古典力学 · 第14回 · 動画1 · インタラクティブ教材

エネルギーは消えない:エネルギー保存則と系・外界

I重要な公式

公式名称必要なもの
ΔEj≡Ej,final−Ej,initial\Delta E_j \equiv E_{j,\text{final}} - E_{j,\text{initial}}形 jj の変化始状態と終状態
∑j=1NΔEj=0\sum_{j=1}^{N} \Delta E_j = 0エネルギー保存則すべての道筋を数えること
ΔE=ΔEsys+ΔEsur=0\Delta E = \Delta E_{\text{sys}} + \Delta E_{\text{sur}} = 0エネルギー保存則(系と外界)系、境界、外界
ΔEsur=0  ⇒  ΔEsys=0\Delta E_{\text{sur}} = 0 \;\Rightarrow\; \Delta E_{\text{sys}} = 0外界が変化しない場合境界を越える正味のエネルギーがない

ポイント: エネルギーの物理が追跡するのは変化であって、絶対的な合計ではありません。そして帳簿が締まるのは、すべての道筋を数えたときだけです。

II形は変わっても、合計は変わらない

100 J の重力のエネルギーが落下してタービンを回し、最後は電気エネルギーと熱エネルギーになります。

💡 最後に熱エネルギーになる 15 J は、この先しばらくの回で意図的に無視する道筋です。摩擦、そしてのちには熱力学第一法則が、それを帳簿に戻します。

IIIすべての道筋を数えたときだけ帳簿は締まる

和から道筋を一つ落とすと、帳簿は合いません。その残差こそ、見落とされた物理です。

IV系、境界、外界

同じダムに、4通りの境界。物理は変わらず、帳簿のつけ方は自由に選べます。

💡 チャレンジ: ΔEsys=0\Delta E_{\text{sys}} = 0 でありながら、エネルギーが入る向きにも出る向きにも越えていく境界を見つけてください。

V確認クイズ

問1 · 和を締める

条件: ある過程には、エネルギーの道筋がちょうど3つあります。測定の結果は ΔEgrav=−250 J\Delta E_{\text{grav}} = -250\ \text{J}、ΔEkin=+180 J\Delta E_{\text{kin}} = +180\ \text{J} でした。ΔEtherm\Delta E_{\text{therm}} を求めてください。

✅ 正解です! 既知の2つの変化を合わせると 70 J70\ \text{J} 足りません。それを吸収するのが熱エネルギーの道筋です。
❌ 惜しい!符号を確かめてください。 既知の変化の和は −70 J-70\ \text{J} なので、合計がゼロになるためには、残りの道筋は +70 J+70\ \text{J} でなければなりません。
❌ 惜しい! エネルギー保存則は符号つきの変化の和です。大きさどうしを引くのではなく、足し合わせましょう。
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エネルギー保存則によれば、変化の和はゼロです。

∑j=13ΔEj=ΔEgrav+ΔEkin+ΔEtherm=0\sum_{j=1}^{3} \Delta E_j = \Delta E_{\text{grav}} + \Delta E_{\text{kin}} + \Delta E_{\text{therm}} = 0 (−250 J)+(+180 J)+ΔEtherm=0(-250\ \text{J}) + (+180\ \text{J}) + \Delta E_{\text{therm}} = 0 −70 J+ΔEtherm=0⟹ΔEtherm=+70 J-70\ \text{J} + \Delta E_{\text{therm}} = 0 \quad\Longrightarrow\quad \Delta E_{\text{therm}} = +70\ \text{J}

重力のエネルギーは 250 J250\ \text{J} 減りましたが、運動として現れたのはそのうち 180 J180\ \text{J} だけです。残りの +70 J+70\ \text{J} は分子の不規則な運動になりました。

問2 · 閉じた系、開いた系、孤立系?

条件: 密閉した魔法瓶に入った熱いコーヒーが、テーブルの上で冷めていきます。魔法瓶の壁を物質は通りませんが、壁からは少しずつエネルギーが部屋へ漏れます。コーヒーと魔法瓶を合わせて系とするとき、正しいのはどれですか?

✅ 正解です! エネルギーは境界を越えますが、物質は越えません。これがまさに閉じた系の定義です。コーヒーが失った分だけ、部屋が得ます。
❌ 惜しい!孤立系ではありません。 「孤立」であるには、境界をエネルギーがまったく越えないことが必要です。壁から漏れている以上、孤立系ではなく、ΔEsys=0\Delta E_{\text{sys}} = 0 も成り立ちません。
❌ 惜しい! 「開いた系」かどうかは物質が越えるかどうかで決まります。また、エネルギー保存則が成り立つのは系と外界を合わせたものについてであり、系だけについてではありません。
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境界を何が越えるかで分類します。

  • 孤立系 — エネルギーも物質も越えない。
  • 閉じた系 — エネルギーは越えるが、物質は越えない。
  • 開いた系 — エネルギーも物質も越える。

魔法瓶は密閉されていて物質は出入りしませんが、エネルギーは漏れるので、閉じた系です。するとエネルギー保存則から

ΔEsys+ΔEsur=0,\Delta E_{\text{sys}} + \Delta E_{\text{sur}} = 0,

となり、コーヒーが冷めるので ΔEsys<0\Delta E_{\text{sys}} \lt 0、したがって ΔEsur=−ΔEsys>0\Delta E_{\text{sur}} = -\Delta E_{\text{sys}} \gt 0 です。エネルギーは保存されています。境界を越えて部屋へ移っただけです。

問3 · 同じ連なり、あなたが選ぶ境界

条件: ダムの連なりで、貯水池の重力のエネルギーは 100 J100\ \text{J} 減り、タービンと交流発電機はそれぞれエネルギーをそのまま受け渡し(どちらも ΔE=0\Delta E = 0)、家庭の暖房器の熱エネルギーは 100 J100\ \text{J} 増えます。貯水池だけを系とします。

ΔEsys\Delta E_{\text{sys}} はいくらですか?

同じ境界で、ΔEsur\Delta E_{\text{sur}} はいくらですか?

✅ 正解です! 系は 100 J100\ \text{J} を失い、境界の外側全体がちょうど同じだけ得るので、ΔEsys+ΔEsur=0\Delta E_{\text{sys}} + \Delta E_{\text{sur}} = 0 です。
❌ 系を確かめてください。 境界が囲んでいるのは貯水池だけなので、貯水池自身のエネルギーの変化だけを足し合わせます。
❌ それは別の境界での答えです。 ΔEsys=0\Delta E_{\text{sys}} = 0 になるのは連なり全体を囲んだ場合です。貯水池だけなら、実際にエネルギーを失います。
❌ 外界を確かめてください。 タービン、交流発電機、暖房器はすべてこの境界の外側にあり、その変化は 00、00、+100 J+100\ \text{J} です。
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ステップ1 — 境界の内側を足し合わせる。 内側にあるのは貯水池だけです。

ΔEsys=ΔEgrav=−100 J\Delta E_{\text{sys}} = \Delta E_{\text{grav}} = -100\ \text{J}

ステップ2 — 外側を足し合わせる。 タービン、交流発電機、家庭の暖房器です。

ΔEsur=0+0+(+100 J)=+100 J\Delta E_{\text{sur}} = 0 + 0 + (+100\ \text{J}) = +100\ \text{J}

ステップ3 — 原理を確かめる。

ΔEsys+ΔEsur=(−100 J)+(+100 J)=0  ✓\Delta E_{\text{sys}} + \Delta E_{\text{sur}} = (-100\ \text{J}) + (+100\ \text{J}) = 0 \;\checkmark

4つの段階すべてを囲むように境界を引き直すと、ΔEsys=0\Delta E_{\text{sys}} = 0、ΔEsur=0\Delta E_{\text{sur}} = 0 となります。物理は同じで、帳簿のつけ方が違うだけです。

問4 · 合わない帳簿

条件: 核融合反応 p+d→3He+光子p + d \rightarrow {}^{3}\text{He} + \text{光子} で、実験者が原子核の内部エネルギーだけを集計したところ、∑jΔEj=−5.5 MeV≠0\sum_j \Delta E_j = -5.5\ \text{MeV} \neq 0 となりました。エネルギー保存則から何がいえますか?

✅ 正解です! 和がゼロでないことは、エネルギーが消えたことを意味しません。エネルギーの式が間違っているか、数えていない道筋があるということで、ここではその道筋が光子です。
❌ 惜しい! 反応前の陽子と重水素の内部エネルギーはヘリウム3の内部エネルギーより大きく、その差は反応の瞬間に放射として運び去られます。
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原子核の内部エネルギーだけで集計すると

ΔEinternal=E3He−(Ep+Ed)=−5.5 MeV.\Delta E_{\text{internal}} = E_{{}^{3}\text{He}} - \big(E_{p} + E_{d}\big) = -5.5\ \text{MeV}.

となります。合計がゼロでないことは、ちょうど2つの可能性のどちらかを示しています。エネルギーの式が間違っているか、まだ数えていない道筋があるかです。ここでは後者です。反応では光子も放出されるので

ΔEinternal+ΔErad=(−5.5 MeV)+(+5.5 MeV)=0  ✓\Delta E_{\text{internal}} + \Delta E_{\text{rad}} = (-5.5\ \text{MeV}) + (+5.5\ \text{MeV}) = 0 \;\checkmark

同じ論理は研究の最前線でも使われています。加速膨張する宇宙の帳簿はいまのところ合っておらず、それを締めるために提案されている項目がダークエネルギーです。

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