古典力学 · 第20回 · 動画5 · インタラクティブ教材

二つの物体と回転する円板:固定軸のまわりの回転とエネルギー保存

I重要な公式

公式名称何がわかるか
Uf+12IS ωf2=Ui+12IS ωi2U_f + \tfrac{1}{2} I_S\,\omega_f^2 = U_i + \tfrac{1}{2} I_S\,\omega_i^2固定軸のまわりの回転のエネルギー保存内力が保存力だけの閉じた系でのエネルギーの収支。並進する物体があれば、それぞれの 12mv2\tfrac{1}{2}mv^2 を加える
v=Rω  ⇒  12IP ω2=12IPR2v2=14mPv2v = R\omega \;\Rightarrow\; \tfrac{1}{2} I_P\,\omega^2 = \tfrac{1}{2}\dfrac{I_P}{R^2}v^2 = \tfrac{1}{4} m_P v^2すべらない条件円板の運動エネルギーを糸の速さで表す。糸と一緒に動く質量が 12mP\tfrac{1}{2}m_P だけ増えたのと同じ
d=x2−x2,0=y1,0−y1d = x_2 - x_{2,0} = y_{1,0} - y_1糸の拘束条件両方の物体に共通の一つの距離。物体2が dd だけ滑り下り、物体1が dd だけ上がる
v=2gd (−m1+m2sin⁡θ)m1+m2+12mPv = \sqrt{\dfrac{2gd\,(-m_1 + m_2\sin\theta)}{m_1 + m_2 + \tfrac{1}{2}m_P}}dd だけ滑った後の速さ分子:単位距離あたりのポテンシャルエネルギーの減少分。分母:糸が動かすものすべて

ポイント: 円板は IP/R2=12mPI_P/R^2 = \tfrac{1}{2}m_P を通してしかエネルギーの収支に入らないので、その半径は打ち消されます。大きな円板ほど慣性モーメントは大きくなりますが、それに比例して回転がゆっくりになり、ω2\omega^2 が R2R^2 をちょうど打ち消すのです。

II可視化1 — 減少したポテンシャルエネルギーの行き先

静止状態から放すと物体2が滑り下り、減少したポテンシャルエネルギーは3つに分かれます。

💡 糸の張力はエネルギーの収支に現れません。張力は物体2に負の仕事をし、物体1と円板にちょうど同じ大きさの正の仕事をするので、系にエネルギーを運び込むのは重力だけです。

III可視化2 — 質量の半分として加わる円板

円板は IP/R2=12mPI_P/R^2 = \tfrac{1}{2}m_P としてしか入りません。糸が余分に運ぶ質量です。

IV可視化3 — どちら向きに動くか

−m1+m2sin⁡θ-m_1 + m_2\sin\theta の符号が運動を決めます。ゼロなら物体はまったく動きません。

💡 チャレンジ: m1=2.0 kgm_1 = 2.0\ \mathrm{kg} のとき、系が静止したままになる角度を求めましょう。つり合いの条件 m2sin⁡θ=m1m_2\sin\theta = m_1 には mPm_P が含まれません。円板が決めるのは系が動く速さであって、向きではありません。

V確認クイズ

問1 · 動画の結果を数値で

条件: m1=2.00 kgm_1 = 2.00\ \mathrm{kg} の物体が糸にぶら下がり、m2=6.00 kgm_2 = 6.00\ \mathrm{kg} の物体が θ=30°\theta = 30\degree の摩擦のない斜面に置かれています。滑車は質量 mP=4.00 kgm_P = 4.00\ \mathrm{kg}、半径 R=0.25 mR = 0.25\ \mathrm{m} の一様な円板です。糸はすべりません。静止状態から放したとき、物体2が斜面を d=1.00 md = 1.00\ \mathrm{m} だけ滑り下りた後の速さを求めてください。g=9.8 m/s2g = 9.8\ \mathrm{m/s^2} とします。

✅ 正解です!   v=2(9.8)(1.00)(1.00)/10.0=1.96=1.40 m/s\;v = \sqrt{2(9.8)(1.00)(1.00)/10.0} = \sqrt{1.96} = 1.40\ \mathrm{m/s} です。動かそうとする質量 1.00 kg1.00\ \mathrm{kg} が、動く慣性 10.0 kg10.0\ \mathrm{kg} に対してはたらいています。
❌ 惜しい! それは分母に滑車の質量をまるごと入れた値です。すべらない条件から 12IPω2=14mPv2\tfrac{1}{2}I_P\omega^2 = \tfrac{1}{4}m_P v^2 となるので、滑車が寄与するのは IP/R2=12mP=2.00 kgI_P/R^2 = \tfrac{1}{2}m_P = 2.00\ \mathrm{kg} で、4.00 kg4.00\ \mathrm{kg} ではありません。
❌ それは質量の無視できる滑車の答えです。 12IPω2\tfrac{1}{2}I_P\omega^2 を落とすと、分母には m1+m2=8.00 kgm_1 + m_2 = 8.00\ \mathrm{kg} しか残らず、予想される速さが大きすぎてしまいます。
❌ 斜面を確かめましょう。 エネルギーを放出するのは m2g⃗m_2\vec{g} の斜面方向の成分だけです。分子は −m1+m2sin⁡θ=−2.00+3.00-m_1 + m_2\sin\theta = -2.00 + 3.00 で、−m1+m2-m_1 + m_2 ではありません。
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ステップ1 — 動く慣性。 すべらないので ω=v/R\omega = v/R となり、滑車の項は次のようになります。

12IPω2=12IPR2v2=12(12mP)v2,IPR2=12mP=2.00 kg\tfrac{1}{2}I_P\omega^2 = \tfrac{1}{2}\frac{I_P}{R^2}v^2 = \tfrac{1}{2}\big(\tfrac{1}{2}m_P\big)v^2, \qquad \frac{I_P}{R^2} = \tfrac{1}{2}m_P = 2.00\ \mathrm{kg}

m1+m2+12mP=2.00+6.00+2.00=10.0 kgm_1 + m_2 + \tfrac{1}{2}m_P = 2.00 + 6.00 + 2.00 = 10.0\ \mathrm{kg}

ステップ2 — 放出されるエネルギー。 物体2は dsin⁡θd\sin\theta だけ下がり、物体1は dd だけ持ち上げられます。

−ΔU=gd (−m1+m2sin⁡θ)=(9.8)(1.00)(−2.00+6.00(0.500))=9.80 J-\Delta U = gd\,(-m_1 + m_2\sin\theta) = (9.8)(1.00)\big(-2.00 + 6.00(0.500)\big) = 9.80\ \mathrm{J}

ステップ3 — 解く。 そのすべてが運動エネルギーになります。

12(10.0)v2=9.80 J⟹v=2(9.80)10.0=1.96=1.40 m/s\tfrac{1}{2}(10.0)v^2 = 9.80\ \mathrm{J} \quad\Longrightarrow\quad v = \sqrt{\frac{2(9.80)}{10.0}} = \sqrt{1.96} = 1.40\ \mathrm{m/s}

同じことを、枠で囲んだ公式から直接求めると:

v=2gd (−m1+m2sin⁡θ)m1+m2+12mP=2(9.8)(1.00)(1.00)10.0=1.40 m/sv = \sqrt{\frac{2gd\,(-m_1 + m_2\sin\theta)}{m_1 + m_2 + \tfrac{1}{2}m_P}} = \sqrt{\frac{2(9.8)(1.00)(1.00)}{10.0}} = 1.40\ \mathrm{m/s}

問2 · 質量が同じで、より大きな円板

条件: 系は同じですが、滑車だけを、質量は同じ mP=4.00 kgm_P = 4.00\ \mathrm{kg} で半径が2倍の R=0.50 mR = 0.50\ \mathrm{m} である一様な円板に取りかえます。d=1.00 md = 1.00\ \mathrm{m} 滑った後の物体2の速さを求めてください。

✅ 正解です! 結果に半径は現れません。IPI_P は R2R^2 に比例して大きくなり、ω2=v2/R2\omega^2 = v^2/R^2 は同じ割合で小さくなるので、IP/R2=12mPI_P/R^2 = \tfrac{1}{2}m_P は変わりません。
❌ 惜しい! 慣性モーメントは確かに4倍になります。しかし同じ糸の速さでは、大きな円板は半分の速さでしか回らず、ω2\omega^2 がその4倍をちょうど打ち消します。
❌ 単位を確かめましょう。 IP=12mPR2=0.500 kg m2I_P = \tfrac{1}{2}m_PR^2 = 0.500\ \mathrm{kg\,m^2} は慣性モーメントであって、質量ではありません。エネルギーの収支に必要なのは IP/R2=2.00 kgI_P/R^2 = 2.00\ \mathrm{kg} です。
❌ 惜しい! 2つの円板を比べる前に、滑車の運動エネルギーを糸の速さで表しましょう。
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R=0.50 mR = 0.50\ \mathrm{m} では、慣性モーメントはもとの4倍になります。

IP=12mPR2=12(4.00)(0.500)2=0.500 kg m2(もとは 0.125 kg m2)I_P = \tfrac{1}{2}m_PR^2 = \tfrac{1}{2}(4.00)(0.500)^2 = 0.500\ \mathrm{kg\,m^2} \quad (\text{もとは } 0.125\ \mathrm{kg\,m^2})

しかし糸はやはり速さ vv で動くので、円板は ω=v/R\omega = v/R、つまり前の半分の速さで回ります。

12IPω2=12IPR2v2=12(0.5000.250)v2=12(2.00)v2\tfrac{1}{2}I_P\omega^2 = \tfrac{1}{2}\frac{I_P}{R^2}v^2 = \tfrac{1}{2}\Big(\frac{0.500}{0.250}\Big)v^2 = \tfrac{1}{2}(2.00)v^2

IP/R2=12mP=2.00 kgI_P/R^2 = \tfrac{1}{2}m_P = 2.00\ \mathrm{kg} は前とまったく同じなので、分母はやはり 10.0 kg10.0\ \mathrm{kg} で、

v=2(9.8)(1.00)(1.00)10.0=1.40 m/sv = \sqrt{\frac{2(9.8)(1.00)(1.00)}{10.0}} = 1.40\ \mathrm{m/s}

効くのは滑車の質量だけで、半径は決して効きません。

問3 · 運動エネルギーの分け前

条件: もとの系(m1=2.00 kgm_1 = 2.00\ \mathrm{kg}、m2=6.00 kgm_2 = 6.00\ \mathrm{kg}、mP=4.00 kgm_P = 4.00\ \mathrm{kg}、R=0.25 mR = 0.25\ \mathrm{m}、θ=30°\theta = 30\degree)にもどり、静止状態から物体2が d=1.00 md = 1.00\ \mathrm{m} だけ滑った後を考えます。

運動エネルギーのうち、回転する円板にたくわえられている割合はどれだけですか?

その運動エネルギーは何ジュールですか?

✅ 正解です! 3つの運動エネルギーの比は m2:m1:12mP=6:2:2m_2 : m_1 : \tfrac{1}{2}m_P = 6 : 2 : 2 なので、円板がもつのは 9.80 J9.80\ \mathrm{J} の 20%20\%、つまり 1.96 J1.96\ \mathrm{J} です。
❌ 割合を確かめましょう。 どの項にも同じ 12v2\tfrac{1}{2}v^2 がつくので、割合は m1m_1、m2m_2、12mP\tfrac{1}{2}m_P をそれらの和 10.0 kg10.0\ \mathrm{kg} で割ったものにすぎません。そして滑車の分は 12mP\tfrac{1}{2}m_P で、mPm_P ではありません。
❌ ジュールの値を確かめましょう。 運動エネルギーの合計は、減少したポテンシャルエネルギー 9.80 J9.80\ \mathrm{J} に等しくなります。これに円板の割合をかけるか、14mPv2\tfrac{1}{4}m_Pv^2 を v=1.40 m/sv = 1.40\ \mathrm{m/s} で直接計算しましょう。
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割合。 どの運動エネルギーの項にも、同じ係数 12v2\tfrac{1}{2}v^2 がつきます。

K=12m1v2+12m2v2+12(12mP)v2,KPK=12mPm1+m2+12mP=2.0010.0=0.200K = \tfrac{1}{2}m_1v^2 + \tfrac{1}{2}m_2v^2 + \tfrac{1}{2}\big(\tfrac{1}{2}m_P\big)v^2, \qquad \frac{K_P}{K} = \frac{\tfrac{1}{2}m_P}{m_1 + m_2 + \tfrac{1}{2}m_P} = \frac{2.00}{10.0} = 0.200

ジュール。 合計は放出されたエネルギー K=−ΔU=gd(−m1+m2sin⁡θ)=9.80 JK = -\Delta U = gd(-m_1 + m_2\sin\theta) = 9.80\ \mathrm{J} なので、

KP=0.200×9.80=1.96 JK_P = 0.200 \times 9.80 = 1.96\ \mathrm{J}

v=1.40 m/sv = 1.40\ \mathrm{m/s}、ω=v/R=5.60 rad/s\omega = v/R = 5.60\ \mathrm{rad/s} を使って直接確かめます:

KP=12IPω2=12(0.125)(5.60)2=1.96 J=14mPv2 ✓K_P = \tfrac{1}{2}I_P\omega^2 = \tfrac{1}{2}(0.125)(5.60)^2 = 1.96\ \mathrm{J} = \tfrac{1}{4}m_Pv^2\ \checkmark

内訳をすべて書くと、K2=5.88 JK_2 = 5.88\ \mathrm{J}、K1=1.96 JK_1 = 1.96\ \mathrm{J}、KP=1.96 JK_P = 1.96\ \mathrm{J} で、合計は 9.80 J9.80\ \mathrm{J} です。

問4 · そもそも動くのはどんなときか

条件: 質量と滑車は同じ(m1=2.00 kgm_1 = 2.00\ \mathrm{kg}、m2=6.00 kgm_2 = 6.00\ \mathrm{kg}、mP=4.00 kgm_P = 4.00\ \mathrm{kg})ですが、斜面の角度は自由に設定できます。静止状態から放したとき、物体2が斜面を滑り下りるのは、角度がいくらより大きいときですか?

✅ 正解です! sin⁡θ>m1/m2=1/3\sin\theta > m_1/m_2 = 1/3 から θ>19.47°\theta > 19.47\degree です。mPm_P が含まれないのは、滑車が変えるのは系が動く速さであって、向きではないからです。
❌ 質量の組み合わせが違います。 それは sin⁡θ=m1/(m1+m2+12mP)\sin\theta = m_1/(m_1 + m_2 + \tfrac{1}{2}m_P) です。vv の分母は質量の和なのでいつも正です。符号は分子 −m1+m2sin⁡θ-m_1 + m_2\sin\theta だけで決まります。
❌ 惜しいですが、それは tan⁡θ=1/3\tan\theta = 1/3 です。 物体2の重さの斜面方向の成分は m2gsin⁡θm_2g\sin\theta で、m2gtan⁡θm_2g\tan\theta ではありません。
❌ 成分が違います。 m2gcos⁡θm_2g\cos\theta は面を押す成分で、仕事をしない垂直抗力とつり合います。エネルギーを放出するのは、斜面に沿った m2gsin⁡θm_2g\sin\theta です。
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平方根の中身 v2v^2 は負になれません。

v2=2gd (−m1+m2sin⁡θ)m1+m2+12mP  ≥  0v^2 = \frac{2gd\,(-m_1 + m_2\sin\theta)}{m_1 + m_2 + \tfrac{1}{2}m_P} \;\ge\; 0

分母は質量の和なので、符号はすべて d (−m1+m2sin⁡θ)d\,(-m_1 + m_2\sin\theta) で決まります。物体2が滑り下りる、つまり d>0d > 0 となるのは、ちょうどかっこの中が正のときです。

m2sin⁡θ>m1⟺sin⁡θ>m1m2=2.006.00=13m_2\sin\theta > m_1 \quad\Longleftrightarrow\quad \sin\theta > \frac{m_1}{m_2} = \frac{2.00}{6.00} = \frac{1}{3} θ>arcsin⁡13=19.47°\theta > \arcsin\tfrac{1}{3} = 19.47\degree

3つの場合の読み方:

  • θ>19.47°\theta > 19.47\degree:斜面方向の成分 m2gsin⁡θm_2g\sin\theta が物体1の重さ m1gm_1g を上回り、物体2が下り、物体1は持ち上げられます。
  • θ<19.47°\theta < 19.47\degree:物体1が下がって、物体2を斜面の上へ引き上げます。このとき dd は負で、両方の因子の符号が反転するので、同じ式でやはり速さが求まります。
  • θ=19.47°\theta = 19.47\degree:二つの重さは糸に沿ってつり合い、どの dd でも v=0v = 0 です。物体は最初の位置から動きません。

θ=30°\theta = 30\degree はこのしきい値より大きいので、問1では実数の速さが得られたのです。

正解数:0 / 4