です。 3000ln⁡5=4828 m/s3000\ln 5 = 4828\ \text{m/s} は、空になった第一段の構造を最後まで運んでいったときに得られる値です。
❌ uln⁡(R1+R2)u\ln(R_1 + R_2) を計算しています。 2つの速さの増加の和は uln⁡R1+uln⁡R2=uln⁡(R1R2)u\ln R_1 + u\ln R_2 = u\ln(R_1R_2) なので、対数の中で質量比は掛け合わされます。
❌ 惜しい! 積 R1R2R_1R_2 が求まれば、あとは対数を1回とるだけです。vr,x,f=uln⁡(R1R2)v_{r,x,f} = u\ln(R_1R_2) です。
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第一段。 6.0×104 kg6.0\times10^{4}\ \text{kg} を燃やすと、残るのは

mr,1,d=1.00×105−6.0×104=4.0×104 kg,R1=1.00×1054.0×104=2.5m_{r,1,d} = 1.00\times10^{5} - 6.0\times10^{4} = 4.0\times10^{4}\ \text{kg}, \qquad R_1 = \frac{1.00\times10^{5}}{4.0\times10^{4}} = 2.5

切り離し。 空の構造 1.0×104 kg1.0\times10^{4}\ \text{kg} を捨てると、mr,2,i=3.0×104 kgm_{r,2,i} = 3.0\times10^{4}\ \text{kg} が残ります。

第二段。 最後の 2.0×104 kg2.0\times10^{4}\ \text{kg} を燃やすと、残るのは

mr,2,d=3.0×104−2.0×104=1.0×104 kg,R2=3.0×1041.0×104=3.0m_{r,2,d} = 3.0\times10^{4} - 2.0\times10^{4} = 1.0\times10^{4}\ \text{kg}, \qquad R_2 = \frac{3.0\times10^{4}}{1.0\times10^{4}} = 3.0

速さは足し、質量比は掛ける。

vr,x,f=uln⁡R1+uln⁡R2=uln⁡(R1R2)=3000ln⁡7.5=(3000)(2.0149)=6045 m/sv_{r,x,f} = u\ln R_1 + u\ln R_2 = u\ln(R_1R_2) = 3000\ln 7.5 = (3000)(2.0149) = 6045\ \text{m/s}

比較。 同じ 8.0×104 kg8.0\times10^{4}\ \text{kg} の推進剤を一段で燃やすと、最後は mr,d=2.0×104 kgm_{r,d} = 2.0\times10^{4}\ \text{kg} になるので R=5R = 5、vr,x,f=3000ln⁡5=4828 m/sv_{r,x,f} = 3000\ln 5 = 4828\ \text{m/s} です。1215 m/s1215\ \text{m/s} の差は、空のタンク 1.0×104 kg1.0\times10^{4}\ \text{kg} を2回目の燃焼のあいだずっと加速し続けることの代価です。

問4 · 重力に逆らったときの燃焼終了時の速さ

条件: ロケットが一様な重力場 g=9.8 m/s2g = 9.8\ \text{m/s}^2 の中を、静止状態から鉛直に上昇します。u=2600 m/su = 2600\ \text{m/s}、質量比は R=6.0R = 6.0、燃焼は tf=120 st_f = 120\ \text{s} 続きます。燃焼終了時の速さを求めてください。

✅ 正解です! uln⁡R=2600(1.7918)=4659 m/su\ln R = 2600(1.7918) = 4659\ \text{m/s}、g tf=(9.8)(120)=1176 m/sg\,t_f = (9.8)(120) = 1176\ \text{m/s} なので、残るのは 3483 m/s3483\ \text{m/s} です。わずか 2 分で、重力は稼ぎの 1/4 を取ったのです。
❌ それは何もない宇宙空間での答えです。 uln⁡R=4659 m/su\ln R = 4659\ \text{m/s} は第一項にすぎません。重力場の中では、さらに −g tf-g\,t_f が加わります。
❌ 符号の誤りです。 +x+x を上向きにとると重さは −mr(t)g-m_r(t)g なので、重力の項は引き算になります。uln⁡R−g tfu\ln R - g\,t_f です。
❌ 税金は半分にはなりません。 ∫0tf(−g) dt′=−g tf\int_0^{t_f}(-g)\,dt' = -g\,t_f が厳密な値です。12g tf2\tfrac{1}{2}g\,t_f^2 は速さではなく変位です。
❌ 惜しい! 2つの項を別々に計算しましょう。まず uln⁡Ru\ln R を求め、そこから g tfg\,t_f を引きます。
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+x+x を上向きにとると Fext,x=−mr(t)gF_{ext,x} = -m_r(t)g で、変数分離をすると2つの独立な部分に分かれます。

dvr,x=−g dt−u dmrmr(t)dv_{r,x} = -g\,dt - u\,\frac{dm_r}{m_r(t)}

発射から燃焼終了まで積分します。

vr,x(tf)=uln⁡R−g tfv_{r,x}(t_f) = u \ln R - g\,t_f

第一項(稼ぎ):

uln⁡R=(2600)(ln⁡6.0)=(2600)(1.7918)=4659 m/su\ln R = (2600)(\ln 6.0) = (2600)(1.7918) = 4659\ \text{m/s}

第二項(税金):

g tf=(9.8)(120)=1176 m/sg\,t_f = (9.8)(120) = 1176\ \text{m/s} vr,x(tf)=4659−1176=3483 m/sv_{r,x}(t_f) = 4659 - 1176 = 3483\ \text{m/s}

時間に関係するのは第二項だけです。同じ推進剤を 60 s60\ \text{s} で燃やせば 4659−588=4071 m/s4659 - 588 = 4071\ \text{m/s} が残ります。質量比は同じで、損失は 588 m/s588\ \text{m/s} 少なくなります。短く激しい第一段が選ばれる理由は、これに尽きます。

正解数:0 / 4