古典力学 · 第16回 · 動画1 · インタラクティブ教材

重力は道筋を問わない:保存力かどうかを見分けるテスト

I重要な公式

公式名称答えに含まれるもの
W=∫pathF⃗⋅dr⃗W = \displaystyle\int_{\text{path}} \vec{F}\cdot d\vec{r}仕事の定義力と、原理的には道筋
Wgrav=−mg (yf−yi)W_{\text{grav}} = -mg\,(y_f - y_i)地表付近で重力がする仕事2つの高さだけ
Wf=−μkNsW^{f} = -\mu_k N s動摩擦がする仕事実際に移動した距離の全体 ss
ΔEsystem+ΔEsurroundings=0\Delta E_{\text{system}} + \Delta E_{\text{surroundings}} = 0エネルギー保存則閉じた系とその2つの状態

ポイント: 2点のあいだの WW が、2点を結ぶどの経路でも同じになるとき、その力は保存力です。重力の答えに含まれるのは yf−yiy_f - y_i だけ、摩擦力の答えに含まれるのは ss です。そして ss こそ、道筋によって自由に変わる量なのです。

II可視化1 — 5つの道筋、1つの答え

2.0 kg2.0\ \text{kg} のボールが 4.0 m4.0\ \text{m} 下がり、横に 6.0 m6.0\ \text{m} 進みます。道筋によって重力の仕事は変わるでしょうか。

III可視化2 — 摩擦力は1メートルごとに請求する

同じ物体、同じ両端、μk=0.25\mu_k = 0.25 です。dd だけ行き過ぎると経路が 2d2d 延び、摩擦力はその分も請求します。

💡 この2つの移動では、重力の仕事はどちらも 00 です。床は水平なので yf=yiy_f = y_i で、どの一歩でも F⃗⊥dr⃗\vec{F}\perp d\vec{r} だからです。経路に依存するのは摩擦力だけです。

IV可視化3 — 請求されるのが高さの変化だけである理由

どんな道筋も水平な段と鉛直な段で近似できます。和の中で生き残るのはどの段でしょうか。

ステップ1 — 道筋を階段に置き換える
どの段も、完全に水平か完全に鉛直です。
dr⃗=dx ı^またはdr⃗=dy ȷ^d\vec{r} = dx\,\hat{\imath} \qquad \text{または} \qquad d\vec{r} = dy\,\hat{\jmath}

V確認クイズ

問1 · 曲がった斜面を下る重力

条件: 2.0 kg2.0\ \text{kg} のボールが、床から 4.0 m4.0\ \text{m} の高さの棚を離れ、長い曲がった斜面に沿って進み、水平に 6.0 m6.0\ \text{m} 離れた床に着きます。g=9.8 m/s2g = 9.8\ \text{m/s}^2 とします。重力がする仕事を求めてください。

✅ 正解です! W=−mg(yf−yi)=−(2.0)(9.8)(0−4.0)=+78.4 JW = -mg(y_f - y_i) = -(2.0)(9.8)(0 - 4.0) = +78.4\ \text{J} です。ボールは最後に低い位置にあり、重力が運動を助けたので、正になります。
❌ 符号を確かめましょう。 ボールは力と同じ下向きに動くので、重力は正の仕事をします。yf−yi=−4.0 my_f - y_i = -4.0\ \text{m} で、−mg(yf−yi)-mg(y_f-y_i) のマイナス符号がその負を打ち消します。
❌ 変位が違います。 19.6×6.019.6 \times 6.0 は水平に進んだ分を請求していますが、ȷ^⋅ı^=0\hat{\jmath}\cdot\hat{\imath} = 0 により水平方向の寄与はすべて消えます。現れるのは Δy\Delta y だけです。
❌ それこそ動画が否定したことです。 重力の仕事は経路によりません。斜面の形は消え、yf−yiy_f - y_i だけが残ります。
❌ 惜しい! W=−mg(yf−yi)W = -mg(y_f - y_i) に、m=2.0 kgm = 2.0\ \text{kg}、g=9.8 m/s2g = 9.8\ \text{m/s}^2、yi=4.0 my_i = 4.0\ \text{m}、yf=0y_f = 0 を代入しましょう。
解答を見る

どの道筋でも力は F⃗=−mg ȷ^\vec{F} = -mg\,\hat{\jmath} なので、一歩 dr⃗=dx ı^+dy ȷ^d\vec{r} = dx\,\hat{\imath} + dy\,\hat{\jmath} の寄与は次のとおりです。

F⃗⋅dr⃗=−mg dy\vec{F}\cdot d\vec{r} = -mg\,dy

どの一歩でも、水平の部分は ȷ^⋅ı^=0\hat{\jmath}\cdot\hat{\imath} = 0 によって消えます。yiy_i から yfy_f まで積分します。

W=∫yiyf−mg dy=−mg (yf−yi)=−(2.0)(9.8)(0−4.0)=78.4 JW = \int_{y_i}^{y_f} -mg\,dy = -mg\,(y_f - y_i) = -(2.0)(9.8)(0 - 4.0) = 78.4\ \text{J}

水平に進んだ 6.0 m6.0\ \text{m} も斜面の曲がり具合も、計算には一度も入ってきません。これこそが「重力は保存力である」ということの中身のすべてです。

問2 · 行き過ぎる道筋での摩擦力

条件: 同じ 2.0 kg2.0\ \text{kg} の物体が、μk=0.25\mu_k = 0.25、N=mg=19.6 NN = mg = 19.6\ \text{N} の水平な床の上をすべります。物体は xix_i から xfx_f へ向けて送り出されます(変位は Δx=6.0 m\Delta x = 6.0\ \text{m})が、d=2.0 md = 2.0\ \text{m} だけ行き過ぎてから xfx_f まですべって戻ります。移動全体で摩擦力がする仕事を求めてください。

✅ 正解です! s2=Δx+2d=10.0 ms_2 = \Delta x + 2d = 10.0\ \text{m} なので、Wf=−μkNs2=−(4.90)(10.0)=−49.0 JW^{f} = -\mu_k N s_2 = -(4.90)(10.0) = -49.0\ \text{J} です。両端はまったく同じなのに、まっすぐな道筋の −29.4 J-29.4\ \text{J} より大きく失っています。
❌ それはまっすぐな道筋の答えです。 摩擦力が請求するのは変位ではなく移動距離です。行き過ぎによって経路が 2d=4.0 m2d = 4.0\ \text{m} 余分に延び、その分も1メートルあたり μkN\mu_k N かかります。
❌ 行き過ぎの分を1回しか数えていません。 物体は行きに dd、さらに帰りにも dd 進むので、s2=Δx+2d=10.0 ms_2 = \Delta x + 2d = 10.0\ \text{m} です。8.0 m8.0\ \text{m} ではありません。
❌ 符号を確かめましょう。 物体が向きを変えると摩擦力も向きを変えるので、行きと帰りのどちらでも運動に逆らいます。どちらの区間の仕事も負で、打ち消し合うものはありません。
❌ 惜しい! まず μkN=0.25×19.6=4.90 N\mu_k N = 0.25 \times 19.6 = 4.90\ \text{N} を求め、次に移動距離の全体 s2s_2 を求めましょう。
解答を見る

ステップ1 — 摩擦力

∣f⃗k∣=μkN=0.25×19.6 N=4.90 N|\vec{f}_k| = \mu_k N = 0.25 \times 19.6\ \text{N} = 4.90\ \text{N}

ステップ2 — 実際に移動した距離 転回点までの行きが Δx+d=8.0 m\Delta x + d = 8.0\ \text{m}、xfx_f までの帰りがさらに d=2.0 md = 2.0\ \text{m} です。

s2=(Δx+d)+d=Δx+2d=6.0+4.0=10.0 ms_2 = (\Delta x + d) + d = \Delta x + 2d = 6.0 + 4.0 = 10.0\ \text{m}

ステップ3 — 仕事 摩擦力は行きでは後ろ向き、帰りでは前向きですが、運動の向きも逆になるので、どの区間でも f⃗k⋅dr⃗<0\vec{f}_k\cdot d\vec{r} < 0 です。

Wf=−μkNs2=−(4.90)(10.0)=−49.0 JW^{f} = -\mu_k N s_2 = -(4.90)(10.0) = -49.0\ \text{J}

まっすぐな道筋では −(4.90)(6.0)=−29.4 J-(4.90)(6.0) = -29.4\ \text{J} です。両端が同じでも仕事が違うので、動摩擦は非保存力です。

問3 · 同じ2つの道筋での2つの力

条件: 2.0 kg2.0\ \text{kg} の物体を、水平な床の上で xix_i から xfx_f まで引きずります。Δx=6.0 m\Delta x = 6.0\ \text{m}、μk=0.25\mu_k = 0.25、N=19.6 NN = 19.6\ \text{N} です。道筋Aはまっすぐで、道筋Bは xfx_f を d=1.5 md = 1.5\ \text{m} だけ行き過ぎてから戻ってきます。それぞれの道筋でそれぞれの力がする仕事を求めてください。

重力がする仕事

摩擦力がする仕事

✅ 正解です! 重力はどの一歩にも垂直なので、どちらの道筋でも仕事は 00 です。摩擦力は経路1メートルあたり 4.90 N4.90\ \text{N} を請求するので、6.0 m6.0\ \text{m} と 9.0 m9.0\ \text{m} に対して −29.4 J-29.4\ \text{J} と −44.1 J-44.1\ \text{J} になります。
❌ 重力を確かめましょう。 床は水平なので yf=yiy_f = y_i で、どの一歩でも −mg ȷ^⋅dx ı^=0-mg\,\hat{\jmath}\cdot dx\,\hat{\imath} = 0 です。運動に垂直な力は、どちらの道筋でも仕事をしません。
❌ 移動距離を確かめましょう。 道筋Bの移動距離は Δx+2d=6.0+3.0=9.0 m\Delta x + 2d = 6.0 + 3.0 = 9.0\ \text{m} です。行き過ぎの分は、行きと帰りで2回請求されます。
解答を見る

重力 運動は水平なので、どこでも dr⃗=dx ı^d\vec{r} = dx\,\hat{\imath} で、力は F⃗=−mg ȷ^\vec{F} = -mg\,\hat{\jmath} です。

F⃗⋅dr⃗=−mg (ȷ^⋅ı^) dx=0\vec{F}\cdot d\vec{r} = -mg\,(\hat{\jmath}\cdot\hat{\imath})\,dx = 0

高さが一度も変わらないので、W=−mg(yf−yi)=0W = -mg(y_f - y_i) = 0 と考えても同じです。どちらの道筋でも 0 J0\ \text{J} です。

摩擦力 μkN=0.25×19.6=4.90 N\mu_k N = 0.25 \times 19.6 = 4.90\ \text{N} です。

sA=6.0 m⇒WAf=−(4.90)(6.0)=−29.4 Js_A = 6.0\ \text{m} \quad\Rightarrow\quad W_A^{f} = -(4.90)(6.0) = -29.4\ \text{J} sB=Δx+2d=6.0+3.0=9.0 m⇒WBf=−(4.90)(9.0)=−44.1 Js_B = \Delta x + 2d = 6.0 + 3.0 = 9.0\ \text{m} \quad\Rightarrow\quad W_B^{f} = -(4.90)(9.0) = -44.1\ \text{J}

2つの道筋の差は −μkN(2d)=−(4.90)(3.0)=−14.7 J-\mu_k N (2d) = -(4.90)(3.0) = -14.7\ \text{J} です。重力は回り道にまったく気づきませんでしたが、摩擦力はその1センチメートルごとに請求しました。

問4 · 往復のテスト

条件: 2.0 kg2.0\ \text{kg} のパックを、粗い斜面の上で、出発点も終点も同じ点 AA である閉じた経路に沿って押していきます。途中、経路の最高点まで 0.60 m0.60\ \text{m} 上ってから、また下りてきます。経路一周の長さの合計は s=8.0 ms = 8.0\ \text{m}、摩擦力の大きさは一定で μkN=4.90 N\mu_k N = 4.90\ \text{N}、mg=19.6 Nmg = 19.6\ \text{N} です。経路を一周するあいだにそれぞれの力がする仕事を求めてください。

一周で重力がする仕事

一周で摩擦力がする仕事

✅ 正解です! 閉じた経路では yf=yiy_f = y_i なので、経路によらない重力の答えは必ず 00 になります。摩擦力は s=8.0 ms = 8.0\ \text{m} に対して請求するので −39.2 J-39.2\ \text{J} です。どんな閉じた経路を一周しても仕事が 0 になること、それが「保存力」の往復版です。
❌ 重力を確かめましょう。 W=−mg(yf−yi)W = -mg(y_f - y_i) で、パックは AA に戻るので、ちょうど yf−yi=0y_f - y_i = 0 です。上りの −11.76 J-11.76\ \text{J} は下りの +11.76 J+11.76\ \text{J} で打ち消され、経路の長さ 8.0 m8.0\ \text{m} はどこにも現れません。
❌ 摩擦力を確かめましょう。 摩擦力はどの瞬間も運動に逆らうので、正の寄与をすることはなく、戻るときに打ち消し合うものもありません。Wf=−μkNs=−(4.90)(8.0)W^{f} = -\mu_k N s = -(4.90)(8.0) です。
解答を見る

重力 重力の仕事は両端だけで決まり、ここでは両端が一致しています。

Wgrav=−mg (yf−yi)=−(19.6)(0)=0 JW_{\text{grav}} = -mg\,(y_f - y_i) = -(19.6)(0) = 0\ \text{J}

区間に分けると、上りで −(19.6)(0.60)=−11.76 J-(19.6)(0.60) = -11.76\ \text{J} 失い、それに対応する下りで +11.76 J+11.76\ \text{J} 戻ってきます。階段の議論で見た「2つずつの打ち消し合い」を、経路全体に当てはめたものです。

摩擦力 大きさは一定で、向きは常に dr⃗d\vec{r} と反対なので、経路のどの微小部分も −μkN ds-\mu_k N\,ds だけ寄与します。

Wf=−μkN∮ds=−μkNs=−(4.90)(8.0)=−39.2 JW^{f} = -\mu_k N \oint ds = -\mu_k N s = -(4.90)(8.0) = -39.2\ \text{J}

これがテストの最も鋭い形です。保存力がどんな閉じた経路を一周してする仕事も 0 です。AA から AA に戻る「2つの経路」の仕事が一致しなければならないからです。摩擦力は1周ごとに 39.2 J39.2\ \text{J} だけこのテストに落ちます。それは熱として出ていき、二度と戻ってこないエネルギーです。

正解数:0 / 4