古典力学 · 第25回 · 動画2 · インタラクティブ教材

一押しで並進と回転:剛体の運動方程式・仕事とエネルギー・角力積

I重要な公式

公式名称意味
F⃗ ext=mA⃗cm\vec{F}^{\,\text{ext}} = m\vec{A}_{\text{cm}}並進力が物体のどこにはたらいても、A⃗cm\vec{A}_{\text{cm}} は同じです
τcm,z ext=Icm αcm,z\tau_{\text{cm},z}^{\,\text{ext}} = I_{\text{cm}}\,\alpha_{\text{cm},z}重心のまわりの回転重心(質量中心)を通る向きの変わらない軸のまわりの回転に使います。重心が加速していても成り立ちます
W=ΔKtrans+ΔKrot,K=12mVcm2+12Icm ωcm2W = \Delta K_{\text{trans}} + \Delta K_{\text{rot}}, \quad K = \tfrac{1}{2}mV_{\text{cm}}^2 + \tfrac{1}{2}I_{\text{cm}}\,\omega_{\text{cm}}^2仕事とエネルギーの関係2つの時刻の速さを結びつけます。力の仕事は、作用点の変位で計算します
FΔt=m ΔVcm,∫τcm dt=Icm ΔωF\Delta t = m\,\Delta V_{\text{cm}}, \quad \int \tau_{\text{cm}}\,dt = I_{\text{cm}}\,\Delta\omega力積と角力積短い一押しが重心を動かし、同時に物体を重心のまわりに回します

ポイント: 打撃を受けた棒(A に 2M2M、B に MM、長さ DD、B に力積 FΔtF\Delta t)では、Vcm=FΔt3MV_{\text{cm}} = \dfrac{F\Delta t}{3M}、Icm=23MD2I_{\text{cm}} = \tfrac{2}{3}MD^2、ω=FΔtMD\omega = \dfrac{F\Delta t}{MD} で、運動エネルギー (FΔt)22M\dfrac{(F\Delta t)^2}{2M} の3分の2が回転の分です。

IIどこを押すか

同じ力積なら、いつでも Vcm=FΔt/3MV_{\text{cm}} = F\Delta t/3M です。スピンを決めるのは、重心のまわりのモーメントアーム hh だけです。

III仕事は作用点の変位で決まる

押している間に力がする仕事は、FF と B が動く距離の積です。この仕事が、スピンのエネルギーもまかないます。

💡 押す時間は短いので、力がはたらいている間、棒はほとんど回りません。力は棒に垂直なままでモーメントアームは 23D\tfrac{2}{3}D のまま、B の速さは tt に比例して増えていきます。

IV軌道の部分とスピンの部分の和はゼロ

B の最初の位置 O のまわりでは角運動量はゼロのままなので、軌道の部分とスピンの部分が打ち消し合います。

V確認クイズ

問1 · 角を押す

条件: 質量 3.0 kg3.0\ \text{kg} の板が宇宙空間に浮かんでいます。板に垂直な 6.0 N6.0\ \text{N} の力が、板の角の1つを押します。その瞬間の板の重心の加速度を求めてください。

✅ 正解です! F⃗ ext=mA⃗cm\vec{F}^{\,\text{ext}} = m\vec{A}_{\text{cm}} は、力がどこにはたらくかによりません。Acm=6.0/3.0=2.0 m/s2A_{\text{cm}} = 6.0/3.0 = 2.0\ \text{m/s}^2 です。
❌ 惜しい! 外力の合力がはたらけば、重心は必ず加速します。作用点が決めるのは、物体が回転もするかどうかだけです。
❌ 惜しい!力が「使われて減る」ことはありません。 並進の運動方程式は、作用点がどこでもそのまま成り立ちます。回転は重心のまわりのトルクから生じ、それは別の式です。
❌ 惜しい! IcmI_{\text{cm}} とモーメントアームが入るのは、回転の運動方程式 τcm,z=Icmαcm,z\tau_{\text{cm},z} = I_{\text{cm}}\alpha_{\text{cm},z} だけです。重心の加速度に必要なのは、力と質量だけです。
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剛体の運動量は mV⃗cmm\vec{V}_{\text{cm}} で、mm は一定です。したがって、

F⃗ ext=mA⃗cm⇒Acm=6.0 N3.0 kg=2.0 m/s2.\vec{F}^{\,\text{ext}} = m\vec{A}_{\text{cm}} \quad\Rightarrow\quad A_{\text{cm}} = \frac{6.0\ \text{N}}{3.0\ \text{kg}} = 2.0\ \text{m/s}^2.

同じ力で重心を通るように押しても、AcmA_{\text{cm}} は同じです。角を押すと重心のまわりの角加速度が加わりますが、AcmA_{\text{cm}} が小さくなるわけではありません。

問2 · 重心から測る

条件: 打撃を受けた棒で、M=0.50 kgM = 0.50\ \text{kg}(つまり A は 1.0 kg1.0\ \text{kg}、B は 0.50 kg0.50\ \text{kg})、D=0.60 mD = 0.60\ \text{m} とし、B に棒と垂直な力積 FΔt=0.90 N⋅sF\Delta t = 0.90\ \text{N}\cdot\text{s} を加えます。押したあとの角速度の大きさを求めてください。

✅ 正解です! 角力積 23D FΔt=0.36 N⋅m⋅s\tfrac{2}{3}D\,F\Delta t = 0.36\ \text{N}\cdot\text{m}\cdot\text{s} を Icm=0.12 kg⋅m2I_{\text{cm}} = 0.12\ \text{kg}\cdot\text{m}^2 で割ると、3.0 rad/s=FΔt/MD3.0\ \text{rad/s} = F\Delta t/MD になります。
❌ 惜しい!棒の中点ではなく、重心を使いましょう。 モーメントアームも慣性モーメントも、重心のまわりでとる必要があります。重心は中点より D/6D/6 上、重いほうの質量寄りにあります。
❌ モーメントアームを確かめましょう。 B は重心より 23D=0.40 m\tfrac{2}{3}D = 0.40\ \text{m} 下にあります。D/2=0.30 mD/2 = 0.30\ \text{m} ではありません。トルクは重心のまわりでとります。
❌ モーメントアームを確かめましょう。 回転の運動方程式では重心のまわりのトルクを使うので、うでの長さは重心から B までの距離 23D\tfrac{2}{3}D です。棒全体の長さ DD ではありません。
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重心の位置:B から 23D=0.40 m\tfrac{2}{3}D = 0.40\ \text{m} 上、A から 13D=0.20 m\tfrac{1}{3}D = 0.20\ \text{m} 下です。

Icm=(1.0)(0.20)2+(0.50)(0.40)2=0.04+0.08=0.12 kg⋅m2=23MD2.I_{\text{cm}} = (1.0)(0.20)^2 + (0.50)(0.40)^2 = 0.04 + 0.08 = 0.12\ \text{kg}\cdot\text{m}^2 = \tfrac{2}{3}MD^2.

重心のまわりの角力積は、スピン角運動量の変化に等しくなります。

23D FΔt=(0.40)(0.90)=0.36=Icm ω⇒ω=0.360.12=3.0 rad/s.\tfrac{2}{3}D\,F\Delta t = (0.40)(0.90) = 0.36 = I_{\text{cm}}\,\omega \quad\Rightarrow\quad \omega = \frac{0.36}{0.12} = 3.0\ \text{rad/s}.

公式で確かめると、ω=FΔtMD=0.90(0.50)(0.60)=3.0 rad/s\omega = \dfrac{F\Delta t}{MD} = \dfrac{0.90}{(0.50)(0.60)} = 3.0\ \text{rad/s} です。

問3 · エネルギーはどこから来るか

条件: 問2と同じ棒と力積です(M=0.50 kgM = 0.50\ \text{kg}、D=0.60 mD = 0.60\ \text{m}、FΔt=0.90 N⋅sF\Delta t = 0.90\ \text{N}\cdot\text{s}、ω=3.0 rad/s\omega = 3.0\ \text{rad/s})。押したあとの並進の運動エネルギーと、力がした仕事を求めてください。

並進の運動エネルギーは?

力がした仕事は?

✅ 正解です! Ktrans=0.27 JK_{\text{trans}} = 0.27\ \text{J}、Krot=0.54 JK_{\text{rot}} = 0.54\ \text{J} で、作用点で計算した力の仕事 0.81 J0.81\ \text{J} が両方をまかないます。
❌ KtransK_{\text{trans}} を確かめましょう。 全質量 3M=1.5 kg3M = 1.5\ \text{kg} と Vcm=FΔt/3M=0.60 m/sV_{\text{cm}} = F\Delta t/3M = 0.60\ \text{m/s} を使いましょう。
❌ 惜しい! FΔt/M=1.8 m/sF\Delta t/M = 1.8\ \text{m/s} は押したあとの B の速さで、重心の速さではありません。力積が変えるのは、3M3M 全体の運動量です。
❌ 仕事を確かめましょう。 仕事とエネルギーの関係から W=Ktrans+KrotW = K_{\text{trans}} + K_{\text{rot}} です(静止から始まるので)。
❌ 惜しい!それは FF と重心の変位の積です。 これで得られるのは KtransK_{\text{trans}} だけです。力の仕事は、作用点 B の変位で計算します。
❌ 惜しい! 押している間、B の速さは 00 から 1.8 m/s1.8\ \text{m/s} まで一定の割合で増えるので、進む距離は 12(1.8)Δt\tfrac{1}{2}(1.8)\Delta t です。(1.8)Δt(1.8)\Delta t ではありません。
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並進: Vcm=FΔt3M=0.901.5=0.60 m/sV_{\text{cm}} = \dfrac{F\Delta t}{3M} = \dfrac{0.90}{1.5} = 0.60\ \text{m/s} なので、

Ktrans=12(1.5)(0.60)2=0.27 J=(FΔt)26M.K_{\text{trans}} = \tfrac{1}{2}(1.5)(0.60)^2 = 0.27\ \text{J} = \frac{(F\Delta t)^2}{6M}.

回転: Krot=12Icm ω2=12(0.12)(3.0)2=0.54 JK_{\text{rot}} = \tfrac{1}{2}I_{\text{cm}}\,\omega^2 = \tfrac{1}{2}(0.12)(3.0)^2 = 0.54\ \text{J} です。

仕事: 押し終わったときの B の速さは vB=Vcm+ω 23D=0.60+(3.0)(0.40)=1.8 m/sv_B = V_{\text{cm}} + \omega\,\tfrac{2}{3}D = 0.60 + (3.0)(0.40) = 1.8\ \text{m/s} で、速さは一定の割合で増えるので、B が進む距離は ΔxB=12vB Δt\Delta x_B = \tfrac{1}{2}v_B\,\Delta t です。

W=F ΔxB=12(FΔt) vB=12(0.90)(1.8)=0.81 J=0.27+0.54.W = F\,\Delta x_B = \tfrac{1}{2}(F\Delta t)\,v_B = \tfrac{1}{2}(0.90)(1.8) = 0.81\ \text{J} = 0.27 + 0.54.

問4 · 一端を打たれた一様な棒

条件: 質量 1.2 kg1.2\ \text{kg}、長さ 0.80 m0.80\ \text{m} の一様な棒が宇宙空間に浮かんでいます。棒に垂直な短い力積 J=0.60 N⋅sJ = 0.60\ \text{N}\cdot\text{s}が、棒の一端に加わります(Icm=112mL2I_{\text{cm}} = \tfrac{1}{12}mL^2)。押したあとの角速度の大きさと運動エネルギーを求めてください。

角速度の大きさは?

運動エネルギーは?

✅ 正解です! ω=6J/(mL)=3.75 rad/s\omega = 6J/(mL) = 3.75\ \text{rad/s} で、K=0.15+0.45=0.60 JK = 0.15 + 0.45 = 0.60\ \text{J} です。その4分の3が回転の分です。
❌ ω\omega を確かめましょう。 重心のまわりの角力積 J⋅L2J\cdot\tfrac{L}{2} が Icm ωI_{\text{cm}}\,\omega に等しくなります。ここで Icm=112mL2I_{\text{cm}} = \tfrac{1}{12}mL^2 です。
❌ 惜しい! 反対側の端を固定しているものはありません。自由な物体は重心のまわりに回るので、IcmI_{\text{cm}} とモーメントアーム L/2L/2 を使います。反対側の端のまわりの 13mL2\tfrac{1}{3}mL^2 と LL ではありません。
❌ モーメントアームを確かめましょう。 端は重心から L/2=0.40 mL/2 = 0.40\ \text{m} のところにあります。LL ではありません。
❌ 惜しい! FΔt/(MD)F\Delta t/(MD) は、2つの質量をつないだ棒の結果です。一様な棒では IcmI_{\text{cm}} もモーメントアームも違うので、J⋅L2=Icm ωJ\cdot\tfrac{L}{2} = I_{\text{cm}}\,\omega から計算し直しましょう。
❌ KK を確かめましょう。 12mVcm2\tfrac{1}{2}mV_{\text{cm}}^2 と 12Icm ω2\tfrac{1}{2}I_{\text{cm}}\,\omega^2 を足しましょう。
❌ 惜しい!それは並進の部分だけです。 スピンがさらに 12Icm ω2=0.45 J\tfrac{1}{2}I_{\text{cm}}\,\omega^2 = 0.45\ \text{J} をもっています。
❌ 惜しい! 押している間、打たれた端の速さは 00 から 2.0 m/s2.0\ \text{m/s} まで増えるので、仕事は 12J vend\tfrac{1}{2}J\,v_{\text{end}} です。J vendJ\,v_{\text{end}} ではありません。
解答を見る

並進: Vcm=J/m=0.60/1.2=0.50 m/sV_{\text{cm}} = J/m = 0.60/1.2 = 0.50\ \text{m/s} です。

回転: Icm=112(1.2)(0.80)2=0.064 kg⋅m2I_{\text{cm}} = \tfrac{1}{12}(1.2)(0.80)^2 = 0.064\ \text{kg}\cdot\text{m}^2、モーメントアームは L/2=0.40 mL/2 = 0.40\ \text{m} です。

J L2=Icm ω⇒ω=(0.60)(0.40)0.064=0.240.064=3.75 rad/s.J\,\tfrac{L}{2} = I_{\text{cm}}\,\omega \quad\Rightarrow\quad \omega = \frac{(0.60)(0.40)}{0.064} = \frac{0.24}{0.064} = 3.75\ \text{rad/s}.

エネルギー:

K=12(1.2)(0.50)2+12(0.064)(3.75)2=0.15+0.45=0.60 J.K = \tfrac{1}{2}(1.2)(0.50)^2 + \tfrac{1}{2}(0.064)(3.75)^2 = 0.15 + 0.45 = 0.60\ \text{J}.

仕事で確かめる: 打たれた端は vend=Vcm+ωL2=0.50+1.50=2.0 m/sv_{\text{end}} = V_{\text{cm}} + \omega\tfrac{L}{2} = 0.50 + 1.50 = 2.0\ \text{m/s} で動き出すので、W=12J vend=12(0.60)(2.0)=0.60 JW = \tfrac{1}{2}J\,v_{\text{end}} = \tfrac{1}{2}(0.60)(2.0) = 0.60\ \text{J} です。

正解数:0 / 4