古典力学 · 第5回 · 動画3 · インタラクティブ教材

弦から弧へ:幾何学だけで導く v=rωv = r\omega

I重要な公式

公式 名称 説明
∣Δr∣=2rsin⁡ ⁣(Δθ2)\lvert\Delta\mathbf{r}\rvert = 2r\sin\!\left(\frac{\Delta\theta}{2}\right) 弦の長さ 直線の変位の厳密な長さ(どんな角でも成り立つ)
sin⁡x≈x\sin x \approx x 小角近似 xx が小さく、ラジアンで測ったときに成り立つ
∣Δr∣≈r Δθ\lvert\Delta\mathbf{r}\rvert \approx r\,\Delta\theta 弦 →\to 弧 Δθ→0\Delta\theta \to 0 のとき、弦の長さは弧の長さに近づく
v=rωv = r\omega 円運動の速さ 速さ = 半径 ×\times 角速度(ω=dθdt\omega = \frac{d\theta}{dt})

II可視化1 — 弦が弧になる

まっすぐな弦はいつも曲がった弧より短いですが、2本の半径のあいだの角が消えていくにつれて、両者は近づいていきます。

III可視化2 — なぜ sin⁡x≈x\sin x \approx x なのか

直線 y=xy = x は原点の近くでは y=sin⁡xy = \sin x にぴったり寄り添い、xx が大きくなるにつれて離れていきます。

💡 ずれ x−sin⁡x≈x3/6x - \sin x \approx x^{3}/6 は、捨てたテイラー級数の最初の項です。ですからこの近似は小さな xx ではきわめて正確で、ずれは3乗に比例して大きくなっていきます。

IV可視化3 — 速度はどちらを向くか

2つ目の位置が PP に向かって戻っていくにつれて、変位の弦は向きを変えて接線に重なっていきます。

💡 速度は Δr\Delta\mathbf{r} の向きを向くので、極限では接線に沿います。つまり半径に垂直で、θ^\hat\theta の向きです。

V確認クイズ

問1

長さ rr の2本の位置ベクトルが、小さな角 Δθ\Delta\theta をなしています。2本の先端を結ぶと変位 Δr\Delta\mathbf{r} が得られます。どんな角でも成り立つ、この弦の厳密な長さはどれでしょうか?

✅ 正解です!半分の角は、二等分した二等辺三角形から出てきます。

❌ 惜しい!それは弧の長さ(そして弦の小角近似)で、弦の厳密な長さではありません。

❌ 惜しい!直角三角形では半分の角 Δθ/2 を使い、弦はその対辺の2倍です。

解答を見る

解答:

2本の半径と弦は二等辺三角形をつくります。長さ rr の等しい2辺が、角 Δθ\Delta\theta をはさんでいます。角の二等分線を引いて2つの直角三角形に分けると、どちらも斜辺が rr、半分の角が Δθ/2\Delta\theta/2、対辺が ∣Δr∣/2\lvert\Delta\mathbf{r}\rvert / 2 です。

sin⁡ ⁣(Δθ2)=∣Δr∣/2r  ⟹    ∣Δr∣=2rsin⁡ ⁣(Δθ2)  \sin\!\left(\frac{\Delta\theta}{2}\right) = \frac{\lvert\Delta\mathbf{r}\rvert / 2}{r} \;\Longrightarrow\; \boxed{\;\lvert\Delta\mathbf{r}\rvert = 2r\sin\!\left(\frac{\Delta\theta}{2}\right)\;}

これはどんな角でも厳密に成り立ちます。r Δθr\,\Delta\theta という形は、小角近似を使ったあとに得られる近似にすぎません。

問2

小角近似 sin⁡x≈x\sin x \approx x を使うには、角 xx を特定の単位で測る必要があります。この近似が成り立つのは、どの単位でしょうか?

(ヒント:テイラー級数 sin⁡x=x−x33!+⋯\sin x = x - \frac{x^3}{3!} + \cdots を考えてみましょう。)

✅ 正解です!テイラー級数も、弧の長さ rΔθr\Delta\theta も、どちらもラジアンが前提です。

❌ 惜しい!度で測ると sin(30°) = 0.5 ≠ 30 です。級数の最初の項が x になるのは、x をラジアンで測ったときだけです。

解答を見る

解答:

テイラー級数 sin⁡x=x−x33!+x55!−⋯\sin x = x - \dfrac{x^3}{3!} + \dfrac{x^5}{5!} - \cdots が成り立つのは、xx をラジアンで測ったときだけです。最初の項だけを残すと sin⁡x≈x\sin x \approx x になります。

度を使うと、sin⁡x≈x\sin x \approx x はまったく成り立ちません。たとえば sin⁡(30∘)=0.5\sin(30^\circ) = 0.5 であって、3030 ではありません。∣Δr∣≈r Δθ\lvert\Delta\mathbf{r}\rvert \approx r\,\Delta\theta というすっきりした関係(そして最終的には v=rωv = r\omega)が成り立つのは、Δθ\Delta\theta をラジアンで測っているからです。弧の長さが単に r Δθr\,\Delta\theta になるのも、同じ理由です。

問3

弦の厳密な長さ ∣Δr∣=2rsin⁡(Δθ/2)\lvert\Delta\mathbf{r}\rvert = 2r\sin(\Delta\theta/2) から始めて、小角近似を使います。そのうえで速さ v=lim⁡Δt→0∣Δr∣Δtv = \lim_{\Delta t \to 0} \dfrac{\lvert\Delta\mathbf{r}\rvert}{\Delta t} をつくります。

ω=dθdt\omega = \dfrac{d\theta}{dt} とするとき、得られる速さはどれでしょうか?

✅ 正解です!定数 r を極限の外にくくり出すと、残るのは dθ/dt = ω です。

❌ 惜しい!|Δr| ≈ rΔθ を Δt で割って極限をとると r·(dθ/dt) = rω となります。r も ω も1乗です。

解答を見る

解答:

弦の厳密な長さに sin⁡(Δθ/2)≈Δθ/2\sin(\Delta\theta/2) \approx \Delta\theta/2 を使うと、2つの 22 が打ち消し合います。

∣Δr∣≈2r⋅Δθ2=r Δθ\lvert\Delta\mathbf{r}\rvert \approx 2r \cdot \frac{\Delta\theta}{2} = r\,\Delta\theta

次に、速さを求めるために極限をとります。

v=lim⁡Δt→0∣Δr∣Δt=lim⁡Δt→0r ΔθΔt=rlim⁡Δt→0ΔθΔt=r dθdt=rωv = \lim_{\Delta t \to 0} \frac{\lvert\Delta\mathbf{r}\rvert}{\Delta t} = \lim_{\Delta t \to 0} \frac{r\,\Delta\theta}{\Delta t} = r \lim_{\Delta t \to 0} \frac{\Delta\theta}{\Delta t} = r\,\frac{d\theta}{dt} = \boxed{r\omega}

半径 rr は定数なので極限の外にくくり出せ、残った極限は角速度 ω\omega の定義そのものです。

問4

正しいか誤りか:等速円運動では、速度ベクトルはいつも位置ベクトル r\mathbf{r}(半径)に垂直で、円の接線に沿った向きを向く。

✅ 正解です!接線は半径に垂直なので、v ⊥ r であり、v は θ̂ の向きを向きます。

❌ 惜しい!極限では弦は接線になり、接線は半径に垂直です。ですから、この主張は正しいのです。

解答を見る

解答:正しい。

Δt→0\Delta t \to 0 のとき、弦 Δr\Delta\mathbf{r} は向きを変えていき、粒子の位置での接線の上に重なります。速度は変位の向きを向くので、速度ベクトルはこの接線にそろいます。

円の接線は、接点での半径と必ず直交します。したがって v⊥r\mathbf{v} \perp \mathbf{r} であり、速度は θ^\hat\theta の向き、つまり円を回っていく運動の向きを指します。(その大きさは、問3で求めた速さ v=rωv = r\omega です。)

正解数:0 / 4