古典力学 · 第15回 · 動画3 · インタラクティブ教材

線積分を手なずける:逆二乗の力と三次元の仕事とエネルギー

I重要な公式

公式名称必要なもの
dW=F⃗⋅dr⃗=Fr drdW = \vec{F}\cdot d\vec{r} = F_r\,dr中心力がする微小な仕事r^\hat{r} の向きの力。横向きの項 Fr r dθ (r^⋅θ^)F_r\,r\,d\theta\,(\hat{r}\cdot\hat{\theta}) は r^⋅θ^=0\hat{r}\cdot\hat{\theta} = 0 なので消えます
W=C(1rf−1ri)W = C\left(\dfrac{1}{r_f} - \dfrac{1}{r_i}\right)逆二乗の力がする仕事2つの半径と定数だけ。重力なら C=GmsmC = G m_s m、クーロン力なら C=−q1q24πε0C = -\dfrac{q_1 q_2}{4\pi\varepsilon_0}
∫ifF⃗⋅dr⃗=Kf−Ki\int_i^f \vec{F}\cdot d\vec{r} = K_f - K_i三次元での仕事とエネルギーの関係経路に沿った力と、2つの速さ(K=12mv2K = \tfrac{1}{2}mv^2)
P=F⃗⋅v⃗=dKdtP = \vec{F}\cdot\vec{v} = \dfrac{dK}{dt}瞬間の仕事率ある瞬間の力と速度

ポイント: 逆二乗の2つの結果は、定数が違うだけの同じ式です。そして力がどちらを向いていても、力に押されるままの向きに動く物体は正の仕事を受け取ります。重力が彗星を内側へ引き込む場合も、斥力が2つの同種の電荷を引き離す場合も、どちらも W>0W > 0 です。

II可視化1 — 一歩のどの部分が仕事をするか

中心力が仕事をできるのは一歩の動径方向の部分だけです。横向きの部分は内積が 0 になります。

💡 同じ2つの半径を結ぶ経路なら、ほかのどんな経路でもまったく同じ仕事になります。積分が覚えているのは rir_i と rfr_f だけで、道筋についてはほかに何も覚えていません。

III可視化2 — 引力、斥力と WW の符号

異種の電荷でも同種の電荷でも、力に押されるままの向きに動く電荷はエネルギーを得ます。

💡 k q1q2k\,q_1 q_2 を −Gmsm-G m_s m に置き換えると、このパネルは重力の場合になります。重力は、定数の符号が決して変わらない逆二乗の力です。

IV可視化3 — 仕事率と、仕事をせずに曲げる力

速さを変えるのは、力の速度方向の成分だけです。残りは経路を曲げるだけです。

V確認クイズ

問1 · 太陽の重力がする仕事

条件: 物体が曲がった軌道の弧に沿って、太陽の中心から ri=6.0×1011 mr_i = 6.0\times10^{11}\ \text{m} の位置から rf=2.0×1011 mr_f = 2.0\times10^{11}\ \text{m} の位置まで落ちていきます。Gmsm=3.0×1022 J⋅mG m_s m = 3.0\times10^{22}\ \text{J}\cdot\text{m} として、重力がする仕事 WW を求めてください。

✅ 正解です! 物体は内向きに動き、重力も内向きで、かっこ (1rf−1ri)\left(\tfrac{1}{r_f} - \tfrac{1}{r_i}\right) は正になります。重力は 1.0×1011 J1.0\times10^{11}\ \text{J} の運動エネルギーを注ぎ込みます。
❌ 逆数の順序を確かめてください。 かっこは 1rf−1ri\tfrac{1}{r_f} - \tfrac{1}{r_i} で、終わりの値が先です。rf<rir_f < r_i なので逆数 1rf\tfrac{1}{r_f} のほうが大きく、かっこも仕事も正になります。
❌ 2つめの項が抜けています。 1ri=1.67×10−12 m−1\tfrac{1}{r_i} = 1.67\times10^{-12}\ \text{m}^{-1} は無視できません。かける前に、1rf=5.0×10−12 m−1\tfrac{1}{r_f} = 5.0\times10^{-12}\ \text{m}^{-1} から引いてください。
❌ 力は一定ではありません。 4.0×1011 m4.0\times10^{11}\ \text{m} の変位のあいだずっと FF を終わりの値 Gmsm/rf2=0.75 NGm_sm/r_f^2 = 0.75\ \text{N} とみなすと、大きく見積もりすぎます。落下のほとんどのあいだ力はずっと弱かったのです。だからこそ積分が必要なのです。
❌ 惜しい! 2つの半径の逆数を使って、W=Gmsm(1rf−1ri)W = G m_s m\left(\tfrac{1}{r_f} - \tfrac{1}{r_i}\right) を計算してください。
解答を見る

重力は中心力なので、線積分は Fr=−Gmsm/r2F_r = -Gm_sm/r^2 についての rr の一次元の積分にまとまります。

W=∫rirf(−Gmsmr2)dr=Gmsmr∣rirf=Gmsm(1rf−1ri)W = \int_{r_i}^{r_f}\left(-\frac{G m_s m}{r^2}\right)dr = \left.\frac{G m_s m}{r}\right|_{r_i}^{r_f} = G m_s m\left(\frac{1}{r_f} - \frac{1}{r_i}\right)

数値を代入します。

W=(3.0×1022)(12.0×1011−16.0×1011)=(3.0×1022)(3.33×10−12)=1.0×1011 JW = (3.0\times10^{22})\left(\frac{1}{2.0\times10^{11}} - \frac{1}{6.0\times10^{11}}\right) = (3.0\times10^{22})(3.33\times10^{-12}) = 1.0\times10^{11}\ \text{J}

符号の確認: rf<ri⇒1rf>1ri⇒W>0r_f < r_i \Rightarrow \tfrac{1}{r_f} > \tfrac{1}{r_i} \Rightarrow W > 0。力は内向きで物体も内向きに動くので、重力は正の仕事をします。地面に向かって落ちる石と同じ符号です。

曲がった弧の形は計算に一度も出てこなかったことに注意してください。出てきたのは2つの半径だけです。

問2 · 離れていく2つの同種の電荷

条件: q1=+2.0 μCq_1 = +2.0\ \mu\text{C} を固定したまま、q2=+3.0 μCq_2 = +3.0\ \mu\text{C} が ri=0.10 mr_i = 0.10\ \text{m} から rf=0.30 mr_f = 0.30\ \text{m} まで外向きに動きます。14πε0=9.0×109 N⋅m2/C2\dfrac{1}{4\pi\varepsilon_0} = 9.0\times10^{9}\ \text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2 として、電気力が q2q_2 にする仕事を求めてください。公式には先頭にマイナスの符号があり、ここではかっこの中も負になります。

✅ 正解です! 2つのマイナスが出会います。rf>rir_f > r_i なのでかっこは負で、公式の先頭のマイナスがそれをひっくり返します。電荷を引き離す斥力は正の仕事をするのです。
❌ マイナスの符号が1つ足りません(または多すぎます)。 ここでは q1q2>0q_1q_2 > 0 で、1rf−1ri=3.33−10=−6.67 m−1<0\tfrac{1}{r_f} - \tfrac{1}{r_i} = 3.33 - 10 = -6.67\ \text{m}^{-1} < 0 です。W=−q1q24πε0(1rf−1ri)W = -\tfrac{q_1q_2}{4\pi\varepsilon_0}\left(\tfrac{1}{r_f}-\tfrac{1}{r_i}\right) の先頭のマイナスが、その積を正にします。
❌ かっこには両方の逆数が入ります。 片方の項だけでなく、10.30−10.10=3.33−10=−6.67 m−1\tfrac{1}{0.30} - \tfrac{1}{0.10} = 3.33 - 10 = -6.67\ \text{m}^{-1} を計算してください。
❌ 惜しい! q1q2=+6.0×10−12 C2q_1q_2 = +6.0\times10^{-12}\ \text{C}^2 として、W=−q1q24πε0(1rf−1ri)W = -\dfrac{q_1q_2}{4\pi\varepsilon_0}\left(\dfrac{1}{r_f} - \dfrac{1}{r_i}\right) を使ってください。
解答を見る

クーロンの法則から、r^\hat{r} の向きの力は Fr=14πε0q1q2r2F_r = \dfrac{1}{4\pi\varepsilon_0}\dfrac{q_1q_2}{r^2} で、最初から組み込まれたマイナスの符号はありません。符号は電荷の積の中にあります。中心力で積分がまとまるので、次のようになります。

W=∫rirf14πε0q1q2r2 dr=−14πε0q1q2(1rf−1ri)W = \int_{r_i}^{r_f}\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q_1q_2}{r^2}\,dr = -\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}q_1q_2\left(\frac{1}{r_f} - \frac{1}{r_i}\right)

ステップ1:係数。 q1q2=(2.0×10−6)(3.0×10−6)=6.0×10−12 C2q_1q_2 = (2.0\times10^{-6})(3.0\times10^{-6}) = 6.0\times10^{-12}\ \text{C}^2 なので、

q1q24πε0=(9.0×109)(6.0×10−12)=0.054 J⋅m\frac{q_1q_2}{4\pi\varepsilon_0} = (9.0\times10^{9})(6.0\times10^{-12}) = 0.054\ \text{J}\cdot\text{m}

ステップ2:かっこ。 10.30−10.10=3.33−10=−6.67 m−1\dfrac{1}{0.30} - \dfrac{1}{0.10} = 3.33 - 10 = -6.67\ \text{m}^{-1}

ステップ3:まとめる。

W=−(0.054)(−6.67)=+0.36 JW = -(0.054)(-6.67) = +0.36\ \text{J}

なぜ正なのか? 同種の電荷は反発するので、外向きこそ力が押す向きです。力に押されるままの向きに動く物体は、いつも正の仕事を受け取ります。引力で内向きに動く場合も、斥力で外向きに動く場合も、結論は同じです。

問3 · 円弧のあと急降下:仕事と終わりの速さ

条件: 質量 1000 kg1000\ \text{kg} の探査機が摩擦のないガイドに沿って進みます。ガイドはまず恒星のまわりを一定の半径 ri=3.0×1011 mr_i = 3.0\times10^{11}\ \text{m} で四分の一周し、そのあと動径方向に内向きに rf=1.0×1011 mr_f = 1.0\times10^{11}\ \text{m} まで続きます。ガイドはつねに運動と垂直に押すので、仕事をしません。Gmsm=2.4×1023 J⋅mG m_s m = 2.4\times10^{23}\ \text{J}\cdot\text{m}、初めの速さ vi=2.0×104 m/sv_i = 2.0\times10^{4}\ \text{m/s} として、重力がする仕事と終わりの速さを求めてください。

重力がする仕事の合計は?

終わりの速さは?

✅ 正解です! 四分の一周の部分の寄与はなく、急降下の部分が 1.6×1012 J1.6\times10^{12}\ \text{J} を寄与します。仕事とエネルギーの関係により、それが終わりの速さ 6.0×104 m/s6.0\times10^{4}\ \text{m/s} になります。
❌ 仕事を確かめてください。 円弧の上では rr が一定なので dr=0dr = 0 で、寄与はゼロです。効くのは半径の変化だけで、両方の逆数を入れた Gmsm(1rf−1ri)G m_s m\left(\tfrac{1}{r_f} - \tfrac{1}{r_i}\right) で計算します。
❌ 速さを確かめてください。 定理から Kf=Ki+WK_f = K_i + W です。探査機は初めから動いていましたし、K=12mv2K = \tfrac{1}{2}mv^2 には始めにも終わりにも係数 12\tfrac{1}{2} がつきます。
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ステップ1:四分の一周の部分。 ここでは rr が変わらないので dr=0dr = 0 で、どの点でも dW=Fr dr=0dW = F_r\,dr = 0 です。重力はつねに運動と垂直で、この区間では仕事をしません。

ステップ2:動径方向の急降下。

W=Gmsm(1rf−1ri)=(2.4×1023)(11.0×1011−13.0×1011)W = G m_s m\left(\frac{1}{r_f} - \frac{1}{r_i}\right) = (2.4\times10^{23})\left(\frac{1}{1.0\times10^{11}} - \frac{1}{3.0\times10^{11}}\right) W=(2.4×1023)(6.67×10−12)=1.6×1012 JW = (2.4\times10^{23})(6.67\times10^{-12}) = 1.6\times10^{12}\ \text{J}

ステップ3:仕事とエネルギーの関係。 ガイドは仕事をしないので、重力の仕事が仕事の合計です。

Ki=12(1000)(2.0×104)2=2.0×1011 JK_i = \tfrac{1}{2}(1000)(2.0\times10^{4})^2 = 2.0\times10^{11}\ \text{J} Kf=Ki+W=2.0×1011+1.6×1012=1.8×1012 JK_f = K_i + W = 2.0\times10^{11} + 1.6\times10^{12} = 1.8\times10^{12}\ \text{J}

ステップ4:速さに戻す。

vf=2Kfm=2(1.8×1012)1000=3.6×109=6.0×104 m/sv_f = \sqrt{\frac{2K_f}{m}} = \sqrt{\frac{2(1.8\times10^{12})}{1000}} = \sqrt{3.6\times10^{9}} = 6.0\times10^{4}\ \text{m/s}

KiK_i を落とすと 5.7×104 m/s5.7\times10^{4}\ \text{m/s} に、KK の 12\tfrac{1}{2} を忘れると 4.5×104 m/s4.5\times10^{4}\ \text{m/s} になってしまいます。

問4 · 仕事をまったくしない力

条件: ある瞬間、質量 2.0 kg2.0\ \text{kg} のドローンの速度は v⃗=(6.0 i^−3.0 j^) m/s\vec{v} = (6.0\,\hat{i} - 3.0\,\hat{j})\ \text{m/s} で、ドローンにはたらく合力は F⃗=(4.0 i^+8.0 j^) N\vec{F} = (4.0\,\hat{i} + 8.0\,\hat{j})\ \text{N} です。瞬間の仕事率を求め、ドローンの速さがどうなっているかを答えてください。

瞬間の仕事率は?

この瞬間のドローンの速さは…

✅ 正解です! F⃗⋅v⃗=0\vec{F}\cdot\vec{v} = 0 なので、力は速度と垂直です。経路を大きく曲げながら、速さにはまったく手をつけません。
❌ j^\hat{j} の項の符号に注意してください。 vy=−3.0 m/sv_y = -3.0\ \text{m/s} なので Fyvy=(8.0)(−3.0)=−24 WF_yv_y = (8.0)(-3.0) = -24\ \text{W} です。xx の項を2倍にするのではなく、打ち消します。
❌ それは ∣F⃗∣∣v⃗∣|\vec{F}||\vec{v}| です。 スカラー積には cos⁡θ\cos\theta がつきます。P=∣F⃗∣∣v⃗∣cos⁡θ=(8.94)(6.71)cos⁡90°=0P = |\vec{F}||\vec{v}|\cos\theta = (8.94)(6.71)\cos 90\degree = 0 です。大きさだけをかけると、2つのベクトルが平行だと仮定したことになります。
❌ 惜しい! 成分を使ってください。P=F⃗⋅v⃗=Fxvx+FyvyP = \vec{F}\cdot\vec{v} = F_xv_x + F_yv_y です。
❌ 惜しい! 定理は、力の大きさではなくエネルギーを通して速さを決めます。dK/dt=F⃗⋅v⃗dK/dt = \vec{F}\cdot\vec{v} で、F⃗\vec{F} が大きく v⃗\vec{v} もゼロでないのに、ここではこの割合がゼロです。
解答を見る

ステップ1:仕事率。

P=F⃗⋅v⃗=Fxvx+Fyvy=(4.0)(6.0)+(8.0)(−3.0)=24−24=0 WP = \vec{F}\cdot\vec{v} = F_xv_x + F_yv_y = (4.0)(6.0) + (8.0)(-3.0) = 24 - 24 = 0\ \text{W}

ステップ2:エネルギーの変化率として読む。 dKdt=F⃗⋅v⃗=P=0\dfrac{dK}{dt} = \vec{F}\cdot\vec{v} = P = 0 なので、運動エネルギー、したがって速さは、その瞬間には変化していません。

ステップ3:力が実際にしていること。 どちらのベクトルもゼロではありません。∣v⃗∣=36+9=6.71 m/s|\vec{v}| = \sqrt{36+9} = 6.71\ \text{m/s}、∣F⃗∣=16+64=8.94 N|\vec{F}| = \sqrt{16+64} = 8.94\ \text{N} です。スカラー積が 0 になるのは2つが垂直だからにすぎず、力はすべて速度の向きを変えることに使われます。

a⊥=∣F⃗∣m=8.942.0=4.5 m/s2a_\perp = \frac{|\vec{F}|}{m} = \frac{8.94}{2.0} = 4.5\ \text{m/s}^2

これが三次元の定理の核心です。仕事が決めるのは速さであって、向きではありません。力は、1ジュールも受け渡さないまま、いつまでも経路を曲げ続けることができます。円軌道で重力が仕事をしないのは、まさにこのためです。

正解数:0 / 4