ファイナンス理論 · 第12回 · 動画4 · インタラクティブ教材

ストラドル:コールとプットで、方向ではなくボラティリティに賭ける

I重要な公式

満期での損益ポジション損益分岐点と最善・最悪のケース
C−Max[0, ST−K]C - \text{Max}[0,\ S_T - K]コールの売り(ショート)ST=K+CS_T = K + C。最善の場合 +C+C。STS_T が上がるにつれ損失は際限なく増える
P−Max[0, K−ST]P - \text{Max}[0,\ K - S_T]プットの売り(ショート)ST=K−PS_T = K - P。最善の場合 +P+P。最悪は ST=0S_T = 0 のときの −(K−P)-(K - P)
∣ST−K∣−(C+P)\lvert S_T - K\rvert - (C + P)ストラドルの買い:同じ権利行使価格のコール ++ プットST=K±(C+P)S_T = K \pm (C + P)。最悪は ST=KS_T = K のときの −(C+P)-(C + P)
(C+P)−∣ST−K∣(C + P) - \lvert S_T - K\rvertストラドルの売りST=K±(C+P)S_T = K \pm (C + P)。最善は ST=KS_T = K のときの C+PC + P。下落側の最悪は ST=0S_T = 0 のときの −(K−C−P)-(K - C - P)

ポイント:オプションは2者のあいだの契約なので、満期での保有者のペイオフと売り手のペイオフを足すとゼロになります。ストラドルが支払うのは Max[0, ST−K]+Max[0, K−ST]=∣ST−K∣\text{Max}[0,\ S_T - K] + \text{Max}[0,\ K - S_T] = \lvert S_T - K\rvert、つまり方向にかかわらず値動きの大きさで、損をするのは幅 2(C+P)2(C + P) の範囲の内側だけです。この賭けにどれだけ大きな値動きが必要かは、プレミアムで決まります。

II4つのポジション、1つの権利行使価格

売りのポジションは、どれも買いのポジションを上下逆さまにしたものです。保有者が得る分を、売り手がそのまま失います。

コールの買い(CC を支払う)ST<KS_T < K のときST=KS_T = K のときST>KS_T > K のとき
ペイオフ0000ST−KS_T - K
損益−C-C−C-CST−K−CS_T - K - C
プットの買い(PP を支払う)ST<KS_T < K のときST=KS_T = K のときST>KS_T > K のとき
ペイオフK−STK - S_T0000
損益K−ST−PK - S_T - P−P-P−P-P
コールの売り(CC を受け取る)ST<KS_T < K のときST=KS_T = K のときST>KS_T > K のとき
ペイオフ0000−(ST−K)-(S_T - K)
損益CCCCC−(ST−K)C - (S_T - K)
プットの売り(PP を受け取る)ST<KS_T < K のときST=KS_T = K のときST>KS_T > K のとき
ペイオフ−(K−ST)-(K - S_T)0000
損益P−(K−ST)P - (K - S_T)PPPP

IIIストラドル:買うか、売るか

同じ権利行使価格のコールとプットを合わせると ∣ST−K∣\lvert S_T - K\rvert を支払います。株価がどれだけ動かなければならないかは、プレミアム C+PC + P で決まります。

💡 2008年の秋にはボラティリティが異常に高く、どちらのプレミアムも大きかったので、範囲も広くなっていました。そのときに買ったストラドルが利益を生むのは、市場がさらに激しく動いた場合だけでした。その価格は需要と供給が一致するところで決まったものなので、どちらの側にもフリーランチはありませんでした。

IV損益分岐点を見つける

それぞれのポジションの損益は、どこでゼロをまたぐでしょうか。

V確認クイズ

問1 · コールの売り手の側

条件: あなたは権利行使価格 K=80K = 80 のコールを売り、1株あたり $6 のプレミアムを受け取ります。満期の株価は $95 です。1株あたりの損益を求めてください。

✅ 正解です! 保有者は権利を行使し、あなたから15を受け取ります。前もって受け取ったプレミアム6がその一部を埋め合わせるので、残るのは $9 の損失です。
❌ 惜しい! それは保有者の損益です。売り手のペイオフはその鏡像の −Max[0, ST−K]-\text{Max}[0,\ S_T - K] なので、保有者の利益はあなたの損失になります。
❌ 惜しい! それは損益ではなく、ペイオフです。あなたは前もってプレミアムを受け取っていて、それが支払う額の一部を埋め合わせます。
❌ 惜しい! プレミアムは売り手が受け取ったものなので、ペイオフから引くのではなく、ペイオフに足します。
❌ 惜しい! 売り手の損益 C−Max[0, ST−K]C - \text{Max}[0,\ S_T - K] を使ってください。
解答を見る

株価は権利行使価格を上回って終わったので、保有者は権利を行使します。1株あたりの売り手のペイオフと損益は、次のとおりです。

−Max[0, 95−80]=−15,C−Max[0, ST−K]=6−15=−9.-\text{Max}[0,\ 95 - 80] = -15, \qquad C - \text{Max}[0,\ S_T - K] = 6 - 15 = -9.

1株あたり $9 の損失です。売り手の損益分岐点は K+C=80+6=86K + C = 80 + 6 = 86 で、$86 を超えると、株価が1ドル上がるごとに1ドルずつ損をします。

問2 · コールが支払ったのなら、ストラドルも儲かった?

条件: あなたは K=70K = 70 のストラドルを買い、コールに $5、プットに $3 を支払います。満期の株価は $76 なので、コールはイン・ザ・マネーで終わります。1株あたりの損益を求めてください。

✅ 正解です! 6の値動きはプレミアムの合計8より小さいので、76は62から78までの損をする範囲の内側にあります。
❌ 惜しい! プットは無価値のまま満期を迎えましたが、それでもあなたはプットに $3 を支払っています。両方のプレミアムを差し引きます。費用は CC ではなく C+PC + P です。
❌ 惜しい! 満期に支払うのは片方の部分だけです。権利行使価格より上では、プットの支払いは Max[0, 70−76]=0\text{Max}[0,\ 70 - 76] = 0 なので、ペイオフは 6+66 + 6 ではなく ∣76−70∣=6\lvert 76 - 70\rvert = 6 です。
❌ 惜しい! それはペイオフです。損益は、2つのオプションの費用 C+PC + P を差し引いたものです。
❌ 惜しい! ∣ST−K∣−(C+P)\lvert S_T - K\rvert - (C + P) を使ってください。
解答を見る

コールの支払いは Max[0, 76−70]=6\text{Max}[0,\ 76 - 70] = 6、プットの支払いは Max[0, 70−76]=0\text{Max}[0,\ 70 - 76] = 0 なので、次のようになります。

損益=∣76−70∣−(5+3)=6−8=−2.\text{損益} = \lvert 76 - 70\rvert - (5 + 3) = 6 - 8 = -2.

1株あたり $2 の損失です。損益分岐点は K±(C+P)=70±8K \pm (C + P) = 70 \pm 8、つまり62と78です。ストラドルが利益を生むには、株価がどちらかの方向に8より大きく動かなければなりません。コールがイン・ザ・マネーで終わるだけでは足りないのです。

問3 · 売り手の範囲と下落側の最悪のケース

条件: あなたは K=60K = 60 のストラドルを売り、コールで $5、プットで $4 を受け取ります。利益が出る満期の株価の範囲と、株価がゼロまで下がったときの1株あたりの損失を求めてください。

どこで利益が出ますか?

株価がゼロまで下がったときの損失はいくらですか?

✅ 正解です! 売り手は、株価が権利行使価格から C+P=9C + P = 9 以内にあれば利益を手元に残します。株価はゼロより下にはならないので、下落側の損失には限りがあり、−(K−C−P)=−51-(K - C - P) = -51 です。
❌ 惜しい! それは、それぞれのオプションを単独で売ったときの損益分岐点です。ストラドルでは両方のプレミアムを受け取り、どちらか片方の部分だけでもそれを取り戻されうるので、範囲は両側とも K±(C+P)K \pm (C + P) です。
❌ 惜しい! 範囲の幅は全体で 2(C+P)2(C + P) なので、権利行使価格の両側に、2(C+P)2(C + P) ではなく C+PC + P ずつ広がります。
❌ 惜しい! 損益は (C+P)−∣ST−K∣(C + P) - \lvert S_T - K\rvert で、これがゼロになるのは、値動きが C+PC + P の半分ではなく、その全体に等しいときです。
❌ 範囲を確かめましょう。 (C+P)−∣ST−K∣=0(C + P) - \lvert S_T - K\rvert = 0 とおいてください。
❌ 惜しい! それは支払うべきプットのペイオフ K−0K - 0 です。売り手は前もって両方のプレミアムを受け取っていて、それが損失を減らします。
❌ 惜しい! 損失に限りがないのは、株価に天井のない上昇側だけです。下落側では、株価はゼロで止まります。
❌ 惜しい! プレミアムは受け取ったものなので、損失を増やすのではなく、減らします。
❌ 下落側を確かめましょう。 ST=0S_T = 0 で (C+P)−∣ST−K∣(C + P) - \lvert S_T - K\rvert を計算してください。
解答を見る

売り手の損益は (C+P)−∣ST−K∣(C + P) - \lvert S_T - K\rvert で、C+P=5+4=9C + P = 5 + 4 = 9、K=60K = 60 です。これが正になる条件は、次のとおりです。

∣ST−60∣<9  ⟺  51<ST<69.\lvert S_T - 60\rvert < 9 \iff 51 < S_T < 69.

ST=0S_T = 0 ではコールは無価値のまま満期を迎え、プットは保有者に60を支払うので、次のようになります。

損益=9−∣0−60∣=−51=−(K−C−P).\text{損益} = 9 - \lvert 0 - 60\rvert = -51 = -(K - C - P).

売り手は $51 から $69 のあいだで利益を得て、株価がゼロまで下がると1株あたり $51 を失います。$69 を超えると、損失は際限なく膨らみます。

問4 · ストラドルのどちらの側に立つか

条件: 危機のさなか、ある株式の K=100K = 100 のコールとプットは、合わせて $24 です(説明用の数字)。ある投資家は、株価が $80 か $120 のどちらかで終わる、つまりどちらにせよ大きく動くと確信しています。彼女の見通しのもとで利益が出るのは、ストラドルのどちらの側かを求めてください。

✅ 正解です! 20の値動きは大きいものの、プレミアムの24より小さいので、どちらの結果も76から124までの範囲の内側に入り、そこでは売り手が得をします。
❌ 惜しい! 「大きい」かどうかは、プレミアムと比べて判断しなければなりません。買い手には C+P=24C + P = 24 より大きな値動きが必要で、20の値動きでは4の損失が残ります。
❌ 惜しい! 満期では保有者の損益と売り手の損益を足すとゼロになるので、一方が損をすれば、もう一方は得をします。
❌ 惜しい! 20はペイオフ ∣ST−K∣\lvert S_T - K\rvert です。買い手はそれに24を支払ったので、損益は −4-4 です。
❌ 惜しい! 彼女の予想する値動きを、プレミアムの合計 C+PC + P と比べてください。
解答を見る

どちらの結果でも、ストラドルの支払いは ∣80−100∣=∣120−100∣=20\lvert 80 - 100\rvert = \lvert 120 - 100\rvert = 20 です。買い手と売り手の損益は、それぞれ次のとおりです。

20−24=−4,24−20=+4.20 - 24 = -4, \qquad 24 - 20 = +4.

損益分岐点は 100±24100 \pm 24、つまり76と124で、彼女が予想する2つの結果はどちらもその内側にあります。彼女の見通しのもとでは、売り手はどちらにせよ1株あたり $4 を得ます。買うことが報われるのは、プレミアムがすでに織り込んでいる以上の値動きを予想する人だけです。だからこそ、危機時の水準のプレミアムでは、ストラドルで利益を上げるのがとても難しくなるのです。

正解数:0 / 4