ファイナンス理論 · 第12回 · 動画6 · インタラクティブ教材

株式はコール・オプションである:株式・負債と資本構成に潜むオプション

I重要な公式

公式名称説明
E=Max[0, V−B]E = \text{Max}[0,\ V - B]コールとしての株式企業の資産 VV に対するコールで、権利行使価格は負債の額面 BB に等しい。BB = 1億ドルなら、VV = 1億5,000万ドルで5,000万ドルが残り、VV = 6,000万ドルでは何も残らない
E=V−B+Max[0, B−V]E = V - B + \text{Max}[0,\ B - V]プロテクテッド・レバレッジド・プット資産を持ち、BB を借り、資産に対する権利行使価格 BB のプットを持つ。ペイオフはコールと同じ
D=Min[V, B]=B−Max[0, B−V]D = \text{Min}[V,\ B] = B - \text{Max}[0,\ B - V]貸付からプットを引いたものとしての負債BB の無リスクの貸付と、債券保有者が売った、資産に対するプット(権利行使価格 BB)の組み合わせ
V=D+EV = D + E資本構成全体BB の項どうし、2つのプットどうしが打ち消し合う。債券保有者が売ったプットは、株主が持っているプットそのもの

ポイント:株主の順番は2番目で、それ以上の支払いを求められることは決してありません。ですから株主の請求権は Max[0,V−B]\text{Max}[0, V - B] で、これは、企業の資産を原資産、負債の額面を権利行使価格としたコールのペイオフ Max[0,ST−K]\text{Max}[0, S_T - K] にほかなりません。

II企業の資産から誰が支払いを受けるか

満期には、資産 VV が、BB まで先に支払いを受ける債券保有者と、残りを受け取る株主とに分けられます。

III同じペイオフの2つの読み方

株式は、資産から借入を引き、権利行使価格 BB のプットを足したものです。負債は、無リスクの貸付からその同じプットを引いたものです。

IVレバレッジのかかった企業の株主がリスクを好む理由

資産価値がとりうる範囲を広げると、企業価値の期待値が下がる場合でも、ペイオフの期待値が債券保有者から株主へ移ります。

💡 これは満期でのペイオフの期待値で、価格ではありません。ペイオフの期待値は、オプションの今日の価値とは別物です。それでも向きは同じです。コールの価格は、原資産のボラティリティとともに上がるからです。

V確認クイズ

問1 · 満期での株式

条件: ある企業の負債は額面7,000万ドルの1本だけで、返済日も1つです。その日の資産の価値は1億1,500万ドルです。株主へのペイオフを求めてください。

✅ 正解です! V≥BV \geq B なので、債券保有者は7,000万ドルを全額受け取り、株主は残りの4,500万ドルを受け取ります。Max[0,115−70]=45\text{Max}[0, 115 - 70] = 45 です。
❌ 惜しい! それは企業全体です。債券保有者の順番が先で、株主が何かを受け取る前に、7,000万ドルを支払われます。
❌ 惜しい! 7,000万ドルは債券保有者が受け取る額です。株主が受け取るのは、そのあとに残った分です。
❌ 惜しい! 負債は資産に対する請求権で、資産に上乗せされるものではありません。負債は1億1,500万ドルの中から支払われます。
❌ 惜しい! 株式は Max[0,V−B]\text{Max}[0, V - B] です。
解答を見る

株式は、権利行使価格が負債の額面に等しい、資産に対するコールです。単位は百万ドルです。

E=Max[0, V−B]=Max[0, 115−70]=45E = \text{Max}[0,\ V - B] = \text{Max}[0,\ 115 - 70] = 45

株主が受け取るのは4,500万ドルです。債券保有者は Min[115,70]=70\text{Min}[115, 70] = 70 を受け取り、70+45=115=V70 + 45 = 115 = V となります。

問2 · 資産が足りないとき

条件: 同じ企業は満期に7,000万ドルを返済しなければなりませんが、資産の価値は5,500万ドルしかないことがわかりました。株主と債券保有者へのペイオフを求めてください。

株主へのペイオフは?

債券保有者へのペイオフは?

✅ 正解です! V<BV < B なので、株主は何も受け取らず、資産は債券保有者の手に渡ります。債券保有者が受け取るのは、約束された7,000万ドルのうち5,500万ドルです。
❌ 惜しい! 1,500万ドルは不足分 B−VB - V で、債券保有者に支払われるはずだったのに支払われない額です。株主が受け取るものではありません。V−BV - B はマイナスなので、株式はゼロです。
❌ 惜しい! 5,500万ドルは企業が持っているすべてで、それを受け取る順番は債券保有者が先です。株主には何も残りません。
❌ 惜しい! $0 は株主のペイオフです。債券保有者は全損にはなりません。資産が手に渡るので、企業の価値の分を受け取ります。
❌ 惜しい! コールと同じく、株式のペイオフがゼロを下回ることはありません。株主が不足分を払い込むよう求められることはなく、何も受け取らずに立ち去るだけです。
❌ 惜しい! 7,000万ドルは約束された額ですが、支払いに充てられるのは5,500万ドルしかありません。負債は BB ではなく Min[V,B]\text{Min}[V, B] です。
❌ 惜しい! 1,500万ドルは不足分 B−VB - V で、債券保有者が受け取れない額です。債券保有者のペイオフは、BB から不足分を引いたものです。
❌ 株式を確かめましょう。 株式は Max[0,V−B]\text{Max}[0, V - B] で、V−B=55−70V - B = 55 - 70 です。
❌ 負債を確かめましょう。 負債は Min[V,B]\text{Min}[V, B]、つまり企業の価値と返済すべき額のうち、小さいほうです。
解答を見る

単位は百万ドルで、V=55V = 55、B=70B = 70 なので V<BV < B です。

E=Max[0, 55−70]=Max[0, −15]=0E = \text{Max}[0,\ 55 - 70] = \text{Max}[0,\ -15] = 0 D=Min[55, 70]=55=70−(70−55)D = \text{Min}[55,\ 70] = 55 = 70 - (70 - 55)

株主が受け取るのは$0、債券保有者が受け取るのは5,500万ドルで、これは BB から不足分の1,500万ドルを引いたものです。検算:D+E=55+0=55=VD + E = 55 + 0 = 55 = V。

問3 · 債券の中のプット

条件: ある企業の負債の額面は1億1,000万ドルで、満期の資産の価値は8,500万ドルです。負債を D=B−Max[0, B−V]D = B - \text{Max}[0,\ B - V] と書きます。プットの項のペイオフと、債券保有者へのペイオフを求めてください。

プット Max[0, B−V]\text{Max}[0,\ B - V] のペイオフは?

債券保有者へのペイオフは?

✅ 正解です! プットは2,500万ドルのイン・ザ・マネーで満期を迎えます。そのプットを売ったのは債券保有者なので、その分が1億1,000万ドルから差し引かれます。110−25=85=Min[85,110]110 - 25 = 85 = \text{Min}[85, 110] です。
❌ 惜しい! 8,500万ドルは資産の価値 VV です。権利行使価格 BB のプットが支払うのは、資産が権利行使価格に届かない分の B−VB - V です。
❌ 惜しい! 1億1,000万ドルは権利行使価格 BB そのものです。プットが支払うのは、権利行使価格に対する不足分 Max[0,B−V]\text{Max}[0, B - V] です。
❌ 惜しい! $0 は、コール(株式)の項 Max[0,V−B]\text{Max}[0, V - B] です。プットが支払うのは Max[0,B−V]\text{Max}[0, B - V] で、ここでは B>VB > V です。
❌ 惜しい! 1億1,000万ドルは、無リスクの貸付の項にすぎません。債券保有者はプットも売っていて、その2,500万ドルのペイオフは債券保有者の負担になります。
❌ 符号を確かめましょう。 プットは引かれています。債券保有者はそれを売ったので、そのペイオフは債券保有者にとって利益ではなく損失です。債券保有者が企業の価値より多くを受け取ることはできません。
❌ 惜しい! 2,500万ドルはプットのペイオフで、反対側に支払われます。債券保有者が受け取るのは、BB からそれを引いた額です。
❌ プットを確かめましょう。 B=110B = 110、V=85V = 85 として Max[0,B−V]\text{Max}[0, B - V] を計算してください。
❌ 負債を確かめましょう。 D=B−Max[0,B−V]D = B - \text{Max}[0, B - V]、つまり無リスクの貸付から売ったプットを引いたものです。
解答を見る

単位は百万ドルで、B=110B = 110、V=85V = 85 です。

Max[0, B−V]=Max[0, 110−85]=25\text{Max}[0,\ B - V] = \text{Max}[0,\ 110 - 85] = 25 D=B−Max[0, B−V]=110−25=85D = B - \text{Max}[0,\ B - V] = 110 - 25 = 85

直接の形と照らし合わせると、Min[V,B]=Min[85,110]=85\text{Min}[V, B] = \text{Min}[85, 110] = 85 です。株主は同じプットを E=V−B+Max[0,B−V]=85−110+25=0E = V - B + \text{Max}[0, B - V] = 85 - 110 + 25 = 0 の中に持っていて、D+E=85=VD + E = 85 = V となります。債券保有者が売ったプットは、株主が持っているプットそのものなのです。

問4 · よりリスクの高い計画

条件(説明用の数字): ある企業は満期に1億ドルを返済しなければなりません。現在の計画では、資産の価値は確実に1億2,000万ドルになります。よりリスクの高い計画では、資産の価値はそれぞれ確率 ½ で1億8,000万ドルか4,000万ドルになり、期待値は1億1,000万ドルです。よりリスクの高い計画のもとでの、満期でのペイオフの期待値を求めてください。

株主へのペイオフの期待値は?

債券保有者へのペイオフの期待値は?

✅ 正解です! 安全な計画での2,000万ドルと1億ドルに比べ、企業価値の期待値が1,000万ドル下がるにもかかわらず、株主のペイオフの期待値は2倍になり、債券保有者のペイオフの期待値は3,000万ドル減ります。レバレッジのかかった株式にはリスクを高める方向への偏りがあり、その偏りは正味現在価値の判断を圧倒することもあるのです。
❌ 惜しい! 2,000万ドルは、安全な計画での株主のペイオフ 120−100120 - 100 です。よりリスクの高い計画では、それぞれの結果を計算し、½ の重みをつけてください。
❌ 惜しい! 4,000万ドルは、悪い結果のときだけに債券保有者が受け取る額です。良い結果のときは1億ドルを全額受け取り、どちらの結果も確率は ½ です。
❌ 惜しい! 1億1,000万ドルは企業全体の価値の期待値です。株主のペイオフの期待値4,000万ドルも、その中から出ます。
❌ 惜しい! それは平均にペイオフを当てはめた Max[0,110−100]\text{Max}[0, 110 - 100] です。折れ曲がりがあるので、代わりにペイオフのほうを平均しなければなりません。8,000万ドルの上振れは数に入りますが、下振れはゼロで止まります。
❌ 惜しい! 8,000万ドルは、良い結果のときだけのペイオフです。それが起こる確率は ½ で、悪い結果のときの支払いは $0 です。
❌ 惜しい! 悪い結果のときは資産の価値が4,000万ドルしかないので、債券保有者が受け取るのはそれだけです。全額を支払われるのは、半分の場合だけです。
❌ 株式を確かめましょう。 それぞれの結果で Max[0,V−100]\text{Max}[0, V - 100] を計算し、それぞれに ½ の重みをつけてください。
❌ 負債を確かめましょう。 それぞれの結果で Min[V,100]\text{Min}[V, 100] を計算し、それぞれに ½ の重みをつけてください。
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単位は百万ドルで、B=100B = 100 です。

結果VVE=Max[0,V−100]E = \text{Max}[0, V - 100]D=Min[V,100]D = \text{Min}[V, 100]
良い(½)18080100
悪い(½)40040
期待値1104070
12⋅80+12⋅0=40,12⋅100+12⋅40=70,40+70=110\tfrac12 \cdot 80 + \tfrac12 \cdot 0 = 40, \qquad \tfrac12 \cdot 100 + \tfrac12 \cdot 40 = 70, \qquad 40 + 70 = 110

安全な計画では E=120−100=20E = 120 - 100 = 20、D=100D = 100 です。計画を切り替えると、株主のペイオフの期待値は2,000万ドル増え、債券保有者のペイオフの期待値は3,000万ドル減ります。企業全体では、期待値で1,000万ドルを失います。増えた上振れは株主のものになり、増えた下振れは債券保有者が負うのです。

正解数:0 / 4