ファイナンス理論 · 第11回 · 動画2 · インタラクティブ教材

先物は信用リスクを1日分に抑える:手仕舞い、ネッティング、CDSの清算

I重要な公式

公式名称説明
Q ∣St−F∣Q\,\lvert S_t - F \rvert先渡:負っているが未払いの額先渡価格 FF で QQ 単位。受渡し時の価格の代わりに、きょうの現物価格 StS_t を使います(受渡し時に支払う額で、割引前)。受渡しまで何も支払われないので、契約の全期間にわたって積み上がりえます
Δt=Q (Pt−Pt−1)\Delta_t = Q\,(P_t - P_{t-1})先物:毎日の決済毎晩、先物価格 PtP_t の1日分の動きが証拠金勘定のあいだを移動するので、未払いの額が1日分の値動きを超えることはありません
(+1)+(−1)=0(+1) + (-1) = 0,   Q (Psell−Pbuy)Q\,(P_{\text{sell}} - P_{\text{buy}})買いポジションの手仕舞い同じ受渡し月の契約を売れば、約束は何も残りません。損益は売値から買値を引いたもので、すでに毎日決済されています
受渡し量=∑正味のロング=∑正味のショート\text{受渡し量} = \sum \text{正味のロング} = \sum \text{正味のショート}相殺(ネッティング)買いと売りが等しいトレーダーは相殺され、現物を受け取りません

ポイント:先物契約とは、損益が毎晩支払われる先渡契約です。ですから、誰かが1日分の値動きを超える額を負ったままになることはありません。

II先渡のエクスポージャーは積み上がり、先物のエクスポージャーは毎晩リセットされる

大豆の先渡契約では、損失は受渡しまで未払いのまま残ります。先物なら、それが毎晩支払われます。

💡 クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は、本質的には借り手の信用に対する先渡契約です。市場の保証料が契約で固定した保証料から離れると、その差は一方が他方に負っている価値になり、毎日の決済がなければ未払いのまま積み上がります。CDSの中央清算は2009年3月に始まりました。米証券取引委員会(SEC)が、インターコンチネンタル取引所(ICE)の清算機関に、中央清算機関として業務を行うための一時的な適用除外を認めたのです。

III手仕舞いでなくなるのは義務で、損失ではない

反対売買として12月受渡しの契約を売れば約束は何も残りませんが、値洗いですでに引かれた分は引かれたままです。

IV相殺(ネッティング):受渡しまで進むのは正味のポジションだけ

清算会社は、トレーダーごとに買いと売りを相殺します。受け渡されるのは正味のポジションだけです。

V確認クイズ

問1 · 先渡と先物のエクスポージャー

条件: あるチョコレートメーカーが、先渡契約で、カカオ20トンを1トン $3,150 で買う約束をしました。3週間後、現物価格は1トン $2,780 です。これを受渡し時の価格とみなし、割引は無視します。同じポジションを、代わりに1枚10トンのカカオ先物2枚で持っていた場合、この3週間で1日の価格の動きは最大で1トン $95 でした。

先渡契約のもとで、チョコレートメーカーが負っていて、まだ払っていない額はいくらですか?

先物契約のもとで、晩の決済の直前に未払いだった額は、最大でいくらですか?

✅ 正解です! 先渡契約では $7,400 の全額が未払いのまま残ります。先物契約では毎日の動きが証拠金を通じて支払われるので、未払いになるのは最大でも1日分の動き、$1,900 だけです。
❌ 掛け算を確かめましょう。 価格の差は1トン $370 で、20 × $370 は3桁ではなく4桁です。
❌ 惜しい! 負っているのは、合意した価格ときょうの価格の差です。どちらかの価格で見たカカオの価値ではありません。
❌ それは先渡の数字です。 先物では、それまでの日の動きはすでに証拠金を通じて支払われています。未払いになるのは、その日の動きだけです。
❌ ゼロではありません。 決済は毎晩行われるので、それまでは、その日の動きによる損失は負っていても、まだ払われていません。
❌ それは1枚分です。 ポジションは1枚10トンの契約2枚で、合計20トンです。
❌ 先渡の計算を確かめましょう。 数量に、合意した価格と現在の価格の差を掛けます。
❌ 先物の計算を確かめましょう。 未払いの額は、最大でも数量 × 1日分の動き、つまり 20 × $95 です。
解答を見る

先渡。受渡しまでお金はまったく動かないので、価値の変化の全額が、負っていて未払いの額になります:

20 × ($3,150 − $2,780) = 20 × $370 = $7,400。これをチョコレートメーカー(買い手)が売り手に負っています。

先物。毎晩、その日の損益が証拠金を通じて決済されるので、未払いの額が1日分の動きを超えることはありません。1日の動きの最大は1トン $95 で、数量は 2 × 10 = 20トンです:

20 × $95 = $1,900。

チョコレートメーカーの損失の合計は、どちらでも同じ $7,400 です。違いは、先物ではその日の分を除いて、すでに支払われていることです。

問2 · 手仕舞いのあとの損失

条件: あるトレーダーが、12月受渡しのトウモロコシ先物(1枚5,000ブッシェル)を、1ブッシェル $4.60 で4枚買います。先物価格は $4.25 まで下がり、彼女は12月受渡しの契約を4枚売って手仕舞います。12月の決済までに、先物価格は $4.70 まで戻ります。このポジションでの彼女の損益の合計を求めてください。

✅ 正解です! 20,000ブッシェルを $4.60 で買い、$4.25 で売りました。義務はなくなり、$7,000 の損失は、価格が下がるにつれて、すでに証拠金勘定から引かれています。
❌ それは12月まで持ち続けた場合の結果です。 手仕舞ったあと、彼女にはポジションが残っていないので、$4.70 への回復は彼女には関係ありません。
❌ 手仕舞いでなくなるのは義務で、損失ではありません。 彼女は $4.60 では売れず、$4.25 で売りました。その差は、値洗いによってすでに引かれています。
❌ それは1枚分です。 彼女が持っていたのは、1枚5,000ブッシェルの契約4枚です。
解答を見る

ポジション。12月受渡しのロングが +4、ショートが −4 で、正味 4 − 4 = 0枚です。ですから、12月に現物を受け取る約束はありません。

数量。4 × 5,000 = 20,000ブッシェル。

損益。($4.25 − $4.60) × 20,000 = −$0.35 × 20,000 = −$7,000、つまり $7,000 の損失です。

価格が $4.60 から $4.25 へ下がるあいだに、値洗いによってこの額が毎日少しずつ証拠金勘定から引かれました。その後の $4.70 への上昇は、彼女のポジションがなくなってから起きたので、彼女にとって得にも損にもなりません。

問3 · 決済日の相殺

条件: 取引所での12月受渡しの小麦の取引は、すべて次の4人のトレーダーのあいだで行われています(数字は枚数):

トレーダー買い売り
生産者050
投機家X3535
投機家Y208
製粉業者380

誰も手仕舞わない場合、何枚が受渡しに進みますか?

投機家Yは小麦を受け取りたくありません。Yは受渡しの前に何をしますか?

✅ 正解です! 受け渡されるのは正味のポジションだけです。生産者のショート50に対して、製粉業者のロング38とYのロング12です。Yは正味の12枚を売って手仕舞います。
❌ それは総取引量を数えています。 清算会社は、まずトレーダーごとに買いと売りを相殺します。Xの買い35と売り35は完全に打ち消し合います。
❌ ロングが1つ抜けています。 投機家Yは売りより多く買っているので、Yも正味のロングを持っています。
❌ 向きが逆です。 Yは正味でロング12です。さらに買えば、正味のロングは24になります。
❌ 多すぎます。 Yは買った20枚に対して、すでに8枚売っています。さらに20枚売ると、正味でショート8になります。
❌ 先物は電話で取り消すものではありません。 どの取引も相手は清算会社です。Yは反対売買をして抜けます。
❌ まず相殺しましょう。 トレーダーごとに「買い − 売り」を計算し、正味のロングを合計します。
❌ Yの正味のポジションを確かめましょう。 Yは20枚買って8枚売っています。
解答を見る

正味のポジション(買い − 売り):

  • 生産者:0 − 50 = −50(正味でショート50)
  • 投機家X:35 − 35 = 0(相殺済みで、受渡しなし)
  • 投機家Y:20 − 8 = +12(正味でロング12)
  • 製粉業者:38 − 0 = +38(正味でロング38)

検算:買いの合計 = 0 + 35 + 20 + 38 = 93 = 50 + 35 + 8 + 0 = 売りの合計。どの契約にも、買い手と売り手が1人ずついるからです。

受渡し:正味のロング 12 + 38 = 50 = 正味のショート 50。取引された93枚のうち、50枚が受渡しに進みます。

投機家Yは正味でロング12で、これは12枚分の小麦を受け取る約束です。Yは12月受渡しの契約を12枚売って手仕舞います:20 − (8 + 12) = 0。

問4 · 先渡契約としてのクレジット・デフォルト・スワップ

条件: ある年金基金が、あるメーカーの債務に対する5年間のプロテクションをディーラーから買い、想定元本の年1%の固定保証料を払っています。18か月後、メーカーの信用は大きく悪化し、いまでは市場は同じプロテクションに年4%を求めます。このスワップは中央清算されていません。正しい記述はどれですか?

✅ 正解です! 年金基金が持っているのは、いまでは年4%の価値があるのに、年1%しか払わないプロテクションです。先渡契約と同じように、スワップは何も支払われないまま年金基金に有利な方向へ動いています。これが、清算と毎日の証拠金によって抑えようとした信用エクスポージャーです。
❌ 逆の側です。 年金基金は、いまでは4%かかるプロテクションを1%で確保しています。価格が上がると先渡の買い手が得をするのと同じように、契約は年金基金に有利な方向へ動いています。
❌ 保証料は固定されています。 保証料はスワップを結んだときに決まり、借り手の信用に合わせて動きません。ですから、それを払っても、年金基金が払う1%と、いま市場が求める4%との差は少しも決済されません。
❌ デフォルトの前にも価値はあります。 先渡契約が受渡しの前から価値を持つのと同じように、市場の保証料と固定した保証料の差は、一方がすでに他方に負っている価値です。
解答を見る

クレジット・デフォルト・スワップは、本質的には借り手の信用に対する先渡契約です。保証料はスワップを結んだときに固定されますが、同じプロテクションに市場がつける保証料は、その後、信用の質に合わせて動きます。

  • 信用が悪化したので、市場の保証料(年4%)は契約の保証料(年1%)を大きく上回っています。
  • プロテクションの買い手である年金基金は、払っている額以上の価値がある契約を持っています。プロテクションの売り手であるディーラーは、スワップの残りの期間にわたって、その価値を負っています。
  • 清算機関と毎日の決済がなければ、その価値は生じたときに支払われません。大豆の先渡契約の損失と同じように積み上がり、ディーラーは、いちばん払えないときに大きな額を負っているかもしれません。

先物の解決策(標準化された契約、真ん中に置く清算機関、毎日の証拠金)は、未払いの額をおよそ1日分の値動きに抑えます。CDSの中央清算は2009年に始まり、2020年代半ばには、残高のあるクレジット・デリバティブの半分以上が中央清算されるようになりました。

正解数:0 / 4