古典力学 · 第16回 · 動画2 · インタラクティブ教材

貸し出されたエネルギー:保存力が閉じた経路でする仕事はゼロ

I重要な公式

公式名称必要なもの
W=W1+W2=∫ABF⃗c(1)⋅dr⃗1+∫BAF⃗c(2)⋅dr⃗2W = W_1 + W_2 = \displaystyle\int_A^B \vec{F}_c(1)\cdot d\vec{r}_1 + \int_B^A \vec{F}_c(2)\cdot d\vec{r}_2一周の仕事を区間ごとに行きの経路と帰りの経路
∫BAF⃗c(2)⋅dr⃗2=−∫ABF⃗c(2)⋅dr⃗2\displaystyle\int_B^A \vec{F}_c(2)\cdot d\vec{r}_2 = -\int_A^B \vec{F}_c(2)\cdot d\vec{r}_2積分の上端と下端の入れ替え帰りの区間を逆向きにたどると、すべての dr⃗d\vec{r} の向きが反転する
∮F⃗c⋅dr⃗=0\displaystyle\oint \vec{F}_c \cdot d\vec{r} = 0閉じた経路の定理∫ABF⃗c⋅dr⃗\displaystyle\int_A^B \vec{F}_c\cdot d\vec{r} が経路によらないこと
ΔKsys+ΔUsys=0\Delta K_{\text{sys}} + \Delta U_{\text{sys}} = 0閉じた系(内部の保存力だけがはたらく)ΔUsys≡−Wc\Delta U_{\text{sys}} \equiv -W_c

ポイント: 仕事が経路によらないことと、一周の仕事が 0 であることは、同じ主張を2通りに読んだものです。帰りの区間を逆向きにすると、等しい2つの積分が打ち消し合います。ですから保存力は運動エネルギーを貸し出すだけです。一方、空気抵抗のような非保存力は行きと帰りのどちらでも負の仕事をし、その不足分は熱エネルギーとして出ていきます。

II可視化1 — 打ち消し合う2つの区間

閉じた経路を一周する仕事は、行きと帰りの区間がどの道筋をとるかによって変わるでしょうか。

III可視化2 — 往復のエネルギーの帳簿

ボールが 1414 m/s で手を離れ、同じ高さに戻ってきます。運動エネルギーはどれだけ残っているでしょうか。

IV可視化3 — 境界をどこに引くか

同じ飛行に3通りの境界を引きます。どの力が内力になり、帳簿はどう変わるでしょうか。

重力は外力です。

飛行全体で Wext=∮F⃗ g⋅dr⃗=0W_{\text{ext}} = \displaystyle\oint \vec{F}^{\,g}\cdot d\vec{r} = 0 なので、ΔKsys=0\Delta K_{\text{sys}} = 0 です。ボールは投げたときの速さで受け止められます。

ここには ΔUsys\Delta U_{\text{sys}} はありません。ポテンシャルエネルギーは、系の内部にある2つの物体のあいだの相互作用に属するものだからです。

重力は内力で、保存力です。

ΔUsys=−Wc\Delta U_{\text{sys}} = -W_c で、外部からの仕事がないので ΔKsys+ΔUsys=0\Delta K_{\text{sys}} + \Delta U_{\text{sys}} = 0 です。

地球自身の運動エネルギーも境界の内側に入ったので、感じ取れないほどわずかな地球の分も数えられ、そして返されます。

空気抵抗は内力で、非保存力です。

空気抵抗は行きと帰りのどちらでも運動に逆らうので、上がるときも下がるときも Wdrag<0W_{\text{drag}} \lt 0 です。

ΔKsys+ΔUsys=Wdrag=−Ethermal<0\Delta K_{\text{sys}} + \Delta U_{\text{sys}} = W_{\text{drag}} = -E_{\text{thermal}} \lt 0 です。この分は無数の分子に広がってしまい、飛行を何度やり直しても回収できません。

💡 回収できる分には専用の名前がつきます。ΔUsys≡−Wc\Delta U_{\text{sys}} \equiv -W_c、内部ポテンシャルエネルギーです。次の動画では、これを力から直接計算します。

V確認クイズ

問1 · 区間を逆向きにたどる

条件: ある保存力がする仕事は W1=−45 JW_1 = -45\ \text{J} です。これは物体を経路1に沿って AA から BB まで運ぶときの値です。次に物体を別の道筋である経路2に沿って BB から AA まで戻します。帰りの区間で同じ力がする仕事 W2W_2 を求めてください。

✅ 正解です! 経路によらないので、どの道筋でも ∫ABF⃗c⋅dr⃗=−45 J\int_A^B \vec{F}_c\cdot d\vec{r} = -45\ \text{J} です。積分の上端と下端を入れ替えると符号が反転するので、一周の合計は −45+45=0-45 + 45 = 0 になります。
❌ 向きを確かめましょう。 経路によらないので、経路2でも A→BA \to B の積分は −45 J-45\ \text{J} です。しかし物体は B→AB \to A と進むので、すべての dr⃗d\vec{r} の向きが逆になり、符号が反転します。
❌ それは1つの区間ではなく、一周全体の値です。 ∮F⃗c⋅dr⃗=0\oint \vec{F}_c\cdot d\vec{r} = 0 が表すのは往復の W1+W2W_1 + W_2 です。個々の区間の仕事は、ふつう 0 ではありません。
❌ 道筋こそ、問題にならないものです。 保存力の A→BA \to B の仕事は、どの経路でも同じです。それが定義です。
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保存力であるとは、A→BA \to B の積分が道筋を区別しないということです。

∫ABF⃗c(2)⋅dr⃗2=∫ABF⃗c(1)⋅dr⃗1=−45 J\int_A^B \vec{F}_c(2)\cdot d\vec{r}_2 = \int_A^B \vec{F}_c(1)\cdot d\vec{r}_1 = -45\ \text{J}

帰りの区間は同じ積分を逆向きにたどったものなので、上端と下端を入れ替えると符号が反転します。

W2=∫BAF⃗c(2)⋅dr⃗2=−∫ABF⃗c(2)⋅dr⃗2=+45 JW_2 = \int_B^A \vec{F}_c(2)\cdot d\vec{r}_2 = -\int_A^B \vec{F}_c(2)\cdot d\vec{r}_2 = +45\ \text{J}

一周を確かめると W=W1+W2=−45+45=0W = W_1 + W_2 = -45 + 45 = 0 で、∮F⃗c⋅dr⃗=0\oint \vec{F}_c\cdot d\vec{r} = 0 の要求どおりです。

問2 · 空気抵抗があるときの重力の帳簿

条件: ボールを真上に投げ、投げた高さで受け止めます。空気抵抗は無視できず、受け止めるときのボールは目に見えて遅くなっています。飛行全体で重力がする仕事を求めてください。

✅ 正解です! 重力は保存力で、飛行は高さについて閉じた経路なので、∮F⃗ g⋅dr⃗=−mg Δy=0\oint \vec{F}^{\,g}\cdot d\vec{r} = -mg\,\Delta y = 0 です。空気抵抗は重力の帳簿には関係ありません。
❌ 不足分は正しいのですが、帳簿の欄が違います。 運動エネルギーが減ったのは空気抵抗のしわざです。Wg+Wdrag=ΔKW^g + W^{\text{drag}} = \Delta K で、Wg=0W^g = 0、そして行きと帰りのどちらでも Wdrag<0W^{\text{drag}} \lt 0 です。
❌ 空気抵抗が変えるのは軌道であって、重力の仕事の合計ではありません。 Wg=−mg ΔyW^g = -mg\,\Delta y は全体の高さの変化だけで決まり、ボールがどれほどゆっくり、あるいは速く進んでも、それは 0 です。
❌ 惜しい! 重力は上がるときに −mgh-mgh、同じ高さまで落ちてくるときに +mgh+mgh の仕事をします。
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地表付近の重力では F⃗ g=−mg j^\vec{F}^{\,g} = -mg\,\hat{j}、F⃗ g⋅dr⃗=−mg dy\vec{F}^{\,g}\cdot d\vec{r} = -mg\,dy なので、どの道筋でも次のようになります。

Wg=∫−mg dy=−mg (yf−yi)W^g = \int -mg\,dy = -mg\,(y_f - y_i)

最高点 hh まで上がるあいだは Wupg=−mghW^g_{\text{up}} = -mgh、投げた高さまで下りてくるあいだは Wdowng=+mghW^g_{\text{down}} = +mgh です。合計は次のとおりです。

Wg=−mgh+mgh=∮F⃗ g⋅dr⃗=0W^g = -mgh + mgh = \oint \vec{F}^{\,g}\cdot d\vec{r} = 0

空気抵抗は hh を低くし、ボールを遅くしますが、重力の欄に 0 でない数を書き込むことはできません。この飛行のエネルギーの収支は ΔK=Wg+Wdrag=0+Wdrag<0\Delta K = W^g + W^{\text{drag}} = 0 + W^{\text{drag}} \lt 0 となります。受け止めたときに足りないエネルギーは、すべて空気抵抗によって散逸したのです。

問3 · 実際の投げ上げの収支を調べる

条件: 質量 m=0.50 kgm = 0.50\ \text{kg} のボールが 12 m/s12\ \text{m/s} で真上に手を離れ、投げた高さに 10 m/s10\ \text{m/s} で戻ってきます。往復で重力がする仕事と、発生した熱エネルギーを求めてください。

往復で重力がする仕事

空気抵抗によって発生した熱エネルギー

✅ 正解です! 重力の欄は 0 で締めくくられ、運動エネルギーの不足分 11 J11\ \text{J} がそのまま散逸した分です。
❌ 重力の欄を確かめましょう。 Wg=−mg ΔyW^g = -mg\,\Delta y で、ボールは出発した高さで終わるので、飛行全体で Δy=0\Delta y = 0 です。
❌ 運動エネルギーを確かめましょう。 12mv2\tfrac{1}{2}mv^2 の値どうしを引き算します。速さの差を2乗してはいけません。また、係数 12m=0.25 kg\tfrac{1}{2}m = 0.25\ \text{kg} を落とさないようにしましょう。
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ステップ1 — 重力 飛行は同じ高さで始まり同じ高さで終わるので、Δy=0\Delta y = 0 で、次のようになります。

Wg=−mg Δy=∮F⃗ g⋅dr⃗=0 JW^g = -mg\,\Delta y = \oint \vec{F}^{\,g}\cdot d\vec{r} = 0\ \text{J}

ステップ2 — 運動エネルギーの収支

Ki=12(0.50)(12)2=36 J,Kf=12(0.50)(10)2=25 JK_i = \tfrac{1}{2}(0.50)(12)^2 = 36\ \text{J}, \qquad K_f = \tfrac{1}{2}(0.50)(10)^2 = 25\ \text{J} ΔK=25−36=−11 J\Delta K = 25 - 36 = -11\ \text{J}

ステップ3 — 損失の割り当て はたらく力は重力と空気抵抗だけなので、ΔK=Wg+Wdrag\Delta K = W^g + W^{\text{drag}} です。

−11 J=0+Wdrag  ⟹  Wdrag=−11 J-11\ \text{J} = 0 + W^{\text{drag}} \;\Longrightarrow\; W^{\text{drag}} = -11\ \text{J} Ethermal=−Wdrag=11 JE_{\text{thermal}} = -W^{\text{drag}} = 11\ \text{J}

よくある間違い

  • 12m(vi−vf)2=0.25(2)2=1.0 J\tfrac{1}{2}m(v_i - v_f)^2 = 0.25(2)^2 = 1.0\ \text{J} — 2乗の差ではなく、差の2乗を計算している。
  • 12(vi2−vf2)=22 J\tfrac{1}{2}(v_i^2 - v_f^2) = 22\ \text{J} — 質量を忘れている。
  • vi2−vf2=44 Jv_i^2 - v_f^2 = 44\ \text{J} — 12m\tfrac{1}{2}m をまるごと落としている。

問4 · 一周しても 0 にならない経路

条件: 水平な台の上で、物体を長方形の閉じた経路(周の長さの合計 4.0 m4.0\ \text{m})に沿って1周押していきます。大きさが一定で 5.0 N5.0\ \text{N} の動摩擦力がはたらきます。一周で摩擦力と重力がする仕事を求めてください。

一周で摩擦力がする仕事

一周で重力がする仕事

✅ 正解です! 2つの力、1つの閉じた経路、そして正反対の結論です。摩擦力は移動距離を請求し、重力は全体の高さの変化だけを請求します。
❌ この定理には前提があります。 ∮F⃗⋅dr⃗=0\oint \vec{F}\cdot d\vec{r} = 0 が成り立つのは保存力の場合です。摩擦力は経路に依存し、それがはっきり表れるのがまさに閉じた経路なのです。
❌ 大きさと符号を確かめましょう。 摩擦力はどの部分でも運動に逆らうので、それぞれの寄与は −f ds-f\,ds で、合計は −f-f に経路の長さ全体をかけたものです。
❌ 重力の向きと経路の関係を確かめましょう。 台は水平なので、F⃗ g\vec{F}^{\,g} はどの変位にも垂直です。そのうえ、全体の高さの変化も 0 です。
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摩擦力 動摩擦力はどの瞬間も dr⃗d\vec{r} と反対を向くので、f⃗⋅dr⃗=−f ds\vec{f}\cdot d\vec{r} = -f\,ds となり、寄与は打ち消し合わずに積み重なります。

Wf=∮f⃗⋅dr⃗=−f∮ds=−(5.0 N)(4.0 m)=−20 JW^f = \oint \vec{f}\cdot d\vec{r} = -f \oint ds = -(5.0\ \text{N})(4.0\ \text{m}) = -20\ \text{J}

進む向きを逆にしても変わりません。dr⃗d\vec{r} と f⃗\vec{f} の両方の符号が反転するので、どちら向きでも WfW^f は負です。この経路依存性こそ、摩擦力が非保存力である理由です。

重力 水平な台の上では F⃗ g=−mg j^\vec{F}^{\,g} = -mg\,\hat{j} はどの dr⃗d\vec{r} にも垂直なので、どの区間の寄与も 0 です。同じことですが、一周で Δy=0\Delta y = 0 です。

Wg=−mg Δy=0 JW^g = -mg\,\Delta y = 0\ \text{J}

教訓 閉じた経路で仕事が 0 になると保証されるのは、保存力の場合だけです。摩擦力が奪った 20 J20\ \text{J} は物体と台の熱エネルギーになり、何周余分に回っても回収できません。

正解数:0 / 4