古典力学 · 第14回 · 動画3 · インタラクティブ教材

正・負・ゼロ:一定の力がする仕事とその符号の意味

I重要な公式

公式名称必要なもの
W=Fx ΔxW = F_x\,\Delta x一定の力がする仕事運動方向の力の成分と、作用点の Δx\Delta x
Wf=−μkN ΔxW^f = -\mu_k N\,\Delta x動摩擦力がする仕事μk\mu_k、垂直抗力 NN、すべる距離
N=mg−Fsin⁡θN = mg - F\sin\theta斜めに押すときの垂直抗力鉛直方向の力のつり合い:Fsin⁡θ+N−mg=0F\sin\theta + N - mg = 0
Wg=−mg ΔyW^g = -mg\,\Delta y重力がする仕事(地表付近、+y+y は上向き)Δy=yf−yi\Delta y = y_f - y_i

ポイント: 符号は約束ごとではなく、物理的な意味をもちます。W>0W > 0 はエネルギーを注ぎ込み、W<0W < 0 はエネルギーを奪い、W=0W = 0(運動に垂直な力、またはまったく動かない作用点)はエネルギーの収支に手をつけません。

II可視化1 — ひとつの力に、2つの効果

押す向きを上に傾けると、前へ進める力は減りますが、台を押しつける力も軽くなり、摩擦力もそれに従います。

💡 チャレンジ: F=2.0 NF = 2.0\ \text{N} のとき、Fsin⁡θF\sin\theta が mg=1.96 Nmg = 1.96\ \text{N} に達する角度を求めてください。そこでカップは浮き上がり、摩擦力は完全に消えます。

III可視化2 — だれの変位を数えるのか

仕事が追いかけるのは、力がはたらく点です。その力を受ける物体全体ではありません。

💡 それでも歩く人は運動エネルギーを得ます。それは地面からではなく筋肉の化学エネルギーから来るもので、地面が渡すエネルギーはちょうどゼロジュールです。

IV可視化3 — 重力と、打ち消し合う軸の選び方

落ちる物体は重力からエネルギーを得て、上がる物体はエネルギーを失います。そして下向きを正と呼んでも、何も変わりません。

V確認クイズ

問1 · 一定の押す力がする仕事

条件: 水平方向の一定の力 12 N12\ \text{N} が、床の上の箱を力と同じ向きに 3.0 m3.0\ \text{m} 押します。その力がする仕事 WW を求めてください。

✅ 正解です! 力の成分も変位も正なので、押す力は箱に 36 J36\ \text{J} を注ぎ込みます。
❌ 惜しい!符号を確かめてください。 力は運動の向きに沿っているので Fx>0F_x > 0、Δx>0\Delta x > 0 であり、その積は正です。
❌ 惜しい! 仕事は力と変位の積 W=Fx ΔxW = F_x\,\Delta x です。力を変位で割るのではありません。
❌ 惜しい! W=Fx ΔxW = F_x\,\Delta x に Fx=+12 NF_x = +12\ \text{N} と Δx=+3.0 m\Delta x = +3.0\ \text{m} を入れましょう。運動方向の成分をもつ力が実際の変位にわたってはたらけば、仕事はゼロになりません。
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+x+x 軸を運動の向きにとります。力は +x+x の向きなので Fx=+12 NF_x = +12\ \text{N}、変位は Δx=+3.0 m\Delta x = +3.0\ \text{m} です。

W=Fx Δx=(12 N)(3.0 m)=36 JW = F_x\,\Delta x = (12\ \text{N})(3.0\ \text{m}) = 36\ \text{J}

単位を確かめましょう。1 N⋅m=1 kg⋅m2⋅s−2=1 J1\ \text{N}\cdot\text{m} = 1\ \text{kg}\cdot\text{m}^2\cdot\text{s}^{-2} = 1\ \text{J} で、K=12mv2K = \tfrac{1}{2}mv^2 と同じ組み合わせです。

W>0W > 0:押す力は箱にエネルギーを注ぎ込みます。

問2 · ただであなたを加速させる力

条件: あなたは静止した状態から前へ歩き出します。地面についた足はすべらず、地面からその足にはたらく静止摩擦力の大きさは 140 N140\ \text{N} で、そのあいだに体は 0.80 m0.80\ \text{m} 前進します。静止摩擦力があなたにする仕事を求めてください。

✅ 正解です! 地面についた足は動かないので、作用点の変位は Δx=0\Delta x = 0 であり、地面はエネルギーをまったく渡しません。
❌ 惜しい!その変位ではありません。 Δx\Delta x は、W=Fx ΔxW = F_x\,\Delta x では作用点の変位を表します。すべらない足はその場にとどまっています。
❌ 惜しい! 力がどこにはたらき、その場所が動くかどうかを考えましょう。足は地面についているので、その変位はゼロです。
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静止摩擦力はあなたを加速させる外力ですが、仕事の式で使うのは、力がはたらく点の変位です。

W=fs Δx作用点=(140 N)(0 m)=0 JW = f_s\,\Delta x_{\text{作用点}} = (140\ \text{N})(0\ \text{m}) = 0\ \text{J}

足はすべりもずれもしないので、地面についているあいだ、その変位はゼロです。体の 0.80 m0.80\ \text{m} は質量中心(重心)の変位であって、接触点の変位ではありません。

では、運動エネルギーはどこから来るのでしょうか? 内側からです。筋肉にたくわえられた化学エネルギーが、運動エネルギーといくらかの熱エネルギーに変わります。摩擦力はあなたの押す力を前向きの加速に向け直しますが、エネルギーを供給してはいません。

問3 · 斜めに押す — 垂直抗力の落とし穴

条件: 2.5 kg2.5\ \text{kg} のブロックを、水平な床の上で 1.5 m1.5\ \text{m} 押します。押す力は一定の 20 N20\ \text{N} で、向きは水平から 37°37\degree 上向きです。μk=0.20\mu_k = 0.20、g=9.8 m⋅s−2g = 9.8\ \text{m}\cdot\text{s}^{-2}、cos⁡37°=0.80\cos 37\degree = 0.80、sin⁡37°=0.60\sin 37\degree = 0.60 とします。動摩擦力がする仕事を求めてください。

✅ 正解です! 上向きの成分 Fsin⁡θ=12 NF\sin\theta = 12\ \text{N} が荷重のおよそ半分を受けもつので、N=12.5 NN = 12.5\ \text{N} となり、摩擦力が奪うのは 3.75 J3.75\ \text{J} だけです。
❌ 惜しい!N=mgN = mg としていませんか。 押す力には 12 N12\ \text{N} の上向きの成分があるので、台が支える力は重さ全体よりずっと小さくなります。
❌ 惜しい! 摩擦力の仕事は −μkN Δx-\mu_k N\,\Delta x で、負になります。Δx>0\Delta x > 0 なのに、力は運動と逆向きだからです。
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ステップ1 — 鉛直方向の力のつり合い。 ブロックは鉛直方向には加速しません。

Fsin⁡θ+N−mg=0⟹N=mg−Fsin⁡θF\sin\theta + N - mg = 0 \quad\Longrightarrow\quad N = mg - F\sin\theta N=(2.5)(9.8)−(20)(0.60)=24.5 N−12 N=12.5 NN = (2.5)(9.8) - (20)(0.60) = 24.5\ \text{N} - 12\ \text{N} = 12.5\ \text{N}

ステップ2 — 摩擦力。

fk=μkN=(0.20)(12.5 N)=2.5 Nf_k = \mu_k N = (0.20)(12.5\ \text{N}) = 2.5\ \text{N}

ステップ3 — その仕事。 摩擦力は運動と逆向きなので fk,x=−2.5 Nf_{k,x} = -2.5\ \text{N}、一方 Δx=+1.5 m\Delta x = +1.5\ \text{m} です。

Wf=−μkN Δx=−(2.5 N)(1.5 m)=−3.75 JW^f = -\mu_k N\,\Delta x = -(2.5\ \text{N})(1.5\ \text{m}) = -3.75\ \text{J}

誤った選択肢にひかれる理由: N=mgN = mg と仮定すると −(0.20)(24.5)(1.5)=−7.35 J-(0.20)(24.5)(1.5) = -7.35\ \text{J} となり、およそ2倍になります。また −24 J-24\ \text{J} は、押す力の仕事 Fcos⁡θ Δx=(16)(1.5)=24 JF\cos\theta\,\Delta x = (16)(1.5) = 24\ \text{J} の符号を反転させたものです。

問4 · 上がって下がるときの重力

条件: 0.50 kg0.50\ \text{kg} のボールを真上に投げると、6.0 m6.0\ \text{m} 上がって最高点に達し、同じ 6.0 m6.0\ \text{m} を落ちて投げた人の手に戻ります。g=9.8 m⋅s−2g = 9.8\ \text{m}\cdot\text{s}^{-2} とし、+y+y を上向きとします。

上がるあいだに重力がする仕事は?

上がって下がる往復全体で重力がする仕事は?

✅ 正解です! 重力は上がるときに 29.4 J29.4\ \text{J} を奪い、下がるときに同じ 29.4 J29.4\ \text{J} を返します。差し引きゼロです。Δy=0\Delta y = 0 だからです。
❌ 上がるときを確かめてください。 力は下向き、運動は上向きです。Δy=+6.0 m\Delta y = +6.0\ \text{m}、Fyg=−mgF^g_y = -mg なので、積は負になります。
❌ 往復全体を確かめてください。 Wg=−mg ΔyW^g = -mg\,\Delta y で使うのは高さの正味の変化だけで、移動した距離ではありません。
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+y+y を上向きにとると、重力の成分は Fyg=−mg=−(0.50)(9.8)=−4.9 NF^g_y = -mg = -(0.50)(9.8) = -4.9\ \text{N} の1つだけで、Wg=Fyg Δy=−mg ΔyW^g = F^g_y\,\Delta y = -mg\,\Delta y です。

上がるとき: Δy=+6.0 m\Delta y = +6.0\ \text{m} なので

Wg=−(4.9 N)(+6.0 m)=−29.4 JW^g = -(4.9\ \text{N})(+6.0\ \text{m}) = -29.4\ \text{J}

力は下向き、運動は上向き。重力はエネルギーを奪い、ボールは遅くなります。

往復全体: ボールは手に戻るので、yf=yiy_f = y_i、Δy=0\Delta y = 0 です。

Wg=−(4.9 N)(0 m)=0 JW^g = -(4.9\ \text{N})(0\ \text{m}) = 0\ \text{J}

上がるときの −29.4 J-29.4\ \text{J} は、落ちるときの +29.4 J+29.4\ \text{J} でちょうど返されます。落ちるときは Δy=−6.0 m\Delta y = -6.0\ \text{m} だからです。

軸の確認: 代わりに下向きを正としてみます。上がるとき Fyg=+4.9 NF^g_y = +4.9\ \text{N}、Δy=−6.0 m\Delta y = -6.0\ \text{m} なので、やはり Wg=−29.4 JW^g = -29.4\ \text{J} となります。軸の選び方は、物理量からは打ち消し合って消えるのです。

正解数:0 / 4