古典力学 · 第9回 · 動画5 · インタラクティブ教材

片手で船をつなぎとめる――キャプスタン方程式

I重要な公式

公式名称説明
TB=TA e−μsθBAT_B = T_A\, e^{-\mu_s \theta_{BA}}キャプスタン方程式(オイラーのベルト公式)荷物側の張力、μs\mu_s、巻きつけ角 θBA\theta_{BA}(ラジアン)から、支える張力が決まる
dTdθ=−μsT\dfrac{dT}{d\theta} = -\mu_s T支配方程式張力が減る割合は張力そのものに比例する
N=T ΔθN = T\,\Delta\theta一切れにはたらく垂直抗力動径方向の力のつり合いから
fs=μsNf_s = \mu_s N最大静止摩擦力すべり出す寸前の条件

ポイント: 接触しているわずかな部分のそれぞれが取り去るのは、張力の決まった量ではなく、決まった割合です。そのため損失が積み重なり、張力は一巻きごとに等比数列的に激減していきます。

II可視化1 — ドラムを回るにつれて張力が下がる

ロープがドラムに深く巻きつくほど、張力はどこまで下がるでしょうか。

💡 キャプスタン方程式の θBA\theta_{BA} はラジアンで測り、1周巻くごとに 2π2\pi ずつ増えます。

III可視化2 — 巻き足すことの威力

ロープを1周、2周、3周と巻くと、握る力はどこまで小さくなるでしょうか。

IV可視化3 — 損失が積み重なる理由

等しく分けた接触部分のそれぞれが取り去るのは、張力の同じ量ではなく、同じ割合です。

V確認クイズ

問1 · キャプスタン方程式を使う

条件: 固定された杭にロープがかけてあり、μs=0.3\mu_s = 0.3、巻きつけ角の合計は θ=π\theta = \pi です。荷物は TA=600 NT_A = 600\text{ N} で引いています。支えるのに必要な最小の張力 TBT_B を求めてください。

✅ 正解です! TB=600 e−0.3π=600(0.390)≈234 NT_B = 600\,e^{-0.3\pi} = 600(0.390) \approx 234\text{ N} です。摩擦のおかげで、荷物が引く力を片手で支えられます。
❌ 指数の符号を確かめてください。 計算したのは 600 e+0.3π600\,e^{+0.3\pi} です。摩擦は、あなたが加えるべき張力を減らすので、指数は負です。
❌ それは損失を線形として扱っています。 μsθ\mu_s\theta は取り去られる割合ではありません。減衰は指数関数的で、TB=TAe−μsθT_B = T_A e^{-\mu_s\theta} です。
❌ 惜しい! そのまま代入します。TB=600 e−0.3πT_B = 600\,e^{-0.3\pi} です。
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荷物側が TAT_A、握る側が TBT_B です。μs=0.3\mu_s = 0.3、θ=π\theta = \pi とすると:

TB=TA e−μsθ=600 e−0.3π=600 e−0.9425T_B = T_A\, e^{-\mu_s \theta} = 600\, e^{-0.3\pi} = 600\, e^{-0.9425} =600×0.390≈234 N= 600 \times 0.390 \approx 234\text{ N}

握る力が 234 N234\text{ N} より小さいと、ロープはすべります。

問2 · 度ではなくラジアンで

条件: μs=0.2\mu_s = 0.2 で、ロープはドラムに2周巻きついています。巻きつけ角 θ\theta と、支える比 TB/TAT_B/T_A を求めてください。

✅ 正解です! 2周なら θ=2(2π)=4π\theta = 2(2\pi) = 4\pi なので、TB/TA=e−0.2⋅4π=e−2.513≈0.081T_B/T_A = e^{-0.2\cdot4\pi} = e^{-2.513} \approx 0.081 です。
❌ それは度です。 指数には θ\theta をラジアンで入れます。720°=4π≈12.57720\degree = 4\pi \approx 12.57 なので、比は 00 ではなく 0.0810.081 です。
❌ それは1周分だけです。 2周なら θ=4π\theta = 4\pi で、比は e−0.2⋅4π≈0.081e^{-0.2\cdot4\pi} \approx 0.081 です。
❌ 惜しい! 1周は 2π2\pi ラジアンなので、2周は 4π4\pi です。
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1周ごとに 2π2\pi ラジアン分の接触が加わるので、2周では

θ=2×2π=4π≈12.57.\theta = 2 \times 2\pi = 4\pi \approx 12.57.

これより

TBTA=e−μsθ=e−0.2 (4π)=e−2.513≈0.081.\frac{T_B}{T_A} = e^{-\mu_s\theta} = e^{-0.2\,(4\pi)} = e^{-2.513} \approx 0.081.

必要な握る力は、荷物のおよそ12分の1です。

問3 · 巻きつけ角を求める

条件: TA=5000 NT_A = 5000\text{ N} を、TB=500 NT_B = 500\text{ N} 以下の握る力で支えなければなりません。μs=0.25\mu_s = 0.25 です。TB=TAe−μsθT_B = T_A e^{-\mu_s\theta} から、必要な最小の巻きつけ角 θ\theta(ラジアン)を求めてください。

まず、ln⁡(TA/TB)\ln(T_A/T_B) はいくらですか?

次に、必要な θ\theta はいくらですか?

✅ 正解です! θ=1μsln⁡(TA/TB)=4ln⁡10≈9.21 rad\theta = \tfrac{1}{\mu_s}\ln(T_A/T_B) = 4\ln 10 \approx 9.21\text{ rad} で、およそ 1.51.5 周です。
❌ 比を確かめてください。 TA/TB=5000/500=10T_A/T_B = 5000/500 = 10 で、必要なのはその自然対数 ln⁡10≈2.30\ln 10 \approx 2.30 です。
❌ 式変形を確かめてください。 TB=TAe−μsθT_B = T_A e^{-\mu_s\theta} を解くと、θ=1μsln⁡(TA/TB)\theta = \tfrac{1}{\mu_s}\ln(T_A/T_B) となります。
❌ μs\mu_s をかけています。 θ\theta について解くには、μs\mu_s で割ります。θ=ln⁡10/0.25\theta = \ln 10 / 0.25 です。
❌ 因子 1/μs1/\mu_s を忘れないでください。 ln⁡10\ln 10 だけではなく、θ=ln⁡10/0.25\theta = \ln 10 / 0.25 です。
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キャプスタン方程式から出発して、θ\theta について解きます:

TB=TAe−μsθ  ⇒  TATB=eμsθ  ⇒  θ=1μsln⁡ ⁣TATB.T_B = T_A e^{-\mu_s\theta} \;\Rightarrow\; \frac{T_A}{T_B} = e^{\mu_s\theta} \;\Rightarrow\; \theta = \frac{1}{\mu_s}\ln\!\frac{T_A}{T_B}.

TA/TB=10T_A/T_B = 10、μs=0.25\mu_s = 0.25 とすると:

θ=ln⁡100.25=2.3030.25≈9.21 rad=9.212π≈1.47 周.\theta = \frac{\ln 10}{0.25} = \frac{2.303}{0.25} \approx 9.21\text{ rad} = \frac{9.21}{2\pi} \approx 1.47\text{ 周}.

つまり、1周半巻けばもう十分です。

問4 · 1巻きごとの倍率(動画の値)

条件: μs=0.2\mu_s = 0.2 です。1周余分に巻くと、支える比 TB/TAT_B/T_A は何倍になりますか?

✅ 正解です! 1周巻き足すと θ\theta に 2π2\pi が加わり、比は e−μs 2π=e−0.4π≈0.285e^{-\mu_s\,2\pi} = e^{-0.4\pi} \approx 0.285 倍になります。1周巻き足すごとに、有利さが同じ倍率で掛け算されていきます。
❌ 2π2\pi が抜けています。 1周で 2π2\pi ラジアン加わるので、倍率は e−μse^{-\mu_s} ではなく e−μs⋅2π=e−0.4πe^{-\mu_s\cdot2\pi} = e^{-0.4\pi} です。
❌ 有利さは線形ではなく、掛け算で増えます。 巻き数が1つ増えるごとに、一定の倍率 e−0.4πe^{-0.4\pi} が等比数列的に掛かっていきます。
❌ 引き算ではなく、倍率です。 1周巻き足すと、比は e−0.4πe^{-0.4\pi} 倍になります。比から何かを引くのではありません。
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nn 周と n+1n+1 周(θ=2πn\theta = 2\pi n)の比を比べます:

e−μs 2π(n+1)e−μs 2πn=e−μs 2π=e−0.2 (2π)=e−0.4π≈0.285.\frac{e^{-\mu_s\,2\pi(n+1)}}{e^{-\mu_s\,2\pi n}} = e^{-\mu_s\,2\pi} = e^{-0.2\,(2\pi)} = e^{-0.4\pi} \approx 0.285.

したがって、1周巻き足すごとに、必要な握る力は同じ倍率 0.2850.285 で小さくなります。1→2→31 \to 2 \to 3 周で比が 0.285→0.081→0.0230.285 \to 0.081 \to 0.023 と下がるのは、まさにこのためです。

正解数:0 / 4