古典力学 · 第8回 · 動画2 · インタラクティブ教材

摩擦の二つの顔――動摩擦と静止摩擦、すべり出す瞬間

I重要な公式

公式名称説明
fk=μkNf_k = \mu_k N動摩擦決まった値。接触面積にも速さにもよらない
0≤fs≤(fs)max⁡0 \le f_s \le (f_s)_{\max}静止摩擦の範囲押す力に逆らうように大きさが変わる
(fs)max⁡=μsN(f_s)_{\max} = \mu_s N最大静止摩擦力すべり出す境目
μs>μk\mu_s > \mu_k係数の大小関係まずくっつき、それからすべる

ポイント:動摩擦は一つの決まった値ですが、静止摩擦は 00 から μsN\mu_s N までの範囲全体をとります。μs>μk\mu_s > \mu_k なので、静止している物体を動かし始めるには、すべり続けさせるよりも大きな力が必要です。

II動摩擦力 ∝ 垂直抗力

動摩擦力は、二つの面を押しつけ合う垂直抗力に比例して大きくなります。

fk=μkNf_k = \mu_k N には接触面積もすべる速さも現れません。寝かせて置いたブロックと、同じブロックを立てて置いたものには、まったく同じ動摩擦力がはたらきます。

III静止摩擦は大きさも向きも変える

静止摩擦は、加えた力に逆らうように大きくなり、向きも反転します。ただし、加えた力が上限を超えるまでです。

IVすべり出す瞬間

静止しているブロックを動かし、すべらせ始めるには、どれだけの力で押せばよいでしょうか。

💡 動き出すときとすべり続けるときのこの差が、スティックスリップ(付着とすべり)を生みます。黒板の上でチョークがきしむのも、弓でこすったバイオリンの弦が鳴るのも、これです。

V確認クイズ

問1 · 法則から動摩擦力を求める

条件: 木箱が水平な床の上をすべっています。μk=0.30\mu_k = 0.30、垂直抗力は N=200 NN = 200\text{ N} です。動摩擦力 fkf_k を求めてください。

✅ 正解です! fk=μkN=0.30×200=60 Nf_k = \mu_k N = 0.30 \times 200 = 60\text{ N} です。
❌ それは垂直抗力です。 係数を掛けてください:fk=μkN=0.30×200f_k = \mu_k N = 0.30 \times 200。
❌ 演算を確かめてください。 法則は割り算ではなく掛け算です。N/μkN / \mu_k ではなく fk=μkNf_k = \mu_k N です。
❌ 惜しい! fk=μkNf_k = \mu_k N を使い、0.300.30 に 200 N200\text{ N} を掛けてください。
解答を見る

動摩擦はダ・ヴィンチの法則に従います:

fk=μkN=0.30×200=60 Nf_k = \mu_k N = 0.30 \times 200 = 60\text{ N}

係数 μk\mu_k は単位をもたない数なので、垂直抗力に掛けると、ニュートン単位の力が得られます。

問2 · 静止摩擦力はいくら?

条件: 机の上に本が置かれていて、垂直抗力は N=40 NN = 40\text{ N}、μs=0.5\mu_s = 0.5、μk=0.3\mu_k = 0.3 です。本を 12 N12\text{ N} で水平に押しても動きません。静止摩擦力 fsf_s を求めてください。

✅ 正解です! 本はつり合っているので、静止摩擦力は押す力をちょうど打ち消します。fs=12 Nf_s = 12\text{ N} で、上限 (fs)max⁡=20 N(f_s)_{\max} = 20\text{ N} を十分に下回っています。
❌ それは最大値で、実際の値ではありません。 (fs)max⁡=μsN=20 N(f_s)_{\max} = \mu_s N = 20\text{ N} は静止摩擦が出せる最大の力です。押す力 12 N12\text{ N} はそれより小さいので、静止摩擦力は 12 N12\text{ N} までしか大きくなりません。
❌ ここでは静止摩擦はゼロではありません。 押していなければゼロですが、押す力に合わせて大きくなります。ここでは 12 N12\text{ N} を出して本を止めています。
❌ 惜しい! 本が動かないあいだ、静止摩擦力は加えた力に等しくなります。
解答を見る

まず上限を求めます:

(fs)max⁡=μsN=0.5×40=20 N(f_s)_{\max} = \mu_s N = 0.5 \times 40 = 20\text{ N}

押す力 12 N12\text{ N} はこの最大値より小さいので、本は動きません。

つり合いの条件:加速度がないので、静止摩擦力は押す力とちょうどつり合います:

fs=12 Nf_s = 12\text{ N}

静止摩擦力は(20 N20\text{ N} までの範囲で)必要なだけの値をとります。自動的に μsN\mu_s N になるわけではありません。

問3 · すべり出すほど強く押す

条件: 床の上に 100 N100\text{ N} の箱があり、μs=0.5\mu_s = 0.5、μk=0.35\mu_k = 0.35 です。箱を 60 N60\text{ N} で水平に押します。

箱はすべり始めるでしょうか。

すべり始めたあとの摩擦力はいくらでしょうか。

✅ 正解です! 押す力 60 N60\text{ N} が静止摩擦の上限 50 N50\text{ N} を上回るので、箱はすべり出し、摩擦力は動摩擦の値 fk=μkN=35 Nf_k = \mu_k N = 35\text{ N} に落ち着きます。
❌ 上限を確かめてください。 最大静止摩擦力は (fs)max⁡=μsN=0.5×100=50 N(f_s)_{\max} = \mu_s N = 0.5 \times 100 = 50\text{ N} です。押す力 60 N60\text{ N} はこれを超えるので、箱はすべります。
❌ 静止摩擦の最大値ではありません。 すべり始めると、摩擦力は動摩擦の値 fk=μkN=0.35×100=35 Nf_k = \mu_k N = 0.35 \times 100 = 35\text{ N} に下がります。
解答を見る

ステップ1 — 静止摩擦の上限を求める:

(fs)max⁡=μsN=0.5×100=50 N(f_s)_{\max} = \mu_s N = 0.5 \times 100 = 50\text{ N}

押す力 60 N60\text{ N} は 50 N50\text{ N} を超えるので、箱は動き出してすべります。

ステップ2 — すべっているあいだの動摩擦力:

fk=μkN=0.35×100=35 Nf_k = \mu_k N = 0.35 \times 100 = 35\text{ N}

摩擦力は静止摩擦の最大値 50 N50\text{ N} から動摩擦の値 35 N35\text{ N} へと一気に下がります。これが μs>μk\mu_s > \mu_k による落ち込みです。

問4 · 同じ質量、違う底面

条件: 同じれんが2個(質量も材質も同じ)を、同じ床の上で一定の速さで引きずります。れんがAは寝かせて置き(接触面積が大きい)、れんがBは立てて置きます(接触面積が小さい)。それぞれの動摩擦力 fAf_A と fBf_B を比べてください。

✅ 正解です! 同じ重さ → 同じ垂直抗力 → 同じ fk=μkNf_k = \mu_k N。接触面積も速さも法則には入っていません。
❌ 面積を増やしても摩擦は増えません。 ダ・ヴィンチの二つめの発見のとおり、fk=μkNf_k = \mu_k N には面積の項がないので、底面を2倍にしても摩擦力は変わりません。
❌ 圧力は大きくなりますが、摩擦力の合計は同じです。 底面が小さいと単位面積あたりに強く押しつけますが、fk=μkNf_k = \mu_k N は NN だけで決まり、それはどちらのれんがでも同じです。
❌ 速さは関係ありません。 クーロンが見いだしたように、ふつうのすべる速さの範囲では動摩擦は速さによらないので、どちらのれんがにも同じ fkf_k がはたらきます。
解答を見る

2個のれんがは質量が同じなので、どちらも同じ垂直抗力 NN で床を押しつけます。動摩擦力は

fk=μkN,f_k = \mu_k N,

で、面積の項も速さの項も含みません。れんがAは底面が広いので重さが広い面積に分散し(圧力が小さい)、れんがBは底面が狭いので重さが集中します(圧力が大きい)。それでも積 μkN\mu_k N は同じです。

したがって fA=fBf_A = f_B です。

正解数:0 / 4