ファイナンス理論 · 第14回 · 動画4 · インタラクティブ教材

実質金利とリスク・リターンのトレードオフ(1946〜2001年)

I重要な公式

公式名称1946〜2001年の表から(月次)
r実質≈rf−インフレ率r_{\text{実質}} \approx r_f - \text{インフレ率}実質金利(近似)月 0.38%−0.32%=0.06%0.38\% - 0.32\% = 0.06\%、つまり6ベーシスポイント(bp)
r実質=1+rf1+インフレ率−1r_{\text{実質}} = \dfrac{1 + r_f}{1 + \text{インフレ率}} - 1実質金利(正確)月 1.00381.0032−1≈0.0598%\dfrac{1.0038}{1.0032} - 1 \approx 0.0598\%。丸めれば同じ6 bp
年率≈12×月次\text{年率} \approx 12 \times \text{月次}単純な年率換算(複利なし)年 0.06%×12≈0.72%0.06\% \times 12 \approx 0.72\%
R=P期末−P期首P期首R = \dfrac{P_{\text{期末}} - P_{\text{期首}}}{P_{\text{期首}}}保有した1か月のトータル・リターン表の短期国債・中期国債・株式の行が記録しているのはこれ。最終利回りのグラフが記録しているのは別のもの

ポイント:1枚の表から2つの事実が得られます。無リスクとされる資産は、インフレをわずかに上回っただけでした。そして平均リターンは、標準偏差とともに上がっていきます。短期国債(σ=0.24%\sigma = 0.24\%、平均 0.38%0.38\%)、中期国債、2つの株価指数、そしてモトローラ(σ=10.02%\sigma = 10.02\%、平均 1.66%1.66\%)の順です。

II表の2つの数字から実質金利を出す

実質金利は、おおよそ米国短期国債の金利とインフレ率の差です(どちらも月次)。

III表を下るにつれてのリスクと報酬

短期国債から個別の株へ進むと、標準偏差が大きいほど平均リターンも高く、極端な月の振れ幅も広がります。

IV短期国債の σ\sigma が0より大きい理由

保有した1か月の短期国債のリターンは、購入時に提示された利回りだけでなく、その月に利回りがどう動くかで決まります。

💡 利回りは説明用の数字です。短期国債の価格は、額面100あたり 100/(1+y)t100/(1+y)^t(tt は年単位)とします。実際の短期国債の σ=0.24%\sigma = 0.24\% の残りの部分は、1946〜2001年の間に金利の水準そのものが動いたことから来ており、そのために月次リターンは 0.03%0.03\% から 1.34%1.34\% まで広がりました。

V確認クイズ

問1 · 実質金利を月次と年率で

条件(説明用):ある期間に、1年物の米国短期国債のリターンは平均で月 0.34%0.34\%、インフレ率は平均で月 0.25%0.25\% でした。月次の実質金利の近似値と、その単純な年率換算を求めてください。

月次の実質金利(近似値)

その実質金利の単純な年率換算

✅ 正解です! 月 0.34%−0.25%=0.09%0.34\% - 0.25\% = 0.09\%、つまり9ベーシスポイント(bp)で、年率では 0.09%×12=1.08%0.09\% \times 12 = 1.08\% です(複利ではなく単純な換算)。
❌ インフレ率は足すのではなく引きます。 物価の上昇は短期国債の稼ぎを目減りさせるので、実質金利は名目金利からインフレ率を引いたものです。
❌ 符号が逆です。 実質金利は名目金利からインフレ率を引いたものです。ここでは短期国債がインフレを上回って稼いだので、実質金利はプラスです。
❌ それは名目金利です。 実質金利は、そこからインフレの分を取り除いたものです。
❌ まだ月次の数字です。 月次の率に12をかけると、単純な年率になります。
❌ それは名目金利の年率換算です。 0.34%×12=4.08%0.34\% \times 12 = 4.08\%。年率に直すのは実質金利のほうです。
❌ それはインフレ率の年率換算です。 0.25%×12=3.00%0.25\% \times 12 = 3.00\%。問われているのは実質金利です。
❌ 月次の実質金利を確認しましょう。 短期国債の金利からインフレ率を引きます。
❌ 年率換算を確認しましょう。 月次の実質金利に12をかけます。
解答を見る

実質金利は、おおよそ名目金利からインフレ率を引いたものです:

r実質≈0.34%−0.25%=0.09%(月次)=9 bpr_{\text{実質}} \approx 0.34\% - 0.25\% = 0.09\% \text{(月次)} = 9 \text{ bp}

単純な年率換算では12をかけます:

0.09%×12=1.08%(年率)0.09\% \times 12 = 1.08\% \text{(年率)}

(正確な月次の値 1.0034/1.0025−1≈0.0898%1.0034/1.0025 - 1 \approx 0.0898\% も、丸めれば同じ9 bpです。)

問2 · 正確な実質金利

条件(説明用):米国短期国債の利回りは年 4.0%4.0\%、インフレ率は年 3.1%3.1\% です。年率の正確な実質金利 1+rf1+インフレ率−1\frac{1 + r_f}{1 + \text{インフレ率}} - 1 を求めてください。

✅ 正解です! 1.040/1.031−1≈0.873%1.040/1.031 - 1 \approx 0.873\% で、近似値の 0.90%0.90\% よりわずかに小さくなります。正確な値は、0.90.9 ポイントの差を 1.0311.031 で割ったものです。
❌ それは近似値です。 4.0%−3.1%=0.9%4.0\% - 3.1\% = 0.9\% は引き算です。正確な値は、グロスのリターン 1.0401.040 と 1.0311.031 の割り算で求めます。
❌ 分子と分母が逆です。 1 + 名目金利を 1 + インフレ率で割り、1.040/1.0311.040/1.031 とします。1.031/1.0401.031/1.040 ではありません。
❌ 率そのものではなく、グロスのリターンどうしを割ります。 4.0/3.1−1≈29%4.0/3.1 - 1 \approx 29\% では1が抜けています。公式で使うのは 1+rf1 + r_f と 1+インフレ率1 + \text{インフレ率} です。
❌ 惜しい! グロスのリターン 1.0401.040 と 1.0311.031 をつくって割り、1を引きます。
解答を見る
r実質=1+0.0401+0.031−1=1.0401.031−1≈1.00873−1=0.873%(年率)r_{\text{実質}} = \frac{1 + 0.040}{1 + 0.031} - 1 = \frac{1.040}{1.031} - 1 \approx 1.00873 - 1 = 0.873\% \text{(年率)}

近似では 4.0%−3.1%=0.90%4.0\% - 3.1\% = 0.90\% になります。ここでは両者の差はおよそ 0.030.03 ポイントです。表の月次の率 0.38%0.38\% と 0.32%0.32\% ははるかに小さいので、差はわずか 0.00020.0002 ポイントです(0.0598%0.0598\% と 0.06%0.06\%)。

問3 · 最悪の月と99%の範囲

条件:1946〜2001年の表(月次、単位は%)で、10年物の米国中期国債は平均 0.46%0.46\%、標準偏差 2.63%2.63\%、最悪の月は −7.73%-7.73\% でした。正規分布では、結果の 99%99\% が μ±2.58σ\mu \pm 2.58\sigma の範囲に入ります。中期国債の最悪の月が平均より標準偏差いくつ分下にあるか、そして表の5つの投資のうち、最悪の月が自分自身の 99%99\% の範囲に収まっている唯一の投資はどれかを求めてください。

中期国債の最悪の月は、平均から標準偏差いくつ分か

最悪の月が自分の99%の範囲に収まっている唯一の投資

✅ 正解です! (−7.73−0.46)/2.63≈−3.11(-7.73 - 0.46)/2.63 \approx -3.11 で、−2.58-2.58 の外側です。範囲に収まるのは短期国債の最悪の月(標準偏差 (0.03−0.38)/0.24≈−1.46(0.03 - 0.38)/0.24 \approx -1.46 個分)だけです。VW指数の最悪の月は、平均より標準偏差およそ 5.565.56 個分も下にあります。
❌ 0からではなく、平均から測ります。 −7.73/2.63≈−2.94-7.73/2.63 \approx -2.94 では平均の 0.46%0.46\% が抜けています。先に平均を引きましょう。
❌ 平均は足すのではなく引きます。 (−7.73+0.46)/2.63≈−2.76(-7.73 + 0.46)/2.63 \approx -2.76 は誤りです。平均からの距離は −7.73−0.46=−8.19-7.73 - 0.46 = -8.19 ポイントです。
❌ それはパーセントポイントで測った差です。 −7.73%−0.46%=−8.19-7.73\% - 0.46\% = -8.19 ポイントを σ=2.63%\sigma = 2.63\% で割ると、標準偏差の個数になります。
❌ 中期国債の最悪の月は範囲の外です。 平均より標準偏差およそ 3.113.11 個分下にあり、範囲の境目の 2.582.58 を超えています。
❌ モトローラは範囲が広くても、内側には入りません。 標準偏差は 10.02%10.02\% と大きいものの、(−33.49−1.66)/10.02≈−3.51(-33.49 - 1.66)/10.02 \approx -3.51 で、やはり −2.58-2.58 の外側です。
❌ 1つは内側にあります。 短期国債の最悪の月 0.03%0.03\% は、平均から標準偏差 (0.03−0.38)/0.24≈−1.46(0.03 - 0.38)/0.24 \approx -1.46 個分です。
❌ 標準偏差の個数を確認しましょう。 最悪の月から平均を引き、σ\sigma で割ります。
❌ 各行を確認しましょう。 (最悪の月 −- 平均)/σ/\sigma を計算し、−2.58-2.58 と比べます。
解答を見る

各行について、平均から標準偏差いくつ分か、(最悪の月−μ)/σ(\text{最悪の月} - \mu)/\sigma を数えます:

投資最悪の月(最悪の月−μ)/σ(\text{最悪の月} - \mu)/\sigmaμ±2.58σ\mu \pm 2.58\sigma の内側か
短期国債(1年物)0.03%0.03\%(0.03−0.38)/0.24≈−1.46(0.03 - 0.38)/0.24 \approx -1.46はい
中期国債(10年物)−7.73%-7.73\%(−7.73−0.46)/2.63≈−3.11(-7.73 - 0.46)/2.63 \approx -3.11いいえ
VW株価指数−22.49%-22.49\%(−22.49−1.01)/4.23≈−5.56(-22.49 - 1.01)/4.23 \approx -5.56いいえ
EW株価指数−27.09%-27.09\%(−27.09−1.18)/5.30≈−5.33(-27.09 - 1.18)/5.30 \approx -5.33いいえ
モトローラ−33.49%-33.49\%(−33.49−1.66)/10.02≈−3.51(-33.49 - 1.66)/10.02 \approx -3.51いいえ

99%99\% の範囲に収まっているのは、短期国債の最悪の月だけです。範囲の外に出る月が1つあること自体は驚くことではありません。56×12=67256 \times 12 = 672 か月あれば、正規分布でもそのおよそ 1%1\%、約 77 か月が範囲の外に出ます。しかし、2つの株価指数のように最悪の月が平均より標準偏差 5.35.3〜5.65.6 個分も下にあるのは、話が別です。これが左側のファットテールであり、そのために正規分布は近似にとどまるのです。

問4 · 保有した1か月の短期国債のリターン

条件(説明用):満期に100を支払う1年物の短期国債を、提示利回り年 4.0%4.0\% で買います。価格は 100/1.04100/1.04 です。1か月後、残存11か月となったこの短期国債の利回りは年 5.0%5.0\% で、価格は 100/1.0511/12100/1.05^{11/12} です。保有した1か月のリターンを求めてください。

✅ 正解です! 価格はおよそ 96.1596.15 からおよそ 95.6395.63 に下がり、リターンはおよそ −0.55%-0.55\% です。プラスの提示利回りで買ったにもかかわらず、です。
❌ それは提示利回りを月次に直したものです。 1.041/12−1≈0.33%1.04^{1/12} - 1 \approx 0.33\% が得られるのは、利回りが 4.0%4.0\% のままの場合だけです。ここでは利回りが上がったので、価格は下がりました。
❌ 新しい利回りはあなたのリターンではありません。 5.0%/12≈0.42%5.0\%/12 \approx 0.42\% は、新しい価格で買う人がこれから稼ぐと見込む値です。あなたのリターンは2つの価格を比べて求めます。
❌ 利回りの変化はリターンではありません。 利回りが1ポイント上がると、残存11か月の短期国債の価格はおよそ 1112\tfrac{11}{12} %動きます。そのうえ1か月分の利息も得ています。2つの価格を計算しましょう。
❌ 惜しい! 2つの価格を計算し、(P期末−P期首)/P期首(P_{\text{期末}} - P_{\text{期首}})/P_{\text{期首}} を求めます。
解答を見る
P期首=1001.04≈96.154,P期末=1001.0511/12≈95.626P_{\text{期首}} = \frac{100}{1.04} \approx 96.154, \qquad P_{\text{期末}} = \frac{100}{1.05^{11/12}} \approx 95.626 R=95.626−96.15496.154≈−0.55%(1か月間)R = \frac{95.626 - 96.154}{96.154} \approx -0.55\% \text{(1か月間)}

利回りが 4.0%4.0\% のままなら、短期国債の価値は 100/1.0411/12≈96.469100/1.04^{11/12} \approx 96.469 で、リターンは 1.041/12−1≈0.33%1.04^{1/12} - 1 \approx 0.33\% だったはずです。提示利回りは購入時に固定されますが、保有した1か月のリターンは利回りがどう動くかで決まります。だからこそ、表の短期国債の行の標準偏差は0より大きいのです。

正解数:0 / 4