ファイナンス理論 · 第13回 · 動画1 · インタラクティブ教材

一回のコイン投げと六つの入力:二項オプション・モデルの設定

I重要な公式

公式名称説明
S1=uS0S_1 = uS_0(確率 pp)
S1=dS0S_1 = dS_0(確率 1−p1-p)
u>du > d
一期間の株価の動き明日の株価はベルヌーイ試行で決まります。uu と dd はグロスの倍率なので、10%の上昇は u=1.1u = 1.1、10%の下落は d=0.9d = 0.9 です。大きい方の倍率を uu と呼ぶのは、名前の付け方の約束にすぎません。
Cu=Max[uS0−K, 0]C_u = \text{Max}[uS_0 - K,\ 0]
Cd=Max[dS0−K, 0]C_d = \text{Max}[dS_0 - K,\ 0]
明日のコールのペイオフコールは明日満期を迎えるので、明日の価値はそのままペイオフです。それぞれのペイオフは、それを生む株価の動きと同じ確率、pp または 1−p1-p で実現します。
E[S1]S0=pu+(1−p)d\dfrac{E[S_1]}{S_0} = pu + (1-p)dグロスの期待収益率u=1.1u = 1.1、d=0.99d = 0.99 のグロース株では 0.99+0.11p0.99 + 0.11p となり、p>111p > \tfrac{1}{11} なら1を上回ります。
C0=f(S0, K, u, d, p, r)C_0 = f(S_0,\ K,\ u,\ d,\ p,\ r)今日のコール価格入力の候補は6つです。rr は今日から明日までのグロスの無リスク金利で、r=1+ネットの金利r = 1 + \text{ネットの金利} です。6つのうち1つは、余分であることがわかります。

ポイント:明日の株価が2つの値しかとらないなら、オプションも2つの値しかとりません。確率 pp と 1−p1-p の和は1でなければなりませんが、uu と dd の和には何の制約もなく、1をはさんでいる必要さえありません。

II2つの株価、2つのコールのペイオフ

明日の2つの株価 uS0uS_0 と dS0dS_0 が、コールの2つのペイオフ CuC_u と CdC_d を決めます。

IIIコイン投げのグロスの期待収益率

uu と dd に pp と 1−p1-p でウェイトをかけると株式のグロスの期待収益率が求まり、そこからドリフトの向きがわかります。

IV確認クイズ

問1 · コールの2つのペイオフ

条件: ある株式の今日の株価は $30 で、明日は uS0uS_0 か dS0dS_0 になります。ここで u=1.2u = 1.2、d=0.8d = 0.8 です。この株式に対する権利行使価格 $27 のコールが、明日満期を迎えます。コールのペイオフ CuC_u と CdC_d を求めてください。

✅ 正解です! コールがイン・ザ・マネーになるのは上昇状態だけです。上昇状態では $9 を支払い、下落状態では何も支払いません。
❌ それは株式の2つの価格です。 コールが支払うのは株価から権利行使価格を引いた額で、それもプラスのときだけです。
❌ 惜しいですが、コールのペイオフがマイナスになることはありません。 下落状態では株価は $24 で、権利行使価格の $27 を下回るので、保有者はコールを行使せずに満期を迎えさせます:Cd=Max[dS0−K, 0]=0C_d = \text{Max}[dS_0 - K,\ 0] = 0。
❌ 惜しい! $3 は今日の株価から権利行使価格を引いた額です。ペイオフに使うのは明日の株価 uS0uS_0 で、S0S_0 ではありません。
❌ 惜しい! まず uS0uS_0 と dS0dS_0 を計算し、それぞれに Max[S1−K, 0]\text{Max}[S_1 - K,\ 0] を当てはめてください。
解答を見る

明日の2つの株価は、uS0=1.2×30=36uS_0 = 1.2 \times 30 = 36 ドルと dS0=0.8×30=24dS_0 = 0.8 \times 30 = 24 ドルです。

Cu=Max[36−27, 0]=9,Cd=Max[24−27, 0]=Max[−3, 0]=0C_u = \text{Max}[36 - 27,\ 0] = 9, \qquad C_d = \text{Max}[24 - 27,\ 0] = \text{Max}[-3,\ 0] = 0

したがって、コールは株価が上がれば $9、下がれば $0 を支払います。

問2 · ネットの変化率ではなくグロスの倍率

条件: 今日 $120 の株式が、明日までに35%上がるか15%下がるかのどちらかになります。この株式に対する権利行使価格 $90 のコールが、明日満期を迎えます。倍率 uu、dd と、下落状態のペイオフ CdC_d を求めてください。

u と d はいくつですか?

下落状態のペイオフはいくらですか?

✅ 正解です! 15%の下落は株価を d=0.85d = 0.85 倍にするので $102 が残り、まだ権利行使価格を $12 上回ります。
❌ それはネットの変化率です。 このモデルでは、今日の株価にグロスの倍率を掛けます:u=1+0.35u = 1 + 0.35、d=1−0.15d = 1 - 0.15 です。
❌ 惜しいですが、dd もグロスの倍率です。 15%下がっても株価の85%は残るので、d=1−0.15=0.85d = 1 - 0.15 = 0.85 で、0.150.15 ではありません。
❌ 名前が逆です。 約束として u>du > d なので、大きい方の倍率1.35が uu です。
❌ dd を確かめてください。 d=0.15d = 0.15 なら株価は $18 まで下がり、コールは何も支払いません。しかし15%の下落なら、残るのは dS0=0.85×120=102dS_0 = 0.85 \times 120 = 102 ドルです。
❌ 惜しい! $30 は今日の株価から権利行使価格を引いた額です。下落状態のペイオフには dS0dS_0 を使います。
❌ それは CuC_u です。 上昇状態では株価は $162 で、コールは $72 を支払います。下落状態の株価は $102 です。
❌ 倍率を確かめてください。 xx %の上昇なら u=1+x/100u = 1 + x/100、yy %の下落なら d=1−y/100d = 1 - y/100 です。
❌ ペイオフを確かめてください。 Max[dS0−K, 0]\text{Max}[dS_0 - K,\ 0] を、グロスの倍率 dd で計算してください。
解答を見る

倍率:u=1+0.35=1.35u = 1 + 0.35 = 1.35、d=1−0.15=0.85d = 1 - 0.15 = 0.85 です。約束どおり u>du > d となっています。

明日の株価:uS0=1.35×120=162uS_0 = 1.35 \times 120 = 162 ドルと dS0=0.85×120=102dS_0 = 0.85 \times 120 = 102 ドルです。

Cd=Max[102−90, 0]=12,Cu=Max[162−90, 0]=72C_d = \text{Max}[102 - 90,\ 0] = 12, \qquad C_u = \text{Max}[162 - 90,\ 0] = 72

コールはどちらの状態でもイン・ザ・マネーです。下落後には $12、上昇後には $72 を支払います。

問3 · 期待収益率とドリフト

条件: ある株式のグロスの倍率は u=1.15u = 1.15 と d=0.95d = 0.95 で、上がる確率は p=0.4p = 0.4 です。グロスの期待収益率 E[S1]/S0E[S_1]/S_0 と、株価が上向きにドリフトするために pp が上回らなければならない基準値を求めてください。

グロスの期待収益率はいくつですか?

株価が上向きにドリフトするのは、p が次の値を上回るときです

✅ 正解です! E[S1]/S0=0.95+0.20pE[S_1]/S_0 = 0.95 + 0.20p は p=0.4p = 0.4 で1.03、つまり期待される上昇は3%です。そしてこれが1を上回るのは、ちょうど p>14p > \tfrac{1}{4} のときです。
❌ それは uu と dd の単純平均です。 それが正しいのは公正なコインのときだけです。ここでは上昇の確率は0.5ではなく0.4です。
❌ 確率が入れ替わっています。 p=0.4p = 0.4 は上昇 uu に、1−p=0.61 - p = 0.6 は下落 dd に対応します。
❌ それは上昇状態の項だけです。 pu=0.46pu = 0.46 には下落が入っていません。(1−p)d=0.6×0.95=0.57(1-p)d = 0.6 \times 0.95 = 0.57 を足してください。
❌ 惜しい! 倍率は1を中心に対称である必要はありません。ここでは15%の上昇に対して下落は5%しかないので、もっと小さい pp でもう釣り合いが上向きに傾きます。
❌ 惜しいですが、それは (u−1)/(u−d)(u-1)/(u-d) です。 0.95+0.20p>10.95 + 0.20p > 1 を pp について解いてください。基準値は (1−d)/(u−d)(1-d)/(u-d) です。
❌ 惜しい! 1−d=0.051 - d = 0.05 を、さらに u−d=0.20u - d = 0.20 で割る必要があります。
❌ 期待値を確かめてください。 それぞれのグロスの倍率に、その確率でウェイトをかけます:pu+(1−p)dpu + (1-p)d。
❌ 基準値を確かめてください。 d+(u−d)p=1d + (u-d)p = 1 とおいて、pp について解いてください。
解答を見る

グロスの期待収益率:

E[S1]S0=pu+(1−p)d=0.4×1.15+0.6×0.95=0.46+0.57=1.03\frac{E[S_1]}{S_0} = pu + (1-p)d = 0.4 \times 1.15 + 0.6 \times 0.95 = 0.46 + 0.57 = 1.03

期待される上昇は3%です。

ドリフトの基準値:期待値を d+(u−d)p=0.95+0.20pd + (u - d)p = 0.95 + 0.20p と書き直します。これが1を上回るのは、次のときです。

0.20p>0.05⟺p>1−du−d=0.050.20=140.20p > 0.05 \quad\Longleftrightarrow\quad p > \frac{1-d}{u-d} = \frac{0.05}{0.20} = \frac{1}{4}

p=0.4>14p = 0.4 > \tfrac{1}{4} なので株価は上向きにドリフトし、上で求めた3%と整合します。

問4 · 同じツリー、違うペイオフ

条件: 今日 $60 の株式が、明日は uS0uS_0 か dS0dS_0 になります。ここで u=1.15u = 1.15、d=0.75d = 0.75 です。権利行使価格 $63 のプットが明日満期を迎え、Max[K−S1, 0]\text{Max}[K - S_1,\ 0] を支払います。上昇状態と下落状態でのペイオフ PuP_u と PdP_d を求めてください。

✅ 正解です! 同じ2つの株価 $69 と $45 を、別のペイオフのルールに入れています。プットが支払うのは下落状態だけです。
❌ それはコールのペイオフです。 この権利行使価格のコールは、株価が $69 に上がると $6 を支払います。プットが支払うのは、株価が権利行使価格を下回って終わるときです。
❌ 惜しいですが、プットのペイオフもマイナスになることはありません。 株価が $69 で権利行使価格の $63 を上回るなら、プットは行使されずに満期を迎えます:Pu=0P_u = 0。
❌ 惜しい! $3 は権利行使価格から今日の株価を引いた額です。下落状態のペイオフには dS0=45dS_0 = 45 ドルを使います。
❌ 惜しい! uS0uS_0 と dS0dS_0 を計算し、それぞれに Max[K−S1, 0]\text{Max}[K - S_1,\ 0] を当てはめてください。
解答を見る

明日の株価は、uS0=1.15×60=69uS_0 = 1.15 \times 60 = 69 ドルと dS0=0.75×60=45dS_0 = 0.75 \times 60 = 45 ドルです。

Pu=Max[63−69, 0]=0,Pd=Max[63−45, 0]=18P_u = \text{Max}[63 - 69,\ 0] = 0, \qquad P_d = \text{Max}[63 - 45,\ 0] = 18

ここでも、明日の株価が2通りなら明日のオプションの値も2通りで、それぞれはその背後にある株価の動きと同じ確率で実現します:$0 は確率 pp で、$18 は確率 1−p1 - p で実現します。

正解数:0 / 4