古典力学 · 第24回 · 動画5 · インタラクティブ教材

重心を動かし、そのまわりに回す:転がる物体の運動エネルギーとシャールの定理

I重要な公式

公式名称必要なもの
K=∑i12mivcm,i2+12mTVcm2K = \sum_i \tfrac{1}{2} m_i v_{cm,i}^2 + \tfrac{1}{2} m_T V_{cm}^2運動エネルギーの分解どんな質点系でもよい。∑imiv⃗cm,i=0⃗\sum_i m_i \vec{v}_{cm,i} = \vec{0} なので交差項が消える
Ktotal=12mTVcm2+12Icm ωcm2K_{\text{total}} = \tfrac{1}{2} m_T V_{cm}^2 + \tfrac{1}{2} I_{cm}\,\omega_{cm}^2剛体:並進 + 回転重心(質量中心)を通り、向きの変わらない軸のまわりの回転
Vcm=R ωcm,  Icm=12MR2  ⇒  K=34MVcm2V_{cm} = R\,\omega_{cm},\ \ I_{cm} = \tfrac{1}{2}MR^2 \;\Rightarrow\; K = \tfrac{3}{4}MV_{cm}^2転がる一様な円板すべらずに転がること
dr⃗cm,1=μm1 dr⃗1,2,  dr⃗cm,2=−μm2 dr⃗1,2d\vec{r}_{cm,1} = \dfrac{\mu}{m_1}\,d\vec{r}_{1,2},\ \ d\vec{r}_{cm,2} = -\dfrac{\mu}{m_2}\,d\vec{r}_{1,2}シャールの定理の中心となるステップμ=m1m2m1+m2\mu = \dfrac{m_1 m_2}{m_1+m_2},  dr⃗i=dR⃗cm+dr⃗cm,i\ d\vec{r}_i = d\vec{R}_{cm} + d\vec{r}_{cm,i}

ポイント: 運動とエネルギーは同じ線で分かれます。剛体の微小な変位は重心の並進とそのまわりの回転の和で、運動エネルギーは前者の 12mTVcm2\tfrac{1}{2}m_T V_{cm}^2 と後者の 12Icmωcm2\tfrac{1}{2}I_{cm}\omega_{cm}^2 の和になり、交差項はありません。エネルギーの分け方だけなら、剛体である必要はありません。

II可視化1 — どんな系でも成り立つ分解

どんな粒子の集まりでも、KK は重心のまわりのエネルギーと 12mTVcm2\tfrac{1}{2}m_T V_{cm}^2 の和で、交差項はありません。

💡 ここでは粒子どうしを何も結びつけていません。同じ分け方が、気体にも、ブレイクショットのあとのビリヤードの球にも、爆竹の破片にも当てはまります。そして、慣性系によって変わるのは 12mTVcm2\tfrac{1}{2}m_T V_{cm}^2 の項だけです。

III可視化2 — 転がる円板

すべらずに転がると、どの点も V⃗cm\vec{V}_{cm} と重心のまわりの回転を合わせた運動をするので、円板のエネルギーは 2/3 と 1/3 に分かれます。

IV可視化3 — シャールの定理:二つの粒子、一つの角度

二つの粒子の一歩は、重心の一歩 dR⃗cmd\vec{R}_{cm} と各粒子の重心のまわりの一歩の和です。距離が一定なら、後者は一つの角度 dθd\theta の回転になります。

💡 一歩は拡大して描いています。関係式はどれも変位について一次です。定理を完全に示すには、さらに物体のすべての粒子が、共通の一つの角度だけ、物体の重心を通る共通の一本の軸のまわりに回ることが必要です。

V確認クイズ

問1 · 転がる円板の運動エネルギー

条件: 質量 M=4 kgM = 4\ \text{kg}、半径 R=0.3 mR = 0.3\ \text{m} の中身の詰まった一様な円板が、中心の速さ Vcm=3 m/sV_{cm} = 3\ \text{m/s} ですべらずに転がっています。全運動エネルギーを求めてください。

✅ 正解です! K=12MVcm2+14MVcm2=34(4)(3)2=27 JK = \tfrac{1}{2}MV_{cm}^2 + \tfrac{1}{4}MV_{cm}^2 = \tfrac{3}{4}(4)(3)^2 = 27\ \text{J} です。半径はまったく入ってきません。
❌ 並進の部分だけです。 12MVcm2=18 J\tfrac{1}{2}MV_{cm}^2 = 18\ \text{J} は重心の項です。円板は重心のまわりにも回っているので、12Icmωcm2\tfrac{1}{2}I_{cm}\omega_{cm}^2 が加わります。
❌ 回転の部分だけです。 12Icmωcm2=14MVcm2=9 J\tfrac{1}{2}I_{cm}\omega_{cm}^2 = \tfrac{1}{4}MV_{cm}^2 = 9\ \text{J} は重心のまわりのエネルギーです。重心の項 12MVcm2\tfrac{1}{2}MV_{cm}^2 を足しましょう。
❌ 慣性モーメントを確かめましょう。 36 J36\ \text{J} は薄い輪の Icm=MR2I_{cm} = MR^2 を使った値です。一様な円板では Icm=12MR2I_{cm} = \tfrac{1}{2}MR^2 です。
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すべらずに転がるので ωcm=Vcm/R=10 rad/s\omega_{cm} = V_{cm}/R = 10\ \text{rad/s}、また Icm=12MR2=12(4)(0.3)2=0.18 kg⋅m2I_{cm} = \tfrac{1}{2}MR^2 = \tfrac{1}{2}(4)(0.3)^2 = 0.18\ \text{kg}\cdot\text{m}^2 です。

K=12MVcm2+12Icmωcm2=12(4)(3)2+12(0.18)(10)2=18+9=27 JK = \tfrac{1}{2}MV_{cm}^2 + \tfrac{1}{2}I_{cm}\omega_{cm}^2 = \tfrac{1}{2}(4)(3)^2 + \tfrac{1}{2}(0.18)(10)^2 = 18 + 9 = 27\ \text{J}

同じことですが、K=34MVcm2=34(4)(9)=27 JK = \tfrac{3}{4}MV_{cm}^2 = \tfrac{3}{4}(4)(9) = 27\ \text{J} で、2/3 が並進、1/3 が回転です。

問2 · 爆竹

条件: 2 kg2\ \text{kg} の爆竹が摩擦のない床の上を 5 m/s5\ \text{m/s} ですべり、爆発して 1 kg1\ \text{kg} の2つの破片に分かれます。爆発の直後、どちらの破片ももとの直線に沿って、8 m/s8\ \text{m/s} と 2 m/s2\ \text{m/s} で動きます。爆発直後の、重心のまわりの運動の運動エネルギーを求めてください。

✅ 正解です! 重心系では破片は ±3 m/s\pm 3\ \text{m/s} で動くので、∑i12mivcm,i2=9 J\sum_i \tfrac{1}{2}m_i v_{cm,i}^2 = 9\ \text{J} です。全体は 9+25=34 J9 + 25 = 34\ \text{J} になります。
❌ 運動量とエネルギーは別物です。 重心系での全運動量はゼロで、そのために交差項が消えます。しかし重心系でも破片は動いているので、そこでの運動エネルギーは正です。
❌ それはもう一方の項です。 12mTVcm2=12(2)(5)2=25 J\tfrac{1}{2}m_T V_{cm}^2 = \tfrac{1}{2}(2)(5)^2 = 25\ \text{J} は重心の運動のエネルギーで、内部の爆発では変わりません。
❌ それは全体の値です。 12(1)(8)2+12(1)(2)2=34 J\tfrac{1}{2}(1)(8)^2 + \tfrac{1}{2}(1)(2)^2 = 34\ \text{J} には重心の運動が含まれています。12mTVcm2\tfrac{1}{2}m_T V_{cm}^2 を引きましょう。
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爆発は内部の現象なので、重心の速度は変わりません。

Vcm=(1)(8)+(1)(2)2=5 m/sV_{cm} = \frac{(1)(8) + (1)(2)}{2} = 5\ \text{m/s}

重心に対して、破片は vcm,1=8−5=3 m/sv_{cm,1} = 8 - 5 = 3\ \text{m/s} と vcm,2=2−5=−3 m/sv_{cm,2} = 2 - 5 = -3\ \text{m/s} で動きます。

∑i12mivcm,i2=12(1)(3)2+12(1)(3)2=9 J\sum_i \tfrac{1}{2}m_i v_{cm,i}^2 = \tfrac{1}{2}(1)(3)^2 + \tfrac{1}{2}(1)(3)^2 = 9\ \text{J}

確認:12mTVcm2=25 J\tfrac{1}{2}m_T V_{cm}^2 = 25\ \text{J} で、25+9=34 J=12(1)(8)2+12(1)(2)225 + 9 = 34\ \text{J} = \tfrac{1}{2}(1)(8)^2 + \tfrac{1}{2}(1)(2)^2 です。爆発の前は K=25 JK = 25\ \text{J} で、重心のまわりの部分はありませんでした。爆発が加えた 9 J9\ \text{J} は、すべて重心のまわりの項に入ります。

問3 · 二つの粒子に共通の角度

条件: 剛体の二つの粒子 m1=3 kgm_1 = 3\ \text{kg} と m2=1 kgm_2 = 1\ \text{kg} が、∣r⃗1,2∣=0.8 m|\vec{r}_{1,2}| = 0.8\ \text{m} 離れています。微小な変位で、粒子1は二つの粒子の重心のまわりに ∣dr⃗cm,1∣=1.0 mm|d\vec{r}_{cm,1}| = 1.0\ \text{mm} 動きます。粒子2の重心からの距離と、重心のまわりの一歩の長さを求めてください。

∣r⃗cm,2∣|\vec{r}_{cm,2}| はいくらですか?

∣dr⃗cm,2∣|d\vec{r}_{cm,2}| はいくらですか?

✅ 正解です! どちらの粒子も、重心のまわりに dθ=1.0 mm/0.2 m=3.0 mm/0.6 m=0.005 radd\theta = 1.0\ \text{mm}/0.2\ \text{m} = 3.0\ \text{mm}/0.6\ \text{m} = 0.005\ \text{rad} だけ回ります。
❌ 距離を確かめましょう。 ∣r⃗cm,2∣=μm2∣r⃗1,2∣|\vec{r}_{cm,2}| = \dfrac{\mu}{m_2}|\vec{r}_{1,2}| を、μ=m1m2m1+m2\mu = \dfrac{m_1 m_2}{m_1 + m_2} として使います。
❌ それは粒子1の距離です。 重い粒子ほど重心の近くにあります。m1∣r⃗cm,1∣=m2∣r⃗cm,2∣m_1|\vec{r}_{cm,1}| = m_2|\vec{r}_{cm,2}| なので、軽い粒子2は3倍遠くにあります。
❌ 一歩を確かめましょう。 どちらの粒子も同じ dθd\theta だけ回るので、重心のまわりの一歩は、その粒子の重心からの距離に比例します。
❌ 一歩が等しいなら並進になってしまいます。 重心のまわりの一歩は m1 dr⃗cm,1=−m2 dr⃗cm,2m_1\,d\vec{r}_{cm,1} = -m_2\,d\vec{r}_{cm,2} を満たすので、質量が違えば等しくなりません。
❌ 比が逆です。 粒子2のほうが重心から遠いので、同じ角度ならより長く動きます。∣dr⃗cm,2∣=m1m2∣dr⃗cm,1∣|d\vec{r}_{cm,2}| = \dfrac{m_1}{m_2}|d\vec{r}_{cm,1}| です。
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換算質量は μ=(3)(1)3+1=34 kg\mu = \dfrac{(3)(1)}{3+1} = \tfrac{3}{4}\ \text{kg} なので、

∣r⃗cm,1∣=μm1∣r⃗1,2∣=14(0.8)=0.2 m,∣r⃗cm,2∣=μm2∣r⃗1,2∣=34(0.8)=0.6 m|\vec{r}_{cm,1}| = \frac{\mu}{m_1}|\vec{r}_{1,2}| = \frac{1}{4}(0.8) = 0.2\ \text{m}, \qquad |\vec{r}_{cm,2}| = \frac{\mu}{m_2}|\vec{r}_{1,2}| = \frac{3}{4}(0.8) = 0.6\ \text{m}

確認:m1∣r⃗cm,1∣=0.6=m2∣r⃗cm,2∣m_1|\vec{r}_{cm,1}| = 0.6 = m_2|\vec{r}_{cm,2}| です。dr⃗cm,1=μm1dr⃗1,2d\vec{r}_{cm,1} = \dfrac{\mu}{m_1}d\vec{r}_{1,2} と dr⃗cm,2=−μm2dr⃗1,2d\vec{r}_{cm,2} = -\dfrac{\mu}{m_2}d\vec{r}_{1,2} から、

∣dr⃗cm,2∣=m1m2 ∣dr⃗cm,1∣=3(1.0 mm)=3.0 mm|d\vec{r}_{cm,2}| = \frac{m_1}{m_2}\,|d\vec{r}_{cm,1}| = 3(1.0\ \text{mm}) = 3.0\ \text{mm}

どちらも一つの角度だけ回ります:dθ=1.0 mm200 mm=3.0 mm600 mm=0.005 radd\theta = \dfrac{1.0\ \text{mm}}{200\ \text{mm}} = \dfrac{3.0\ \text{mm}}{600\ \text{mm}} = 0.005\ \text{rad} です。

問4 · 斜面を転がり落ちる

条件: 中身の詰まった一様な円板が静止状態から動き出し、斜面をすべらずに転がり落ちて、中心が h=0.6 mh = 0.6\ \text{m} 下がります。接触点は瞬間的に静止しているので、そこにはたらく静止摩擦力は仕事をしません。g=9.8 m/s2g = 9.8\ \text{m/s}^2 として、斜面の下での速さ VcmV_{cm} を求めてください。

✅ 正解です! 34MVcm2=Mgh\tfrac{3}{4}MV_{cm}^2 = Mgh から Vcm=4gh/3=2.80 m/sV_{cm} = \sqrt{4gh/3} = 2.80\ \text{m/s} です。解放されたエネルギーの 1/3 は回転に使われます。
❌ それはすべり落ちるブロックの場合です。 2gh\sqrt{2gh} は MghMgh をすべて並進に回した値です。転がる円板は、回転のエネルギー 14MVcm2\tfrac{1}{4}MV_{cm}^2 ももたなければなりません。
❌ それは薄い輪の場合です。 gh\sqrt{gh} は K=MVcm2K = MV_{cm}^2、つまり Icm=MR2I_{cm} = MR^2 から出てきます。円板では Icm=12MR2I_{cm} = \tfrac{1}{2}MR^2 です。
❌ それは中身の詰まった球の場合です。 10gh/7\sqrt{10gh/7} は Icm=25MR2I_{cm} = \tfrac{2}{5}MR^2 から出てきます。円板では Icm=12MR2I_{cm} = \tfrac{1}{2}MR^2 です。
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仕事をする力は重力だけなので、力学的エネルギーは保存されます。転がりの条件から ωcm=Vcm/R\omega_{cm} = V_{cm}/R で、斜面の下での円板の運動エネルギーは

K=12MVcm2+12(12MR2)(VcmR)2=34MVcm2K = \tfrac{1}{2}MV_{cm}^2 + \tfrac{1}{2}\big(\tfrac{1}{2}MR^2\big)\Big(\frac{V_{cm}}{R}\Big)^2 = \tfrac{3}{4}MV_{cm}^2

34MVcm2=Mgh\tfrac{3}{4}MV_{cm}^2 = Mgh とおくと、

Vcm=4gh3=4(9.8)(0.6)3=7.84=2.80 m/sV_{cm} = \sqrt{\frac{4gh}{3}} = \sqrt{\frac{4(9.8)(0.6)}{3}} = \sqrt{7.84} = 2.80\ \text{m/s}

質量と半径は約分されるので、一様な円板ならどれも同じ速さで下に着きます。

正解数:0 / 4