古典力学 · 第25回 · 動画3 · インタラクティブ教材

カーブで外側の足が強く押す理由:質量中心のまわりのトルクはゼロ

I重要な公式

公式使う式決まるもの
r^: f1+f2=mv2Rk^: N1+N2=mg\hat{\mathbf{r}}:\ f_1 + f_2 = m\dfrac{v^2}{R} \qquad \hat{\mathbf{k}}:\ N_1 + N_2 = mg 重心(質量中心)についての F⃗ ext=m a⃗cm\vec{\mathbf{F}}^{\,\text{ext}} = m\,\vec{\mathbf{a}}_{\text{cm}} 摩擦力の和(向心力)と垂直抗力の和(重さ)
d2 (N1−N2)+L (f1+f2)=0\dfrac{d}{2}\,(N_1 - N_2) + L\,(f_1 + f_2) = 0 τ⃗cm total=0\vec{\tau}_{\text{cm}}^{\,\text{total}} = 0(倒れない。重心が加速していても成り立つ) 垂直抗力の差。摩擦力は和の形でしか入らない
N1,2=12(mg∓2Lmv2Rd)N_{1,2} = \dfrac{1}{2}\left(mg \mp \dfrac{2Lmv^2}{Rd}\right) 内側の足が N1N_1、外側の足が N2N_2 Lmv2Rd\dfrac{Lmv^2}{Rd} が内側の足から外側の足へ移る
vmax⁡=gRd2Lv_{\max} = \sqrt{\dfrac{gRd}{2L}} N1=0N_1 = 0(床は押せても引けない) 内側の足が浮く直前の最高速度。mm によらない

ポイント: 内向きの摩擦力は重心より高さ LL だけ低いところにはたらくので、この人を外側へ倒そうとするトルクを生じます。それを打ち消せるのは、外側の足にかかる余分な押す力 N2−N1=2Lmv2RdN_2 - N_1 = \dfrac{2Lmv^2}{Rd} だけです。

II可視化1 — 速くなると荷重が移る

vv が大きくなると、同じ量 Lmv2/(Rd)Lmv^2/(Rd) が内側の足から外側の足へ移ります。

III可視化2 — 重心のまわりのトルクのつり合い

v=8v = 8 m/s のとき、重心のまわりのトルクをゼロにする両足への重さの分け方は、1通りしかありません。

💡 割合のスライダーを動かしても、正味のトルクは変わりません。摩擦力は f1+f2f_1 + f_2 の形でしか現れないので、3つの式で2つの垂直抗力はどちらも決まりますが、摩擦力は1つずつは決まりません。

IV可視化3 — 最高速度を決めるもの

内側の足の荷重は vmax⁡=gRd/(2L)v_{\max} = \sqrt{gRd/(2L)} でゼロになります。足の開き、重心の高さ、カーブの半径のどれを変えても、この速さは変わります。

V確認クイズ

問1 · 外側の足にかかる荷重

条件: 質量 6060 kg の乗客が、半径 R=40R = 40 m の傾斜のないカーブを v=6v = 6 m/s で回る列車の中で、進行方向を向いて立っています。両足の間隔は d=0.40d = 0.40 m で、重心は両足のちょうど真ん中、床から L=1.0L = 1.0 m の高さにあります。g=9.8g = 9.8 m/s² とします。外側の足にはたらく垂直抗力 N2N_2 を求めてください。

✅ 正解です! 体重の半分 294294 N に、移ってくる Lmv2Rd=135\dfrac{Lmv^2}{Rd} = 135 N を足すと N2=429N_2 = 429 N です。内側の足には N1=159N_1 = 159 N が残ります。
❌ それは内側の足です。 159159 N =294−135= 294 - 135 N は N1N_1 です。外側の足は、内側の足が失う 135135 N を受け取ります。
❌ 移る量を確かめましょう。 移した量が Lmv22Rd=67.5\dfrac{Lmv^2}{2Rd} = 67.5 N になっています。トルクの式からは N2−N1=2Lmv2Rd=270N_2 - N_1 = \dfrac{2Lmv^2}{Rd} = 270 N が得られるので、それぞれの足はその半分の 135135 N だけ変わります。
❌ 係数 12\tfrac{1}{2} が抜けています。 N2=12(mg+2Lmv2Rd)N_2 = \tfrac{1}{2}\left(mg + \dfrac{2Lmv^2}{Rd}\right) です。差 270270 N は2つの足に分けられるので、N2=294+135N_2 = 294 + 135 N です。294+270294 + 270 N ではありません。
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重さは mg=60×9.8=588mg = 60 \times 9.8 = 588 N で、動径方向の式から摩擦力の和は f1+f2=mv2R=60×3640=54f_1 + f_2 = \dfrac{mv^2}{R} = \dfrac{60 \times 36}{40} = 54 N です。

重心のまわりのトルクがゼロ、つまり d2(N1−N2)+L(f1+f2)=0\dfrac{d}{2}(N_1 - N_2) + L(f_1 + f_2) = 0 から、

N2−N1=2L(f1+f2)d=2×1.0×540.40=270 N.N_2 - N_1 = \frac{2L(f_1 + f_2)}{d} = \frac{2 \times 1.0 \times 54}{0.40} = 270\ \text{N}.

N2+N1=mg=588N_2 + N_1 = mg = 588 N と合わせ、2つの式を足して2で割ると、

N2=12(588+270)=429 N,N1=12(588−270)=159 N.N_2 = \tfrac{1}{2}(588 + 270) = 429\ \text{N}, \qquad N_1 = \tfrac{1}{2}(588 - 270) = 159\ \text{N}.

言いかえると、Lmv2Rd=1.0×60×3640×0.40=135\dfrac{Lmv^2}{Rd} = \dfrac{1.0 \times 60 \times 36}{40 \times 0.40} = 135 N が内側の足から外側の足へ移ります。

問2 · 倒そうとするトルクはどこから来るか

条件: ある乗客が、外側の足が強く押すのは「重心に外向きの遠心力がはたらいて、自分を外側へ押すからだ」と言います。地面系で考え、この人の重心のまわりのトルクをとるとき、外側の足にかかる余分な押す力が実際に打ち消しているのはどのトルクですか。

✅ 正解です! 摩擦力は内向きで、重心より LL 低い床の位置にはたらくので、L(f1+f2)L(f_1 + f_2) はこの人を +θ^+\hat{\boldsymbol{\theta}} の向き、つまり後ろから見て時計回りに回します。逆向きに回すのは N2N_2 だけです。
❌ 惜しい! 重力は重心そのものにはたらくので、重心のまわりのモーメントアームはゼロで、トルクを生じません。
❌ 地面系には、そのような力は存在しません。 この人にはたらく水平な力は2つの摩擦力だけです。重心がカーブの中心に向かって加速しているので、その和は内向きです。
❌ トルクの式はやはり成り立ちます。 τ⃗cm total=dL⃗spin/dt\vec{\tau}_{\text{cm}}^{\,\text{total}} = d\vec{\mathbf{L}}_{\text{spin}}/dt は、重心が加速していても重心のまわりで成り立ちます。この人は倒れないので、スピン角運動量は一定で、重心のまわりのトルクの合計はゼロです。
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重心のまわりで、r^\hat{\mathbf{r}} を外向き、k^\hat{\mathbf{k}} を上向き、θ^\hat{\boldsymbol{\theta}} を進行方向にとると、

τ⃗cm,1=(d2N1+Lf1)θ^,τ⃗cm,2=(−d2N2+Lf2)θ^.\vec{\tau}_{\text{cm},1} = \left(\tfrac{d}{2}N_1 + L f_1\right)\hat{\boldsymbol{\theta}}, \qquad \vec{\tau}_{\text{cm},2} = \left(-\tfrac{d}{2}N_2 + L f_2\right)\hat{\boldsymbol{\theta}}.

重力は何も寄与しません(モーメントアームがゼロ)。足にはたらく4つの力のうち3つ、N1N_1、f1f_1、f2f_2 はこの人を +θ^+\hat{\boldsymbol{\theta}} の向きに回し、外側へ倒そうとします。引き戻すのは N2N_2 だけです。和をゼロとおくと、

d2(N2−N1)=L(f1+f2)=L mv2R.\tfrac{d}{2}(N_2 - N_1) = L(f_1 + f_2) = L\,\frac{mv^2}{R}.

右辺の摩擦力のトルクがあるからこそ、N2>N1N_2 \gt N_1 でなければなりません。外向きの力は必要なく、地面系にはそのような力は存在しません。

問3 · 最高速度とそのときの荷重

条件: 質量 6060 kg の乗客が両足の間隔 d=0.30d = 0.30 m で立ち、重心は床から L=0.90L = 0.90 m の高さにあります。列車は半径 R=60R = 60 m の傾斜のないカーブを走っています。g=9.8g = 9.8 m/s² とし、足はすべらないものとします。内側の足が浮く直前の最高速度と、その速さで外側の足にはたらく垂直抗力を求めてください。

vmax⁡v_{\max} はいくらですか。

N2N_2 はいくらですか(速さ vmax⁡v_{\max} のとき)。

✅ 正解です! vmax⁡=98≈9.90v_{\max} = \sqrt{98} \approx 9.90 m/s で、N1=0N_1 = 0 なので、外側の足が体重のすべて 588588 N を支えます。
❌ 係数2が抜けています。 N1=0N_1 = 0 は mg=2Lmv2Rdmg = \dfrac{2Lmv^2}{Rd} を意味するので、vmax⁡2=gRd2L=98v_{\max}^2 = \dfrac{gRd}{2L} = 98 m²/s² です。gRdL=196\dfrac{gRd}{L} = 196 m²/s² ではありません。
❌ dd と LL が入れ替わっています。 足を広げると vmax⁡v_{\max} は大きくなり、重心が高いと小さくなるので、dd は分子に入ります。vmax⁡=gRd/(2L)v_{\max} = \sqrt{gRd/(2L)} です。
❌ vmax⁡v_{\max} を確かめましょう。 N1=12(mg−2Lmv2Rd)=0N_1 = \tfrac{1}{2}\left(mg - \dfrac{2Lmv^2}{Rd}\right) = 0 とおいて vv について解きましょう。質量は約分されます。
❌ それは止まっているときの荷重です。 v=0v = 0 では、それぞれの足が 12mg=294\tfrac{1}{2}mg = 294 N を支えます。vmax⁡v_{\max} では、内側の足は何も支えません。
❌ 摩擦力は水平です。 686=588+98686 = 588 + 98 は摩擦力の和を重さに足していますが、鉛直方向の式 N1+N2=mgN_1 + N_2 = mg に摩擦力は入りません。
❌ N2N_2 を確かめましょう。 vmax⁡v_{\max} では N1=0N_1 = 0 です。N1+N2=mgN_1 + N_2 = mg を使いましょう。
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ステップ1:最高速度。 内側の足が浮くのは N1=12(mg−2Lmv2Rd)=0N_1 = \tfrac{1}{2}\left(mg - \dfrac{2Lmv^2}{Rd}\right) = 0 のときです。

vmax⁡=gRd2L=9.8×60×0.302×0.90=176.41.8=98≈9.90 m/s.v_{\max} = \sqrt{\frac{gRd}{2L}} = \sqrt{\frac{9.8 \times 60 \times 0.30}{2 \times 0.90}} = \sqrt{\frac{176.4}{1.8}} = \sqrt{98} \approx 9.90\ \text{m/s}.

ステップ2:外側の足。 鉛直方向の式 N1+N2=mgN_1 + N_2 = mg で N1=0N_1 = 0 とすると、N2=mg=60×9.8=588N_2 = mg = 60 \times 9.8 = 588 N です。

トルクの式で確かめる。 摩擦力の和は f1+f2=mvmax⁡2R=60×9860=98f_1 + f_2 = \dfrac{mv_{\max}^2}{R} = \dfrac{60 \times 98}{60} = 98 N で、N2−N1=2L(f1+f2)d=2×0.90×980.30=588N_2 - N_1 = \dfrac{2L(f_1 + f_2)}{d} = \dfrac{2 \times 0.90 \times 98}{0.30} = 588 N です。これは N1=0N_1 = 0、N2=588N_2 = 588 N と合っています。

問4 · 応用:車は倒れるか、すべるか

条件: 同じ解析は、傾斜のないカーブを走る車にも、足を車輪に置きかえれば当てはまります。左右の車輪の間隔(輪距) d=1.6d = 1.6 m、重心の高さ L=0.80L = 0.80 m、半径 R=50R = 50 m、タイヤと路面の静止摩擦係数 μs=0.80\mu_s = 0.80、g=9.8g = 9.8 m/s² です。摩擦力の合計は最大で μs(N1+N2)=μsmg\mu_s(N_1 + N_2) = \mu_s mg です。車が速くなっていくと、先に何が起こりますか。

✅ 正解です! すべり始めるのは μsgR≈19.8\sqrt{\mu_s gR} \approx 19.8 m/s で、倒れる速さ gRd/(2L)≈22.1\sqrt{gRd/(2L)} \approx 22.1 m/s より小さいからです。先に倒れるのは d2L<μs\dfrac{d}{2L} \lt \mu_s のときだけで、ここでは d2L=1.0>0.80\dfrac{d}{2L} = 1.0 \gt 0.80 です。
❌ 2つの限界を比べましょう。 22.122.1 m/s は倒れる速さですが、必要な摩擦力 mv2/Rmv^2/R は、それより前にすでに μsmg\mu_s mg を上回ってしまいます(速さが μsgR≈19.8\sqrt{\mu_s gR} \approx 19.8 m/s を超えたところで)。そのため、先にタイヤがすべります。
❌ 速さは合っていますが、起こることが違います。 μsgR≈19.8\sqrt{\mu_s gR} \approx 19.8 m/s は摩擦力が足りなくなる速さで、起こるのはすべりです。倒れる条件 N1=0N_1 = 0 からは 22.122.1 m/s が得られます。
❌ モーメントアームを確かめましょう。 15.715.7 m/s は、d/2d/2 を dd の代わりに使ったときの値です。それぞれの車輪は重心から d/2d/2 のところにあり、その半分はすでに vmax⁡=gRd/(2L)v_{\max} = \sqrt{gRd/(2L)} に組み込まれています。ここで dd は輪距全体です。
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倒れる場合: 重心のまわりのトルクがゼロという条件から乗客と同じ結果が得られ、N1=0N_1 = 0 となるのは次の速さです。

vtip=gRd2L=9.8×50×1.62×0.80=490≈22.1 m/s.v_{\text{tip}} = \sqrt{\frac{gRd}{2L}} = \sqrt{\frac{9.8 \times 50 \times 1.6}{2 \times 0.80}} = \sqrt{490} \approx 22.1\ \text{m/s}.

すべる場合: 動径方向の式から f1+f2=mv2Rf_1 + f_2 = \dfrac{mv^2}{R} が必要ですが、静止摩擦力が出せるのは最大で μs(N1+N2)=μsmg\mu_s(N_1 + N_2) = \mu_s mg です。

vskid=μsgR=0.80×9.8×50=392≈19.8 m/s.v_{\text{skid}} = \sqrt{\mu_s gR} = \sqrt{0.80 \times 9.8 \times 50} = \sqrt{392} \approx 19.8\ \text{m/s}.

vskid<vtipv_{\text{skid}} \lt v_{\text{tip}} なので、車は先にすべります。一般に vtip2vskid2=d2Lμs\dfrac{v_{\text{tip}}^2}{v_{\text{skid}}^2} = \dfrac{d}{2L\mu_s} なので、車両が先に倒れるのは d2L<μs\dfrac{d}{2L} \lt \mu_s のときだけです。輪距が狭い、重心が高い、タイヤのグリップがとても強い、といった場合です。

正解数:0 / 4