ファイナンス理論 · 第15回 · 動画3 · インタラクティブ教材

なぜ一つのかごではいけないのか:良いポートフォリオの条件

I重要な公式

公式名称説明
μp≡E[Rp]\mu_p \equiv \text{E}[R_p]平均(報酬)リターンの分布の中心の位置
Prob(Rp≤q5%)=5%\text{Prob}(R_p \le q_{5\%}) = 5\%5パーセンタイル20年に1度の悪い年に、損失がどこまで大きくなるか
σp2≡E[(Rp−μp)2]\sigma_p^2 \equiv \text{E}[(R_p - \mu_p)^2]分散(リスク)平均のまわりの対称的なばらつき
σp=SD[Rp]=σp2\sigma_p = \text{SD}[R_p] = \sqrt{\sigma_p^2}標準偏差リターンと同じ単位で測ったばらつき

ポイント:平均・分散投資家は、E[Rp]\text{E}[R_p] が高いほど好み、σp2\sigma_p^2 が大きいほど嫌い、それ以外は何も気にせず、ポートフォリオ全体だけで判断します。ある株がポートフォリオに入る価値をもつのは、E[Rp]\text{E}[R_p] を上げるか SD[Rp]\text{SD}[R_p] を下げる場合だけです。

II報酬を要約するのはどの数字か

平均、75パーセンタイル、5パーセンタイルが、2つのファンドを同じ順に並べるとは限りません。

III分散:平均のまわりのばらつき

同じ確率で起こる4つのシナリオでは、μp\mu_p はそのつり合いの点、σp\sigma_p はそこからの距離の二乗平均平方根で、どちらも確率で重み付けします(それぞれ p=14p = \tfrac{1}{4})。これは標本ではなく結果の分布なので、分散は 44 で割り、T−1T - 1 では割りません。

💡 チャレンジ: μp=7%\mu_p = 7\% を保ったまま、σp\sigma_p を2倍の 24%24\% にしてみましょう。次に、平均も σp\sigma_p も同じになる別の並べ方を見つけてみましょう。

IVプラスのリターンが損失になるとき

空売りした人にとっては株のプラスのリターンが損失になりますが、標準偏差は変わりません。

V確認クイズ

問1 · リターンの分布の平均

条件: 説明用のあるファンドの来年のリターンは、−10%-10\%(確率 14\tfrac{1}{4})、14%14\%(確率 24\tfrac{2}{4})、22%22\%(確率 14\tfrac{1}{4})のいずれかです。その期待リターン μp=E[Rp]\mu_p = \text{E}[R_p] を求めてください。

✅ 正解です! 各シナリオを確率に比例した重みで数えると、−2.5+7+5.5=10-2.5 + 7 + 5.5 = 10 になります。
❌ 惜しい! 14%14\% は最も起こりやすい1つの結果で、確率で重み付けした平均ではありません。−10%-10\% と 22%22\% のシナリオが、平均をそこから引き離します。
❌ 惜しい! (−10+14+22)/3≈8.7(-10 + 14 + 22)/3 \approx 8.7 は3つのシナリオを同じ確率として扱っていますが、14%14\% の確率は 24\tfrac{2}{4} です。
❌ 確率を確認しましょう。 重み 24\tfrac{2}{4} が付くのは 14%14\% のシナリオで、22%22\% のシナリオではありません。
❌ 惜しい! 各リターンにその確率を掛けて、足し合わせましょう。
解答を見る

平均は、シナリオを確率で重み付けした平均です:

μp=14(−10%)+24(14%)+14(22%)=−2.5%+7%+5.5%=10%\mu_p = \tfrac{1}{4}(-10\%) + \tfrac{2}{4}(14\%) + \tfrac{1}{4}(22\%) = -2.5\% + 7\% + 5.5\% = 10\%

確率の合計は1なので(14+24+14=1\tfrac{1}{4} + \tfrac{2}{4} + \tfrac{1}{4} = 1)、これは完全な分布であり、その中心の位置は μp=10%\mu_p = 10\% です。

問2 · 空売りした人にとってのリスク

条件: ローワンの来年のリターンを、同じ確率で起こる4つのシナリオ −18%-18\%、6%6\%、14%14\%、38%38\% としてモデル化します(説明用)。したがって Prob(R<0)=14\text{Prob}(R < 0) = \tfrac{1}{4}、σ=20%\sigma = 20\% です。あなたはローワンを空売りしているので、各シナリオでのあなたのリターンは、ローワンのリターンの符号を反転したものです。

あなたのポジションが損失を出す確率

あなたのショート・ポジションのリターンの標準偏差

✅ 正解です! 「損失の確率」はどちら側を持つかで変わりますが、標準偏差は変わりません。
❌ それはローワン自身のリターンがマイナスになる確率です。 あなたはショートしているので、ローワンのプラスのシナリオ3つが、あなたの損失になります。
❌ 惜しい! ローワンのリターンがプラスになるシナリオを数えましょう。その一つひとつが、空売りした人にとっては損失です。
❌ 標準偏差がマイナスになることはありません。 標準偏差は偏差の二乗の平均の平方根です。すべてのリターンの符号を反転すると、すべての偏差の符号も反転しますが、二乗すれば符号は消えます。
❌ 惜しい! すべてのリターンの符号を反転すると、平均からのすべての偏差の符号も反転しますが、その二乗は変わりません。
解答を見る

損失。 あなたのリターンは 18%18\%、−6%-6\%、−14%-14\%、−38%-38\% です。同じ確率で起こる4つのシナリオのうち3つが損失なので、その確率は 34\tfrac{3}{4} です。ローワン自体が下がる確率は 14\tfrac{1}{4} しかないのに、です。「株のリターンがマイナスになること」に基づくリスク尺度では、この投資家にとって正反対の答えになってしまいます。

ばらつき。 確率で重み付けしたあなたの平均は 14(18−6−14−38)=−10%\tfrac{1}{4}(18 - 6 - 14 - 38) = -10\% で、偏差は 2828、44、−4-4、−28-28 です。偏差の二乗は、それぞれ確率 14\tfrac{1}{4} で重み付けします(標本ではなく分布なので、T−1T - 1 は使いません):

σ2=14(282+42+42+282)=14(1600)=400,σ=400=20%\sigma^2 = \tfrac{1}{4}\left(28^2 + 4^2 + 4^2 + 28^2\right) = \tfrac{1}{4}(1600) = 400, \qquad \sigma = \sqrt{400} = 20\%

ローワン自身の偏差は −28-28、−4-4、44、2828 で、二乗は同じです。したがって取引のどちら側も σ=20%\sigma = 20\% になります。対称的な尺度なら、どちらの方向を悪いとみなすかを決める必要がないのです。

問3 · 中心は同じで、ばらつきが大きい

条件: 説明用のあるファンドの来年のリターンは −13%-13\%、−13%-13\%、27%27\%、27%27\% のいずれかで、各シナリオの確率は 14\tfrac{1}{4} です。クイル(説明用)は μp=7%\mu_p = 7\%、σp=12%\sigma_p = 12\% です。このファンドの(確率で重み付けした)標準偏差を求め、平均・分散投資家にとってクイルと比べてどうかを答えてください。

このファンドの標準偏差

クイルと比べると、このファンドは

✅ 正解です! 同じ点を中心とする2つの分布では、幅の広いほうがリスクが高く、平均・分散投資家は幅の狭いほうを好みます。
❌ 割る数が違います。 1600/3≈23.1\sqrt{1600/3} \approx 23.1 は T−1=3T - 1 = 3 で割っています。これは過去のリターンから推定するときの、標本分散の割り方です。この4つの結果は確率分布なので、偏差の二乗はそれぞれ確率 14\tfrac{1}{4} で重み付けします。
❌ 惜しい! 4040 は範囲、つまり 27−(−13)27 - (-13) です。標準偏差は平均のまわりのばらつきを測ります。偏差の二乗を平均してから、平方根をとりましょう。
❌ それは分散です。 σp2=400\sigma_p^2 = 400(単位はパーセントの二乗)です。平方根をとって、パーセントに戻しましょう。
❌ 惜しい! まず平均を求め、次に偏差の二乗を(それぞれ重み 14\tfrac{1}{4} で)平均して、平方根をとります。
❌ 上振れには、同じ大きさの下振れがついてきます。 このファンドのばらつきは対称です。−13%-13\% のシナリオは、27%27\% のシナリオが平均より上にあるのと同じだけ、平均より下にあります。
❌ 惜しい! 平均・分散投資家が見るのは、ちょうど2つの数字です。平均が等しいので、標準偏差で決まります。
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平均: μp=14(−13−13+27+27)=284=7%\mu_p = \tfrac{1}{4}(-13 - 13 + 27 + 27) = \tfrac{28}{4} = 7\% で、クイルと同じです。

平均からの偏差: −20-20、−20-20、2020、2020。

σp2=14(202+202+202+202)=16004=400,σp=400=20%\sigma_p^2 = \tfrac{1}{4}\left(20^2 + 20^2 + 20^2 + 20^2\right) = \tfrac{1600}{4} = 400, \qquad \sigma_p = \sqrt{400} = 20\%

これは起こりうる結果の分布について、確率で重み付けした(母集団の)値なので、偏差の二乗にはそれぞれの確率 14\tfrac{1}{4} を掛けます。T−1T - 1 で割るのは、過去のリターンの標本分散のときです。

比較: どちらも μp=7%\mu_p = 7\% ですが、20%20\% は 12%12\% より大きい値です。投資家は平均が高いほど好み、分散が大きいほど嫌い、それ以外は何も気にしないので、平均が同じなら、ばらつきの大きいファンドのほうが劣ります。

問4 · クラブに入れるのは誰か

条件: 十分に分散投資したポートフォリオを持つ平均・分散投資家が、4つの候補の株を1つずつ検討します。ポートフォリオに加える理由がないのはどの候補ですか?

✅ 正解です! この株はポートフォリオの期待リターンを上げることも、リスクを下げることもしないので、単独での平均の高さは関係ありません。
❌ 惜しい! 投資家が気にするのはポートフォリオ全体だけです。単独で持ったときのリスクがどうであれ、この株は期待リターンを犠牲にせずに SD[Rp]\text{SD}[R_p] を下げます。
❌ 惜しい! この株は E[Rp]\text{E}[R_p] を上げるので、検討する理由があります。増えるリスクに見合うかどうかはトレードオフの問題で、はっきりした「ノー」ではありません。
❌ 惜しい! 各候補について問いましょう。ポートフォリオの期待リターンを上げるのか、それともリスクを下げるのか。
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株を加えるのは、クラブに誰かを招き入れるようなものです。問うべきは、新しく入る株がポートフォリオの2つの数字、E[Rp]\text{E}[R_p] と SD[Rp]\text{SD}[R_p] に何をもたらすかです。

  • (a) 期待リターンを犠牲にせずにリスクを下げます。加える理由があります。
  • (b) より大きなリスクと引き換えに期待リターンを上げます。投資家が受け入れるかもしれないトレードオフです。
  • (c) リスクを増やさずに期待リターンを上げます。加える理由があります。
  • (d) 期待リターンを下げ、しかもリスクを上げます。どちらの問いへの答えもノーなので、ポートフォリオに何の役にも立ちません。

単独でどう見えるか(最もリスクが高い、平均が最も高い)では何も決まりません。決め手になるのは、ポートフォリオ全体への影響だけです。

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