ファイナンス理論 · 第11回 · 動画4 · インタラクティブ教材

先物価格はなぜキャリーコストに従うのか:金、ガソリン、株価指数、そして1987年10月

I重要な公式

公式ケース説明
Ft,T≈Ht,T=(1+rf)T−tSt+FVT(純保管費用)F_{t,T} \approx H_{t,T} = (1+r_f)^{T-t} S_t + \text{FV}_T(\text{純保管費用})任意の時点 tt今日の現物価格 StS_t、金利 rfr_f、残りの期間 T−tT - t、そして資産を持ち続けるための正味のコストです
Ft,T≈Ht,T=(1+rf)T−tStF_{t,T} \approx H_{t,T} = (1+r_f)^{T-t} S_t金保管費用も配当もコンビニエンス・イールド(利便性利回り)もなく、現物価格を rfr_f で増やすだけです
Ft,T≈Ht,T=(1+rf+c−y)T−tStF_{t,T} \approx H_{t,T} = (1+r_f+c-y)^{T-t} S_tガソリン保管費用 cc を足し、コンビニエンス・イールド yy を引きます(どちらも1期あたりの%)
Ft,T≈Ht,T=(1+rf−d)T−tStF_{t,T} \approx H_{t,T} = (1+r_f-d)^{T-t} S_t株価指数年率換算の配当利回り dd を引きます。この契約は差金決済です

ポイント:割り引くと、関係式は Ft,T(1+rf)T−t≈St+PVt(純保管費用)\dfrac{F_{t,T}}{(1+r_f)^{T-t}} \approx S_t + \text{PV}_t(\text{純保管費用}) となります。決済のときに払う額を今日のお金に直すと、資産のいまの価値に、TT まで持ち続ける正味のコストを足したものに等しい、ということです。この関係を破る相場は、裁定機会か、市場が混乱しているしるしのどちらかです。

II1つの関係式、3つのキャリー率

どの資産も rfr_f に何かを足すか引くかします。正味のキャリーの符号で、先物価格が現物価格より上になるかどうかが決まります。

💡 動画のガソリンの約14.18%という数字は、保管費用を差し引いたコンビニエンス・イールドです。ここで cc がゼロから始まるのはそのためです。相場からは、この2つを分けることができません。

III逆向きに使う:インプライドのキャリー

現物価格と1つの先物の相場があれば、そのあいだの成長率が決まり、したがってインプライドのキャリーも決まります。

IV割高か割安か:どちらの取引か

相場がキャリーで求めた理論価格から離れたら、TT に資産を持つための安いほうの道を買い、高いほうの道を売ります。

💡 2005年にハリケーン・カトリーナがメキシコ湾岸の貯蔵施設を破壊したあと、ガソリンのこの関係はしばらくのあいだ破れていました。動画では、このずれを、建てる技術があるなら自分で貯蔵施設を建てる価値が出てきた、というシグナルとして読んでいます。

V確認クイズ

問1 · 現物価格から金の先物価格へ

条件:金の現物価格は1オンス $1,250.00、rf=3%r_f = 3\%(年率)で、先物契約は3か月後に決済されます。金には保管費用も配当もコンビニエンス・イールドもありません。無裁定の先物価格 Ft,TF_{t,T} を、セント単位まで求めてください。

✅ 正解です! 金の先物価格は、現物価格を残りの期間にわたって rfr_f で増やしたものにすぎません。(1.03)3/12≈1.007417(1.03)^{3/12} \approx 1.007417 なので、先物価格は約 $1,259.27 です。
❌ 惜しい! それは現物価格を丸1年分増やしています。指数は残りの期間 T−t=3/12T - t = 3/12 年で、1ではありません。
❌ 惜しい! rfr_f は年率なので、指数は年数で数えます。3か月は T−t=3/12T - t = 3/12 で、3ではありません。
❌ 惜しい! (1.03)3/12(1.03)^{3/12} で割ると現在価値になります。先物価格は TT に支払うものなので、現物価格は割り引くのではなく、先へ増やします。
❌ 惜しい! T−t=3/12T - t = 3/12 として Ft,T≈(1+rf)T−tStF_{t,T} \approx (1+r_f)^{T-t} S_t を使ってください。
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保管費用も配当もコンビニエンス・イールドの項もないので、純保管費用の項はゼロになり、関係式は次のようになります。

Ft,T≈Ht,T=(1+rf)T−tSt,T−t=312.F_{t,T} \approx H_{t,T} = (1+r_f)^{T-t} S_t, \qquad T - t = \tfrac{3}{12}.

成長率の係数は (1.03)3/12≈1.007417(1.03)^{3/12} \approx 1.007417(小数第6位まで)なので、先物価格は 1.007417 × $1,250.00 ≈ $1,259.27 です。

ほかの選択肢は、指数を間違えているか(1年なら $1,287.50、3「年」なら $1,365.91)、複利で増やす代わりに割り引いています($1,240.80)。

問2 · ガソリン:c と y はどちら向きに効くか

条件:ガソリンの現物価格は1ガロン $3.20 で、先物契約は8か月後に決済されます。rf=5%r_f = 5\%、保管費用 c=2%c = 2\%、コンビニエンス・イールド y=12%y = 12\% で、いずれも年率です。無裁定の先物価格を、セント単位まで求めてください。

✅ 正解です! 正味のキャリーは 0.05+0.02−0.12=−0.050.05 + 0.02 - 0.12 = -0.05 なので、先物価格は現物価格より低くなります。ガソリンを手元に持っておく便益が、金利と保管費用の合計を上回っているのです。
❌ 惜しい! コンビニエンス・イールドは資産を持つことの便益なので、引きます。係数は 1+rf+c−y1 + r_f + c - y で、1+rf+c+y1 + r_f + c + y ではありません。
❌ 惜しい! それは金利と保管費用を含めていますが、コンビニエンス・イールド y=12%y = 12\% が抜けています。先物の保有者は、この便益を受け取れません。
❌ 惜しい! 保管費用は資産を持つためのコストなので、rfr_f から引くのではなく、足します。係数は 1+rf+c−y1 + r_f + c - y です。
❌ 惜しい! T−t=8/12T - t = 8/12 として Ft,T≈(1+rf+c−y)T−tStF_{t,T} \approx (1+r_f+c-y)^{T-t} S_t を使ってください。
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Ft,T≈Ht,T=(1+rf+c−y)T−tSt,1+0.05+0.02−0.12=0.95,T−t=812.F_{t,T} \approx H_{t,T} = (1 + r_f + c - y)^{T-t} S_t, \qquad 1 + 0.05 + 0.02 - 0.12 = 0.95, \quad T - t = \tfrac{8}{12}.

成長率の係数は (0.95)8/12≈0.966383(0.95)^{8/12} \approx 0.966383(小数第6位まで)なので、先物価格は 0.966383 × $3.20 ≈ $3.09 です。

誤りの選択肢のもとになった間違いは次のとおりです。yy を足すと (1.19)8/12(1.19)^{8/12} で $3.59、yy を落とすと (1.07)8/12(1.07)^{8/12} で $3.35、cc を引くと (0.91)8/12(0.91)^{8/12} で $3.00 になります。

問3 · インプライドの配当利回り

条件:株価指数は4,000.00、6か月後に決済される先物契約は4,030.00で、rf=4%r_f = 4\%(年率)です。Ft,T≈(1+rf−d)T−tStF_{t,T} \approx (1+r_f-d)^{T-t} S_t を使って、これらの相場が示す年率換算の配当利回り dd を求めてください。

✅ 正解です! d=1.04−(4030/4000)2=1.04−1.01505625=0.02494375≈2.49%d = 1.04 - (4030/4000)^2 = 1.04 - 1.01505625 = 0.02494375 \approx 2.49\% です。rf>dr_f > d なので、先物価格は現物価格より高くなります。
❌ 惜しい! T−t=6/12T - t = 6/12 なので、比 F/S=1.0075F/S = 1.0075 は (1.04−d)1/2(1.04 - d)^{1/2} に等しくなります。1.04から引く前に、2乗する必要があります。
❌ 惜しい! (F/S)2−1≈1.51%(F/S)^2 - 1 \approx 1.51\% は正味のキャリー rf−dr_f - d で、dd そのものではありません。これを rfr_f から引いてください。
❌ 惜しい! 配当利回りはマイナスの符号で入るので、d=1+rf−(F/S)2d = 1 + r_f - (F/S)^2 です。正味のキャリーを rfr_f に足すと、符号が逆になります。
❌ 惜しい! StS_t で割り、両辺を2乗してから、dd について解いてください。
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T−t=6/12T - t = 6/12 として関係式を書きます。

4030=4000 (1+0.04−d)6/12.4030 = 4000\,(1 + 0.04 - d)^{6/12}.

現物価格で割り、両辺を2乗します。

d=1.04−(40304000)2=1.04−1.01505625=0.02494375≈2.49%.d = 1.04 - \left(\frac{4030}{4000}\right)^{2} = 1.04 - 1.01505625 = 0.02494375 \approx 2.49\%.

向きを確かめます。F>SF > S は rf>dr_f > d に対応し、実際 4%>2.49%4\% > 2.49\% です。

問4 · 理論価格から外れた株価指数先物

条件:株価指数は2,000ポイント、rf=5%r_f = 5\%、d=2%d = 2\%(いずれも年率)で、先物契約はちょうど1年後に決済されます。先物価格の相場は2,040です。

無リスクの利益を確定させる取引はどれでしょうか。

決済時に受け取る、指数1単位あたりの利益はいくらでしょうか。

✅ 正解です! 理論価格は 1.03×2000=20601.03 \times 2000 = 2060 なので、先物は20ポイント割安です。先物を買い、株式を空売りします。これは1987年10月19日の朝の裁定取引と同じ向きです。あのときは、株価指数先物が株式に比べて割安でした。
❌ 惜しい! 先物を売って株式を持ち越すのは、先物が割高なときの取引です。2,040を理論価格 (1+0.05−0.02)1×2000(1 + 0.05 - 0.02)^1 \times 2000 と比べてください。
❌ 惜しい! 関係式が予測するのは、向きだけではなく具体的な価格です。FF は 1.03×2000=20601.03 \times 2000 = 2060 になるはずで、2,040はそれより低くなっています。
❌ 惜しい! 2つの買いポジションは、指数へのエクスポージャーを打ち消すのではなく、積み増します。裁定取引では、一方の道を買い、もう一方の道を売ります。
❌ 惜しい! まず理論価格 (1+rf−d)T−tSt(1 + r_f - d)^{T-t} S_t を求め、相場と比べてください。
❌ 惜しい! 60 = 2,060 − 2,000 はキャリーそのものです。利益は、理論価格と相場の差です。
❌ 惜しい! 40 = 2,040 − 2,000 は、相場を今日の現物価格と比べたものです。利益は、理論価格2,060と相場の差です。
❌ 惜しい! 19.42 ≈ 20 / 1.03 は今日の価値です。問われているのは、決済時に受け取る額です。
❌ 惜しい! TT での利益は、理論価格から相場の先物価格を引いたものです。
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ステップ1:理論価格。T−t=1T - t = 1 なので、

F∗=(1+0.05−0.02)1×2000=1.03×2000=2060.F^{*} = (1 + 0.05 - 0.02)^{1} \times 2000 = 1.03 \times 2000 = 2060.

ステップ2:比較。相場の2,040は2,060より低いので、先物は株式に比べて割安です。

ステップ3:取引。先物を2,040で買います。指数の株式を2,000で空売りし、その代金を5%で運用すると、2,100に増えます。空売りした側は配当 0.02×2000=400.02 \times 2000 = 40 を支払わなければならないので、残りは 2100−40=20602100 - 40 = 2060 です。決済時に指数がある水準 STS_T にあるとすると、差金決済の先物は ST−2040S_T - 2040 を支払い、空売りを閉じるために株式を買い戻すコストは STS_T なので、指数の水準は打ち消し合います。

ステップ4:利益。指数がどう動いても、決済時に指数1単位あたり 2060−2040=202060 - 2040 = 20 ポイントです。

正解数:0 / 4