古典力学 · 第14回 · 動画5 · インタラクティブ教材

同じ仕事でも速さが違う:仕事率と運動エネルギーの流れ

I重要な公式

公式名称必要なもの
Pave=ΔWΔt=Fx vave,xP_{\text{ave}} = \dfrac{\Delta W}{\Delta t} = F_x\, v_{\text{ave},x}平均の仕事率時間間隔 Δt\Delta t のあいだにする仕事
P=lim⁡Δt→0ΔWΔt=Fx vxP = \lim\limits_{\Delta t \to 0} \dfrac{\Delta W}{\Delta t} = F_x\, v_x瞬間の仕事率運動方向の力の成分と、その瞬間の速度
1 W=1 J⋅s−11\ \text{W} = 1\ \text{J}\cdot\text{s}^{-1}ワット速さを表す単位(1 kW⋅h1\ \text{kW}\cdot\text{h} はエネルギーの量)
dKdt=Fx vx=P\dfrac{dK}{dt} = F_x\, v_x = P微分形の仕事とエネルギーの関係合力の成分と速度

ポイント:一定の力でも、仕事率が一定とは限りません。vxv_x が増えれば PP も増えます。仕事率には符号があります。駆動する力はエネルギーを送り込み、摩擦はエネルギーを奪い、すべての仕事率の符号つきの和が dK/dtdK/dt です。

II落ちるボール — 速さとともに仕事率も増える

重力は一定なのに、エネルギーを送り込む速さはどんどん増していきます:P(t)=mg2tP(t) = mg^2t は0からまっすぐ増加します。

💡 ここで重力であることは本質的ではありません。静止状態から動き出す物体に任意の一定の力がはたらくとき、P(t)=2Pave(0→t)P(t) = 2P_{\text{ave}}(0 \to t) です。原点を通る直線の平均の高さは、最後の高さの半分だからです。

III仕事率の符号 — 効くのは運動方向の成分だけ

運動と角 θ\theta をなす力の仕事率は P=Fvcos⁡θP = Fv\cos\theta です。エネルギーを送り込むか、奪うか、まったく何もしないかのどれかです。

💡 動画のカップでは、動摩擦力は fk=μkN=0.096 Nf_k = \mu_k N = 0.096\ \text{N} にすぎないので、その仕事率は −0.14 W-0.14\ \text{W} です。後ろ向きに押す力と同じく負の符号ですが、エネルギーを奪う速さはずっと小さくなります。

IVカップを押す — どの力にも自分の仕事率がある

カップにはたらく力はそれぞれ自分の平均の仕事率をもち、その符号つきの和が、運動エネルギーの増える速さです。

ステップ1 — 押す力の仕事

Fx=Fcos⁡30°=(2.0)(0.8660)=1.732 NF_x = F\cos 30\degree = (2.0)(0.8660) = 1.732\ \text{N}

Wa=Fxd=(1.732)(0.50)=0.8660 JW^{a} = F_x d = (1.732)(0.50) = 0.8660\ \text{J}

ステップ2 — 摩擦力の仕事

N=mg−Fsin⁡30°=1.96−1.00=0.96 NN = mg - F\sin 30\degree = 1.96 - 1.00 = 0.96\ \text{N}

fk=μkN=(0.1)(0.96)=0.096 Nf_k = \mu_k N = (0.1)(0.96) = 0.096\ \text{N}

Wf=−fkd=−(0.096)(0.50)=−0.048 JW^{f} = -f_k d = -(0.096)(0.50) = -0.048\ \text{J}

ステップ3 — 押している時間

Wnet=0.8660−0.048=0.818 J=12mvf2W_{\text{net}} = 0.8660 - 0.048 = 0.818\ \text{J} = \tfrac{1}{2}mv_f^2

vf=2.860 m/s⇒vave=12vf=1.430 m/sv_f = 2.860\ \text{m/s} \Rightarrow v_{\text{ave}} = \tfrac{1}{2}v_f = 1.430\ \text{m/s}

Δt=d/vave=0.50/1.430=0.3496 s\Delta t = d / v_{\text{ave}} = 0.50/1.430 = 0.3496\ \text{s}

ステップ4 — 2つの仕事率とその和

Pavea=0.8660/0.3496=2.48 WP^{a}_{\text{ave}} = 0.8660/0.3496 = 2.48\ \text{W}

Pavef=−0.048/0.3496=−0.14 WP^{f}_{\text{ave}} = -0.048/0.3496 = -0.14\ \text{W}

Pavea+Pavef=2.34 W=WnetΔt=ΔKΔtP^{a}_{\text{ave}} + P^{f}_{\text{ave}} = 2.34\ \text{W} = \dfrac{W_{\text{net}}}{\Delta t} = \dfrac{\Delta K}{\Delta t}

V確認クイズ

問1 · 仕事と時間からワットを求める

条件: エレベーターのモーターがかごに 2.4×104 J2.4 \times 10^{4}\ \text{J} の仕事をします。運転時間は 40 s40\ \text{s} です。モーターが送り出す平均の仕事率を求めてください。

✅ 正解です! 毎秒 600 J600\ \text{J} の仕事が送り出されるので、Pave=600 WP_{\text{ave}} = 600\ \text{W} です。
❌ 数値は合っていますが、量が違います。 ワットは速さを表す単位です:600 J/s=600 W600\ \text{J/s} = 600\ \text{W}。ジュールはエネルギーの量を表し、それを送り出す速さは表しません。
❌ 惜しい! 平均の仕事率は、仕事を時間で割ったものです:Pave=ΔW/ΔtP_{\text{ave}} = \Delta W / \Delta t であって、ΔW×Δt\Delta W \times \Delta t や Δt/ΔW\Delta t / \Delta W ではありません。
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平均の仕事率は、仕事をそれにかかった時間で割ったものです:

Pave=ΔWΔt=2.4×104 J40 s=6.0×102 WP_{\text{ave}} = \frac{\Delta W}{\Delta t} = \frac{2.4 \times 10^{4}\ \text{J}}{40\ \text{s}} = 6.0 \times 10^{2}\ \text{W}

単位を見れば計算が確かめられます:J/s=W\text{J}/\text{s} = \text{W}。600 W600\ \text{W} という定格は、モーターがエネルギーをどれだけ速く送り出すかを表すのであって、どれだけ蓄えているかを表すのではありません。量を知りたければ、かけ戻します:(600 W)(40 s)=2.4×104 J(600\ \text{W})(40\ \text{s}) = 2.4 \times 10^{4}\ \text{J}。

問2 · 符号と垂直な力

条件: 木箱が水平な床の上を vx=3.0 m/sv_x = 3.0\ \text{m/s} で右へすべっています。大きさ 4.0 N4.0\ \text{N} の動摩擦力が後ろ向きにはたらき、垂直抗力は 30 N30\ \text{N} です。摩擦力と垂直抗力の瞬間の仕事率を求めてください。

✅ 正解です! 摩擦力は運動に逆らうので、毎秒 12 J12\ \text{J} ずつエネルギーを奪います。垂直抗力は v⃗\vec{v} に垂直なので、何も送り込みません。
❌ 符号を確かめましょう。 摩擦力の運動方向の成分は Fx=−4.0 NF_x = -4.0\ \text{N}、一方 vx=+3.0 m/sv_x = +3.0\ \text{m/s} なので、P=FxvxP = F_x v_x は負です。摩擦力はエネルギーを奪います。
❌ 垂直抗力は仕事をしません。 P=FxvxP = F_x v_x で使うのは、運動方向の成分だけです。垂直抗力は鉛直、速度は水平なので、運動方向の成分は0です。
❌ 惜しい! 瞬間の仕事率は力と速度をかけたもの、P=FxvxP = F_x v_x です。割ることはありません。
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摩擦力。 運動方向の成分は後ろ向きです:Fx=−4.0 NF_x = -4.0\ \text{N}。

Pf=Fxvx=(−4.0 N)(3.0 m/s)=−12 WP_f = F_x v_x = (-4.0\ \text{N})(3.0\ \text{m/s}) = -12\ \text{W}

垂直抗力。 速度に垂直なので、運動方向の成分は0です:

PN=(0)(3.0 m/s)=0P_N = (0)(3.0\ \text{m/s}) = 0

仕事率は符号をもつスカラーです。駆動する力では P>0P > 0(エネルギーが入る)、摩擦力では P<0P < 0(エネルギーが出ていく)、垂直な力では P=0P = 0 です。

問3 · 瞬間と平均(落ちる石)

条件: 0.50 kg0.50\ \text{kg} の石を静かに放し、2.0 s2.0\ \text{s} のあいだ自由落下させます(g=9.8 m/s2g = 9.8\ \text{m/s}^2、空気抵抗なし)。t=2.0 st = 2.0\ \text{s} で重力がする仕事率と、落下全体での平均の仕事率を求めてください。

t=2.0 st = 2.0\ \text{s} での瞬間の仕事率は?

0→2.0 s0 \to 2.0\ \text{s} での平均の仕事率は?

✅ 正解です! P(t)=mg2tP(t) = mg^2t は直線的に増えるので、終わりの値は、放してからの平均のちょうど2倍です。
❌ それは平均の値で、瞬間の値ではありません。 P(t)=mg2tP(t) = mg^2t はその瞬間の値で、0→t0 \to t での平均はその半分です。
❌ 瞬間の仕事率を確かめましょう。 P=Fyvy=(−mg)(−gt)=mg2tP = F_y v_y = (-mg)(-gt) = mg^2t に m=0.50m = 0.50、g=9.8g = 9.8、t=2.0t = 2.0 を代入します。
❌ 平均を確かめましょう。 石は h=12gt2=19.6 mh = \tfrac{1}{2}gt^2 = 19.6\ \text{m} 落ちるので、W=mghW = mgh、Pave=W/tP_{\text{ave}} = W/t です。
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瞬間の仕事率。 静止状態から落ちるので、vy=−gt=−19.6 m/sv_y = -gt = -19.6\ \text{m/s}、Fy=−mg=−4.9 NF_y = -mg = -4.9\ \text{N} です:

P=Fyvy=(−4.9)(−19.6)=96 W(=mg2t=(0.50)(9.8)2(2.0))P = F_y v_y = (-4.9)(-19.6) = 96\ \text{W} \qquad \big(= mg^2t = (0.50)(9.8)^2(2.0)\big)

平均の仕事率。 落ちる距離は h=12gt2=12(9.8)(2.0)2=19.6 mh = \tfrac{1}{2}gt^2 = \tfrac{1}{2}(9.8)(2.0)^2 = 19.6\ \text{m} なので、重力がする仕事は W=mgh=(0.50)(9.8)(19.6)=96 JW = mgh = (0.50)(9.8)(19.6) = 96\ \text{J} です:

Pave=ΔWΔt=96 J2.0 s=48 WP_{\text{ave}} = \frac{\Delta W}{\Delta t} = \frac{96\ \text{J}}{2.0\ \text{s}} = 48\ \text{W}

比はちょうど 22 で、偶然ではありません。P(t)=mg2tP(t) = mg^2t は原点を通る直線で、[0,t][0, t] での平均の高さは最後の高さの半分、つまり Pave=12mg2tP_{\text{ave}} = \tfrac{1}{2}mg^2t です。

問4 · KK の時間変化率としての仕事率

条件: 0.20 kg0.20\ \text{kg} のカップを、1.5 N1.5\ \text{N} の水平な力で机の上を押します。そのあいだ、0.30 N0.30\ \text{N} の動摩擦力が運動に逆らいます。カップが 2.0 m/s2.0\ \text{m/s} で動いている瞬間と、4.0 m/s4.0\ \text{m/s} で動いている瞬間に、運動エネルギーがどれだけの速さで変化しているかを求めてください。

dK/dtdK/dt の値は?(vx=2.0 m/sv_x = 2.0\ \text{m/s} のとき)

dK/dtdK/dt の値は?(vx=4.0 m/sv_x = 4.0\ \text{m/s} のとき。2つの力は同じ)

✅ 正解です! 正味の仕事率は Fnet,xvxF_{\text{net},x}v_x で、Fnet,x=1.2 NF_{\text{net},x} = 1.2\ \text{N} は一定なので、速さを2倍にすると KK が増える速さも2倍になります。
❌ KK は v2v^2 に比例しますが、その変化率はそうではありません。 dK/dt=FxvxdK/dt = F_x v_x は vxv_x について一次なので、vxv_x を2倍にすると dK/dtdK/dt も2倍になり、2.4 W2.4\ \text{W} から 4.8 W4.8\ \text{W} になります。
❌ 合力を使いましょう。 それぞれの力に自分の仕事率(+3.0 W+3.0\ \text{W} と −0.60 W-0.60\ \text{W})があり、その符号つきの和が KK の変化する速さです。
❌ vxv_x への依存のしかたを確かめましょう。 dK/dt=Fnet,xvxdK/dt = F_{\text{net},x}v_x です。力は変わらないので、変化率は速さに比例します。
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vx=2.0 m/sv_x = 2.0\ \text{m/s} では、それぞれの力の仕事率を求めて足します:

Ppush=(1.5)(2.0)=3.0 W,Pfric=(−0.30)(2.0)=−0.60 WP_{\text{push}} = (1.5)(2.0) = 3.0\ \text{W}, \qquad P_{\text{fric}} = (-0.30)(2.0) = -0.60\ \text{W} dKdt=Ppush+Pfric=3.0−0.60=2.4 W\frac{dK}{dt} = P_{\text{push}} + P_{\text{fric}} = 3.0 - 0.60 = 2.4\ \text{W}

同じことですが、合力を直接使ってもかまいません:Fnet,x=1.5−0.30=1.2 NF_{\text{net},x} = 1.5 - 0.30 = 1.2\ \text{N} なので、dK/dt=(1.2)(2.0)=2.4 WdK/dt = (1.2)(2.0) = 2.4\ \text{W} です。

vx=4.0 m/sv_x = 4.0\ \text{m/s} では、力は同じなので

dKdt=(1.2 N)(4.0 m/s)=4.8 W\frac{dK}{dt} = (1.2\ \text{N})(4.0\ \text{m/s}) = 4.8\ \text{W}

これが微分形の仕事とエネルギーの関係です:dKdt=ddt(12mvx2)=mvxdvxdt=maxvx=Fxvx=P\dfrac{dK}{dt} = \dfrac{d}{dt}\big(\tfrac{1}{2}mv_x^2\big) = mv_x\dfrac{dv_x}{dt} = ma_xv_x = F_xv_x = P。いま流れ込んでいる正味の仕事率が、まさにいま KK が増えている速さなのです。

正解数: 0 / 4