古典力学 · 第14回 · 動画2 · インタラクティブ教材

運動エネルギー:なぜ速さの二乗なのか、運動学に隠れた仕事の式

I重要な公式

公式名称必要なもの
K=12mv2K = \tfrac{1}{2}mv^2運動エネルギー質量と速さ。K≥0K \ge 0 のスカラー
ΔK=12mvf2−12mvi2\Delta K = \tfrac{1}{2}mv_f^2 - \tfrac{1}{2}mv_i^2運動エネルギーの変化始めと終わりの速さ
ax Δx=12vx,f2−12vx,i2a_x\,\Delta x = \tfrac{1}{2}v_{x,f}^2 - \tfrac{1}{2}v_{x,i}^2運動学の恒等式1次元で axa_x が一定
Fx Δx=Kf−KiF_x\,\Delta x = K_f - K_i一定の力での結果ニュートンの第二法則 Fx=maxF_x = ma_x

ポイント: axΔx=Δ ⁣(12v2)a_x\Delta x = \Delta\!\left(\tfrac{1}{2}v^2\right) は純粋な運動学です。両辺に質量 mm をかける、そのたった一手でエネルギーの物理に変わります。

II可視化1 — なぜ速さの二乗なのか

KK は一辺 vv の正方形の面積に比例するので、+10+10 mph ごとに、前より幅の広い L 字が加わります。

III可視化2 — 同じ車を、動く観測者から見る

どの速度も観測者の速さの分だけ小さくなり、2つのエネルギー変化も、その比も一緒に変わります。

IV可視化3 — 加速度 × 変位

12v2\tfrac{1}{2}v^2 を位置に対してグラフにすると、加速度が一定なら傾き axa_x の直線になります。

💡 この恒等式に mm をかけて Fx=maxF_x = ma_x を使うと Fx Δx=Kf−KiF_x\,\Delta x = K_f - K_i となり、変化する力なら ∫xixfFx dx=Kf−Ki\int_{x_i}^{x_f} F_x\,dx = K_f - K_i となります。これが、まもなく仕事と名づけられる量です。

V確認クイズ

問1 · ΔK\Delta K を計算する

条件: 質量 m=1200 kgm = 1200\ \text{kg} の車が、一直線上で vi=8.0 m/sv_i = 8.0\ \text{m/s} から vf=12.0 m/sv_f = 12.0\ \text{m/s} まで速くなります。この車の運動エネルギーの変化を求めてください。

✅ 正解です! ΔK=12(1200)(144−64)=600×80=4.8×104 J\Delta K = \tfrac{1}{2}(1200)(144 - 64) = 600 \times 80 = 4.8 \times 10^4\ \text{J}.
❌ 惜しい! それは 12m(Δv)2=600(4.0)2\tfrac{1}{2}m(\Delta v)^2 = 600(4.0)^2 です。定義では、引き算の前にそれぞれの速さを2乗します。vf2−vi2≠(vf−vi)2v_f^2 - v_i^2 \ne (v_f - v_i)^2 です。
❌ それは KfK_f で、ΔK\Delta K ではありません。 車は速くなる前から 12(1200)(8.0)2=38.4 kJ\tfrac{1}{2}(1200)(8.0)^2 = 38.4\ \text{kJ} をもっていました。それを引きましょう。
❌ 12\tfrac{1}{2} の因子を確かめてください。 計算したのは m(vf2−vi2)m(v_f^2 - v_i^2) です。運動エネルギーには2分の1の因子がつきます。
❌ 惜しい! ΔK=12m(vf2−vi2)\Delta K = \tfrac{1}{2}m\left(v_f^2 - v_i^2\right) に vf2=144v_f^2 = 144 と vi2=64v_i^2 = 64 を入れましょう。
解答を見る

まずそれぞれの速さを2乗し、それから引きます。

ΔK=12mvf2−12mvi2=12m(vf2−vi2)\Delta K = \tfrac{1}{2}mv_f^2 - \tfrac{1}{2}mv_i^2 = \tfrac{1}{2}m\left(v_f^2 - v_i^2\right) ΔK=12(1200 kg)[(12.0)2−(8.0)2] m2/s2\Delta K = \tfrac{1}{2}(1200\ \text{kg})\left[(12.0)^2 - (8.0)^2\right]\ \text{m}^2/\text{s}^2 ΔK=600(144−64)=600(80)=48 000 J=48 kJ\Delta K = 600(144 - 64) = 600(80) = 48\,000\ \text{J} = 48\ \text{kJ}

単位の確認:kg⋅m2/s2=J\text{kg}\cdot\text{m}^2/\text{s}^2 = \text{J}、つまりジュールです。

問2 · 同じ速さの増加、違うエネルギーの増加

条件: 同じ2台のトラックが、それぞれ 10 m/s10\ \text{m/s} ずつ速くなります。トラック1は 1010 から 20 m/s20\ \text{m/s} へ、トラック2は 3030 から 40 m/s40\ \text{m/s} へ。比 ΔK2/ΔK1\Delta K_2 / \Delta K_1 を求めてください。

✅ 正解です! 共通の因子 12m\tfrac{1}{2}m が約分され、(1600−900)/(400−100)=700/300=7/3(1600 - 900)/(400 - 100) = 700/300 = 7/3 が残ります。
❌ これが落とし穴です。 速さの増加が同じでも、エネルギーの増加は同じではありません。KK は vv の2次式なので、速いほうのトラックがはるかに多く得ます。
❌ それは K2f/K2i=402/302K_{2f}/K_{2i} = 40^2/30^2 です。 トラック2の終わりの運動エネルギーを、それ自身の始めのエネルギーと比べています。問われているのは、トラック2の変化をトラック1の変化で割ったものです。
❌ 惜しい! 4=(40/20)24 = (40/20)^2 は終わりの速さの2乗どうしを比べたもので、各トラックの vf2−vi2v_f^2 - v_i^2 ではありません。
❌ 惜しい! 比を省略せずに書きましょう。因子 12m\tfrac{1}{2}m が約分され、(v2f2−v2i2)/(v1f2−v1i2)\left(v_{2f}^2 - v_{2i}^2\right)/\left(v_{1f}^2 - v_{1i}^2\right) が残ります。
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質量が同じなので、12m\tfrac{1}{2}m はすべて約分されます。

ΔK2ΔK1=12m(v2f2−v2i2)12m(v1f2−v1i2)=402−302202−102\frac{\Delta K_2}{\Delta K_1} = \frac{\tfrac{1}{2}m\left(v_{2f}^2 - v_{2i}^2\right)}{\tfrac{1}{2}m\left(v_{1f}^2 - v_{1i}^2\right)} = \frac{40^2 - 30^2}{20^2 - 10^2} =1600−900400−100=700300=73≈2.33= \frac{1600 - 900}{400 - 100} = \frac{700}{300} = \frac{7}{3} \approx 2.33

一般に vf2−vi2=(vf−vi)(vf+vi)v_f^2 - v_i^2 = (v_f - v_i)(v_f + v_i) なので、増加量 vf−vi=10v_f - v_i = 10 が決まっていれば、エネルギーの変化は vf+viv_f + v_i に比例して大きくなります。速さの組が速いほうが、必ず大きくなるのです。

問3 · 力と変位から速さへ

条件: 2.0 kg2.0\ \text{kg} のブロックが摩擦のない面の上を vi=3.0 m/sv_i = 3.0\ \text{m/s} ですべっているとき、運動の向きを向いた一定の力 Fx=4.0 NF_x = 4.0\ \text{N} が、変位 Δx=4.0 m\Delta x = 4.0\ \text{m} にわたってはたらきます。終わりの速さを求めてください。

✅ 正解です! FxΔx=16 J=ΔKF_x\Delta x = 16\ \text{J} = \Delta K なので、vf2=9+16=25v_f^2 = 9 + 16 = 25、vf=5.0 m/sv_f = 5.0\ \text{m/s} です。
❌ KiK_i が抜けています。 FxΔxF_x\Delta x が等しいのは Kf−KiK_f - K_i であって、KfK_f ではありません。ブロックはすでに 12(2.0)(3.0)2=9.0 J\tfrac{1}{2}(2.0)(3.0)^2 = 9.0\ \text{J} をもっていました。
❌ 加速度を確かめてください。 ax=Fx/m=4.0/2.0=2.0 m/s2a_x = F_x/m = 4.0/2.0 = 2.0\ \text{m/s}^2 であって、4.0 m/s24.0\ \text{m/s}^2 ではありません。力を質量で割る必要があります。
❌ Δx\Delta x は時間ではなく変位です。 vf=vi+axtv_f = v_i + a_x t には時間が必要です。変位がわかっているときは axΔx=12vf2−12vi2a_x\Delta x = \tfrac{1}{2}v_f^2 - \tfrac{1}{2}v_i^2 を使います。
❌ 惜しい! FxΔx=Kf−KiF_x\Delta x = K_f - K_i を、Ki=12(2.0)(3.0)2K_i = \tfrac{1}{2}(2.0)(3.0)^2 として使いましょう。
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ステップ1 — 変位にわたって渡されるエネルギー:

Fx Δx=(4.0 N)(4.0 m)=16 JF_x\,\Delta x = (4.0\ \text{N})(4.0\ \text{m}) = 16\ \text{J}

ステップ2 — それを運動エネルギーの変化に等しいとおく:

16 J=12mvf2−12mvi2=(1.0)(vf2−9.0)16\ \text{J} = \tfrac{1}{2}mv_f^2 - \tfrac{1}{2}mv_i^2 = (1.0)\left(v_f^2 - 9.0\right) vf2=9.0+16=25⇒vf=5.0 m/sv_f^2 = 9.0 + 16 = 25 \quad\Rightarrow\quad v_f = 5.0\ \text{m/s}

運動学で確かめる: ax=Fx/m=2.0 m/s2a_x = F_x/m = 2.0\ \text{m/s}^2 なので

axΔx=(2.0)(4.0)=8.0=12(5.0)2−12(3.0)2=12.5−4.5 ✓a_x\Delta x = (2.0)(4.0) = 8.0 = \tfrac{1}{2}(5.0)^2 - \tfrac{1}{2}(3.0)^2 = 12.5 - 4.5\ \checkmark

問4 · だれから見たエネルギー変化か(動画の例題)

条件: 同じまっすぐな道で、車 A は 1010 から 2020 mph へ、車 B は 5050 から 6060 mph へ速くなります。質量はどちらも mm です(動画の例題13.1)。今度は、道に沿って同じ向きに速さ uu で動く基準系から両方を測ります。

u=15u = 15 mph のとき、その観測者は車 A について何を測りますか?

u=25u = 25 mph のとき、車 A の運動エネルギーの変化は?

✅ 正解です! ΔKA∝(vf−vi)(vf+vi−2u)\Delta K_A \propto (v_f - v_i)(v_f + v_i - 2u) は u=15u = 15 mph でゼロになり、それを超えると負になります。
❌ その座標系での速度を確かめてください。 車 A は 10−15=−510 - 15 = -5 mph から 20−15=+520 - 15 = +5 mph へ変わります。速度は違いますが、速さは同じです。
❌ その座標系での速さを確かめてください。 車 A は −15-15 mph から −5-5 mph へ変わるので、その観測者から見ると遅くなっています。
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速さ uu で動く座標系では、どの速度も uu だけ小さくなるので

ΔKA=12m[(vf−u)2−(vi−u)2]=12m (vf−vi)(vf+vi−2u)\Delta K_A = \tfrac{1}{2}m\left[(v_f - u)^2 - (v_i - u)^2\right] = \tfrac{1}{2}m\,(v_f - v_i)\left(v_f + v_i - 2u\right)

u=15u = 15 mph のとき: 10→−510 \to -5 mph、20→+520 \to +5 mph です。どちらの速さも 55 mph なので Kf=KiK_f = K_i となり

ΔKA=12m(10)(30−30)=0\Delta K_A = \tfrac{1}{2}m(10)(30 - 30) = 0

u=25u = 25 mph のとき: 10→−1510 \to -15 mph、20→−520 \to -5 mph なので、速さは 1515 から 55 mph に落ちます。

ΔKA=12m(52−152)=12m(−200)<0\Delta K_A = \tfrac{1}{2}m\left(5^2 - 15^2\right) = \tfrac{1}{2}m(-200) < 0

運動エネルギーは速さからできていて、異なる座標系の観測者は異なる速さを測ります。だから KK も ΔK\Delta K も座標系に依存するのです。(車 B はここでは心配いりません。ΔKB∝1100−20u\Delta K_B \propto 1100 - 20u は u=55u = 55 mph までは正のままです。)

正解数:0 / 4