ファイナンス理論 · 第1回 · 動画4 · インタラクティブ教材

時間とリスクを除けばファイナンスは完成した学問:六つの原則

I重要な関係式

関係式名称意味
C今日≠C来年C_{\text{今日}} \neq C_{\text{来年}}時間による差日付は量の一部である
C確実≠CリスクありC_{\text{確実}} \neq C_{\text{リスクあり}}リスクによる差不確実性は量の一部である
需要=供給\text{需要} = \text{供給}どちらもないときに残るもの初歩的なミクロ経済学 — 完成した学問

ポイント:ウォーレン・バフェットはこれらを定理として述べることはありませんが、これに従って行動しています。今日の $1 は来年の $1 と同じではなく、リスクのない今日の $1 は少しでもリスクのある今日の $1 と同じではありません。どちらも「等しくない」と言っているだけで、どちらが大きいかは主張していません。それぞれの差を測り、価格をつけること。それが、この講座の残りの仕事です。

II時間とリスクを取り除く

難しさのすべては2つの要因にあります。どちらもなければ、ファイナンスは完成した学問です。

💡 後の講義では、時間が一方向にしか流れないことから、特殊相対性理論の別証明を導きます。この議論は、金利がマイナスにならないという前提に立っていますが、その前提はその後、中央銀行によって破られました。2014年の欧州中央銀行(ECB)と、2016年1月から2024年3月までの日本銀行です。

III6つの原則、6つの近似

どの原則も近似です。厳密な主張は、標語から受ける印象よりも狭いものです。

IVこの講座の形

この講座は4つのセクションで構成され、リスクより先に時間を扱います。

V確認クイズ

問1 · 難しさを生む2つの要因

条件:2つの前提を取り除くと、ファイナンス分析は初歩的なミクロ経済学になってしまいます。そこでは需要と供給が一致し、研究すべきことは何も残りません。その2つはどれですか。

✅ 正解です! すべての意思決定が同じ瞬間に行われ、すべての支払いがわかっているなら、理論は完全で、閉じています。
❌ 惜しい! その前提は、問題の性質を変えずに緩めることができます。そうではなく、今日の支払いと後の支払いを別物にしているのはどの2つかを考えましょう。
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分析を難しくしている要因は2つ、そして2つだけです。

  • 時間 — 今のキャッシュフローと後のキャッシュフローは別物なので、そのままでは足し合わせることができません。また、お金は時間の中を未来へ動かすことはできても、過去へ動かすことはできません。
  • リスク — ある支払いが実際にいくらになるのか、前もってわかることはめったにありません。

両方を取り除けば、すべての意思決定は同じ瞬間に行われ、支払いもわかっています。残るのは 需要=供給\text{需要} = \text{供給} です。それについては、学部のミクロ経済学の授業ですでにすべて学んでいます。

インフレ、税金、摩擦、流動性はどれも現実に存在しますが、どれも、時間とリスクによってすでに難しくなっている枠組みの中での精緻化にすぎません。

問2 · 原則1の厳密な形

条件:原則1は、フリーランチなどというものは存在しない、と述べています。厳密に言うと、この主張は最初に聞こえるよりも狭いものです。厳密な主張はどれですか。

✅ 正解です! 区別のすべてを担っているのは組織的にという言葉です。たまのフリーランチは許され、繰り返し得られるものは排除されます。
❌ 惜しいですが、強すぎます。 それでは、原則がはっきり認めている、たまのフリーランチまで排除してしまいます。運が良く、懸命に努力すれば、1つや2つは見つかるかもしれません。
❌ 惜しい! この原則は、完全な市場や瞬時の修正についての主張ではありません。繰り返すことができないものについての主張です。
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厳密な主張は、似て聞こえる2つの場合を区別します。

  • 許される — たまのフリーランチ。運と懸命な努力で見つかる、1つや2つのもの。
  • 排除される — フリーランチを出し続ける仕組み。何の理由もなく富が移転され続ける、繰り返し利益を生む源泉。

3つの誤った選択肢は、どれも主張を誇張しています。(a) はたまのフリーランチさえ否定し、(c) と (d) は主張を、価格の誤りが1つでもあれば反証されてしまう、完全で瞬時に調整される市場についての主張にまで膨らませています。原則はそのどれにも耐えます。フリーランチが1つもないとは、もともと約束していないからです。

これは6つの原則すべてに共通するパターンです。どの原則も、もっと複雑な真実の近似であり、強く言いすぎることが、原則を誤りにするいちばんの近道なのです。

問3 · 原則が説明しすぎるとき

条件:原則3は、すべての主体は自己の利益を追求して行動する、と述べています。マザー・テレサという当然の反論に対して、経済学者は選好を定義し直し、彼女の効用関数を他の人々の効用だとします。すると、彼女の善行はすべて、自己の目的に役立っているにすぎないことになります。この手を使うと何を失うのでしょうか。また、ファイナンスはそれをどう修復するのでしょうか。

✅ 正解です! 選好を確定させれば、原則は再び何かを禁じるようになります。そして、何かを禁じる主張は検証できます。
❌ そこが落とし穴です。 決して外れることのない主張は、何も教えてくれません。誰が何をしようと成り立つことは、ここでは欠陥であって、確証ではありません。
❌ 惜しい! 原則は捨てられるのでも、誰もが利己的だという主張に強められるのでもありません。具体的にされるのです。
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定義し直せば確かに反例を取り込めますが、代償があります。

  • どんな行動でも、あとから自己の利益と呼び直せるなら、原則はありうるすべての観察と両立してしまいます。
  • 決して外れることのない主張は何も排除せず、何も排除しない主張は何の情報も含みません。

ファイナンスは、意思決定にどの選好が組み込まれているかを正確に特定することで、この原則を実用的なものにします。少ないより多いほうを、後より早いほうを、リスクの大きいものより安全なものを好む、という選好です。そうやって確定させると、原則は再び特定の行動を禁じるようになります。だからこそ、たいていの場合、はるかに複雑な現実へのかなり良い近似になるのです。

問4 · 講座の地図を読む

条件:この講座は、A イントロダクション → B 評価 → C リスク → D コーポレート・ファイナンス の順に進み、難しさを生む2つの要因を、一緒にではなく順番に扱います。

キャッシュフローと貨幣の時間価値が最初に登場するのはどこですか。

時間とリスクの両方がついに手中に入るのは、どのセクションを終えたあとですか。

✅ 正解です! A でキャッシュフローと貨幣の時間価値を導入し、B では時間だけで価格をつけ、C でリスクを加えて B に組み込み、D で道具立て全体を応用します。
❌ 最初のセクションを確かめましょう。 セクションAですでにキャッシュフローと貨幣の時間価値を扱い、セクションBはその上に割引と正味現在価値を築きます。
❌ リスクがいつ加わるかを確かめましょう。 確実性のもとでの評価ができあがった時点で時間は手中に入りますが、リスクが加わるのはセクションCを終えてからです。
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セクションA — イントロダクション:ファイナンスの根本的な課題、枠組み、6つの原則、そしてキャッシュフローと貨幣の時間価値。

セクションB — 評価:割引と正味現在価値の数学、そして株式、債券、先物、先渡、オプションの価格づけ。ここで働いている要因は時間で、リスクは意図的に外してあります。

セクションC — リスク:リスクを測り、ポートフォリオ理論によって管理し、それをセクションBの評価手法に組み込みます。セクションCを終えれば、時間とリスクの両方が手中に入ります。

セクションD — コーポレート・ファイナンス:資本予算(設備投資の意思決定)とプロジェクト・ファイナンス。ジャック・ウェルチが1981年から2001年までゼネラル・エレクトリックで行ったことを、皆さん自身が使える技術にしたものです。

この順番は気まぐれではありません。リスクには過去のデータと確率・統計が必要なので、それを扱える道具が十分にそろってから導入するのです。

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