ファイナンス理論 · 第13回 · 動画5 · インタラクティブ教材

u と d はどこから来るか:すべてを価格づけるたった一つの原理

I重要な公式

公式名称説明
E[S1]=p uS0+(1−p) dS0E[S_1] = p\,uS_0 + (1-p)\,dS_01次のモーメント実際の確率 pp のもとでの、明日の株価の期待値
Var[S1]=p(1−p)(u−d)2S02\mathrm{Var}[S_1] = p(1-p)(u-d)^2 S_0^2、  SD[S1]=p(1−p) (u−d) S0\mathrm{SD}[S_1] = \sqrt{p(1-p)}\,(u-d)\,S_02次のモーメントuu と dd は、開き u−du - d を通じてしかボラティリティに入ってきません
p=12:  12(u+d)=1+μ,  12(u−d)=σp = \tfrac{1}{2}:\ \ \tfrac{1}{2}(u+d) = 1 + \mu,\ \ \tfrac{1}{2}(u-d) = \sigmaカリブレーション一期間あたりの変化の、過去の平均 μ\mu と標準偏差 σ\sigma(S0S_0 に対する割合)に合わせます。2つの目標で uu と dd が決まります
C0=1r[p∗Cu+(1−p∗) Cd]C_0 = \dfrac{1}{r}\big[p^* C_u + (1-p^*)\,C_d\big]、  p∗=r−du−dp^* = \dfrac{r-d}{u-d}一期間の価格rr は無リスクのグロスの収益率です。C0C_0 には pp が含まれません

ポイント:ほぼすべての証券は、1つの原理で価格づけできます。その証券のキャッシュフローを特定し、すでに価格のわかっている商品で同じキャッシュフローを生むポートフォリオを組めば、証券の価格はそのポートフォリオの価格に等しくなければなりません。そうでなければ裁定機会が生まれます。二項モデルのコールはその一例で、C0=V0=S0Δ∗+B∗C_0 = V_0 = S_0\Delta^* + B^* です。

II起こりうる価格の刻み

上昇倍率 uu、下落倍率 dd の期間が nn 個あると、再結合ツリーが行き着く価格はちょうど n+1n + 1 通りです。

IIIu と d を過去のデータに合わせる(カリブレーション)

pp を慣例で固定すれば、過去のデータから得た平均と標準偏差という2つの目標で、uu と dd が決まります。

💡 チャレンジ:同じ過去のデータに、p=15p = \tfrac{1}{5} で、次に p=45p = \tfrac{4}{5} で合わせてみましょう。どの pp でも、同じ2つのモーメントに別の組 (u,d)(u, d) で合わせられます。価格の公式が使うのは uu、dd、rr だけで pp は使わないので、大事なのは uu と dd を正しく選ぶことです。

IV開きが広いほど、コールの価値は高い

S0=K=100S_0 = K = 100、r=1.03r = 1.03、p=12p = \tfrac{1}{2} を固定したまま開き u−du - d を広げると、ボラティリティとコールの価値がそろって上がります。

V確認クイズ

問1 · 明日の株価のボラティリティ

条件: ある株式の今日の株価は $50 です(S0=50S_0 = 50)。明日、株価は実際の確率 p=0.6p = 0.6 で u=1.10u = 1.10 倍に上がるか、確率 0.40.4 で d=0.95d = 0.95 倍に下がります。明日の株価 S1S_1 の標準偏差を求めてください。

✅ 正解です! SD[S1]=0.24 (0.15)(50)≈3.67\mathrm{SD}[S_1] = \sqrt{0.24}\,(0.15)(50) \approx 3.67 です。開き u−du - d に p(1−p)\sqrt{p(1-p)} をかけた大きさになります。
❌ 惜しい! それは p=12p = \tfrac{1}{2} の場合です。 12(u−d)S0\tfrac{1}{2}(u-d)S_0 が標準偏差になるのは、p=12p = \tfrac{1}{2} のときだけです。ここでは p(1−p)=0.24≈0.49\sqrt{p(1-p)} = \sqrt{0.24} \approx 0.49 で、0.50.5 ではありません。
❌ それは分散です。 p(1−p)(u−d)2S02=13.5p(1-p)(u-d)^2S_0^2 = 13.5 の単位はドルの2乗です。平方根をとりましょう。
❌ 惜しい! (u−d)S0=7.5(u - d)S_0 = 7.5 は2つの結果の差です。標準偏差は、それに p(1−p)\sqrt{p(1-p)} をかけたものです。
❌ 惜しい! Var[S1]=p(1−p)(u−d)2S02\mathrm{Var}[S_1] = p(1-p)(u-d)^2S_0^2 を使い、平方根をとります。
解答を見る

2つの結果は uS0=55uS_0 = 55 と dS0=47.5dS_0 = 47.5 なので、株価の期待値は次のとおりです。

E[S1]=0.6(55)+0.4(47.5)=33+19=52.E[S_1] = 0.6(55) + 0.4(47.5) = 33 + 19 = 52.

分散を整理すると、次のようになります。

Var[S1]=p(1−p)(u−d)2S02=(0.6)(0.4)(0.15)2(50)2=0.24×0.0225×2500=13.5.\mathrm{Var}[S_1] = p(1-p)(u-d)^2S_0^2 = (0.6)(0.4)(0.15)^2(50)^2 = 0.24 \times 0.0225 \times 2500 = 13.5.

直接計算して検算:0.6(55−52)2+0.4(47.5−52)2=0.6(9)+0.4(20.25)=5.4+8.1=13.50.6(55-52)^2 + 0.4(47.5-52)^2 = 0.6(9) + 0.4(20.25) = 5.4 + 8.1 = 13.5 です。したがって

SD[S1]=13.5≈3.67,\mathrm{SD}[S_1] = \sqrt{13.5} \approx 3.67,

となり、明日の株価の標準偏差は約 $3.67 です。

問2 · u と d を合わせる

条件: 同じ長さの過去の期間について、この株式の価格変化は、平均が一期間あたり +1%+1\%、標準偏差が一期間あたり 4%4\% でした。慣例により p=12p = \tfrac{1}{2} と固定します。両方のモーメントを再現する uu と dd を求めてください。

✅ 正解です! 中点 12(1.05+0.97)=1.01\tfrac{1}{2}(1.05 + 0.97) = 1.01 がドリフトを、開きの半分 12(0.08)=0.04\tfrac{1}{2}(0.08) = 0.04 がボラティリティを担っています。
❌ ドリフトが抜けています。 この組では E[S1]=S0E[S_1] = S_0、標準偏差 4%4\% になります。過去のデータでは平均の変化が +1%+1\% なので、両方の倍率を 0.010.01 ずつ上にずらさなければなりません。
❌ 惜しい! 開きが狭すぎます。 p=12p = \tfrac{1}{2} なら、標準偏差は開きの半分です。12(1.03−0.99)=0.02\tfrac{1}{2}(1.03 - 0.99) = 0.02 で、わずか 2%2\% にしかなりません。開きは 2σ=0.082\sigma = 0.08 でなければなりません。
❌ 惜しい! ドリフトを uu に足して dd から引くと、開きをずらすのではなく広げてしまいます。平均は 12(1.05+0.95)=1\tfrac{1}{2}(1.05 + 0.95) = 1 でドリフトがなく、標準偏差は 5%5\% になります。
❌ 惜しい! 12(u+d)=1.01\tfrac{1}{2}(u + d) = 1.01 と 12(u−d)=0.04\tfrac{1}{2}(u - d) = 0.04 を解きます。
解答を見る

p=12p = \tfrac{1}{2} のとき、S0S_0 あたりのモーメントは次のとおりです。

E[S1]S0=12(u+d),SD[S1]S0=12⋅12 (u−d)=12(u−d).\frac{E[S_1]}{S_0} = \tfrac{1}{2}(u + d), \qquad \frac{\mathrm{SD}[S_1]}{S_0} = \sqrt{\tfrac{1}{2}\cdot\tfrac{1}{2}}\,(u - d) = \tfrac{1}{2}(u - d).

これを過去のデータに合わせます。

12(u+d)=1.01,12(u−d)=0.04.\tfrac{1}{2}(u + d) = 1.01, \qquad \tfrac{1}{2}(u - d) = 0.04.

2式を足し引きすると、u=1.01+0.04=1.05u = 1.01 + 0.04 = 1.05、d=1.01−0.04=0.97d = 1.01 - 0.04 = 0.97 です。

検算:12(1.05+0.97)=1.01\tfrac{1}{2}(1.05 + 0.97) = 1.01、12(1.05−0.97)=0.04\tfrac{1}{2}(1.05 - 0.97) = 0.04 です。pp を固定すれば、方程式が2本で未知数が2つです。

問3 · 開きを広げる

条件: 株価 $100 の株式と、権利行使価格 $100 の一期間のコールがあります(S0=K=100S_0 = K = 100)。無リスクのグロスの収益率は r=1.02r = 1.02(割り引くときは rr で割ります)、p=12p = \tfrac{1}{2} です。開きが狭い場合は u=1.04, d=0.96u = 1.04,\ d = 0.96、広い場合は u=1.12, d=0.88u = 1.12,\ d = 0.88 です。開きが狭い場合のコールの価値は約 $2.94 です。

開きが広い場合のコールの価値 C0C_0 はいくらですか。

コールの価値は何倍になりましたか。

✅ 正解です! 上昇状態のペイオフは3倍(4→124 \to 12)になる一方、p∗p^* は 34\tfrac{3}{4} から 712\tfrac{7}{12} に下がります。3×79=733 \times \tfrac{7}{9} = \tfrac{7}{3} です。ボラティリティが大きいほど、コールの価値は大きくなります。
❌ それは実際の確率を使っています。 12(12)/1.02≈5.88\tfrac{1}{2}(12)/1.02 \approx 5.88 は pp でウェイトをつけています。価格は p∗=(1.02−0.88)/(1.12−0.88)=712p^* = (1.02 - 0.88)/(1.12 - 0.88) = \tfrac{7}{12} でウェイトをつけて求めます。
❌ 惜しい! 割り引いていません。 p∗Cu=712(12)=7p^* C_u = \tfrac{7}{12}(12) = 7 は明日支払われるので、r=1.02r = 1.02 で割ります。
❌ 惜しい! 12/1.0212/1.02 は、上昇状態のペイオフを確実に得られるかのように価格づけています。p∗=712p^* = \tfrac{7}{12} でウェイトをつけましょう。
❌ 半分しか見ていません。 CuC_u は3倍になりますが、上昇状態のリスク中立確率は 34\tfrac{3}{4} から 712\tfrac{7}{12} に、つまり 79\tfrac{7}{9} 倍に下がります。
❌ 惜しい! 79\tfrac{7}{9} は p∗p^* の変化だけです。上昇状態のペイオフも3倍になります。
❌ 惜しい! どちらの場合も E[S1]=100E[S_1] = 100 ですが、コールのペイオフは片側だけです。増えた上振れは効き、増えた下振れはゼロで止まります。
❌ 開きが広い場合の価格を確認しましょう。 Cu=12C_u = 12、Cd=0C_d = 0、p∗=(r−d)/(u−d)p^* = (r - d)/(u - d) を使い、最後に rr で割ります。
❌ 倍率を確認しましょう。 開きが広い場合の C0C_0 を、狭い場合の C0C_0 で割ります。
解答を見る

開きが狭い場合:uS0=104uS_0 = 104、dS0=96dS_0 = 96 なので Cu=4C_u = 4、Cd=0C_d = 0 で、

p∗=1.02−0.961.04−0.96=0.060.08=34,C0=34(4)1.02=31.02≈2.94.p^* = \frac{1.02 - 0.96}{1.04 - 0.96} = \frac{0.06}{0.08} = \frac{3}{4}, \qquad C_0 = \frac{\tfrac{3}{4}(4)}{1.02} = \frac{3}{1.02} \approx 2.94.

開きが広い場合:uS0=112uS_0 = 112、dS0=88dS_0 = 88 なので Cu=12C_u = 12、Cd=0C_d = 0 で、

p∗=1.02−0.881.12−0.88=0.140.24=712,C0=712(12)1.02=71.02≈6.86.p^* = \frac{1.02 - 0.88}{1.12 - 0.88} = \frac{0.14}{0.24} = \frac{7}{12}, \qquad C_0 = \frac{\tfrac{7}{12}(12)}{1.02} = \frac{7}{1.02} \approx 6.86.

倍率:7/1.023/1.02=73≈2.33\dfrac{7/1.02}{3/1.02} = \dfrac{7}{3} \approx 2.33 で、ペイオフの効果 12/4=312/4 = 3 と確率の効果 7/123/4=79\tfrac{7/12}{3/4} = \tfrac{7}{9} の積です。

S1S_1 の標準偏差は 12(0.08)(100)=4\tfrac{1}{2}(0.08)(100) = 4 から 12(0.24)(100)=12\tfrac{1}{2}(0.24)(100) = 12 に増えましたが、期待株価は100のままでした。

問4 · 同じ原理、違うペイオフ

条件(説明用の数値): 権利行使価格 $100 の一期間のヨーロピアン・プットは、max⁡[K−S1,0]\max[K - S_1, 0] を支払います。株価は $100(S0=K=100S_0 = K = 100)、u=1.25u = 1.25、d=0.85d = 0.85、無リスクのグロスの収益率は r=1.01r = 1.01 です(割り引くときは rr で割ります)。複製で価格をつけてください。つまり、どちらの状態でもペイオフがプットと一致する、Δ\Delta 株の株式と BB ドル分の債券を求めてください。

複製ポートフォリオが持つ株式は何株ですか。

プットの今日の価値はいくらですか。

✅ 正解です! 株式を 0.3750.375 株空売りし、約 $46.41 を貸し付けます。このポートフォリオは上昇で0、下落で15を支払い、プットとまったく同じなので、プットの価格は約 $8.91 です。
❌ 符号を確認しましょう。 プットは株価が下がるほど多く支払うので、複製ポートフォリオは株式を空売りします。Δ=(Pu−Pd)/((u−d)S0)=(0−15)/40\Delta = (P_u - P_d)/((u - d)S_0) = (0 - 15)/40 です。
❌ 惜しい! ペイオフの差は、S0S_0 だけではなく、株価の差 (u−d)S0=125−85=40(u - d)S_0 = 125 - 85 = 40 で割ります。
❌ 惜しい! −15/0.4-15/0.4 では S0S_0 を忘れています。株価の差は 0.40.4 ではなく (u−d)S0=40(u - d)S_0 = 40 ドルです。
❌ 状態を取り違えています。 プットが支払うのは下落状態で、そのリスク中立確率は p∗=0.4p^* = 0.4 ではなく 1−p∗=0.61 - p^* = 0.6 です。
❌ 惜しい! 割り引いていません。 (1−p∗)Pd=0.6×15=9(1 - p^*)P_d = 0.6 \times 15 = 9 は明日得られるので、r=1.01r = 1.01 で割ります。
❌ それは p=12p = \tfrac{1}{2} でウェイトをつけています。 12(15)/1.01≈7.43\tfrac{1}{2}(15)/1.01 \approx 7.43 は、推測した実際の確率を使っています。pp が与えられていないのは、必要ないからです。価格を決めるのは複製ポートフォリオ(または p∗p^*)です。
❌ Δ\Delta を確認しましょう。 Pu=0P_u = 0、Pd=15P_d = 15 として Δ=(Pu−Pd)/((u−d)S0)\Delta = (P_u - P_d)/((u - d)S_0) です。
❌ 価格を確認しましょう。 B=(uPd−dPu)/((u−d)r)B = (uP_d - dP_u)/((u - d)r) として V0=S0Δ+BV_0 = S_0\Delta + B です。
解答を見る

キャッシュフロー:uS0=125uS_0 = 125 なら Pu=max⁡[100−125,0]=0P_u = \max[100 - 125, 0] = 0、dS0=85dS_0 = 85 なら Pd=15P_d = 15 です。

複製:125Δ+1.01B=0125\Delta + 1.01B = 0 と 85Δ+1.01B=1585\Delta + 1.01B = 15 を解きます。

Δ=Pu−Pd(u−d)S0=0−1540=−0.375,B=uPd−dPu(u−d) r=1.25(15)−0.85(0)0.4(1.01)=18.750.404≈46.41.\Delta = \frac{P_u - P_d}{(u - d)S_0} = \frac{0 - 15}{40} = -0.375, \qquad B = \frac{uP_d - dP_u}{(u - d)\,r} = \frac{1.25(15) - 0.85(0)}{0.4(1.01)} = \frac{18.75}{0.404} \approx 46.41.

検算:1.01B=18.75/0.4=46.8751.01B = 18.75/0.4 = 46.875 はちょうどなので、上昇では 125(−0.375)+46.875=0125(-0.375) + 46.875 = 0、下落では 85(−0.375)+46.875=1585(-0.375) + 46.875 = 15 です。

価格 = ポートフォリオのコスト:

P0=S0Δ+B≈−37.5+46.41=8.91.P_0 = S_0\Delta + B \approx -37.5 + 46.41 = 8.91.

p∗=(1.01−0.85)/(1.25−0.85)=0.4p^* = (1.01 - 0.85)/(1.25 - 0.85) = 0.4 を使っても同じ答えになります。P0=11.01[0.4(0)+0.6(15)]=91.01≈8.91P_0 = \tfrac{1}{1.01}\big[0.4(0) + 0.6(15)\big] = \tfrac{9}{1.01} \approx 8.91 です。これ以外の価格なら、このポートフォリオとの間で裁定機会が生まれます。

正解数:0 / 4