古典力学 · 第16回 · 動画4 · インタラクティブ教材

一つの手順で三つのポテンシャルエネルギー:ゼロ点は自分で選ぶ

I重要な公式

公式名称必要なもの
ΔU=−Wc=−∫ABF⃗c⋅dr⃗\Delta U = -W_c = -\displaystyle\int_A^B \vec{F}_c \cdot d\vec{r}内部の保存力によるポテンシャルエネルギー力と、2つの配置 AA、BB
Ug(y)=mgy,Ug(0)≡0U^g(y) = mgy, \qquad U^g(0) \equiv 0地表近くの重力選んだゼロ点からの高さ yy
Us(x)=12kx2,Us(0)≡0U^s(x) = \tfrac{1}{2}kx^2, \qquad U^s(0) \equiv 0理想的なばね自然長からの変位 xx
UG(r)=−Gm1m2r,UG(∞)≡0U^G(r) = -\dfrac{Gm_1m_2}{r}, \qquad U^G(\infty) \equiv 0万有引力中心間の距離 rr

ポイント: 物理的な意味をもつのは差だけです。UU を U+CU + C に置きかえても、どの Uf−UiU_f - U_i も変わらないので、ポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)のゼロ点は帳簿のつけ方の選択です。項が1つ消える基準点や、自然な配置を表す基準点を選び、どれを選んだかをはっきり述べましょう。

II可視化1 — 1つの手順、3つの力

同じ五段階の手順を3つの異なる内力に当てはめると、見た目には無関係な3つの関数が得られます。

III可視化2 — ゼロ点をずらす

基準の配置を動かすと、UU の値はすべて変わります。では、差は変わるでしょうか?

💡 測定できるものは何も変わらないので、数値だけではまだ答えになりません。「U=12 JU = 12\ \text{J}」は、どこを U=0U = 0 とするかを述べるまで意味をもちません。

IV可視化3 — 無限遠が自然なゼロ点である理由

基準の距離を外へ広げていくと、ΔUG\Delta U^G の項の1つがまるごと消えていきます。

V確認クイズ

問1 · 地表近くの重力に手順を当てはめる

条件:3.0 kg3.0\ \text{kg} の本を、床から棚まで 1.2 m1.2\ \text{m} 持ち上げます。Ug=0U^g = 0 は床に選び、g=9.8 m/s2g = 9.8\ \text{m/s}^2 とします。地球と本からなる系の ΔUg\Delta U^g を求めてください。

✅ 正解です! 本を持ち上げると地球と本の配置にエネルギーがたくわえられるので、ΔUg\Delta U^g は正です。
❌ それは ΔUg\Delta U^g ではなく WgW^g です。 持ち上げるあいだに重力がする仕事は −35.3 J-35.3\ \text{J} です。手順の第4段階でその符号を反転して、ΔUg=−Wg=+35.3 J\Delta U^g = -W^g = +35.3\ \text{J} となります。
❌ 惜しい! 手順から ΔUg=mg Δy\Delta U^g = mg\,\Delta y が得られます。係数 12\tfrac12 はつかず、gg も省けません。
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第1〜第3段階で、上昇のあいだに一定の力 F⃗g=−mg j^\vec{F}^g = -mg\,\hat{j} がする仕事が求まります。

Wg=∫yiyf(−mg) dy=−mg (yf−yi)=−(3.0)(9.8)(1.2)=−35.28 JW^g = \int_{y_i}^{y_f}(-mg)\,dy = -mg\,(y_f - y_i) = -(3.0)(9.8)(1.2) = -35.28\ \text{J}

第4段階で、その符号を反転します。

ΔUg=−Wg=mg Δy=(3.0)(9.8)(1.2)=35.28≈35.3 J\Delta U^g = -W^g = mg\,\Delta y = (3.0)(9.8)(1.2) = 35.28 \approx 35.3\ \text{J}

係数 12\tfrac12 がつくのは、変位とともに力が大きくなるばねのほうです。地表近くの重力は一定なので、積分は単に mgmg に上がった高さをかけたものになります。

問2 · ゼロ点は宣言したところにある

条件:2.0 kg2.0\ \text{kg} のブロックが床の上に静止しています。Ug=0U^g = 0 となる場所を、床から 3.0 m3.0\ \text{m} 上の天井と宣言します(g=9.8 m/s2g = 9.8\ \text{m/s}^2)。床の上のブロックの UgU^g を求めてください。

✅ 正解です! 選んだゼロ点より下では UgU^g は負になります。負のポテンシャルエネルギーは、まったくふつうのことです。
❌ 床が自動的にゼロ点になるわけではありません。 ここではゼロ点を天井と宣言しているので、ブロックはそこから 3.0 m3.0\ \text{m} 下にあります。
❌ 大きさは合っていますが、符号が逆です。 Ug=mg(y−yref)U^g = mg(y - y_{\text{ref}}) で、y−yref=0−3.0=−3.0 my - y_{\text{ref}} = 0 - 3.0 = -3.0\ \text{m} です。
❌ 惜しい! 高さは宣言したゼロ点から測ります。Ug=mg (y−yref)U^g = mg\,(y - y_{\text{ref}}) です。
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ゼロ点を yref=3.0 my_{\text{ref}} = 3.0\ \text{m} に選ぶということは、Ug(y)=mg (y−yref)U^g(y) = mg\,(y - y_{\text{ref}}) とすることです。床の上では y=0y = 0 なので

Ug(0)=(2.0)(9.8)(0−3.0)=−58.8 JU^g(0) = (2.0)(9.8)(0 - 3.0) = -58.8\ \text{J}

ふつうの選び方 yref=0y_{\text{ref}} = 0 と比べてみましょう。この場合は Ug(0)=0U^g(0) = 0、Ug(3.0)=+58.8 JU^g(3.0) = +58.8\ \text{J} です。2つの取り決めは、どこでも定数 C=−58.8 JC = -58.8\ \text{J} だけ違います。そして差はすべて同じです。ブロックを天井まで持ち上げるのに必要なエネルギーは、どちらの取り決めでも +58.8 J+58.8\ \text{J} です。

問3 · 縮んだ状態から伸びた状態へ

条件:ばね定数 k=250 N/mk = 250\ \text{N/m} のばねが、0.12 m0.12\ \text{m} 縮んだ状態から 0.20 m0.20\ \text{m} 伸びた状態になります。Us=0U^s = 0 は自然長に選びます。ΔUs\Delta U^s と、ばねの力がする仕事 WsW^s を求めてください。

ポテンシャルエネルギーの変化はいくらですか?

ばねの力がした仕事はいくらですか?

✅ 正解です! ばねは 3.2 J3.2\ \text{J} をたくわえます。手順の第4段階から、ばねの力がした仕事はちょうど −3.2 J-3.2\ \text{J} です。
❌ 12k(Δx)2\tfrac12 k(\Delta x)^2 と 12k(xf2−xi2)\tfrac12 k(x_f^2 - x_i^2) は違います。 UsU^s は二次関数なので、2つの2乗を別々に計算してから引き算しなければなりません。
❌ 縮めても負のエネルギーがたくわえられるわけではありません。 Us=12kx2U^s = \tfrac12 kx^2 は xx について偶関数です。x=−0.12 mx = -0.12\ \text{m} でばねはすでに +1.8 J+1.8\ \text{J} をたくわえているので、このエネルギーは足すのではなく引くのです。
❌ 両端を確かめてください。 xi=−0.12 mx_i = -0.12\ \text{m}、xf=+0.20 mx_f = +0.20\ \text{m} を ΔUs=12k(xf2−xi2)\Delta U^s = \tfrac12 k(x_f^2 - x_i^2) に代入します。
❌ 符号を確かめてください。 手順の第4段階は ΔU=−W\Delta U = -W なので、Ws=−ΔUsW^s = -\Delta U^s です。
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ゼロ点を自然長に選ぶと Us(x)=12kx2U^s(x) = \tfrac12 kx^2 です。縮みは xi=−0.12 mx_i = -0.12\ \text{m} と数えますが、xx は2乗されるので符号は関係ありません。

Uis=12(250)(−0.12)2=1.8 J,Ufs=12(250)(0.20)2=5.0 JU^s_i = \tfrac12(250)(-0.12)^2 = 1.8\ \text{J}, \qquad U^s_f = \tfrac12(250)(0.20)^2 = 5.0\ \text{J} ΔUs=5.0−1.8=3.2 J\Delta U^s = 5.0 - 1.8 = 3.2\ \text{J}

同じことを、手順から直接求めると

ΔUs=12k (xf2−xi2)=125 (0.0400−0.0144)=3.2 J\Delta U^s = \tfrac12 k\,(x_f^2 - x_i^2) = 125\,(0.0400 - 0.0144) = 3.2\ \text{J}

そして第4段階を逆向きに読むと、ばねの力そのものがした仕事が得られます。

Ws=−ΔUs=−3.2 JW^s = -\Delta U^s = -3.2\ \text{J}

当然、負になります。この動きのあいだずっと、ばねは押し戻していたからです。

問4 · 引き合う2つの質量を引き離す

条件:中心間の距離 rr にある2つの質量を、3r3r まで引き離します。UG(r)=−Gm1m2rU^G(r) = -\dfrac{Gm_1m_2}{r}(UG(∞)≡0U^G(\infty) \equiv 0)を使います。ΔUG\Delta U^G を求めてください。さらに、ゼロ点を別の場所にするとそれがどうなるかを考えてください。

ポテンシャルエネルギーの変化はいくらですか?

次に、ゼロ点を別の距離に移します。その変化はどうなりますか?

✅ 正解です! 引き合う質量を引き離すとエネルギーがたくわえられます。また、ゼロ点を動かすと2つの UU の値が同じ定数だけずれるので、差はそのまま残ります。
❌ それは変化ではなく UG(3r)U^G(3r) です。 ポテンシャルエネルギーの値は、ポテンシャルエネルギーの差ではありません。さらに UG(r)U^G(r) を引く必要があります。
❌ 惜しい、引き算が逆です。 計算したのは Ui−UfU_i - U_f です。引き合う質量を引き離せばエネルギーがたくわえられるはずなので、ΔUG>0\Delta U^G > 0 です。
❌ 2つの項を大きさとして足しています。 符号を残してください。どちらの UU の値も負で、−13−(−1)=+23-\tfrac13 - (-1) = +\tfrac23 です(単位は Gm1m2/rGm_1m_2/r)。
❌ 惜しい! 両方の距離で UGU^G を求めて引き算します。ΔUG=UG(3r)−UG(r)\Delta U^G = U^G(3r) - U^G(r) です。
❌ 惜しい! 新しいゼロ点は UU のいたるところに同じ定数 CC を1つ足すだけで、CC は Uf−UiU_f - U_i から消えます。
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前半 — ゼロ点を無限遠にとったときの変化:

UG(r)=−Gm1m2r,UG(3r)=−Gm1m23rU^G(r) = -\frac{Gm_1m_2}{r}, \qquad U^G(3r) = -\frac{Gm_1m_2}{3r} ΔUG=UG(3r)−UG(r)=−Gm1m23r+Gm1m2r=2Gm1m23r\Delta U^G = U^G(3r) - U^G(r) = -\frac{Gm_1m_2}{3r} + \frac{Gm_1m_2}{r} = \frac{2Gm_1m_2}{3r}

当然、正になります。引力に逆らって引っぱる必要があり、そのエネルギーがいまは二物体の組の配置にたくわえられているのです。

後半 — 別のゼロ点: 2r2r で UG=0U^G = 0 と宣言すると、関数は次のように置きかわります。

U~G(ρ)=−Gm1m2ρ+Gm1m22r=UG(ρ)+C\tilde{U}^G(\rho) = -\frac{Gm_1m_2}{\rho} + \frac{Gm_1m_2}{2r} = U^G(\rho) + C

ここで、定数は C=Gm1m2/(2r)C = Gm_1m_2/(2r) の1つだけです。すると

U~G(3r)−U~G(r)=(UG(3r)+C)−(UG(r)+C)=2Gm1m23r\tilde{U}^G(3r) - \tilde{U}^G(r) = \big(U^G(3r) + C\big) - \big(U^G(r) + C\big) = \frac{2Gm_1m_2}{3r}

定数は打ち消し合います。個々の値は変わります(この取り決めでは UG(2r)=0U^G(2r) = 0 で、UG(r)U^G(r) は負)が、測定できる予言は何も変わりません。だからこそ、ゼロ点を自由に選んでよいのです。

正解数:0 / 4