ファイナンス理論 · 第11回 · 動画3 · インタラクティブ教材

二つの道、一つの価格:複製で先渡価格を導く

I重要な公式

公式名称説明
St,  Ft,T≈Ht,TS_t,\ \ F_{t,T} \approx H_{t,T}記号時点 tt の現物価格。時点 tt に価格がつけられ、時点 TT に決済される先渡価格と先物価格
F0,T≈H0,T=(1+rf)TS0+FVT(純保管費用)F_{0,T} \approx H_{0,T} = (1+r_f)^T S_0 + \text{FV}_T(\text{純保管費用})キャリーコスト(持越費用)の関係(将来価値の形)先渡価格 = 複製のコスト:借りたお金で買った現物価格に、純保管費用を足したもの
F0,T(1+rf)T≈H0,T(1+rf)T=S0+PV0(純保管費用)\dfrac{F_{0,T}}{(1+r_f)^T} \approx \dfrac{H_{0,T}}{(1+r_f)^T} = S_0 + \text{PV}_0(\text{純保管費用})キャリーコストの関係(現在価値の形)両辺を時点0に割り引いたもの
純保管費用=保管費用−コンビニエンス・イールド\text{純保管費用} = \text{保管費用} - \text{コンビニエンス・イールド}純保管費用資産を持っておくための費用の累計から、手元にあることの便益を差し引いたもの

ポイント:STS_T の予想はどこにも出てきません。出てくるのは S0S_0、rfr_f、TT と保管費用だけです。F0,TF_{0,T} が複製のコストを上回れば、先渡で売って資産を持ち越すことで、無リスクの利益が得られます。

II可視化1 — 時点Tに資産を手にする2つの道

どちらの道も時点0のコストはゼロで、時点 TT に資産を手にできます。ですから、時点 TT でのコストは等しくなければなりません。

III可視化2 — 裁定が価格を縛る

先渡価格が複製のコストから離れると、無リスクの取引が可能になります。ただし、すべての差が埋められるわけではありません。

IV確認クイズ

問1 · キャリーコストによる先渡価格

条件(説明用の数値): 大豆の現物価格は1ブッシェル $25.00 です。無リスク金利は年 rf=4%r_f = 4\%(年複利)、受渡しは T=2T = 2 年後で、純保管費用の時点 TT における将来価値は1ブッシェルあたり $0.75 です。無裁定の先渡価格 F0,2F_{0,2} を求めてください。

✅ 正解です! 借りたお金で買った現物価格の $27.04 に、純保管費用の $0.75 を足すと $27.79 になります。
❌ 惜しい! それは借入の返済額 (1.04)2×25.00=27.04(1.04)^2 \times 25.00 = 27.04 だけです。道2では、時点 TT に純保管費用も払います。
❌ 符号を確かめてください。 純保管費用は資産を持ち越すためのコストなので、借りたお金で買った現物価格に足します。引くのではありません。
❌ 惜しいですが… 25.00×(1+2×0.04)+0.75=27.7525.00 \times (1 + 2 \times 0.04) + 0.75 = 27.75 は単利を使っています。動画では年複利で計算します:(1+rf)T(1+r_f)^T。
❌ 惜しい! F0,T=(1+rf)TS0+FVT(純保管費用)F_{0,T} = (1+r_f)^T S_0 + \text{FV}_T(\text{純保管費用}) を使ってください。
解答を見る

道2では、現物価格の分を2年間借り、受渡しのときに純保管費用を払います:

F0,2=(1+rf)2S0+FV2=(1.04)2×25.00+0.75=1.0816×25.00+0.75=27.04+0.75=27.79F_{0,2} = (1+r_f)^2 S_0 + \text{FV}_2 = (1.04)^2 \times 25.00 + 0.75 = 1.0816 \times 25.00 + 0.75 = 27.04 + 0.75 = 27.79

先渡価格は1ブッシェルあたり $27.79 です。

問2 · 予想はどこに?

条件: 保管費用もコンビニエンス・イールドもない商品の現物価格が $40.00 です。無リスク金利は年 rf=6%r_f = 6\%、受渡しは T=1T = 1 年後です。アナリストは、1年後の現物価格を $45.00 と予想しています。先渡価格 F0,1F_{0,1} を求めてください。

✅ 正解です! 先渡価格は複製のコスト 1.06×40.00=42.401.06 \times 40.00 = 42.40 です。$45.00 という予想は何の役割も果たしません。
❌ 惜しい! キャリーコストの関係には E[ST]E[S_T] の項がありません。複製によって、価格は S0S_0、rfr_f、TT と保管費用だけで決まります。
❌ 惜しいですが… きょう $40.00 で買うには $40.00 を借りる必要があり、その借入は時点 TT に利息をつけて返さなければなりません。
❌ 惜しい! お金を借りて資産を買い、時点 TT まで持っておくコストを計算してください。
解答を見る

純保管費用がないので、道2のコストは借入の返済額だけです:

F0,1=(1+rf)1S0+0=1.06×40.00=42.40F_{0,1} = (1+r_f)^1 S_0 + 0 = 1.06 \times 40.00 = 42.40

先渡価格は $42.40 です。もし先渡が予想どおりの $45.00 で取引されていたら、先渡で売り、$40.00 を借りて資産を買い、時点 TT に引き渡すことで、現物価格がどうなっても $2.60 の無リスクの利益が得られます。

問3 · 高すぎる先渡価格

条件: 原油の現物価格は1バレル $60.00 で、無リスク金利は年 rf=5%r_f = 5\%、T=1T = 1 年です。1バレルを時点 TT まで保管する費用は $2.50、コンビニエンス・イールドの価値は $0.50 です(どちらも時点 TT での額)。1年物の先渡は $66.40 で取引されています。裁定取引と、時点 TT における1バレルあたりの無リスクの利益を求めてください。

どの取引で無リスクの利益が得られますか?

時点 TT における1バレルあたりの利益はいくらですか?

✅ 正解です! 複製のコストは $65.00 なので、$66.40 で先渡を売って原油を持ち越せば、1バレルあたり $1.40 が確定します。
❌ 惜しい! F0,TF_{0,T} を複製のコスト (1+rf)TS0+FVT(純保管費用)(1+r_f)^T S_0 + \text{FV}_T(\text{純保管費用}) と比べてください。先渡価格が高すぎるときは、先渡を売り、買いポジションを複製します。
❌ 惜しい! 時点 TT の利益 = 受け取る先渡価格 − 借入の返済額 − 純保管費用です。
❌ 惜しいですが… 66.40−63.00=3.4066.40 - 63.00 = 3.40 は保管費用を無視しています。1バレルを持ち越すには、正味で $2.50 − $0.50 = $2.00 かかります。
❌ 惜しい! $60.00 は借りたお金なので、返すのは $60.00 ではなく 1.05×60.00=63.001.05 \times 60.00 = 63.00 です。さらに純保管費用も払います。
❌ 惜しいですが… 保管費用の $2.50 を全額引いています。純保管費用は、保管費用からコンビニエンス・イールドを引いたもの、つまり $2.00 です。
解答を見る

ステップ1:複製のコスト。純保管費用は $2.50 − $0.50 = $2.00 なので、

(1+rf)TS0+FVT=1.05×60.00+2.00=63.00+2.00=65.00(1+r_f)^T S_0 + \text{FV}_T = 1.05 \times 60.00 + 2.00 = 63.00 + 2.00 = 65.00

ステップ2:比較。先渡は $65.00 を上回る $66.40 で取引されているので、先渡を売って原油を持ち越します。

ステップ3:キャッシュフロー。時点0:先渡を売り($0)、$60.00 を借りて1バレル買う。正味は $0。時点 TT:1バレルを引き渡して $66.40 を受け取り、$63.00 を返済し、純保管費用 $2.00 を払う:

66.40−63.00−2.00=1.4066.40 - 63.00 - 2.00 = 1.40

無リスクの利益:1バレルあたり $1.40。きょうのコストがゼロのポジションから得られます。

問4 · 低すぎる先渡価格

条件: 保管費用もコンビニエンス・イールドもなく、借りてきて空売りできる資産が $100.00 で取引されています。無リスク金利は年 rf=3%r_f = 3\% で、2年物の先渡は $104.00 で取引されています。裁定取引と、T=2T = 2 における1単位あたりの無リスクの利益を求めてください。

どの取引で無リスクの利益が得られますか?

時点 TT における1単位あたりの利益はいくらですか?

✅ 正解です! 複製のコストは $106.09 です。空売りと組み合わせて $104.00 で先渡を買えば、$2.09 の差が手元に残ります。
❌ 惜しい! 先渡価格と比べるのは (1+rf)TS0(1+r_f)^T S_0 で、S0S_0 ではありません。
❌ 惜しい! 先渡を売って持ち越すと、受け取るのは 104.00−106.09<0104.00 - 106.09 < 0(時点 TT)です。この取引が守らせるのは上限で、ここでは先渡価格が低すぎます。
❌ 惜しい! 比べる基準は現物価格ではなく、複製のコスト (1.03)2×100.00=106.09(1.03)^2 \times 100.00 = 106.09 です。先渡価格はそれより $2.09 低くなっています。
❌ 惜しい! それでは資産を2回買うことになります。1回は先渡で、もう1回は現物で。打ち消し合うものがないので、ペイオフは STS_T に左右されます。複製のコストより低い先渡価格を利用するには、先渡を買い、資産を空売りします。
❌ 惜しい! 時点 TT の利益 = 貸付から戻ってくる額 − 支払う先渡価格です。
❌ 惜しいですが… 100.00×(1+2×0.03)=106.00100.00 \times (1 + 2 \times 0.03) = 106.00 は単利です。年複利なら、貸付から戻ってくるのは (1.03)2×100.00(1.03)^2 \times 100.00 です。
❌ 惜しい! 104.00−100.00104.00 - 100.00 は、貸した代金で得られる利息を無視していて、しかも向きが逆です。
❌ 惜しい! 106.09−100.00106.09 - 100.00 は得られる利息です。現物を受け取るときに払うのは $104.00 の先渡価格で、現物価格ではありません。
解答を見る

ステップ1:複製のコスト(保管費用なし):

(1+rf)TS0=(1.03)2×100.00=1.0609×100.00=106.09(1+r_f)^T S_0 = (1.03)^2 \times 100.00 = 1.0609 \times 100.00 = 106.09

ステップ2:比較。$104.00 の先渡価格は $106.09 を下回るので、複製の取引をすべて逆にします。

ステップ3:キャッシュフロー。時点0:先渡を買い($0)、資産を空売りし(+$100.00)、$100.00 を rfr_f で貸す。正味は $0。時点 TT:貸付から $106.09 が戻る。$104.00 を払って現物を受け取り、借りていた資産を返す:

106.09−104.00=2.09106.09 - 104.00 = 2.09

無リスクの利益:1単位あたり $2.09。この下限の取引がここで確実に利益を生むのは、資産を空売りでき、保管費用もないからです。

正解数:0 / 4