古典力学 · 第19回 · 動画4 · インタラクティブ教材

重ねたスーパーボール:速さは三倍、高さは九倍

I重要な公式

公式名称得られるもの
va=2ghiv_a = \sqrt{2gh_i}hih_i からの落下2つのボールが床に届くときの速さ
v′=v−uv' = v - u慣性系の取りかえuu で上昇する観測者から見た速度。差 v1−v2v_1 - v_2 はどれも変わらない
vb=2va+va=3vav_b = 2v_a + v_a = 3v_a上昇する壁での跳ね返り2つのボールの衝突直後のボール1の速さ
hf=vb22g=9hih_f = \dfrac{v_b^2}{2g} = 9h_i跳ね返った後の上昇高さは速さの2乗に比例して増える

ポイント: 相対速度はどの慣性系でも同じなので、ボール2と一緒に上向きに動いてみましょう。重いボールは静止した壁になり、弾性衝突での跳ね返りは 2va2v_a の単純な反転になります。そこに基準系自身の vav_a を足し戻すと 3va3v_a が得られます。

II可視化1 — 1回の落下と5つの状態

5つの状態をたどると、高さ hih_i で静止していた2つのボールが、高さ 9hi9h_i で静止するボール1だけの状態へと移ります。

III可視化2 — 観測者の選び方

相対速度はどの慣性系でも同じです。基準系を一つうまく選ぶと、ボール2は静止した壁になります。

💡 壁とみなせるのは m2≫m1m_2 \gg m_1 のときです。質量比が有限だと衝突でボール2の速度も変わるので、はじめにボール2が静止して見えた基準系は、衝突の後はもうボール2の静止系ではありません。

IV可視化3 — 厳密な結果と、一方がはるかに重い極限

弾性衝突の厳密な結果が9倍をほぼそのまま与えるには、ボール1はどれだけ軽くなければならないでしょうか?

v1i=−vav_{1i} = -v_a、v2i=+vav_{2i} = +v_a とした一次元の弾性衝突の厳密な結果
vb=m1−m2m1+m2 (−va)+2m2m1+m2 (va)=3m2−m1m1+m2 vav_b = \frac{m_1 - m_2}{m_1 + m_2}\,(-v_a) + \frac{2m_2}{m_1 + m_2}\,(v_a) = \frac{3m_2 - m_1}{m_1 + m_2}\,v_a
一方がはるかに重い極限
hfhi=(vbva)2=(3−m1/m21+m1/m2)2かつm1m2→0  ⟹  hfhi→32=9\frac{h_f}{h_i} = \left(\frac{v_b}{v_a}\right)^{2} = \left(\frac{3 - m_1/m_2}{1 + m_1/m_2}\right)^{2} \quad\text{かつ}\quad \frac{m_1}{m_2} \to 0 \;\Longrightarrow\; \frac{h_f}{h_i} \to 3^2 = 9

💡 実際のスーパーボールは跳ねるたびにエネルギーを数パーセント失うので、m1/m2=1/10m_1/m_2 = 1/10 の組では、この厳密な曲線が約束する 6.95 hi6.95\,h_i にさえ届きません。

V確認クイズ

問1 · 出ていく速さと上がる高さ

条件: 同じように重ねた2つのボールを hi=0.80 mh_i = 0.80\ \text{m} から落とします。g=9.8 m/s2g = 9.8\ \text{m/s}^2、m2≫m1m_2 \gg m_1 で、衝突はすべて弾性衝突です。2つのボールの衝突直後のボール1の速さと、ボール1が達する高さを求めてください。

✅ 正解です! va=2(9.8)(0.80)=3.96 m/sv_a = \sqrt{2(9.8)(0.80)} = 3.96\ \text{m/s} で、ボール1は 3va=11.9 m/s3v_a = 11.9\ \text{m/s} で離れ、hf=vb2/2g=7.2 m=9hih_f = v_b^2/2g = 7.2\ \text{m} = 9h_i となります。
❌ それは床が固定されている場合の答えです。 ボール1は地面で跳ね返るのではありません。ぶつかる時点ですでに vav_a で上向きに動いているボール2で跳ね返るのです。
❌ 2va2v_a は、上昇する基準系で見たボール1の速さです。 その基準系自体が vav_a で上昇しているので、地上の観測者はそれを足し戻します:2va+va=3va2v_a + v_a = 3v_a。
❌ 速さは正しいのですが、高さが違います。 hf=vb2/2gh_f = v_b^2/2g なので、速さを3倍にすると高さは 33 倍ではなく 32=93^2 = 9 倍になります。
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ステップ1 — 落下で尺度が決まる。 手を離してから床に届くまで力学的エネルギーは一定なので、12mva2=mghi\tfrac{1}{2}mv_a^2 = mgh_i です:

va=2ghi=2(9.8)(0.80)=3.96 m/sv_a = \sqrt{2gh_i} = \sqrt{2(9.8)(0.80)} = 3.96\ \text{m/s}

ステップ2 — ボール2と一緒に上がる。 先にボール2が跳ね返り、vav_a で上向きに動きます。ボール1はまだ vav_a で下向きに動いています。u=vau = v_a で上昇する基準系ではボール2は静止していて、ボール1は次の速度で近づいてきます。

v1′=(−va)−(va)=−2vav_1' = (-v_a) - (v_a) = -2v_a

m2≫m1m_2 \gg m_1 なのでボール2は動かない壁であり、弾性衝突での跳ね返りはこの速度を反転させるだけです:v1′→+2vav_1' \to +2v_a。

ステップ3 — 地上に戻る。 基準系の速度を足し戻します:

vb=2va+va=3va=3(3.96)=11.9 m/sv_b = 2v_a + v_a = 3v_a = 3(3.96) = 11.9\ \text{m/s}

ステップ4 — 上昇。 ボール1と地球を系にとると、ΔK+ΔU=0\Delta K + \Delta U = 0 です:

hf=vb22g=(11.88)22(9.8)=7.2 m=9hih_f = \frac{v_b^2}{2g} = \frac{(11.88)^2}{2(9.8)} = \mathbf{7.2\ \text{m}} = 9h_i

確認: 9hi=9(0.80)=7.2 m9h_i = 9(0.80) = 7.2\ \text{m} ✓。9倍という因子は hih_i によりません。

問2 · 「弾性衝突なら同じ速さで返る」という反論

条件: ある学生が「衝突は弾性衝突で、ボール1は vav_a でぶつかるのだから、vav_a で離れてちょうど hih_i まで戻るはずだ」と主張しています。この誤りを正しく指摘している文を選んでください。

✅ 正解です! 上昇する壁は、ぶつかってきたときより速くボールを返します。ボール自身の vav_a、近づくときの壁の vav_a、そして離れるときにもう一度壁の vav_a が加わり、合わせて 3va3v_a です。
❌ ここでの衝突はすべて弾性衝突です。 しかもエネルギーは逆向きに流れます。ボール2は 4m1va24m_1v_a^2 を失い、それがちょうどボール1の得る分です。これはボール2自身の運動エネルギーの 8m1/m28m_1/m_2 にあたり、m2m_2 が大きくなるほど消えていきます。
❌ それは弾性衝突の定義を逆にしています。 保存されるのは2つのボールの全運動エネルギーです。保存されないのはそれぞれのボールの取り分で、だからこそボール1はより速く離れられるのです。
❌ 衝突はあまりにも短時間です。 数ミリ秒の接触時間の間に重力が与える速度は gΔt≪vag\Delta t \ll v_a にすぎません。余分な速さは重力ではなく、ボール2の上向きの運動から来ます。
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「弾性」で決まるのは相対的な速さであって、それぞれのボール自身の速さではありません。一次元の弾性衝突では

v1f−v2f=−(v1i−v2i)v_{1f} - v_{2f} = -(v_{1i} - v_{2i})

ここでは v1i=−vav_{1i} = -v_a、v2i=+vav_{2i} = +v_a なので、近づく速度は v1i−v2i=−2vav_{1i} - v_{2i} = -2v_a であり、離れる速度は +2va+2v_a でなければなりません。m2≫m1m_2 \gg m_1 ならボール2は v2f≈vav_{2f} \approx v_a を保つので

v1f=v2f+2va=va+2va=3vav_{1f} = v_{2f} + 2v_a = v_a + 2v_a = 3v_a

学生の議論は、暗に v2i=v2f=0v_{2i} = v_{2f} = 0、つまり動かない床を仮定しています。出ていく速さへの3つの寄与を数えましょう。ボール自身の vav_a、壁が近づいてきていたことによる vav_a、そしてボールが離れるときにも壁が上へ動き続けていることによる vav_a です。

問3 · 勘定を払うのはだれか

条件: m1=0.020 kgm_1 = 0.020\ \text{kg} のボールを m2=1.00 kgm_2 = 1.00\ \text{kg} のボールに載せて hi=1.00 mh_i = 1.00\ \text{m} から落とすので、va=4.43 m/sv_a = 4.43\ \text{m/s} です。衝突によってボール1の速度は −va-v_a から +3va+3v_a になります。一方がはるかに重い極限の式 v2f≈v2i+2m1m2(v1i−v2i)v_{2f} \approx v_{2i} + \dfrac{2m_1}{m_2}\left(v_{1i} - v_{2i}\right) を使ってください。

ボール1の運動エネルギーはどれだけ増えますか?

ボール2の速さはどれだけ減りますか?

✅ 正解です! ボール1は 8m1ghi=1.57 J8m_1gh_i = 1.57\ \text{J} を得て、ボール2は 4m1va/m2=0.354 m/s4m_1v_a/m_2 = 0.354\ \text{m/s} だけ遅くなります。そして m2va Δv2=−1.57 Jm_2v_a\,\Delta v_2 = -1.57\ \text{J} で、同じ数になります。勘定はすべてボール2が払っているのです。
❌ それはボール1の最終的な運動エネルギーです。 12m1(3va)2=1.76 J\tfrac{1}{2}m_1(3v_a)^2 = 1.76\ \text{J} です。増加分は変化量なので、もともともっていた 0.196 J0.196\ \text{J} を引いてください。
❌ それは 12m1(Δv)2\tfrac{1}{2}m_1(\Delta v)^2 です。 運動エネルギーは速度の変化の関数ではありません。12m1vf2−12m1vi2\tfrac{1}{2}m_1v_f^2 - \tfrac{1}{2}m_1v_i^2 を計算してください。12m1(vf−vi)2\tfrac{1}{2}m_1(v_f - v_i)^2 ではありません。
❌ 片方の端の値ではなく、変化を確かめてください。 ΔK1=12m1(3va)2−12m1va2=4m1va2\Delta K_1 = \tfrac{1}{2}m_1(3v_a)^2 - \tfrac{1}{2}m_1v_a^2 = 4m_1v_a^2 で、va2=2ghiv_a^2 = 2gh_i です。
❌ 速度の差を確かめてください。 v1i−v2i=−va−(+va)=−2vav_{1i} - v_{2i} = -v_a - (+v_a) = -2v_a であり、−va-v_a ではありません。ボール1がまだ落ちてくる間にボール2は上に動いているので、近づく速さは2倍になります。
❌ 惜しい! Δv2=2m1m2(v1i−v2i)=2m1m2(−2va)=−4m1vam2\Delta v_2 = \dfrac{2m_1}{m_2}(v_{1i} - v_{2i}) = \dfrac{2m_1}{m_2}(-2v_a) = -\dfrac{4m_1v_a}{m_2} です。
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(a) ボール1の増加分。 速さが vav_a から 3va3v_a になるので

ΔK1=12m1(3va)2−12m1va2=4m1va2=8m1ghi=8(0.020)(9.8)(1.00)=1.57 J\Delta K_1 = \tfrac{1}{2}m_1(3v_a)^2 - \tfrac{1}{2}m_1v_a^2 = 4m_1v_a^2 = 8m_1gh_i = 8(0.020)(9.8)(1.00) = \mathbf{1.57\ \text{J}}

(b) ボール2の速さの減少。 v1i=−vav_{1i} = -v_a、v2i=+vav_{2i} = +v_a とすると、一方がはるかに重い極限の式から

Δv2=2m1m2(−2va)=−4m1vam2=−4(0.020)(4.43)1.00=−0.354 m/s\Delta v_2 = \frac{2m_1}{m_2}\left(-2v_a\right) = -\frac{4m_1v_a}{m_2} = -\frac{4(0.020)(4.43)}{1.00} = \mathbf{-0.354\ \text{m/s}}

運動量の確認。 Δp1=m1(3va+va)=4m1va=0.354 kg⋅m/s\Delta p_1 = m_1(3v_a + v_a) = 4m_1v_a = 0.354\ \text{kg}\cdot\text{m/s}、Δp2=m2Δv2=−0.354 kg⋅m/s\Delta p_2 = m_2\Delta v_2 = -0.354\ \text{kg}\cdot\text{m/s} ✓

エネルギーの確認。 m1/m2m_1/m_2 について一次の近似で

ΔK2≈m2va Δv2=−m2va⋅4m1vam2=−4m1va2=−1.57 J=−ΔK1\Delta K_2 \approx m_2v_a\,\Delta v_2 = -m_2v_a\cdot\frac{4m_1v_a}{m_2} = -4m_1v_a^2 = -1.57\ \text{J} = -\Delta K_1

ボール2自身の運動エネルギーに対する割合で言えば、失った分は ∣ΔK2∣12m2va2=8m1m2=0.16\dfrac{|\Delta K_2|}{\tfrac{1}{2}m_2v_a^2} = \dfrac{8m_1}{m_2} = 0.16 で、m2m_2 が大きくなるほどゼロに近づきます。ボール2はすべてを支払いながら、ほとんど気づかないのです。

問4 · 3つ目のボールを上に載せる

条件: 質量 m0≪m1m_0 \ll m_1 の3つ目のボールを一番上に載せ、3つを一緒に hih_i から離します。どのボールもすぐ下のボールよりずっと軽く、衝突はすべて弾性衝突です。一番上のボールが離れるときの速さと、達する高さを求めてください。

✅ 正解です! すでに 3va3v_a で上向きに動いているボール1と一緒に動いてみます。一番上のボールは 4va4v_a で近づいて 4va4v_a に反転し、地上の観測者が 3va3v_a を足し戻して 7va7v_a になります。そして 72=497^2 = 49 です。
❌ 増える分は一定の 2va2v_a ではありません。 跳ね返るたびに、下のボールの速度の2倍が加わります。1段目で加わるのは 2va2v_a ですが、2段目では、ぶつかってくる vav_a に 2(3va)=6va2(3v_a) = 6v_a が加わります。
❌ 因子 33 は繰り返し使える規則ではありません。 それは vav_a で上昇する壁から生じたものでした。ここではボール1が 3va3v_a で上昇しているので、近づく速さは 3va3v_a ではなく 3va+va=4va3v_a + v_a = 4v_a です。
❌ それは2つのボールの場合の答えです。 一番上のボールは、ボール1がすでに 3va3v_a で上向きに打ち出された後でボール1と衝突して跳ね返るので、3va3v_a よりずっと速くなります。
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同じ手を2回使います。どのボールも vav_a で下向きに動きながら床に届きます。

衝突1(ボール2とボール1)。 ボール2は +va+v_a で跳ね返るので、それと一緒に動きます。ボール1は 2va2v_a で近づいて反転し、地上系に戻ると

v1=2va+va=3vav_1 = 2v_a + v_a = 3v_a

衝突2(ボール1と一番上のボール)。 いまボール1は 3va3v_a で上昇していて、一番上のボールはまだ vav_a で落ちています。ボール1と一緒に動くと、一番上のボールは次の速度で近づきます。

v0′=(−va)−(3va)=−4vav_0' = (-v_a) - (3v_a) = -4v_a

この組ではボール1が重いほうなので、跳ね返りによってこれは +4va+4v_a に反転します。基準系の速度を足し戻すと

v0=4va+3va=7vav_0 = 4v_a + 3v_a = \mathbf{7v_a}

高さ。 h=v022g=49va22g=49hih = \dfrac{v_0^2}{2g} = \dfrac{49v_a^2}{2g} = \mathbf{49h_i}.

一般に、下から nn 番目のボールの速さは va, 3va, 7va, 15va,⋯=(2n−1)vav_a,\, 3v_a,\, 7v_a,\, 15v_a,\dots = (2^n - 1)v_a というパターンになります。1 m1\ \text{m} から落とすと、理想的な3段重ねでは一番上のボールが 49 m49\ \text{m} まで上がります。実際のボールは接触のたびにかなりのエネルギーを失うので、この技はそのずっと手前で効かなくなります。

正解数:0 / 4