古典力学 · 第21回 · 動画5 · インタラクティブ教材

二つの段階で摩擦が消える――回転子の慣性モーメントを測る

I重要な公式

公式名称必要なもの
mgr−τf=(IR+mr2) α1mgr - \tau_f = (I_R + mr^2)\,\alpha_1 駆動段階(糸がついている) 回転子の Tr−τf=IRα1Tr - \tau_f = I_R\alpha_1 と、おもりの mg−T=mrα1mg - T = mr\alpha_1(糸から a1=rα1a_1 = r\alpha_1)。おもりの式に rr をかけて足すと TrTr が打ち消し合う
−τf=IR α2-\tau_f = I_R\,\alpha_2 惰性で回る段階(糸が外れている) 同じ軸受なので、大きさ τf>0\tau_f > 0 も同じ。IR>0I_R > 0 なので α2<0\alpha_2 < 0 となる。これは zz 成分で、マイナスの符号をつけたまま使う
IR=mr (g−rα1)α1−α2I_R = \dfrac{mr\,(g - r\alpha_1)}{\alpha_1 - \alpha_2} 摩擦の消去(駆動段階 − 惰性で回る段階) 与えられた mm、rr、gg と、ω(t)\omega(t) の2つの傾き。動画の α1=83.5\alpha_1 = 83.5、α2=−31.2 rad/s2\alpha_2 = -31.2\ \text{rad/s}^2 からは 5.3×10−5 kg⋅m25.3 \times 10^{-5}\ \text{kg}\cdot\text{m}^2
τf=−IR α2\tau_f = -I_R\,\alpha_2 摩擦トルク(副産物) IRI_R と、惰性で回る段階の傾き。動画の回転子では τf≈1.7×10−3 N⋅m\tau_f \approx 1.7 \times 10^{-3}\ \text{N}\cdot\text{m} で、直接は一度も測っていない

ポイント: 軸受は2つの段階で変わらないので、τf\tau_f は両方の式で同じ値であり、式どうしを引くと消えます。α2<0\alpha_2 < 0 なので、分母 α1−α2=∣α1∣+∣α2∣\alpha_1 - \alpha_2 = |\alpha_1| + |\alpha_2| は大きさの和になります。

II可視化1 — 1本のグラフの2つの傾き

各段階の角加速度は、その段階の直線部分の傾きです。折れ点をまたぐ区間では、どちらも測れません。

III可視化2 — 1つの段階だけでは答えが直線上に並ぶ

駆動段階だけでは、1本の直線上のすべての (IR,τf)(I_R, \tau_f) の組が当てはまります。惰性で回る段階の直線は、それと1点で交わります。

与えられた量 m = 0.055 kg、r = 0.0127 m、g = 9.8 m/s²。測定値 α₁ = 83.5 rad/s²、α₂ = −31.2 rad/s²

IV可視化3 — 摩擦を変えても答えは変わらない

軸受をきつくしても緩くしても2つの傾きは変わりますが、2段階の公式はいつも同じ IRI_R を返します。

V確認クイズ

問1 · 別の回転子に閉じた形の式を使う

条件:半径 r=20.0 mmr = 20.0\ \text{mm} の回転子を、質量 m=0.100 kgm = 0.100\ \text{kg} のつり下げたおもりで駆動します(g=9.8 m/s2g = 9.8\ \text{m/s}^2)。ω(t)\omega(t) のグラフの2つの直線部分の傾きは、α1=40.0 rad/s2\alpha_1 = 40.0\ \text{rad/s}^2(糸がついている)と α2=−10.0 rad/s2\alpha_2 = -10.0\ \text{rad/s}^2(糸が外れている)です。回転子の慣性モーメント IRI_R を求めてください。

✅ 正解です! mr=2.00×10−3 kg⋅mmr = 2.00 \times 10^{-3}\ \text{kg}\cdot\text{m}、g−rα1=9.00 m/s2g - r\alpha_1 = 9.00\ \text{m/s}^2、α1−α2=50.0 rad/s2\alpha_1 - \alpha_2 = 50.0\ \text{rad/s}^2 なので、IR=(2.00×10−3)(9.00)/50.0=3.60×10−4 kg⋅m2I_R = (2.00 \times 10^{-3})(9.00)/50.0 = 3.60 \times 10^{-4}\ \text{kg}\cdot\text{m}^2 です。
❌ 軸受に摩擦がないものとして扱っています。 α1\alpha_1 だけで割るのは、駆動段階の式で τf=0\tau_f = 0 としたものです。惰性で回る段階は、分母に ∣α2∣|\alpha_2| を加えます。
❌ おもりは加速するので、T≠mgT \ne mg です。 おもりの式 mg−T=mrα1mg - T = mr\alpha_1 から、分子には g−rα1g - r\alpha_1 が残ります。gg ではありません。
❌ α2\alpha_2 の符号を確かめましょう。 これは負の zz 成分なので、α1−α2=40.0+10.0\alpha_1 - \alpha_2 = 40.0 + 10.0 です。40.0−10.040.0 - 10.0 ではありません。
解答を見る

閉じた形の式に含まれる量は、すべて与えられているか、測った量です。

mr=(0.100)(0.0200)=2.00×10−3 kg⋅mmr = (0.100)(0.0200) = 2.00 \times 10^{-3}\ \text{kg}\cdot\text{m} g−rα1=9.8−(0.0200)(40.0)=9.8−0.800=9.00 m/s2g - r\alpha_1 = 9.8 - (0.0200)(40.0) = 9.8 - 0.800 = 9.00\ \text{m/s}^2 α1−α2=40.0−(−10.0)=50.0 rad/s2\alpha_1 - \alpha_2 = 40.0 - (-10.0) = 50.0\ \text{rad/s}^2 IR=mr (g−rα1)α1−α2=(2.00×10−3)(9.00)50.0=3.60×10−4 kg⋅m2I_R = \frac{mr\,(g - r\alpha_1)}{\alpha_1 - \alpha_2} = \frac{(2.00 \times 10^{-3})(9.00)}{50.0} = 3.60 \times 10^{-4}\ \text{kg}\cdot\text{m}^2

項 rα1=0.800 m/s2r\alpha_1 = 0.800\ \text{m/s}^2 はおもり自身の加速度です。また、α2\alpha_2 が負なので、分母は2つの大きさの和になります。

問2 · 惰性で回る段階だけを使う

条件:動画の回転子は IR=5.32×10−5 kg⋅m2I_R = 5.32 \times 10^{-5}\ \text{kg}\cdot\text{m}^2 です。糸が縁から外れたあと(おもりは m=0.055 kgm = 0.055\ \text{kg}、半径は r=12.7 mmr = 12.7\ \text{mm} でした)、回転子は α2=−31.2 rad/s2\alpha_2 = -31.2\ \text{rad/s}^2 で惰性で回ります。軸受のトルクは −τf k^-\tau_f\,\hat{k} です。大きさ τf\tau_f を求めてください。

✅ 正解です! τf=−IRα2=−(5.32×10−5)(−31.2)=1.66×10−3 N⋅m\tau_f = -I_R\alpha_2 = -(5.32 \times 10^{-5})(-31.2) = 1.66 \times 10^{-3}\ \text{N}\cdot\text{m} で、動画の値 ≈1.7×10−3\approx 1.7 \times 10^{-3} と一致します。
❌ おもりはもうありません。 糸が外れたら回っているのは回転子だけなので、惰性で回る段階の式に入るのは IRI_R で、IR+mr2I_R + mr^2 ではありません。mr2mr^2 の項は駆動段階のものです。
❌ τf\tau_f は大きさです。 マイナスの符号はすでに −τf k^-\tau_f\,\hat{k} に入っています。IRα2=−1.66×10−3 N⋅mI_R\alpha_2 = -1.66 \times 10^{-3}\ \text{N}\cdot\text{m} はトルクの zz 成分で、これが −τf-\tau_f です。
❌ 駆動段階の傾きを使っています。 糸がついている間は張力のトルクもはたらきます。摩擦が唯一のトルクになるのは惰性で回る段階だけなので、ここで使うのは α2\alpha_2 だけです。
解答を見る

糸が外れたあと、軸のまわりのトルクは摩擦だけで、回っているのは回転子だけです。

−τf=IRα2⟹τf=−IRα2=−(5.32×10−5)(−31.2)=1.66×10−3 N⋅m-\tau_f = I_R\alpha_2 \quad\Longrightarrow\quad \tau_f = -I_R\alpha_2 = -(5.32 \times 10^{-5})(-31.2) = 1.66 \times 10^{-3}\ \text{N}\cdot\text{m}

大きさなので、正になっています。駆動段階からも、α1=83.5 rad/s2\alpha_1 = 83.5\ \text{rad/s}^2 と mgr=6.845×10−3 N⋅mmgr = 6.845 \times 10^{-3}\ \text{N}\cdot\text{m} を使って同じ値が得られます。

τf=mgr−(IR+mr2) α1=6.845×10−3−(6.207×10−5)(83.5)=6.845×10−3−5.183×10−3=1.66×10−3 N⋅m\tau_f = mgr - (I_R + mr^2)\,\alpha_1 = 6.845 \times 10^{-3} - (6.207 \times 10^{-5})(83.5) = 6.845 \times 10^{-3} - 5.183 \times 10^{-3} = 1.66 \times 10^{-3}\ \text{N}\cdot\text{m}

問3 · グラフから慣性モーメントへ

条件:r=20.0 mmr = 20.0\ \text{mm} の回転子を、質量 m=0.0600 kgm = 0.0600\ \text{kg} のつり下げたおもりで駆動します(g=9.8 m/s2g = 9.8\ \text{m/s}^2)。ω(t)\omega(t) のグラフは 00 から直線的に上がって 84.0 rad/s84.0\ \text{rad/s} に達し、その時刻 t=1.20 st = 1.20\ \text{s} に糸が外れます。下がっていく部分では、ω=64.0 rad/s\omega = 64.0\ \text{rad/s}(t=2.00 st = 2.00\ \text{s})、ω=24.0 rad/s\omega = 24.0\ \text{rad/s}(t=3.60 st = 3.60\ \text{s})です。α2\alpha_2 を求め、次に IRI_R を求めてください。

α₂ はいくらですか?

I_R はいくらですか?

✅ 正解です! α1=70.0\alpha_1 = 70.0、α2=−25.0 rad/s2\alpha_2 = -25.0\ \text{rad/s}^2 なので、IR=(1.20×10−3)(8.40)/95.0=1.06×10−4 kg⋅m2I_R = (1.20 \times 10^{-3})(8.40)/95.0 = 1.06 \times 10^{-4}\ \text{kg}\cdot\text{m}^2 です。
❌ この部分は下がっているので、傾きは負です。 Δω=24.0−64.0=−40.0 rad/s\Delta\omega = 24.0 - 64.0 = -40.0\ \text{rad/s} を Δt=1.60 s\Delta t = 1.60\ \text{s} で割ります。
❌ 2つの差が別々の区間からとられています。 −60.0 rad/s-60.0\ \text{rad/s} は 1.20 s1.20\ \text{s} の折れ点からの減少ですが、3.60 s3.60\ \text{s} は t=0t = 0 からの時間です。Δω\Delta\omega と Δt\Delta t は同じ2点の間でとりましょう。
❌ その弦は原点から折れ点をまたいでいます。 駆動段階と惰性で回る段階が混ざっているので、その傾きは α1\alpha_1 でも α2\alpha_2 でもありません。
❌ 分母の符号を確かめましょう。 α1−α2=70.0−(−25.0)=95.0 rad/s2\alpha_1 - \alpha_2 = 70.0 - (-25.0) = 95.0\ \text{rad/s}^2 で、45.045.0 ではありません。惰性で回る段階は分母を大きくします。
❌ α1\alpha_1 だけで割ると、惰性で回る段階が抜け落ちます。 それは摩擦がない場合の答えです。下がっていく部分があることが、摩擦があることを示しています。
❌ 分子には g−rα1g - r\alpha_1 が必要です。 おもりは rα1=1.40 m/s2r\alpha_1 = 1.40\ \text{m/s}^2 で加速するので T<mgT < mg で、分子は mr(8.40)mr(8.40) です。mr(9.8)mr(9.8) ではありません。
❌ 惜しい! 下がっていく部分の2点の間で Δω/Δt\Delta\omega / \Delta t をとりましょう。
❌ 惜しい! IR=mr(g−rα1)/(α1−α2)I_R = mr(g - r\alpha_1)/(\alpha_1 - \alpha_2) を使いましょう。α1=84.0/1.20\alpha_1 = 84.0/1.20 です。
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ステップ1:駆動段階の傾き。 上がっていく部分は原点から始まります。

α1=84.0 rad/s1.20 s=70.0 rad/s2\alpha_1 = \frac{84.0\ \text{rad/s}}{1.20\ \text{s}} = 70.0\ \text{rad/s}^2

ステップ2:惰性で回る段階の傾き。 下がっていく部分の2点から求めます。

α2=24.0−64.03.60−2.00=−40.0 rad/s1.60 s=−25.0 rad/s2\alpha_2 = \frac{24.0 - 64.0}{3.60 - 2.00} = \frac{-40.0\ \text{rad/s}}{1.60\ \text{s}} = -25.0\ \text{rad/s}^2

ステップ3:閉じた形の式。

mr=(0.0600)(0.0200)=1.20×10−3 kg⋅m,g−rα1=9.8−1.40=8.40 m/s2mr = (0.0600)(0.0200) = 1.20 \times 10^{-3}\ \text{kg}\cdot\text{m}, \qquad g - r\alpha_1 = 9.8 - 1.40 = 8.40\ \text{m/s}^2 IR=(1.20×10−3)(8.40)70.0−(−25.0)=1.008×10−295.0=1.06×10−4 kg⋅m2I_R = \frac{(1.20 \times 10^{-3})(8.40)}{70.0 - (-25.0)} = \frac{1.008 \times 10^{-2}}{95.0} = 1.06 \times 10^{-4}\ \text{kg}\cdot\text{m}^2

副産物として、τf=−IRα2=(1.061×10−4)(25.0)=2.65×10−3 N⋅m\tau_f = -I_R\alpha_2 = (1.061 \times 10^{-4})(25.0) = 2.65 \times 10^{-3}\ \text{N}\cdot\text{m} も得られます。

問4 · 同じ方法をレール上の台車に使う

条件:水平なレールの上にある質量 MM(未知)の台車が、軽い滑車にかけた糸で、つり下げた質量 m=0.050 kgm = 0.050\ \text{kg} のおもりに引かれています(g=9.8 m/s2g = 9.8\ \text{m/s}^2)。レールは、2つの段階で同じ、一定で未知の摩擦力 ff をおよぼします。おもりが落ちている間、台車は a1=0.70 m/s2a_1 = 0.70\ \text{m/s}^2 で速くなり、おもりが着地して糸がたるんだあとは a2=−0.35 m/s2a_2 = -0.35\ \text{m/s}^2 で遅くなります。MM を求めてください。

✅ 正解です! 2つの段階の式を引くと ff が消えます。τf\tau_f が消えたのとまったく同じしくみです。M=m(g−a1)/(a1−a2)=(0.050)(9.10)/1.05=0.433 kgM = m(g - a_1)/(a_1 - a_2) = (0.050)(9.10)/1.05 = 0.433\ \text{kg} です。
❌ それは駆動段階だけで f=0f = 0 とした答えです。 糸がたるんだ段階は摩擦があることを示しており、その式 −f=Ma2-f = Ma_2 こそが ff を消すのです。
❌ a2a_2 の符号を確かめましょう。 台車は遅くなっているので a2<0a_2 < 0 で、a1−a2=1.05 m/s2a_1 - a_2 = 1.05\ \text{m/s}^2 は大きさの和です。
❌ つり下げたおもりも加速します。 T=mgT = mg とおくと、おもりの ma1ma_1 が抜け落ちます。駆動段階の式は mg−f=(M+m)a1mg - f = (M + m)a_1 です。
解答を見る

駆動段階(糸は張っていて、どちらの物体も加速度 a1a_1):台車は T−f=Ma1T - f = Ma_1、おもりは mg−T=ma1mg - T = ma_1 です。足し合わせると、測っていない張力が打ち消し合います。

mg−f=(M+m) a1mg - f = (M + m)\,a_1

糸がたるんだ段階:台車にはたらく水平方向の力は摩擦力だけです。

−f=Ma2-f = Ma_2

1つめの式から2つめの式を引くと、ff が消えます。

mg=(M+m) a1−Ma2⟹M=m (g−a1)a1−a2=(0.050)(9.8−0.70)0.70−(−0.35)=0.4551.05=0.433 kgmg = (M + m)\,a_1 - Ma_2 \quad\Longrightarrow\quad M = \frac{m\,(g - a_1)}{a_1 - a_2} = \frac{(0.050)(9.8 - 0.70)}{0.70 - (-0.35)} = \frac{0.455}{1.05} = 0.433\ \text{kg}

これは、回転子の閉じた形の式で rα→ar\alpha \to a、IR/r2→MI_R/r^2 \to M と置き換えたものです。副産物は f=−Ma2=(0.433)(0.35)=0.152 Nf = -Ma_2 = (0.433)(0.35) = 0.152\ \text{N} です。

正解数:0 / 4