ファイナンス理論 · 第14回 · 動画4 · インタラクティブ教材
実質金利とリスク・リターンのトレードオフ(1946〜2001年)
I重要な公式
ポイント:1枚の表から2つの事実が得られます。無リスクとされる資産は、インフレをわずかに上回っただけでした。そして平均リターンは、標準偏差とともに上がっていきます。短期国債(σ=0.24%、平均 0.38%)、中期国債、2つの株価指数、そしてモトローラ(σ=10.02%、平均 1.66%)の順です。
II表の2つの数字から実質金利を出す
実質金利は、おおよそ米国短期国債の金利とインフレ率の差です(どちらも月次)。
III表を下るにつれてのリスクと報酬
短期国債から個別の株へ進むと、標準偏差が大きいほど平均リターンも高く、極端な月の振れ幅も広がります。
IV短期国債の σ が0より大きい理由
保有した1か月の短期国債のリターンは、購入時に提示された利回りだけでなく、その月に利回りがどう動くかで決まります。
💡 利回りは説明用の数字です。短期国債の価格は、額面100あたり 100/(1+y)t(t は年単位)とします。実際の短期国債の σ=0.24% の残りの部分は、1946〜2001年の間に金利の水準そのものが動いたことから来ており、そのために月次リターンは 0.03% から 1.34% まで広がりました。
V確認クイズ
問1 · 実質金利を月次と年率で
条件(説明用):ある期間に、1年物の米国短期国債のリターンは平均で月 0.34%、インフレ率は平均で月 0.25% でした。月次の実質金利の近似値と、その単純な年率換算を求めてください。
月次の実質金利(近似値)
その実質金利の単純な年率換算
✅ 正解です! 月
0.34%−0.25%=0.09%、つまり9ベーシスポイント(bp)で、年率では
0.09%×12=1.08% です(複利ではなく単純な換算)。
❌ インフレ率は足すのではなく引きます。 物価の上昇は短期国債の稼ぎを目減りさせるので、実質金利は名目金利からインフレ率を引いたものです。
❌ 符号が逆です。 実質金利は名目金利からインフレ率を引いたものです。ここでは短期国債がインフレを上回って稼いだので、実質金利はプラスです。
❌ それは名目金利です。 実質金利は、そこからインフレの分を取り除いたものです。
❌ まだ月次の数字です。 月次の率に12をかけると、単純な年率になります。
❌ それは名目金利の年率換算です。 0.34%×12=4.08%。年率に直すのは実質金利のほうです。
❌ それはインフレ率の年率換算です。 0.25%×12=3.00%。問われているのは実質金利です。
❌ 月次の実質金利を確認しましょう。 短期国債の金利からインフレ率を引きます。
❌ 年率換算を確認しましょう。 月次の実質金利に12をかけます。
解答を見る
実質金利は、おおよそ名目金利からインフレ率を引いたものです:
r実質≈0.34%−0.25%=0.09%(月次)=9 bp
単純な年率換算では12をかけます:
0.09%×12=1.08%(年率)
(正確な月次の値 1.0034/1.0025−1≈0.0898% も、丸めれば同じ9 bpです。)
問2 · 正確な実質金利
条件(説明用):米国短期国債の利回りは年 4.0%、インフレ率は年 3.1% です。年率の正確な実質金利 1+インフレ率1+rf−1 を求めてください。
✅ 正解です! 1.040/1.031−1≈0.873% で、近似値の
0.90% よりわずかに小さくなります。正確な値は、
0.9 ポイントの差を
1.031 で割ったものです。
❌ それは近似値です。 4.0%−3.1%=0.9% は引き算です。正確な値は、グロスのリターン
1.040 と
1.031 の割り算で求めます。
❌ 分子と分母が逆です。 1 + 名目金利を 1 + インフレ率で割り、
1.040/1.031 とします。
1.031/1.040 ではありません。
❌ 率そのものではなく、グロスのリターンどうしを割ります。 4.0/3.1−1≈29% では1が抜けています。公式で使うのは
1+rf と
1+インフレ率 です。
❌ 惜しい! グロスのリターン
1.040 と
1.031 をつくって割り、1を引きます。
解答を見る
r実質=1+0.0311+0.040−1=1.0311.040−1≈1.00873−1=0.873%(年率)
近似では 4.0%−3.1%=0.90% になります。ここでは両者の差はおよそ 0.03 ポイントです。表の月次の率 0.38% と 0.32% ははるかに小さいので、差はわずか 0.0002 ポイントです(0.0598% と 0.06%)。
問3 · 最悪の月と99%の範囲
条件:1946〜2001年の表(月次、単位は%)で、10年物の米国中期国債は平均 0.46%、標準偏差 2.63%、最悪の月は −7.73% でした。正規分布では、結果の 99% が μ±2.58σ の範囲に入ります。中期国債の最悪の月が平均より標準偏差いくつ分下にあるか、そして表の5つの投資のうち、最悪の月が自分自身の 99% の範囲に収まっている唯一の投資はどれかを求めてください。
中期国債の最悪の月は、平均から標準偏差いくつ分か
最悪の月が自分の99%の範囲に収まっている唯一の投資
✅ 正解です! (−7.73−0.46)/2.63≈−3.11 で、
−2.58 の外側です。範囲に収まるのは短期国債の最悪の月(標準偏差
(0.03−0.38)/0.24≈−1.46 個分)だけです。VW指数の最悪の月は、平均より標準偏差およそ
5.56 個分も下にあります。
❌ 0からではなく、平均から測ります。 −7.73/2.63≈−2.94 では平均の
0.46% が抜けています。先に平均を引きましょう。
❌ 平均は足すのではなく引きます。 (−7.73+0.46)/2.63≈−2.76 は誤りです。平均からの距離は
−7.73−0.46=−8.19 ポイントです。
❌ それはパーセントポイントで測った差です。 −7.73%−0.46%=−8.19 ポイントを
σ=2.63% で割ると、標準偏差の個数になります。
❌ 中期国債の最悪の月は範囲の外です。 平均より標準偏差およそ
3.11 個分下にあり、範囲の境目の
2.58 を超えています。
❌ モトローラは範囲が広くても、内側には入りません。 標準偏差は
10.02% と大きいものの、
(−33.49−1.66)/10.02≈−3.51 で、やはり
−2.58 の外側です。
❌ 1つは内側にあります。 短期国債の最悪の月
0.03% は、平均から標準偏差
(0.03−0.38)/0.24≈−1.46 個分です。
❌ 標準偏差の個数を確認しましょう。 最悪の月から平均を引き、
σ で割ります。
❌ 各行を確認しましょう。 (最悪の月
− 平均)
/σ を計算し、
−2.58 と比べます。
解答を見る
各行について、平均から標準偏差いくつ分か、(最悪の月−μ)/σ を数えます:
99% の範囲に収まっているのは、短期国債の最悪の月だけです。範囲の外に出る月が1つあること自体は驚くことではありません。56×12=672 か月あれば、正規分布でもそのおよそ 1%、約 7 か月が範囲の外に出ます。しかし、2つの株価指数のように最悪の月が平均より標準偏差 5.3〜5.6 個分も下にあるのは、話が別です。これが左側のファットテールであり、そのために正規分布は近似にとどまるのです。
問4 · 保有した1か月の短期国債のリターン
条件(説明用):満期に100を支払う1年物の短期国債を、提示利回り年 4.0% で買います。価格は 100/1.04 です。1か月後、残存11か月となったこの短期国債の利回りは年 5.0% で、価格は 100/1.0511/12 です。保有した1か月のリターンを求めてください。
✅ 正解です! 価格はおよそ
96.15 からおよそ
95.63 に下がり、リターンはおよそ
−0.55% です。プラスの提示利回りで買ったにもかかわらず、です。
❌ それは提示利回りを月次に直したものです。 1.041/12−1≈0.33% が得られるのは、利回りが
4.0% のままの場合だけです。ここでは利回りが上がったので、価格は下がりました。
❌ 新しい利回りはあなたのリターンではありません。 5.0%/12≈0.42% は、新しい価格で買う人がこれから稼ぐと見込む値です。あなたのリターンは2つの価格を比べて求めます。
❌ 利回りの変化はリターンではありません。 利回りが1ポイント上がると、残存11か月の短期国債の価格はおよそ
1211 %動きます。そのうえ1か月分の利息も得ています。2つの価格を計算しましょう。
❌ 惜しい! 2つの価格を計算し、
(P期末−P期首)/P期首 を求めます。
解答を見る
P期首=1.04100≈96.154,P期末=1.0511/12100≈95.626
R=96.15495.626−96.154≈−0.55%(1か月間)
利回りが 4.0% のままなら、短期国債の価値は 100/1.0411/12≈96.469 で、リターンは 1.041/12−1≈0.33% だったはずです。提示利回りは購入時に固定されますが、保有した1か月のリターンは利回りがどう動くかで決まります。だからこそ、表の短期国債の行の標準偏差は0より大きいのです。
正解数:0 / 4