古典力学 · 第20回 · 動画6 · インタラクティブ教材

一つの剛体、一つの角速度:棒と円板の実体振り子(例題16.5)

I重要な公式

公式名称必要なもの
IS=I1+Icm+M2L22I_S = I_1 + I_{cm} + M_2 L_2^2支点のまわりの慣性モーメント同じ一本の軸のまわりの慣性モーメントは足し合わせられる。円板の IcmI_{cm} は平行軸の定理で SS まで移す
Lcm=M1L12+M2L2M1+M2L_{cm} = \dfrac{M_1 \frac{L_1}{2} + M_2 L_2}{M_1 + M_2}棒と円板の質量中心(重心)各部分の質量 × その部分自身の中心の位置、の和を全質量で割る
(M1+M2) g Lcm (1−cos⁡θi)=12ISωf2(M_1 + M_2)\, g\, L_{cm}\,\big(1 - \cos\theta_i\big) = \tfrac{1}{2} I_S \omega_f^2放した瞬間から最下点までのエネルギーの収支静かに放す。支点は仕事をせず、摩擦はない
ωf=2(M1L12+M2L2)g(1−cos⁡θi)I1+Icm+M2L22\omega_f = \sqrt{\dfrac{2\left(M_1 \frac{L_1}{2} + M_2 L_2\right) g \big(1 - \cos\theta_i\big)}{I_1 + I_{cm} + M_2 L_2^2}}最下点での角速度前の二つの結果を一つの式にまとめたもの

ポイント: 剛体のポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)は、全質量が質量中心に集まっているかのように計算できますが、運動エネルギーはそうはいきません。だから LcmL_{cm} と ISI_S は同じ式の両側に分かれて現れるのです。ISI_S は、質量の平均の位置だけでなく、支点のまわりに質量がどう分布しているかで決まります。

II可視化1 — 質量がつり合う位置

全体の質量中心は、棒の中点と円板の中心を質量で重みづけした加重平均です。

III可視化2 — 円板の軸を支点まで移す

円板は自分の中心ではなく SS のまわりに回るので、IcmI_{cm} だけでは円板の寄与になりません。

IV可視化3 — 振れの最下点へ

静かに放された振り子は、質量中心のポテンシャルエネルギーを 12ISω2\tfrac{1}{2} I_S \omega^2 に換えていきます。

💡 θi=0\theta_i = 0 なら振り子ははじめから傾けられておらず、式も ωf=0\omega_f = 0 を与えます。失われた高さがないので、運動エネルギーに変わるものもありません。

V確認クイズ

問1 · 支点のまわりの慣性モーメント

条件: 支点 SS のまわりの慣性モーメントが I1=0.667 kg m2I_1 = 0.667\ \mathrm{kg\,m^2} の一様な棒に、質量 M2=1.00 kgM_2 = 1.00\ \mathrm{kg}、自身の中心を通る軸のまわりの慣性モーメントが Icm=0.020 kg m2I_{cm} = 0.020\ \mathrm{kg\,m^2} の円板が、その中心が SS から L2=0.80 mL_2 = 0.80\ \mathrm{m} のところに来るようにしっかり固定されています(棒の長さは L1=1.00 mL_1 = 1.00\ \mathrm{m})。振り子全体の支点のまわりの慣性モーメント ISI_S を求めてください。

✅ 正解です! SS のまわりの円板の寄与は Icm+M2L22=0.020+0.640=0.660 kg m2I_{cm} + M_2 L_2^2 = 0.020 + 0.640 = 0.660\ \mathrm{kg\,m^2} で、棒の I1I_1 ははじめから支点のまわりで定義されています。
❌ それは I1+IcmI_1 + I_{cm} です。 M2L22M_2 L_2^2 を落とすと、円板の中心が支点にあるかのように扱うことになり、SS からの距離の分が何も入りません。
❌ 惜しい! 項が一つ足りません。 I1+M2L22=1.307I_1 + M_2L_2^2 = 1.307 では IcmI_{cm} が抜けています。平行軸の定理は M2L22M_2 L_2^2 を IcmI_{cm} に足すのであって、置き換えるのではありません。
❌ どの距離を2乗したか確かめましょう。 ずらす距離は二つの軸のあいだの距離 L2=0.80 mL_2 = 0.80\ \mathrm{m} で、棒の長さ L1=1.00 mL_1 = 1.00\ \mathrm{m} ではありません。
❌ 惜しい! 同じ一本の軸のまわりの慣性モーメントは足し合わせられます。IS=I1+(Icm+M2L22)I_S = I_1 + \big(I_{cm} + M_2 L_2^2\big)、つまり三つの項すべてです。
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同じ軸のまわりの慣性モーメントは足し合わせられるので、棒と円板を別々に扱い、SS のまわりの寄与を足します。

棒: I1I_1 は支点のまわりの値として与えられているので、手を加える必要はありません。

円板: IcmI_{cm} は円板自身の中心を通る軸のまわりの値です。この軸は支点の軸に平行で(どちらも振れる面に垂直)、支点の軸から L2L_2 だけ離れているので、平行軸の定理が使えます。

I2,S=Icm+M2L22=0.020+(1.00)(0.80)2=0.020+0.640=0.660 kg m2I_{2,S} = I_{cm} + M_2 L_2^2 = 0.020 + (1.00)(0.80)^2 = 0.020 + 0.640 = 0.660\ \mathrm{kg\,m^2}

合計:

IS=I1+Icm+M2L22=0.667+0.020+0.640=1.327 kg m2I_S = I_1 + I_{cm} + M_2 L_2^2 = 0.667 + 0.020 + 0.640 = 1.327\ \mathrm{kg\,m^2}

ずらしの項だけで 0.6400.640、全体の約 48%48\% を占めます。円板の質量が支点から 0.80 m0.80\ \mathrm{m} のところにあることのほうが、その質量が円板自身の中心のまわりにどう広がっているかよりも、はるかに大きく効くのです。

問2 · 全体の質量中心

条件: 質量 M1=2.00 kgM_1 = 2.00\ \mathrm{kg}、長さ L1=1.00 mL_1 = 1.00\ \mathrm{m} の一様な棒が支点からつり下げられ、質量 M2=1.00 kgM_2 = 1.00\ \mathrm{kg} の円板が、その中心が棒に沿って支点から L2=0.80 mL_2 = 0.80\ \mathrm{m} のところに来るように取りつけられています。支点から、棒と円板を合わせた全体の質量中心までの距離 LcmL_{cm} を求めてください。

✅ 正解です! 平均は 0.500 m0.500\ \mathrm{m} と 0.800 m0.800\ \mathrm{m} のあいだに来て、棒のほうが2倍重いので棒の側に寄ります。
❌ それは 0.5000.500 と 0.8000.800 の単なる中点です。 中点が正しいのは二つの質量が等しいときだけです。ここでは M1=2M2M_1 = 2M_2 なので、平均は棒の中心のほうへ引き寄せられます。
❌ 重みをかける位置が入れ替わっています。 0.500 m0.500\ \mathrm{m} にある棒自身の中心には M1M_1 が、0.800 m0.800\ \mathrm{m} にある円板の中心には M2M_2 がかかります。
❌ それは分子だけです。 M1L12+M2L2=1.800 kg mM_1\frac{L_1}{2} + M_2 L_2 = 1.800\ \mathrm{kg\,m} を、さらに全質量 M1+M2=3.00 kgM_1 + M_2 = 3.00\ \mathrm{kg} で割る必要があります。
❌ 惜しい! それぞれの部分が、自分の質量 × 自分の中心の位置を受けもちます。棒は L1/2L_1/2、円板は L2L_2 です。
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棒は一様なので、棒自身の質量中心はその中点、つまり支点から L1/2=0.500 mL_1/2 = 0.500\ \mathrm{m} のところにあります。円板の質量中心はその中心で、支点から L2=0.800 mL_2 = 0.800\ \mathrm{m} のところです。どちらも棒の直線上にあるので、全体の質量中心もその直線上にあります。

(M1+M2) Lcm=M1L12+M2L2(M_1 + M_2)\,L_{cm} = M_1\frac{L_1}{2} + M_2 L_2 Lcm=M1L12+M2L2M1+M2=(2.00)(0.500)+(1.00)(0.800)2.00+1.00=1.8003.00=0.600 mL_{cm} = \frac{M_1\frac{L_1}{2} + M_2 L_2}{M_1 + M_2} = \frac{(2.00)(0.500) + (1.00)(0.800)}{2.00 + 1.00} = \frac{1.800}{3.00} = 0.600\ \mathrm{m}

二つの極限で式を確かめます。

  • M2→0M_2 \to 0 では Lcm→L1/2=0.500 mL_{cm} \to L_1/2 = 0.500\ \mathrm{m}、つまり棒自身の中心です。
  • M1→0M_1 \to 0 では Lcm→L2=0.800 mL_{cm} \to L_2 = 0.800\ \mathrm{m}、つまり円板の中心です。

その中間のどんな質量でも、LcmL_{cm} はこの二点のあいだにあり、重いほうの部分に近くなります。

問3 · 放した瞬間から最下点まで

条件: 同じ振り子(M1+M2=3.00 kgM_1 + M_2 = 3.00\ \mathrm{kg}、Lcm=0.600 mL_{cm} = 0.600\ \mathrm{m}、IS=1.327 kg m2I_S = 1.327\ \mathrm{kg\,m^2}、g=9.8 m/s2g = 9.8\ \mathrm{m/s^2})を θi=60°\theta_i = 60\degree で静かに放し、θ=0\theta = 0 の最下点まで振らせます。

失われるポテンシャルエネルギーはいくらですか?

最下点での角速度 ωf\omega_f はいくらですか?

✅ 正解です! 8.82 J8.82\ \mathrm{J} がすべて 12ISωf2\tfrac{1}{2}I_S\omega_f^2 になるので、ωf=2(8.82)/1.327=3.65 rad/s\omega_f = \sqrt{2(8.82)/1.327} = 3.65\ \mathrm{rad/s} です。
❌ 質量中心が下がる高さを確かめましょう。 下がるのは Lcm(1−cos⁡θi)L_{cm}\big(1 - \cos\theta_i\big) で、LcmL_{cm} でも Lcmsin⁡θiL_{cm}\sin\theta_i でもありません。cos⁡60°=0.5\cos 60\degree = 0.5 なので、下がる高さは 0.300 m0.300\ \mathrm{m} です。
❌ 最後のステップの式変形を確かめましょう。 ΔU=12ISωf2\Delta U = \tfrac{1}{2}I_S\omega_f^2 の両辺に2をかけ、三つの項をすべて含む ISI_S で割ってから、正の平方根をとります。ωf=2 ΔU/IS\omega_f = \sqrt{2\,\Delta U / I_S} です。
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ステップ1:失われるポテンシャルエネルギー。 ポテンシャルエネルギーは、全質量が質量中心に集まっているかのように扱えます。放した瞬間、その点は最下点で到達する高さより Lcm(1−cos⁡θi)L_{cm}\big(1 - \cos\theta_i\big) だけ上にあります。

h=Lcm(1−cos⁡60°)=(0.600)(1−0.500)=0.300 mh = L_{cm}\big(1 - \cos 60\degree\big) = (0.600)(1 - 0.500) = 0.300\ \mathrm{m} ΔU=(M1+M2) g h=(3.00)(9.8)(0.300)=8.82 J\Delta U = (M_1 + M_2)\, g\, h = (3.00)(9.8)(0.300) = 8.82\ \mathrm{J}

ステップ2:得られる運動エネルギー。 振り子は静止状態から動き出し、支点は仕事をしないので、8.82 J8.82\ \mathrm{J} がすべて SS のまわりの回転の運動エネルギーになります。棒と円板は一つの剛体で、一つの角速度で回ります。

12ISωf2=8.82 J\tfrac{1}{2} I_S \omega_f^2 = 8.82\ \mathrm{J} ωf=2(8.82)1.327=13.30=3.65 rad/s\omega_f = \sqrt{\frac{2(8.82)}{1.327}} = \sqrt{13.30} = 3.65\ \mathrm{rad/s}

運動エネルギーに LcmL_{cm} が使えない理由: 0.600 m0.600\ \mathrm{m} の位置にある質量 3.00 kg3.00\ \mathrm{kg} の質点なら I=MLcm2=1.08 kg m2I = ML_{cm}^2 = 1.08\ \mathrm{kg\,m^2} となり、ωf=4.04 rad/s\omega_f = 4.04\ \mathrm{rad/s} を与えます。実際の物体は、質量が一点に集中せず支点のまわりに広がっているので、IS=1.327 kg m2I_S = 1.327\ \mathrm{kg\,m^2} です。

問4 · 円板を輪に取りかえる

条件: 円板を、質量も半径も同じ細い輪に取りかえます。すると、0.020 kg m20.020\ \mathrm{kg\,m^2} の代わりに Icm=M2R22=0.040 kg m2I_{cm} = M_2 R_2^2 = 0.040\ \mathrm{kg\,m^2} となります。質量、L1L_1、L2L_2、放す角は変わりません。LcmL_{cm} と ωf\omega_f はどうなりますか?

✅ 正解です! LcmL_{cm} は質量と位置しか見ないので 0.600 m0.600\ \mathrm{m} のままです。ISI_S は 1.347 kg m21.347\ \mathrm{kg\,m^2} に増え、同じ θi=60°\theta_i = 60\degree で ωf\omega_f は 3.6463.646 から 3.619 rad/s3.619\ \mathrm{rad/s} に下がります。
❌ ISI_S が収支の式のどちらの側にあるか確かめましょう。 失われるエネルギーは変わらず、ISI_S は ωf2=2ΔU/IS\omega_f^2 = 2\Delta U / I_S の分母にあります。慣性が大きいほど振れは遅くなり、速くはなりません。
❌ IcmI_{cm} は ISI_S の三つの項の一つです。 それが2倍になると ISI_S は 0.020 kg m20.020\ \mathrm{kg\,m^2} 増え、収支の式の運動エネルギーの側が変わります。
❌ 質量中心は動きません。 質量も半径も同じ輪と円板では、質量中心は同じ場所にあります。違うのは、その中心のまわりの質量の広がり方だけです。
❌ 惜しい! LcmL_{cm} と ISI_S のうち、そもそも IcmI_{cm} の変化の影響を受けうるのはどちらかを考えましょう。
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ポテンシャルエネルギーの側。 Lcm=M1L12+M2L2M1+M2L_{cm} = \dfrac{M_1\frac{L_1}{2} + M_2L_2}{M_1+M_2} に含まれるのは、質量と二つの中心の位置だけです。輪の質量中心は、円板とまったく同じくその中心にあるので、

Lcm=0.600 m(変わらない),ΔU=(3.00)(9.8)(0.600)(1−cos⁡60°)=8.82 J(変わらない)L_{cm} = 0.600\ \mathrm{m} \quad \text{(変わらない)}, \qquad \Delta U = (3.00)(9.8)(0.600)\big(1 - \cos 60\degree\big) = 8.82\ \mathrm{J} \quad \text{(変わらない)}

運動エネルギーの側。 ISI_S は影響を受けます。IcmI_{cm} がその三つの項の一つだからです。

IS=0.667+0.040+0.640=1.347 kg m2(もとは 1.327)I_S = 0.667 + 0.040 + 0.640 = 1.347\ \mathrm{kg\,m^2} \quad (\text{もとは } 1.327) ωf=2(8.82)1.347=3.619 rad/s(もとは 3.646)\omega_f = \sqrt{\frac{2(8.82)}{1.347}} = 3.619\ \mathrm{rad/s} \quad (\text{もとは } 3.646)

同じエネルギーで、回転に少しだけ強く抵抗する物体を回さなければならないので、振り子は約 0.8%0.8\% 遅く最下点を通過します。問題全体の非対称性が、この一手に表れています。失われるエネルギーを決めるのは質量中心ですが、そのエネルギーでどれだけの速さが得られるかを決めるのは、支点のまわりの質量の分布だけなのです。

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