ファイナンス理論 · 第10回 · 動画4 · インタラクティブ教材
先渡契約の価値はなぜ契約時にゼロなのか、そして先渡価格が予想するもの
I重要な公式
ポイント:交渉で決まった価格より低い価格はどれも買い手にお金を渡し、高い価格はどれも売り手にお金を渡します。だから値段交渉は、契約の価値が双方にとってゼロになるところでしか止まりません。価値が生まれるのは、そのあと価格が動いてからです。
II値段交渉で価値ゼロの価格へ
ただ1つの価格を除けば、どの先渡価格でも一方の得はもう一方の損になり、損をする側は署名を断ります。
💡 $110 は動画の例での価格で、F0,T を決める公式は後の動画で扱います。それ以外の価格の価値は、重要な公式の表にある、この教材の補足の式で求めます。
III予測するより、価格を固定する
予測の期間が長いほど、価格の予測は不正確になります。先渡契約は、その範囲全体を1つの確定した価格に置き換えます。
IV先渡価格が予想するもの
6か月物の先渡価格が今日の現物価格より上か、同じか、下かに、原油価格の行方についての市場の予想が表れます。
💡 これはイールドカーブと同じ現象です。インプライド・フォワードレートには将来の借入コストについての市場の予想が、先渡価格には将来の現物価格についての市場の予想が織り込まれています。
V確認クイズ
問1 · 署名を断るのはどちらか
条件:穀物の利用者と農家が、3か月物の小麦の先渡契約の価格を、値段交渉で1ブッシェルあたり $7.20 に決めました。契約の価値が双方にとってゼロになる価格です。そこで利用者が、代わりに1ブッシェルあたり $6.50 にしようと持ちかけます。どうなるでしょうか。
✅ 正解です! 価格を $0.70 下げると、1ブッシェルあたり $0.70 の現在価値が農家から利用者に移ります。だから農家は署名しません。
❌ 向きを確かめてください。 買い手は
F を支払い、価値
ST の小麦を受け取ります。
F が低いほど
ST−F は大きくなり、買い手にとっては不利ではなく有利になります。
❌ どんな価格でもゼロになるわけではありません。 価値がゼロになるのは、交渉で決まった価格のときだけです。ゼロなのは、双方がその価格まで交渉したからです。それ以外の価格の契約は、一方にとって価値を持ち、もう一方には同じ額の損失になります。
❌ 惜しい! 買い手にとっての契約の価値は
PV0[ST−F] です。$6.50 のときの値を、交渉で決まった $7.20 のときの値と比べてください。
解答を見る
交渉で決まった価格では PV0[ST−7.20]=0 です。持ちかけられた価格では、次のようになります。
V買い手=PV0[ST−6.50]==0PV0[ST−7.20]+PV0[0.70]>0
したがって V売り手=−V買い手<0 です。$6.50 で売るのは利用者にお金を手渡すのと同じなので、農家は断ります。価値ゼロは交渉で決まった価格の性質であって、どんな価格にも当てはまるわけではありません。
問2 · 契約時の価値
条件:金は今日、1オンス $2,000 で取引されています。宝飾品メーカーと金鉱山が、市場の先渡価格である1オンス $2,080 で、1年物の金の先渡契約を結びます。契約時に、この契約は宝飾品メーカー(買い手)にとっていくらの価値があるでしょうか。
✅ 正解です! 市場の先渡価格では、契約の価値は双方にとってゼロです。現物価格との $80 の差は、金の保有コストとあわせて市場の予想を反映したもので、利益でも損失でもありません。
❌ 差は価値ではありません。 買い手にとっての価値は
PV0[ST−F0,T] で、先渡価格を今日の現物価格ではなく
将来の現物価格と比べるものです。交渉で決まった価格では、その価値はゼロです。
❌ 差を割り引いても解決しません。 F0,T−S0 は、誰かが受け取るペイオフではありません。ペイオフは
ST−F0,T で、交渉で決まった価格では、その現在価値はゼロです。
❌ 現物価格へのプレミアムは損失ではありません。 宝飾品メーカーが1年後に受け取るのは、今日の $2,000 ではなく価値
ST の金です。値段交渉によって、$2,080 を支払うことの価値が、受け取る金の価値とちょうど等しくなる水準に価格が決まったので、価値はゼロです。
❌ 惜しい! 2人が値段交渉で行き着く価格は、どんな性質で決まっているでしょうか。
解答を見る
$2,080 は市場の先渡価格、つまりどちらの側も契約から降りたいとは思わない価格です。したがって、その定義から次が成り立ちます。
V0=PV0[ST−F0,T]=0⟺PV0[ST]=PV0[F0,T].
今日の現物価格との $80 の差が教えてくれるのは、別のことです。予想として読むと、市場は1年後に金の価値が上がると見ています。また先渡価格には、受渡しまで金を保有するコスト(保管や資金調達)も反映されます。これは次の動画で取り上げます。契約時には、どちらの側も何も得ず、何も失いません。価値が生まれるのは、そのあと価格が動いてからです。
問3 · 交渉価格と異なる取引の価値
条件:値段交渉で決まった原油の1年物の先渡価格は、1バレル $80 です。ある製油所が生産者に、代わりに1バレル $74 で、1年後に1,000バレルを売ってほしいと頼みます。1年物の無リスク金利は5%とします(この問題のための仮定です)。契約時に、この契約は生産者(売り手)にとっていくらの価値があるでしょうか。 V買い手(F)=(F0,T−F)/(1+rf)T を使ってください。
✅ 正解です! 1バレルあたり $6 の不足分は1年後に支払われるので、その今日の価値は $6,000 ÷ 1.05 で、これが生産者の損失です。
❌ 符号は正しいのですが、割引が抜けています。 $6,000 の差は1年後に決済されます。その今日の価値は、$6,000 を1.05で割ったものです。
❌ 誰にとっての価値かを確かめてください。 それは買い手にとっての価値です。売り手は、公正な価格が $80 のところを $74 で原油を引き渡すので、
V売り手=−V買い手 は負になります。
❌ 複利で増やすのではなく、割り引きます。 1.05を掛けると、金額を将来へ動かすことになります。今日の価値を求めるには、将来の金額を1.05で割ります。
❌ 惜しい! 1バレルあたりの買い手にとっての価値を求め、1,000バレル分に拡大してから、符号を反転させてください。
解答を見る
買い手(製油所)にとっての1バレルあたりの価値は、次のとおりです。
V買い手=1.0580−74=1.056≈5.7143
1,000バレルでは、買い手にとっての価値は 1.056,000≈5,714.29 ドルで、
V売り手=−V買い手≈−5,714.29 ドル.
この式は、この教材の補足です。交渉で決まった価格では PV0[ST]=1.0580 で、確定した支払い74の今日の価値は 1.0574 です。生産者は製油所に約 $5,714.29 の価値を手渡すことになるので、価格が $80 に戻らない限り断ります。
問4 · 現物価格より低い先渡価格を読む
条件:天然ガスは今日、1 MMBtu あたり $3.00 で取引されていて、1年物の先渡価格は $2.40 です。動画の内容と一致する読み方はどれでしょうか。
✅ 正解です! 現物価格より低い先渡価格には、将来の現物価格が下がるという市場の予想が織り込まれています。動画の原油の例で、$100 に対する $90 がそうだったのと同じです。
❌ 保有コストは逆の方向に働きます。 保管と資金調達は、受渡しまで資産を保有するためのコストです(次の動画で取り上げます)。これらは先渡価格を押し上げるもので、押し下げはしません。先渡価格が現物価格より低いことは説明できません。
❌ どの先渡契約も価値ゼロから始まります。 市場の先渡価格では
PV0[ST−2.40]=0 です。買い手が得をするのは、1年後の現物価格が $2.40 を上回った場合だけです。
❌ 比べる相手は今日の価格ではありません。 生産者は来年の生産分を今日の $3.00 で売ることはできません。比べる相手は来年の現物価格です。価格が下がると予想する生産者なら、喜んで $2.40 で固定し、売上を確定させるかもしれません。
❌ 惜しい! 先渡価格が今日の現物価格より低いことは、市場が価格の行方をどう見ているかについて、何を教えてくれるでしょうか。
解答を見る
先渡価格には、資産の保有コストとあわせて、将来の現物価格についての市場の予想が織り込まれています。ここでは
F0,T−S0=2.40−3.00=−0.60<0,
で、現物価格の20%の低下です。保有コストは先渡価格を下げるのではなく押し上げるので(次の動画に先立つ、この教材の補足です)、動画と同じように読めば、この差は予想を示しています。大量の新しい供給が予想されているか、需要が減ると予測されているかのどちらかです。
それでも契約時の契約の価値は双方にとってゼロで、ガス価格を予測したくない生産者は、$2.40 で固定することで不確実性を取り除けます。
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