古典力学 · 第22回 · 動画2 · インタラクティブ教材

条件は一つではなく二つ――静的つり合いと、てこがつり合うわけ

I重要な公式

公式名称意味
F⃗=F⃗1+F⃗2+⋯=0⃗\vec{F} = \vec{F}_1 + \vec{F}_2 + \cdots = \vec{0}条件1質量中心(重心)は静止したまま
τ⃗S=τ⃗S,1+τ⃗S,2+⋯=0⃗\vec{\tau}_S = \vec{\tau}_{S,1} + \vec{\tau}_{S,2} + \cdots = \vec{0}条件2(点 SS のまわり)物体は回転しない。SS は自由に選べる
Fpivot−mbg−N1−N2=0F_{\text{pivot}} - m_b g - N_1 - N_2 = 0梁(はり)の条件1支点が梁の重さと2つの垂直抗力を支える
d2N2−d1N1=0 ⟺ d1N1=d2N2d_2 N_2 - d_1 N_1 = 0 \ \Longleftrightarrow \ d_1 N_1 = d_2 N_2てこの原理垂直抗力かけるモーメントアームが両側で等しい

ポイント: 2つの条件はどちらも必要で、互いに独立です。一方の端を上に、もう一方の端を下に押した定規は ∑F⃗=0⃗\sum \vec{F} = \vec{0} でも回ってしまいます。支点のまわりでトルクをとると F⃗pivot\vec{F}_{\text{pivot}} と mbg⃗m_b \vec{g} のモーメントアームは0になるので、支点の力を一度も計算しないまま、てこの原理が出てきます。

II力は打ち消し合っても、物体は回る

大きさが等しく向きが反対の2つの力の和はゼロですが、棒が回るかどうかは、それぞれの力がどこにはたらくかで決まります。

IIIつり合った梁

梁が支点のまわりに回転しないためには、2つの荷物にどんな関係が必要でしょうか?

💡 梁がつり合えば、トルクの和は支点だけでなくどの点のまわりでもゼロになります。けれども、未知の F⃗pivot\vec{F}_{\text{pivot}} を初めから式に入れずにすむのは、支点のまわりでとったときだけです。

IV3つの物体、3つの図

物体は接触力で梁を押します。重さ m1g⃗m_1\vec{g} と m2g⃗m_2\vec{g} がはたらくのは物体のほうです。

V確認クイズ

問1 · 梁をつり合わせる

条件: 一様な梁が、その質量中心の位置に置いた支点の上に載っています。物体2は支点から左へ d2=0.40 md_2 = 0.40\ \text{m} のところで垂直抗力 N2=30 NN_2 = 30\ \text{N} で梁を押し下げ、物体1は右へ d1=0.60 md_1 = 0.60\ \text{m} のところで押し下げます。梁を静止させておく垂直抗力 N1N_1 を求めてください。

✅ 正解です! モーメントアームが長いほうの力が小さくなります。どちらの側も 0.60×20=0.40×30=12 N⋅m0.60 \times 20 = 0.40 \times 30 = 12\ \text{N}\cdot\text{m} です。
❌ 比が逆さまです。 計算したのは N2d1/d2N_2 d_1 / d_2 です。てこの原理で等しくなるのは積、d1N1=d2N2d_1 N_1 = d_2 N_2 なので、長いモーメントアームのほうの力は大きくではなく小さくなければなりません。
❌ 惜しい! 等しい力がつり合うのは、距離が等しいときだけです。ここでは d1≠d2d_1 \ne d_2 なので、等しい力では等しくないトルクになります。
❌ それは力ではなくトルクです。 d2N2=12 N⋅md_2 N_2 = 12\ \text{N}\cdot\text{m} は支点のまわりのトルクです。d1d_1 で割ると力になります。
❌ 惜しい! 支点のまわりのトルクを等しくおきましょう:d1N1=d2N2d_1 N_1 = d_2 N_2。
解答を見る

反時計回りを正として、支点のまわりのトルクをとります。梁の重さも支点の力も支点にはたらくので、どちらもモーメントアームは0で、何も寄与しません。残るのは2つの垂直抗力だけです。

τpivot=d2N2−d1N1=0\tau_{\text{pivot}} = d_2 N_2 - d_1 N_1 = 0

したがって、てこの原理から次が得られます。

N1=d2N2d1=(0.40 m)(30 N)0.60 m=12 N⋅m0.60 m=20 N.N_1 = \frac{d_2 N_2}{d_1} = \frac{(0.40\ \text{m})(30\ \text{N})}{0.60\ \text{m}} = \frac{12\ \text{N}\cdot\text{m}}{0.60\ \text{m}} = 20\ \text{N}.

そのうえで条件1から支点の力 Fpivot=mbg+N1+N2=mbg+50 NF_{\text{pivot}} = m_b g + N_1 + N_2 = m_b g + 50\ \text{N} が決まりますが、N1N_1 を求めるのには一度も必要ありませんでした。

問2 · 梁の重さはどこへ行ったのか

条件: 上の梁は質量 mb=1.0 kgm_b = 1.0\ \text{kg} の一様な梁なので、その重さ mbg⃗m_b \vec{g} は決して無視できません。それなのに、d1N1=d2N2d_1 N_1 = d_2 N_2 には mbgm_b g も FpivotF_{\text{pivot}} も出てきません。なぜでしょうか?

✅ 正解です! 支点は梁の質量中心の位置にあるので、mbg⃗m_b \vec{g} も F⃗pivot\vec{F}_{\text{pivot}} もトルクをとる点にはたらきます。どちらも τ=r⊥F\tau = r_\perp F で r⊥=0r_\perp = 0 です。
❌ mbm_b については何も仮定していません。 梁の重さは条件1、Fpivot−mbg−N1−N2=0F_{\text{pivot}} - m_b g - N_1 - N_2 = 0 に入っています。条件2から消えるのは、それがどこにはたらくかのためだけです。
❌ 仕事は関係ありません。 静的つり合いは力とトルクについての条件です。モーメントアームが0でない力は、仕事をするかどうかにかかわらず条件2に出てきます。
❌ 打ち消し合うものはありません。 それぞれのトルクが単独で0です。2つの力の大きさは異なる(可視化では 9.8 N9.8\ \text{N} と 68.6 N68.6\ \text{N})ので、大きさが等しく向きが反対のトルクが理由ではありえません。
❌ 惜しい! それぞれの力の、支点のまわりのモーメントアームはいくらかを考えましょう。
解答を見る

SS のまわりのトルクの大きさは τS=r⊥F\tau_S = r_\perp F で、r⊥r_\perp は SS から力の作用線までの垂直距離です。支点は梁の質量中心の真下に置かれ、梁は薄いので、F⃗pivot\vec{F}_{\text{pivot}} も mbg⃗m_b \vec{g} も支点そのものにはたらきます。

r⊥=0⟹τpivot=0 (どちらも)r_\perp = 0 \quad \Longrightarrow \quad \tau_{\text{pivot}} = 0 \ \text{(どちらも)}

条件2に残るのは N1N_1 と N2N_2 だけで、d2N2−d1N1=0d_2 N_2 - d_1 N_1 = 0 となります。SS を注意して選ぶ価値があるのは、このためです。トルクをとる点を、いちばんわかっていない力がはたらく位置にちょうど置いたので、その力は一度も計算されないまま式から消えたのです。

問3 · 物体1を外側へずらす

条件: 質量中心の位置に支点を置いた梁が、左の d2=0.25 md_2 = 0.25\ \text{m} に m2=4.0 kgm_2 = 4.0\ \text{kg}、右の d1=0.50 md_1 = 0.50\ \text{m} に m1=2.0 kgm_1 = 2.0\ \text{kg} を載せてつり合っています(g=9.8 m s−2g = 9.8\ \text{m}\,\text{s}^{-2})。ここで物体1を外側へずらし、d1=0.70 md_1 = 0.70\ \text{m} にします。反時計回りを正として、支点のまわりの全トルクを求めてください。

✅ 正解です! d1N1d_1 N_1 は 13.72 N⋅m13.72\ \text{N}\cdot\text{m} に増え、d2N2d_2 N_2 は 9.8 N⋅m9.8\ \text{N}\cdot\text{m} のままなので、右側が勝って右端が下がります。
❌ 大きさは合っていますが、向きが逆です。 N1N_1 は支点の右側を押し下げ、梁を時計回りに回します。反時計回りを正とすると負のトルクです。大きいほうの項は d1N1d_1 N_1 なので、和は負になります。
❌ それは条件1だけを見た答えです。 4つの力は確かに変わっていないので、Fpivot−mbg−N1−N2=0F_{\text{pivot}} - m_b g - N_1 - N_2 = 0 は成り立ったままです。しかし N1N_1 の位置が変わり、条件2は位置を見ています。これこそ、力のつり合いだけでは足りない場合です。
❌ 項が一つ抜けています。 d1N1=13.72 N⋅md_1 N_1 = 13.72\ \text{N}\cdot\text{m} は物体1の寄与だけです。物体2は相変わらず、逆向きに +d2N2=9.8 N⋅m+d_2 N_2 = 9.8\ \text{N}\cdot\text{m} を与えています。
❌ 惜しい! Ni=migN_i = m_i g として τ=+d2N2−d1N1\tau = +d_2 N_2 - d_1 N_1 を計算しましょう。
解答を見る

ステップ1:垂直抗力。 それぞれの物体はそれ自体がつり合っていて、はたらく力はすべて鉛直なので、梁は物体を Ni=migN_i = m_i g で押し上げます。ニュートンの第三法則により、物体は同じ大きさで梁を押し下げます。

N2=(4.0)(9.8)=39.2 N,N1=(2.0)(9.8)=19.6 N.N_2 = (4.0)(9.8) = 39.2\ \text{N}, \qquad N_1 = (2.0)(9.8) = 19.6\ \text{N}.

ステップ2:元のつり合いを確かめる。 d2N2=(0.25)(39.2)=9.8 N⋅md_2 N_2 = (0.25)(39.2) = 9.8\ \text{N}\cdot\text{m}、d1N1=(0.50)(19.6)=9.8 N⋅md_1 N_1 = (0.50)(19.6) = 9.8\ \text{N}\cdot\text{m} で等しいので、梁はつり合っていました。

ステップ3:ずらした後のトルク。 力は何も変わらず、変わったのは d1d_1 だけです。

τpivot=+d2N2−d1N1=9.8−(0.70)(19.6)=9.8−13.72=−3.92 N⋅m.\tau_{\text{pivot}} = +d_2 N_2 - d_1 N_1 = 9.8 - (0.70)(19.6) = 9.8 - 13.72 = -3.92\ \text{N}\cdot\text{m}.

符号は負なので、回転は時計回りで、右端が下がります。条件1はこれにまったく気づきませんでした。

問4 · バール

条件: バール(かなてこ)が支点の上に載っています。支点から 0.60 m0.60\ \text{m} のところで柄を 15 N15\ \text{N} で押し下げると、バールは支点の反対側 0.050 m0.050\ \text{m} のところにある荷物を押し上げます。バールは一様で、その質量中心は支点の位置にあり、静的つり合いにあります。バールが荷物におよぼす力の大きさを求めてください。

✅ 正解です! モーメントアームが12倍長ければ、力は12倍になります。0.60/0.050=120.60/0.050 = 12、12×15 N=180 N12 \times 15\ \text{N} = 180\ \text{N} です。
❌ 比が逆になっています。 0.050/0.600.050/0.60 をかけてしまっています。d1N1=d2N2d_1 N_1 = d_2 N_2 で d1d_1 が小さければ N1N_1 は大きくなるので、短いモーメントアームのほうに大きな力がかかります。
❌ つり合いに必要なのは、力が等しいことではありません。 条件2で等しくなるのは力ではなくトルクです。モーメントアームが異なれば、等しい力は等しくないトルクを生み、バールは回ります。
❌ それはニュートンメートルです。 (15 N)(0.60 m)=9.0 N⋅m(15\ \text{N})(0.60\ \text{m}) = 9.0\ \text{N}\cdot\text{m} は手が加えるトルクです。荷物のモーメントアームで割ると力になります。
❌ 惜しい! 支点のまわりのトルクをとりましょう。支点での力はモーメントアームが0なので、出てくるのは手と荷物だけです。
解答を見る

支点のまわりのトルクをとります。支点がバールにおよぼす力もバール自身の重さもそこにはたらくので、どちらもモーメントアームは0で消えます。梁の問題で F⃗pivot\vec{F}_{\text{pivot}} を消したのと同じ選び方です。残るのは d2=0.60 md_2 = 0.60\ \text{m} での手の力 N2=15 NN_2 = 15\ \text{N} と、d1=0.050 md_1 = 0.050\ \text{m} での荷物の力 N1N_1 だけで、2つはバールを逆向きに回そうとします。

d2N2−d1N1=0⟹N1=d2N2d1=(0.60 m)(15 N)0.050 m=180 N.d_2 N_2 - d_1 N_1 = 0 \quad \Longrightarrow \quad N_1 = \frac{d_2 N_2}{d_1} = \frac{(0.60\ \text{m})(15\ \text{N})}{0.050\ \text{m}} = 180\ \text{N}.

ニュートンの第三法則により、バールは荷物を 180 N180\ \text{N} で押し上げ、荷物は同じ 180 N180\ \text{N} でバールを押し下げます。2つの異なる物体にはたらく、大きさの等しい力です。この d2/d1=12d_2/d_1 = 12 という倍率が、てこの力の拡大率です。

正解数:0 / 4