古典力学 · 第22回 · 動画4 · インタラクティブ教材

大きさも向きもわからない力:ヒンジで留めた棒と坂に立つ人

I重要な公式

公式名称必要なもの
∑iF⃗i=0⃗,∑iτ⃗S,i=0⃗\sum_i \vec{F}_i = \vec{0}, \qquad \sum_i \vec{\tau}_{S,i} = \vec{0}静的つり合いの2つの条件平面内では、力の式が2つとトルクの式が1つ
F⃗pivot=F(cos⁡α i^+sin⁡α j^)\vec{F}_{\text{pivot}} = F\left(\cos\alpha\,\hat{i} + \sin\alpha\,\hat{j}\right)向きのわからない力未知数は2つ:大きさ FF と角度 α\alpha
T=mg2sin⁡βT = \dfrac{mg}{2\sin\beta}ヒンジのまわりのトルクから求めたケーブルの張力棒の重さ mgmg とケーブルの角度 β\beta
N1,2=mg(12cos⁡α±hdsin⁡α)N_{1,2} = mg\left(\tfrac{1}{2}\cos\alpha \pm \dfrac{h}{d}\sin\alpha\right)下の足 / 上の足にはたらく垂直抗力坂の傾斜角 α\alpha、重心の高さ hh、足幅 dd

ポイント: いちばん情報の少ない力が作用する点のまわりで、トルクをとりましょう。その力のモーメントアーム(うでの長さ)は 0 なので、式に書く前に問題から消えてしまいます。

II可視化1 — ヒンジで力をつり合わせる

棒にはたらく合力を 0 にする、ヒンジがおよぼす力の大きさと向きは、ただ1通りに決まります。

III可視化2 — トルクをとる点を選ぶ

作用線がトルクをとる点を通る力は、すべて式から消えます。

ヒンジ PP のまわりのトルク
T lsin⁡β  −  mg l2  =  0T\,l\sin\beta \;-\; mg\,\tfrac{l}{2} \;=\; 0
T=mg2sin⁡β=(4.0 kg)(9.8 m s−2)2sin⁡30°=39.2 NT = \frac{mg}{2\sin\beta} = \frac{(4.0\ \text{kg})(9.8\ \text{m}\,\text{s}^{-2})}{2\sin 30\degree} = 39.2\ \text{N}
支点がおよぼす力は PP に作用するので、式に入ってきません。張力はすぐに求まり、棒の重さそのものになります。

💡 BB の式を AA の式で割ると tan⁡α=tan⁡β\tan\alpha = \tan\beta となり、α=β\alpha = \beta と F=TF = T が得られます。張力は一度も計算していません。

IV可視化3 — 坂道に立つ

重心を通る鉛直線が坂の面と交わる位置で、両足が重さをどう分け合うかが決まります。

V確認クイズ

問1 · ケーブルの張力

条件: 長さ l=2.0 ml = 2.0\ \text{m}、質量 m=4.0 kgm = 4.0\ \text{kg} の一様な棒が、左端で壁にヒンジで留められ、質量の無視できるケーブルで水平に保たれています。ケーブルは壁から棒の右端まで張られ、棒と β=30°\beta = 30\degree の角をなします。g=9.8 m s−2g = 9.8\ \text{m}\,\text{s}^{-2} として、張力 TT を求めてください。

✅ 正解です! T=mg/(2sin⁡β)T = mg/(2\sin\beta) で、sin⁡30°=12\sin 30\degree = \tfrac{1}{2} なので分母は 11 です。張力は棒の重さそのものに等しくなります。(ただし、ケーブルが支えているのはその半分だけです。それが鉛直成分 Tsin⁡β=mg/2T\sin\beta = mg/2 です。)
❌ それは mg/2mg/2 です。 重さの半分にあたるのはケーブルの鉛直成分 Tsin⁡βT\sin\beta で、張力そのものではありません。
❌ 三角関数が違います。 ヒンジのまわりのトルクを生むのは、棒に垂直な成分 Tsin⁡βT\sin\beta だけです。
❌ 重力のモーメントアームを確かめましょう。 一様な棒の重力は棒の中心、つまりヒンジから l/2l/2 の位置にはたらきます。ll ではありません。
❌ 惜しい! ヒンジのまわりでトルクをとりましょう。そうすれば、支点がおよぼす力は何も寄与しません。
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ヒンジのまわりでトルクをとり、反時計回りを正とします。支点がおよぼす力はヒンジに作用するので、モーメントアームが 0 で、式に入ってきません。

重力は中心に作用し、モーメントアームは l/2l/2 で、棒を時計回りに回します。張力のうちトルクを生むのは垂直成分 Tsin⁡βT\sin\beta だけで、距離 ll の位置で棒を反時計回りに回します。

T lsin⁡β−mg l2=0⟹T=mg2sin⁡βT\,l\sin\beta - mg\,\tfrac{l}{2} = 0 \quad\Longrightarrow\quad T = \frac{mg}{2\sin\beta}

長さは消えます。質量が同じなら、棒が長くても必要な張力は同じです。数値を入れると:

T=(4.0 kg)(9.8 m s−2)2sin⁡30°=39.2 N1=39.2 NT = \frac{(4.0\ \text{kg})(9.8\ \text{m}\,\text{s}^{-2})}{2\sin 30\degree} = \frac{39.2\ \text{N}}{1} = 39.2\ \text{N}

張力は棒の重さが大きいほど大きく、ケーブルが急になるほど小さくなります。

問2 · どのトルクが消えるか

条件: 同じ棒について、今度はケーブルが壁につながる点 AA(ヒンジから ltan⁡βl\tan\beta だけ上)のまわりでトルクをとります。支点がおよぼす力は、成分 Fcos⁡αF\cos\alpha(棒に沿う向き)と Fsin⁡αF\sin\alpha(壁に沿って上向き)に分けて書きます。AA のまわりのトルクが 0 になる力はどれですか?

✅ 正解です! どちらの作用線も AA を通ります。ケーブルは自身の線に沿って、Fsin⁡αF\sin\alpha は壁に沿ってはたらくからです。残るのは Fcos⁡α (ltan⁡β)=mg l/2F\cos\alpha\,(l\tan\beta) = mg\,l/2 です。
❌ AA を通る力がもう1つあります。 Fsin⁡αF\sin\alpha はヒンジに作用して壁に沿ってまっすぐ上を向き、AA はその同じ鉛直線上にあります。
❌ 重力はここでトルクを生みます。 重力は棒の中心、つまり壁から水平に l/2l/2 の位置にはたらくので、AA のまわりのモーメントアームは l/2l/2 です。
❌ 消えるのは一方の成分だけです。 Fcos⁡αF\cos\alpha は棒に沿ってはたらき、AA から垂直距離 ltan⁡βl\tan\beta だけ下にあります。それがモーメントアームです。
❌ 惜しい! 力の作用線がある点を通るとき、その点のまわりのトルクは 0 です。
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力が AA のまわりのトルクを生まないのは、ちょうどその作用線が AA を通るときです。

  • 張力:ケーブルは棒の端から AA まで張られているので、作用線は AA を通ります。トルクは 0 です。
  • Fsin⁡αF\sin\alpha:ヒンジに作用し、壁に沿った向きです。AA は壁の上、ヒンジの真上にあります。トルクは 0 です。
  • Fcos⁡αF\cos\alpha:ヒンジに作用し、棒に沿った向きです。作用線は棒そのもので、AA から垂直距離 ltan⁡βl\tan\beta だけ下にあります。
  • 重力:棒の中心を通る鉛直な作用線で、壁から水平に l/2l/2 の距離にあります。

残る2つのトルクの大きさを等しいとおき、ll を約分すると:

Fcos⁡α (ltan⁡β)=mg l2⟹Fcos⁡α=mg2cot⁡βF\cos\alpha\,(l\tan\beta) = mg\,\tfrac{l}{2} \quad\Longrightarrow\quad F\cos\alpha = \frac{mg}{2}\cot\beta

これは水平方向の力の式です。張力はまったく現れていません。

問3 · 坂の上で重さを分け合う

条件: 質量 mm の人が、傾斜角 α=30°\alpha = 30\degree の坂に立っています。重心は両足のちょうど真ん中にあり、坂に垂直に測って h=1.0 mh = 1.0\ \text{m} の高さにあります。足はすべりません。

両足の間隔が d=1.5 md = 1.5\ \text{m} のとき、下の足が支える力はいくらですか?

上の足が地面から浮くのは、両足の間隔がいくらのときですか?

✅ 正解です! 2つの垂直抗力の和は mgcos⁡α=0.87 mgmg\cos\alpha = 0.87\,mg で、0.77 mg0.77\,mg と 0.10 mg0.10\,mg に分かれます。d=2htan⁡α=1.15 md = 2h\tan\alpha = 1.15\ \text{m} では、それが 0.87 mg0.87\,mg と 00 になります。
❌ 下の足の負担を確かめましょう。 N1=mg(12cos⁡α+hdsin⁡α)N_1 = mg\left(\tfrac{1}{2}\cos\alpha + \tfrac{h}{d}\sin\alpha\right) です。平らな地面での半分に、傾きによる項 hdsin⁡α\tfrac{h}{d}\sin\alpha が加わります。この分だけ下の足の負担が増え、上の足の負担が減ります。
❌ 倒れる条件を確かめましょう。 N2=0N_2 = 0 には 12cos⁡α=hdsin⁡α\tfrac{1}{2}\cos\alpha = \tfrac{h}{d}\sin\alpha が必要なので、d=2htan⁡αd = 2h\tan\alpha です。タンジェントで、係数 22 がつきます。
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ステップ1 — 坂を横切る方向の力の条件から N1+N2=mgcos⁡αN_1 + N_2 = mg\cos\alpha が、坂に沿った方向の条件から f1+f2=mgsin⁡αf_1 + f_2 = mg\sin\alpha が得られます。

ステップ2 — 重心のまわりのトルク(重力はここで消えます)。2つの摩擦力は重心から垂直距離 hh だけ下に、それぞれの垂直抗力は重心から d/2d/2 の位置にはたらきます。

h (f1+f2)+(N2−N1) d2=0⟹N1−N2=2h mgsin⁡αdh\,(f_1 + f_2) + (N_2 - N_1)\,\tfrac{d}{2} = 0 \quad\Longrightarrow\quad N_1 - N_2 = \frac{2h\,mg\sin\alpha}{d}

ステップ3 — 和と差の式を足し引きして、2で割ります。

N1,2=mg(12cos⁡α±hdsin⁡α)N_{1,2} = mg\left(\tfrac{1}{2}\cos\alpha \pm \frac{h}{d}\sin\alpha\right)

α=30°\alpha = 30\degree、h=1.0 mh = 1.0\ \text{m}、d=1.5 md = 1.5\ \text{m} とすると、12cos⁡30°=0.433\tfrac{1}{2}\cos 30\degree = 0.433、hdsin⁡30°=0.333\tfrac{h}{d}\sin 30\degree = 0.333 なので、

N1=0.77 mg,N2=0.10 mg,N1+N2=0.87 mg=mgcos⁡30° ✓N_1 = 0.77\,mg, \qquad N_2 = 0.10\,mg, \qquad N_1 + N_2 = 0.87\,mg = mg\cos 30\degree\ \checkmark

ステップ4 — 上の足が浮くのは N2=0N_2 = 0 のときです。

12cos⁡α=hdsin⁡α⟹d=2htan⁡α=2(1.0 m)tan⁡30°=1.15 m\tfrac{1}{2}\cos\alpha = \frac{h}{d}\sin\alpha \quad\Longrightarrow\quad d = 2h\tan\alpha = 2(1.0\ \text{m})\tan 30\degree = 1.15\ \text{m}

図形で見ると、重心を通る鉛直線は、両足の中点から htan⁡α=0.58 mh\tan\alpha = 0.58\ \text{m} だけ坂の下側で坂の面と交わります。d=1.15 md = 1.15\ \text{m} のとき、これはちょうど d/2d/2 に等しく、鉛直線は支持基底面の端である下の足を通ります。

問4 · 摩擦係数がいらない理由

条件: 坂道の問題は μs\mu_s を一度も使わずに解け、f1f_1 と f2f_2 を別々に求めることもしませんでした。摩擦のモデルが必要なかったのはなぜですか?

✅ 正解です! 重心のまわりのトルクの式には、摩擦は h (f1+f2)h\,(f_1 + f_2) の形でしか入ってきません。そしてその和は、坂に沿った方向のつり合いですでに決まっています。両足への分かれ方は一度も必要ないのです。
❌ 打ち消し合いません。 どちらの摩擦力も、重心から垂直距離 hh だけ下で坂の上向きにはたらくので、どちらも人を同じ向きに回します。そのトルクは +h(f1+f2)+h(f_1 + f_2) です。
❌ ここでは摩擦が欠かせません。 摩擦がなければ、人はすべり落ちます。f1+f2=mgsin⁡αf_1 + f_2 = mg\sin\alpha こそが、人をその場に保っている力です。
❌ μsN\mu_s N は上限にすぎません。 静止摩擦力は、その上限までの範囲で、つり合いに必要な値をとります。ここでは式そのものがその値を決めています。
❌ 惜しい! 3つのつり合いの式に、f1f_1 と f2f_2 のどんな組み合わせが実際に現れているかを考えましょう。
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3つの式を書き、摩擦がどこに現れるかを見てみましょう。

坂を横切る方向:N1+N2=mgcos⁡α\text{坂を横切る方向:}\quad N_1 + N_2 = mg\cos\alpha 坂に沿った方向:f1+f2=mgsin⁡α\text{坂に沿った方向:}\quad f_1 + f_2 = mg\sin\alpha 重心のまわりのトルク:h (f1+f2)+(N2−N1) d2=0\text{重心のまわりのトルク:}\quad h\,(f_1 + f_2) + (N_2 - N_1)\,\tfrac{d}{2} = 0

摩擦は f1+f2f_1 + f_2 という組み合わせでしか入ってこず、2つ目の式がすでにその和を与えています。それを3つ目の式に代入すると、

N1−N2=2h mgsin⁡αdN_1 - N_2 = \frac{2h\,mg\sin\alpha}{d}

となり、係数はどこにも出てきません。係数が効いてくるのは別の問い、つまり必要な f1+f2=mgsin⁡αf_1 + f_2 = mg\sin\alpha がそもそも得られるかどうかを問うときだけで、それには μs≥tan⁡α\mu_s \ge \tan\alpha が必要です。

正解数:0 / 4