ファイナンス理論 · 第14回 · 動画2 · インタラクティブ教材

相関、信頼区間、そして正規分布が見逃す損失

I重要な公式

公式名称説明
Cov[Ri,Rj]=E[(Ri−μi)(Rj−μj)]\mathrm{Cov}[R_i, R_j] = E\big[(R_i - \mu_i)(R_j - \mu_j)\big]共分散リターンが一緒に動く傾向があればプラス、逆向きに動く傾向があればマイナスになります
Corr[Ri,Rj]=Cov[Ri,Rj]σi σj\mathrm{Corr}[R_i, R_j] = \dfrac{\mathrm{Cov}[R_i, R_j]}{\sigma_i\,\sigma_j}相関 ρ\rho尺度に依存せず、つねに −1≤ρ≤+1-1 \le \rho \le +1 です
μ±z σ\mu \pm z\,\sigma正規分布に従う RR の信頼区間z=1.00, 1.65, 1.96, 2.58z = 1.00,\ 1.65,\ 1.96,\ 2.58 のとき、それぞれ 68%, 90%, 95%, 99%68\%,\ 90\%,\ 95\%,\ 99\% です

ポイント:リターンが正規分布に従うなら、μ\mu と σ\sigma ですべての確率が決まります。しかし、ゼネラル・モーターズのような実際の月次リターンは、当てはめた正規分布の曲線が予測するよりも厚いテールをもっています。

II符号つきの長方形で見る共分散

各シナリオは符号つきの面積 (RA−μA)(RB−μB)(R_A - \mu_A)(R_B - \mu_B) を寄与し、共分散はその確率加重平均です。

III傾きではなく、まとまり具合

相関が測るのは、各月の点がどれだけ直線にぴったり沿っているかであって、その直線の傾きの急さではありません。

IVファットテールの系列と信頼区間

同じ μ\mu と σ\sigma をもつ正規分布から、各区間の外に出る月の数が予測できます。ファットテールは、最も広い区間の約束を破ります。

💡 ゼネラル・モーターズの月次リターンにも同じパターンが見られます。真ん中のあたりはよく当てはまりますが、−15%-15\% や −20%-20\% を下回る月は、当てはめた正規分布が認めるよりも多いのです。

V確認クイズ

問1 · シナリオから求める共分散と相関

条件: 説明用の2つの株の来年のリターンは、景気によって決まります。不況(確率 0.30.3)ではアスター −8%-8\%、バーチ 0%0\%。平常(確率 0.50.5)ではアスター 4%4\%、バーチ 2%2\%。好況(確率 0.20.2)ではアスター 12%12\%、バーチ 10%10\% です。共分散と相関を求めてください。

共分散はいくつですか?

相関はいくつですか?

✅ 正解です! アスターとバーチは、不況ではともに平均を下回り、好況ではともに平均を上回ります。したがって Cov=22\mathrm{Cov} = 22、ρ=22/26≈0.85\rho = 22/26 \approx 0.85 で、強い正の相関をもつ組み合わせです。
❌ 惜しい! シナリオの起こりやすさは同じではありません。各積には 13\tfrac{1}{3} ではなく、0.30.3、0.50.5、0.20.2 の重みをかけてください。
❌ 惜しい! 9898 は積を単純に合計したものです。共分散は期待値なので、各積にその確率をかけます。
❌ 符号を確かめてください。 不況では、アスターは平均より 1010 ポイント下、バーチも平均より 33 ポイント下にあります。好況では両方とも平均より上にあります。同じ符号の偏差どうしの積はプラスなので、2つのリターンは一緒に動きます。
❌ 惜しい! 分散の積 σA2σB2\sigma_A^2\sigma_B^2 ではなく、標準偏差の積 σAσB\sigma_A\sigma_B で割ってください。
❌ ありえない値です。 相関が +1+1 を超えることはありません。この値は、等しい重みで計算した共分散 3232 から出ています。
❌ 惜しい! まずそれぞれの平均を求め、次にシナリオの確率を使って偏差の積を平均してください。
❌ 惜しい! 共分散を σAσB\sigma_A \sigma_B で割ってください。
解答を見る

平均:

μA=0.3(−8)+0.5(4)+0.2(12)=2%,μB=0.3(0)+0.5(2)+0.2(10)=3%\mu_A = 0.3(-8) + 0.5(4) + 0.2(12) = 2\%, \qquad \mu_B = 0.3(0) + 0.5(2) + 0.2(10) = 3\%

偏差:アスター −10, 2, 10-10,\ 2,\ 10、バーチ −3, −1, 7-3,\ -1,\ 7。

Cov=0.3(−10)(−3)+0.5(2)(−1)+0.2(10)(7)=9−1+14=22 (%2)\mathrm{Cov} = 0.3(-10)(-3) + 0.5(2)(-1) + 0.2(10)(7) = 9 - 1 + 14 = 22\ (\%^2)

標準偏差(共分散と同じく確率で加重):

σA2=0.3(100)+0.5(4)+0.2(100)=52,σA≈7.21%\sigma_A^2 = 0.3(100) + 0.5(4) + 0.2(100) = 52, \quad \sigma_A \approx 7.21\% σB2=0.3(9)+0.5(1)+0.2(49)=13,σB≈3.61%\sigma_B^2 = 0.3(9) + 0.5(1) + 0.2(49) = 13, \quad \sigma_B \approx 3.61\% ρ=2252 13=22676=2226≈0.85\rho = \frac{22}{\sqrt{52}\,\sqrt{13}} = \frac{22}{\sqrt{676}} = \frac{22}{26} \approx 0.85

問2 · リターンの尺度を変える

条件: 説明用の2つの資産について、σアスター=6%\sigma_{\text{アスター}} = 6\%、σバーチ=5%\sigma_{\text{バーチ}} = 5\%、Cov=18 (%2)\mathrm{Cov} = 18\ (\%^2) です。新しい資産「バーチ2x」は、どの期にもバーチのちょうど2倍のリターンを支払います。アスターとバーチの相関を求め、次にアスターとバーチ2xの共分散と相関を求めてください。

アスターとバーチの相関

アスターとバーチ2x

✅ 正解です! リターンを2倍にするとすべての偏差が2倍になるので、共分散は2倍になります。しかし σ\sigma も2倍になるので、相関は 0.600.60 のままです。相関は尺度に左右されないのです。
❌ 惜しい! 18/5=3.618/5 = 3.6 は標準偏差1つでしか割っていません。また、相関が 11 を超えることはありえません。
❌ 惜しい! 18/(36×25)=0.0218/(36 \times 25) = 0.02 は分散で割っています。分母は σAσB=6×5\sigma_A\sigma_B = 6 \times 5 です。
❌ 惜しい! 1818 は %2\%^2 単位の共分散です。相関は尺度に依存せず、−1-1 と +1+1 の間にあります。
❌ 惜しいですが… 共分散はたしかに2倍になりますが、バーチ2xの標準偏差も2倍(10%10\%)になります。それに、11 を超える相関はありえません。
❌ 惜しい! バーチ2xの平均からの偏差は、どれもバーチの偏差の2倍なので、共分散の中の積はすべて2倍になります。
❌ 惜しい! 2倍になるのは2つのリターンのうち一方だけなので、共分散は2倍になります。4倍になるのはバーチ2xの分散です。
❌ 惜しい! ρ=Cov/(σAσB)\rho = \mathrm{Cov}/(\sigma_A\sigma_B) です。
❌ 惜しい! 2倍にすることで、偏差と σ\sigma がどう変わるかを追ってください。
解答を見る
ρアスター, バーチ=186×5=1830=0.60\rho_{\text{アスター, バーチ}} = \frac{18}{6 \times 5} = \frac{18}{30} = 0.60

バーチ2xの平均は 2μB2\mu_B なので、どの期の偏差も 2(RB−μB)2(R_B - \mu_B) です:

Cov[RA,2RB]=E[(RA−μA)⋅2(RB−μB)]=2×18=36 (%2)\mathrm{Cov}[R_A, 2R_B] = E\big[(R_A - \mu_A)\cdot 2(R_B - \mu_B)\big] = 2 \times 18 = 36\ (\%^2)

その標準偏差は 2×5%=10%2 \times 5\% = 10\% なので

ρ=366×10=0.60\rho = \frac{36}{6 \times 10} = 0.60

散布図に当てはめた直線の傾きは2倍になりますが、点が直線に沿うぴったり具合は前とまったく同じです。

問3 · 年次リターンの信頼区間

条件: ある説明用の株の年次リターンは、μ=9%\mu = 9\%、σ=21%\sigma = 21\% の正規分布に従います。95%95\% 信頼区間と、ある年のリターンがその下限を下回る確率を求めてください。

95%区間

P(リターンが下限を下回る)

✅ 正解です! 区間は 9%±41.16%9\% \pm 41.16\% です。対称性から、区間の外の 5%5\% の半分がその下にあります。平均すると、およそ 4040 年に1度です。
❌ 惜しい! 1.65σ1.65\sigma で得られるのは 90%90\% 区間です。95%95\% 区間には 1.96σ1.96\sigma を使います。
❌ 惜しいですが… ±2σ\pm 2\sigma は切り上げたおおよその目安で、カバーするのは約 95.4%95.4\% です。95%95\% 区間はちょうど ±1.96σ\pm 1.96\sigma です。
❌ 惜しい! 2.58σ2.58\sigma で得られるのは 99%99\% 区間です。
❌ 惜しい! 区間の外にあるのは合計で 5%5\% で、2つのテールに等しく分かれます。
❌ 惜しい! 0.5%0.5\% は 99%99\% 区間(2.58σ2.58\sigma)の片側のテールです。ここでの下限は平均より 1.96σ1.96\sigma 下です。
❌ 惜しい! 95%95\% は区間の内側に入る確率で、下回る確率ではありません。
❌ 惜しい! μ±1.96σ\mu \pm 1.96\sigma を使ってください。
❌ 惜しい! 95%95\% は内側にあり、残りは対称な2つのテールに分かれます。
解答を見る
1.96×21%=41.16%1.96 \times 21\% = 41.16\% 9%−41.16%=−32.16%,9%+41.16%=50.16%9\% - 41.16\% = -32.16\%, \qquad 9\% + 41.16\% = 50.16\%

正規分布は対称なので、区間の外の 5%5\% は、−32.16%-32.16\% より下の 2.5%2.5\% と 50.16%50.16\% より上の 2.5%2.5\% に分かれます。−32.16%-32.16\% を下回るリターンは、およそ 1/0.025=401/0.025 = 40 年に1度起こります。

問4 · 正規モデルを検証する

条件: ある説明用の株の 480480 か月(4040 年)分のリターンは、標本平均が 0.7%0.7\%、標本標準偏差が 4.8%4.8\% です。これと同じ μ\mu と σ\sigma をもつ正規分布の曲線を、ヒストグラムに重ねます。正規分布が予測する μ−2.58σ\mu - 2.58\sigma を下回る月の数を求めてください。そのうえで、そのような月を 1111 か月含むデータを解釈してください。

μ − 2.58σ を下回ると予測される月の数

そのような月が11か月あることは何を示していますか?

✅ 正解です! 正規分布が見込むそのような月は 2.42.4 か月で、1111 はその4倍を超えます。これは、ゼネラル・モーターズの月次リターンに見られるファットテールのパターンです。正規モデルは、非常に大きな損失のリスクを過小評価するのです。
❌ 惜しい! 4.84.8 は 480480 の 1%1\% で、99%99\% 区間の外に両側合わせて出る数です。問われているのは下のテールだけです。
❌ 惜しい! 2424 は 480480 の 5%5\% で、95%95\% 区間の外に出る数です。2.58σ2.58\sigma は 99%99\% 区間のものです。
❌ 惜しい! 1212 は 480480 の 2.5%2.5\% で、95%95\% 区間(1.96σ1.96\sigma)の片側のテールです。ここでの境目は 2.58σ2.58\sigma です。
❌ 惜しい! リターンが正規分布に従うなら、μ\mu と σ\sigma ですべての確率が決まります。リターンが各区間の外に出る頻度も例外ではありません。
❌ 惜しい! σ\sigma はこの同じ 480480 か月から測ったものなので、当てはめた曲線はすでにデータと同じ分散をもっています。ずれているのは形であって、広がりではありません。
❌ 惜しい! 平均もこの同じ月から測ったものです。問題は極端な月がどれだけの頻度で起こるかで、それはテールの形の問題です。
❌ 惜しい! 99%99\% 区間の外には 1%1\% が残り、2つのテールに分かれます。
❌ 惜しい! 1111 を正規分布の予測と比べてください。
解答を見る

μ±2.58σ\mu \pm 2.58\sigma は 99%99\% 区間なので、その外に 1%1\%、各テールに 0.5%0.5\% があります。境目は 0.7%−2.58×4.8%≈−11.68%0.7\% - 2.58 \times 4.8\% \approx -11.68\% です。

下回ると予測される月の数=0.005×480=2.4\text{下回ると予測される月の数} = 0.005 \times 480 = 2.4

データには 1111 か月あり、予測の4倍を超えます。当てはめた正規分布はすでに標本平均と標本分散に合わせてあるので、この差は、分布そのものの左のテールが厚いことを示しています。非常に大きな月次の損失は、正規モデルが認めるよりも実質的に起こりやすいのです。

正解数:0 / 4