古典力学 · 第23回 · 動画3 · インタラクティブ教材

角運動量を変えるもの:トルク、保存則、地球をかすめる流星体

I重要な公式

公式名称必要なもの
τ⃗S=r⃗S×F⃗=dL⃗Sdt\vec{\boldsymbol{\tau}}_S = \vec{\mathbf{r}}_S \times \vec{\mathbf{F}} = \dfrac{d\vec{\mathbf{L}}_S}{dt} トルクと角運動量の関係式(1つの粒子) 固定点 SS のまわりの L⃗S=r⃗S×p⃗\vec{\mathbf{L}}_S = \vec{\mathbf{r}}_S \times \vec{\mathbf{p}} を微分する。項 v⃗×mv⃗=0⃗\vec{\mathbf{v}} \times m\vec{\mathbf{v}} = \vec{\mathbf{0}} は消え、dp⃗dt=F⃗\frac{d\vec{\mathbf{p}}}{dt} = \vec{\mathbf{F}}(合力)となる
τ⃗S=0⃗  ⇒  L⃗S,f=L⃗S,i\vec{\boldsymbol{\tau}}_S = \vec{\mathbf{0}} \;\Rightarrow\; \vec{\mathbf{L}}_{S,f} = \vec{\mathbf{L}}_{S,i} 角運動量の保存 合計のトルクが0になる固定点 SS。別の点のまわりでは、トルクは一般に0にならない
J⃗S=∫titfτ⃗S dt=ΔL⃗S\vec{\mathbf{J}}_S = \displaystyle\int_{t_i}^{t_f} \vec{\boldsymbol{\tau}}_S\,dt = \Delta\vec{\mathbf{L}}_S 角力積 区間全体にわたる SS のまわりのトルク。∫F⃗ dt=Δp⃗\int \vec{\mathbf{F}}\,dt = \Delta\vec{\mathbf{p}} の回転版
mvih=mvpRE,h=RE2+2GMEREvi2m v_i h = m v_p R_E, \quad h = \sqrt{R_E^2 + \dfrac{2GM_E R_E}{v_i^2}} 地球をかすめる流星体(例題19.4) 地球の中心のまわりの角運動量と、力学的エネルギー 12mvi2=12mvp2−GmMERE\tfrac{1}{2}mv_i^2 = \tfrac{1}{2}mv_p^2 - \tfrac{GmM_E}{R_E}。hh は衝突パラメータ

ポイント: 流星体にはたらく重力はいつも地球の中心を向いているので、その1点のまわりのモーメントアーム(うでの長さ)は0です。流星体の速さも向きも変わりますが、地球の中心のまわりの L⃗S\vec{\mathbf{L}}_S は変わりません。この1つの一定な値 −hmvi k^-h m v_i\,\hat{\mathbf{k}} が、はるか遠くから近づいてくるときと、最接近の瞬間とを結びつけます。

II可視化1 — 点の選び方

同じ重力が、地球の中心のまわりではトルク0、ほかのほとんどどの点のまわりでも0でないトルクをおよぼします。

III可視化2 — 直線はどこまで横にずれていられるか

遠方での速さが与えられたとき、流星体がちょうど地表をかすめるのは、衝突パラメータ hh がいくらのときでしょうか?

IV可視化3 — 角力積はトルクのグラフの下の面積

トルクは1秒ごとに LzL_z に τz Δt\tau_z\,\Delta t を加えるので、正味の変化は τz(t)\tau_z(t) のグラフの下の符号つき面積です。

V確認クイズ

問1 · 角運動量からトルクを求める

条件: 固定点 SS のまわりの粒子の角運動量が L⃗S(t)=(3t2+2) k^ kg⋅m2/s\vec{\mathbf{L}}_S(t) = (3t^2 + 2)\,\hat{\mathbf{k}}\ \text{kg}\cdot\text{m}^2/\text{s} です(tt の単位は秒)。t=2 st = 2\ \text{s} での、SS のまわりの合計のトルクの zz 成分を求めてください。

✅ 正解です! トルクは角運動量の時間変化率です。t=2 st = 2\ \text{s} で τS,z=dLS,zdt=6t=12 N⋅m\tau_{S,z} = \frac{dL_{S,z}}{dt} = 6t = 12\ \text{N}\cdot\text{m} です。
❌ それは LS,z(2)L_{S,z}(2) そのものです。 3(2)2+2=143(2)^2 + 2 = 14 はその瞬間の角運動量です。トルクと角運動量の関係式で必要なのは、その時間微分です。
❌ 導関数に t=2 st = 2\ \text{s} を代入しましょう。 ddt(3t2+2)=6t\frac{d}{dt}(3t^2 + 2) = 6t で、定数の 66 ではありません。
❌ べき乗の微分を確かめましょう。 ddt(3t2)=6t\frac{d}{dt}(3t^2) = 6t で、t=2t = 2 では 1212 です。2424 は 6t26t^2 です。
❌ 惜しい! τ⃗S=dL⃗S/dt\vec{\boldsymbol{\tau}}_S = d\vec{\mathbf{L}}_S/dt を使い、3t2+23t^2 + 2 を微分しましょう。
解答を見る

固定点 SS のまわりのトルクと角運動量の関係式は τ⃗S=dL⃗Sdt\vec{\boldsymbol{\tau}}_S = \dfrac{d\vec{\mathbf{L}}_S}{dt} なので、成分ごとに書くと

τS,z=ddt(3t2+2)=6t.\tau_{S,z} = \frac{d}{dt}\left(3t^2 + 2\right) = 6t.

t=2 st = 2\ \text{s} では τS,z=6(2)=12 N⋅m\tau_{S,z} = 6(2) = 12\ \text{N}\cdot\text{m} です。定数の 22 は t=0t = 0 での角運動量で、変化率には何も寄与しません。

問2 · 一定に保たれる量はどれか

条件: 人工衛星が地球のまわりの楕円軌道を動いています。地球は固定されていて楕円の焦点の1つにあり、衛星にはたらく力は地球からの力だけです。軌道に沿って一定に保たれるのはどの量ですか?

✅ 正解です! 重力は地球の中心から見て −r^-\hat{\mathbf{r}} の向きなので、その点のまわりでは r⃗S×F⃗=0⃗\vec{\mathbf{r}}_S \times \vec{\mathbf{F}} = \vec{\mathbf{0}} となり、L⃗S\vec{\mathbf{L}}_S は一定です。流星体のときとまったく同じ議論です。
❌ 速さは変わります。 LS=r mv⊥L_S = r\,m v_\perp が一定ということは、rr が小さいところで衛星が速く動くということです。U=−GmME/rU = -GmM_E/r は軌道に沿って変わるので、エネルギー保存からも同じことが言えます。
❌ 点が違います。 力の作用線が通るのは地球のある焦点で、楕円の中心ではありません。そのため長軸の両端以外のどこでも、重力は中心のまわりに0でないモーメントアームをもち、そこでトルクをおよぼします。
❌ 合力がはたらいています。 F⃗=dp⃗/dt≠0⃗\vec{\mathbf{F}} = d\vec{\mathbf{p}}/dt \neq \vec{\mathbf{0}} なので、p⃗\vec{\mathbf{p}} は向き(と大きさ)を変え続けます。
❌ 惜しい! トルクが0になる固定点を探しましょう。
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SS を地球の中心にとります。はたらく力は F⃗=−GmMEr2 r^\vec{\mathbf{F}} = -\dfrac{GmM_E}{r^2}\,\hat{\mathbf{r}} だけで、位置ベクトルは r⃗S=r r^\vec{\mathbf{r}}_S = r\,\hat{\mathbf{r}} なので、2つは反平行です。

τ⃗S=r r^×(−GmMEr2 r^)=0⃗  ⇒  L⃗S=一定.\vec{\boldsymbol{\tau}}_S = r\,\hat{\mathbf{r}} \times \left(-\frac{GmM_E}{r^2}\,\hat{\mathbf{r}}\right) = \vec{\mathbf{0}} \;\Rightarrow\; \vec{\mathbf{L}}_S = \text{一定}.

楕円の中心のまわりでは、作用線は一般にその点を通らないので、そこでのトルクは0ではありません。運動量が変わるのは合力が0でないからで、速さが変わるのはポテンシャルエネルギーが変わるからです。

問3 · かすめる流星体を数値で

条件: 流星体が、非常に遠くから vi=8.0 km/sv_i = 8.0\ \text{km/s} で近づいてきます。RE=6.37×106 mR_E = 6.37 \times 10^{6}\ \text{m}、GME=3.99×1014 m3/s2GM_E = 3.99 \times 10^{14}\ \text{m}^3/\text{s}^2 とします。流星体がちょうど地球をかすめるときの衝突パラメータ hh と、かすめる点での速さ vpv_p を求めてください。

h はいくらですか?

v_p はいくらですか?

✅ 正解です! h≈1.72 REh \approx 1.72\,R_E です。地球の円盤のかなり外側をねらう直線でも衝突し、流星体は出発したときと同じ角運動量をもったまま、13.8 km/s13.8\ \text{km/s} で到達します。
❌ 係数2が抜けています。 エネルギーの式に2をかけると vi2=vp2−2GMEREv_i^2 = v_p^2 - \frac{2GM_E}{R_E} となるので、余分な項は GMEREvi2\frac{GM_E R_E}{v_i^2} ではなく 2GMEREvi2\frac{2GM_E R_E}{v_i^2} です。
❌ それは重力を無視しています。 h=REh = R_E はまっすぐ進む場合の答えです。重力が経路を内側へ曲げるので、かすめる直線はもっと外側にあります。
❌ 項は平方根の中で足し合わせます。 h2=RE2+2GMEREvi2h^2 = R_E^2 + \frac{2GM_E R_E}{v_i^2} です。この答えは、かわりに RER_E に 2GMEvi2\frac{2GM_E}{v_i^2} を足しています。
❌ h を確かめましょう。 viv_i を m/s で表して、h2=RE2+2GMERE/vi2h^2 = R_E^2 + 2GM_ER_E/v_i^2 を解きます。
❌ 比が逆さまです。 mvih=mvpREm v_i h = m v_p R_E から vp=vih/REv_p = v_i h / R_E となり、h>REh > R_E なので vpv_p は viv_i より大きくなります。
❌ 角運動量が一定でも、速さが一定とは限りません。 モーメントアームは hh から RER_E へ縮むので、vp=vih/REv_p = v_i h/R_E は大きくならなければなりません。
❌ それは脱出速度 2GME/RE\sqrt{2GM_E/R_E} です。 エネルギーから vp2=vi2+2GMEREv_p^2 = v_i^2 + \frac{2GM_E}{R_E} となります。流星体は、はじめの vi2v_i^2 の分ももっています。
❌ v_p を確かめましょう。 角運動量から得られる vp=vih/REv_p = v_i h / R_E を使います。
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地球の中心のまわりの角運動量(そこではトルクが0):mvih=mvpREm v_i h = m v_p R_E なので、vp=vih/REv_p = v_i h/R_E。

エネルギー(遠方ではポテンシャルエネルギー →0\to 0):12mvi2=12mvp2−GmMERE\tfrac{1}{2}m v_i^2 = \tfrac{1}{2}m v_p^2 - \dfrac{GmM_E}{R_E}。vpv_p を代入し、mm を約分して2をかけると、

h2=RE2+2GMEREvi2=(6.37×106)2+2(3.99×1014)(6.37×106)(8.0×103)2h^2 = R_E^2 + \frac{2GM_E R_E}{v_i^2} = (6.37\times10^{6})^2 + \frac{2(3.99\times10^{14})(6.37\times10^{6})}{(8.0\times10^{3})^2} h2≈4.06×1013+7.94×1013=1.20×1014 m2  ⇒  h≈1.10×107 m≈1.72 RE.h^2 \approx 4.06\times10^{13} + 7.94\times10^{13} = 1.20\times10^{14}\ \text{m}^2 \;\Rightarrow\; h \approx 1.10\times10^{7}\ \text{m} \approx 1.72\,R_E.

したがって vp=vi hRE≈(8.0 km/s)(1.72)≈13.8 km/sv_p = v_i\,\dfrac{h}{R_E} \approx (8.0\ \text{km/s})(1.72) \approx 13.8\ \text{km/s} です。

エネルギーだけで確かめる: vp2=vi2+2GMERE≈64.0+125.3=189.3 km2/s2v_p^2 = v_i^2 + \dfrac{2GM_E}{R_E} \approx 64.0 + 125.3 = 189.3\ \text{km}^2/\text{s}^2 なので、vp≈13.8 km/sv_p \approx 13.8\ \text{km/s} ✓

問4 · 変化するトルクによる角力積

条件: t=0t = 0 で、固定点 SS のまわりの粒子の角運動量は LS,z=5 kg⋅m2/sL_{S,z} = 5\ \text{kg}\cdot\text{m}^2/\text{s} です。t=0t = 0 から t=3 st = 3\ \text{s} まで、SS のまわりの合計のトルクは τS,z(t)=(4−2t) N⋅m\tau_{S,z}(t) = (4 - 2t)\ \text{N}\cdot\text{m} です。t=3 st = 3\ \text{s} での LS,zL_{S,z} を求めてください。

✅ 正解です! JS,z=∫03(4−2t) dt=3 N⋅m⋅sJ_{S,z} = \int_0^3 (4 - 2t)\,dt = 3\ \text{N}\cdot\text{m}\cdot\text{s} なので、LS,zL_{S,z} は 55 から 88 に増えます。
❌ トルクは一定ではありません。 τS,z(3)⋅3=−6\tau_{S,z}(3)\cdot 3 = -6 は、区間全体に終わりのトルクを使っています。かわりに積分しましょう。
❌ トルクは一定ではありません。 τS,z(0)⋅3=12\tau_{S,z}(0)\cdot 3 = 12 は、区間全体に初めのトルクを使っています。トルクは t=2 st = 2\ \text{s} で0まで下がり、その後は負になります。
❌ それは LS,zL_{S,z} ではなく ΔLS,z\Delta L_{S,z} です。 角力積は変化です。初めの 5 kg⋅m2/s5\ \text{kg}\cdot\text{m}^2/\text{s} に足しましょう。
❌ 惜しい! トルクを区間全体で積分し、その結果を LS,z(0)L_{S,z}(0) に足しましょう。
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SS のまわりの角力積は、SS のまわりの角運動量の変化に等しくなります。

JS,z=∫03(4−2t) dt=[4t−t2]03=12−9=3 N⋅m⋅s.J_{S,z} = \int_0^{3} (4 - 2t)\,dt = \Big[4t - t^2\Big]_0^{3} = 12 - 9 = 3\ \text{N}\cdot\text{m}\cdot\text{s}. LS,z(3)=LS,z(0)+JS,z=5+3=8 kg⋅m2/s.L_{S,z}(3) = L_{S,z}(0) + J_{S,z} = 5 + 3 = 8\ \text{kg}\cdot\text{m}^2/\text{s}.

図形で見ると、00 から 2 s2\ \text{s} までの正の面積が 44、22 から 3 s3\ \text{s} までの負の面積が −1-1 で、正味 +3+3 です。

正解数:0 / 4