ファイナンス理論 · 第14回 · 動画6 · インタラクティブ教材

規模・一月・バリュー・モメンタム:標本外で色あせた四つのアノマリー

I重要な公式

公式名称説明
スプレッド=Rˉ一方の端の十分位−Rˉもう一方の端の十分位\text{スプレッド} = \bar R_{\text{一方の端の十分位}} - \bar R_{\text{もう一方の端の十分位}},   1 ポイント=100 bp1 \text{ ポイント} = 100 \text{ bp}十分位のスプレッド毎月、1つの特徴で株を順位づけし、銘柄数の等しい10のグループに分けます。両端の平均リターンを比べます
12 Rˉ全月=R1月+11 Rˉ1月以外12\,\bar R_{\text{全月}} = R_{\text{1月}} + 11\,\bar R_{\text{1月以外}}1月を取り除くどの年にも1月が1回と、それ以外の月が11回あるので、Rˉ1月以外=(12 Rˉ全月−R1月)/11\bar R_{\text{1月以外}} = (12\,\bar R_{\text{全月}} - R_{\text{1月}})/11 となります(どれも月次の平均)
P/B=株主資本の時価株主資本の簿価P/B = \dfrac{\text{株主資本の時価}}{\text{株主資本の簿価}},   B/M=1P/BB/M = \dfrac{1}{P/B}バリューの並べ替え低い P/BP/B(高い B/MB/M)=バリュー株、高い P/BP/B=グロース株
E[偽の発見]=NαE[\text{偽の発見}] = N\alpha,   P(少なくとも1つ)=1−(1−α)NP(\text{少なくとも1つ}) = 1 - (1-\alpha)^Nデータ・マイニング本当は何の効果もない NN 個の特徴を、それぞれ有意水準 α\alpha で検定します(検定は互いに独立)

ポイント:アノマリーはファクトイドです。1964〜2004年という1つの標本についての事実であり、それを保証する理論はありません。標本外(2005〜2025年、バリューは2008〜2025年)では、規模・1月・バリューのファクターはわずかにマイナスに転じ、モメンタムはかつての平均のごく一部しか残りませんでした。

II十分位のスプレッド:当時とその後

どの並べ替えでも、1964〜2004年の両端の差は大きなものでした。ファーマ=フレンチのファクターはそれより穏やかで、その後は縮むか、逆転しました。

💡 小型株は大型株よりボラティリティも高いので、規模のスプレッドの一部はリスクの対価です。バリュー株とグロース株のリスクはほぼ同程度なので、バリューのスプレッドのほうが大きな謎になります。

III1月を取り除く

全部の月の平均から1月を取り除くと、小型株と大型株の稼ぎはほぼ同じになります。

💡 1月のパターンも色あせました。ファーマ=フレンチの規模ファクターは、1964〜2004年の各年の1月に平均で約 +2.3%+2.3\%、2005〜2025年の1月には約 −0.3%-0.3\% でした。

IVデータ・マイニング:偶然による有意

本当は何の効果もない特徴でも、十分に多く検定すれば、いくつかは有意性の検定を通ってしまいます。

V確認クイズ

問1 · 簿価時価比率と株の位置

条件(説明用):架空の企業ターン・ロジスティクスの株主資本は、時価が24億ドル、簿価が6億ドルです。この企業の簿価時価比率と、株価純資産倍率で並べ替えたときにどちらの側に入るかを求めてください。

✅ 正解です! P/B=2.4/0.6=4P/B = 2.4/0.6 = 4 なので、B/M=1/4=0.25B/M = 1/4 = 0.25 です。市場はこの企業を簿価の4倍で評価しており、並べ替えのグロース側の端にあたります。
❌ それは B/MB/M ではなく P/BP/B です。 株価純資産倍率は時価を分子に置きます:2.4/0.6=42.4/0.6 = 4。簿価時価比率はその逆数です。
❌ 比率は正しいのですが、側が逆です。 バリュー株は P/BP/B が低く(B/MB/M が高く)、簿価はたっぷりあるのに市場がそれを評価していないように見える株です。B/MB/M が 0.250.25 というのは低い値です。
❌ 惜しい! まず P/BP/B を計算し、それから逆数をとります。
解答を見る
P/B=株主資本の時価株主資本の簿価=2.40.6=4,B/M=1P/B=14=0.25P/B = \frac{\text{株主資本の時価}}{\text{株主資本の簿価}} = \frac{2.4}{0.6} = 4, \qquad B/M = \frac{1}{P/B} = \frac{1}{4} = 0.25

価格は株主資本の会計上の価値の4倍なので、この企業は並べ替えの P/BP/B が高い(B/MB/M が低い)端の側、つまりグロース株やテクノロジー株が並ぶ側にあります。1964〜2004年に、その端は年約 10.4%10.4\% を稼ぎ、P/BP/B が低いバリューの端は年約 16.7%16.7\% を稼ぎました。

問2 · 1月以外の平均

条件(説明用):架空の最小規模の十分位の平均リターンは、全部の月で月 1.5%1.5\%、1月には 6.6%6.6\% です。残りの11か月の平均リターンを求めてください。

✅ 正解です! (12×1.5%−6.6%)/11=11.4%/11≈1.04%(12 \times 1.5\% - 6.6\%)/11 = 11.4\%/11 \approx 1.04\% です。1月だけで、この十分位のリターンの大きな部分を占めています。
❌ 12ではなく11で割ります。 1月を取り除いたあとの 11.4%11.4\% は、残りの11か月で分け合います:11.4%/11≈1.04%11.4\%/11 \approx 1.04\%。
❌ 全部の月の平均には1月が含まれています。 平均を大きく上回る1月が平均を引き上げているので、ほかの月は 1.5%1.5\% より低くなるはずです。
❌ 合計には12か月を使います。 12×1.5%=18%12 \times 1.5\% = 18\% が12個の月次平均の合計です。11×1.5%11 \times 1.5\% では、1月を引く前に1か月分が抜けてしまいます。
❌ 惜しい! 12 Rˉ全月=R1月+11 Rˉ1月以外12\,\bar R_{\text{全月}} = R_{\text{1月}} + 11\,\bar R_{\text{1月以外}} を使います。
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どの年にも1月が1回と、それ以外の月が11回あるので、12個の月次平均の合計は次のようになります。

12 Rˉ全月=R1月+11 Rˉ1月以外12\,\bar R_{\text{全月}} = R_{\text{1月}} + 11\,\bar R_{\text{1月以外}} Rˉ1月以外=12×1.5%−6.6%11=18%−6.6%11=11.4%11≈1.04%(月あたり)\bar R_{\text{1月以外}} = \frac{12 \times 1.5\% - 6.6\%}{11} = \frac{18\% - 6.6\%}{11} = \frac{11.4\%}{11} \approx 1.04\% \text{(月あたり)}

この 18%18\% は引き算に使うだけの月次平均の合計で、年率のリターンではありません。

問3 · 2009年のモメンタムの急落

条件:2009年3月〜5月に、過去の負け組は 163%163\% 上昇し、過去の勝ち組は 8%8\% 上昇しました(動画の数字)。この期間に、過去の勝ち組のポートフォリオを $1 買い、過去の負け組のポートフォリオを $1 空売りするポジションを持ちます。空売りの代金につく利息は無視します。買い $1 あたりのこのポジションの損益を、その $1 に対する割合で求めてください。

✅ 正解です! 買いの側は $1 の 8%8\% を稼ぎ、空売りの側は $1 の 163%163\% を失います。勝ち組から負け組を引いたスプレッドは 8−163=−1558 - 163 = -155 パーセントポイントなので、このポジションは買い $1 あたり $1.55 を失います。買いに投じた額全体よりも大きな損失です。空売りのポジションは、負け組の反発をまともに受けるのです。
❌ 空売りの側が得るのは、資産のリターンのマイナスです。 負け組が 163%163\% 上がれば、空売りは 163%163\% を失います。利益に加わるわけではありません。
❌ それは別の数字です。 −34%-34\% は2009年4月の1か月だけのファーマ=フレンチのモメンタム・ファクター、つまり分散された1か月分のファクターです。3か月にわたる、十分位の両端のこのポジションではありません。
❌ 符号を確かめましょう。 大きく上がったのは空売りの側なので、ポジションは損をします:勝ち組から負け組を引いて 8%−163%8\% - 163\% です。
❌ 惜しい! ロング・ショートのリターン=買いの側のリターン − 空売りの側のリターンです。
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買いの側:過去の勝ち組に投じた $1 は $1.08 になり、8セントの利益です。

空売りの側:$1 で空売りした過去の負け組のポートフォリオは、買い戻すときには $2.63 の価値になっており、$1.63 の損失です。

Rロング・ショート=R勝ち組−R負け組=8%−163%=−155%R_{\text{ロング・ショート}} = R_{\text{勝ち組}} - R_{\text{負け組}} = 8\% - 163\% = -155\%

このポジションは、買い $1 あたり $1.55 を失います。モメンタムの標本外の平均である年約 +1.4%+1.4\%(2005〜2025年。1964〜2004年は約 +10%+10\%)には、この急落が含まれています。

問4 · 60個の特徴を探し回る

条件(説明用):ある研究者が、架空の株の特徴60個を、それぞれ有意水準 10%10\% で検定します。どの特徴も本当はリターンに影響せず、検定は互いに独立です。有意と判定される数の期待値と、少なくとも1つが有意になる確率を求めてください。

偽の発見の期待値

少なくとも1つが有意になる確率

✅ 正解です! 偽の発見の期待値は 60×0.10=660 \times 0.10 = 6、そして 1−0.960≈99.8%1 - 0.9^{60} \approx 99.8\% です。これだけ広く探せば、有意に見える何かがほぼ確実に見つかってしまいます。
❌ 期待値を確かめましょう。 60個のどれも、偶然に通る確率が 10%10\% あります:Nα=60×0.10N\alpha = 60 \times 0.10。
❌ それは通らないほうの数です。 54=60×0.954 = 60 \times 0.9 は、有意にならない数の期待値です。
❌ 確率を確かめましょう。 60個すべてが通らない確率 0.9600.9^{60} を求めて、1から引きます。
❌ それは偽の発見が1つもない確率です。 0.960≈0.18%0.9^{60} \approx 0.18\% です。少なくとも1つ、はその余事象です。
❌ 確実にはなりません。 60個すべてが偶然に通らないこともあり、その確率は 0.960≈0.18%>00.9^{60} \approx 0.18\% > 0 です。
解答を見る
E[偽の発見]=Nα=60×0.10=6E[\text{偽の発見}] = N\alpha = 60 \times 0.10 = 6 P(1つもない)=(1−0.10)60=0.960≈0.0018P(\text{1つもない}) = (1 - 0.10)^{60} = 0.9^{60} \approx 0.0018 P(少なくとも1つ)=1−0.960≈0.9982≈99.8%P(\text{少なくとも1つ}) = 1 - 0.9^{60} \approx 0.9982 \approx 99.8\%

こうした探索を通った特徴は、発見ではなく候補にすぎません。それを選ぶのに使わなかった標本でも成り立つかを、まだ確かめなければならないのです。

正解数:0 / 4