ファイナンス理論 · 第15回 · 動画4 · インタラクティブ教材

予測はいらない:リスク・リターンのグラフと「北西」を目指す理由

I重要な公式

公式名称説明
資産 i  ↦  (SD[Ri], E[Ri])\text{資産 } i \;\mapsto\; \big(SD[R_i],\ E[R_i]\big)グラフ上の1点横軸にリスク、縦軸に期待リターンをとる
SD[RA]<SD[RB]SD[R_A] < SD[R_B] かつ E[RA]>E[RB]E[R_A] > E[R_B]AA は BB に優越するAA はリスクが低く報酬も高いので、どの平均・分散投資家も BB を AA の代わりに持つことはない
SD[RA]<SD[RB]SD[R_A] < SD[R_B] かつ E[RA]<E[RB]E[R_A] < E[R_B]トレードオフ期待リターンを増やすには、より大きなリスクを負う。どちらも優越せず、どちらを選んでも筋が通る
ΔE[Rp]>0\Delta E[R_p] > 0 かつ ΔSD[Rp]<0\Delta SD[R_p] < 0北西へ進む北は期待リターンが増える方向、西はリスクが減る方向。どの平均・分散投資家にとっても効用が高まる

ポイント:ポートフォリオ理論は、グラフを予測せずに読みます。点はそのまま受け取ります。それは皆が売買を終えたあとに残った価格であり、残された決定はただ一つ、これらの証券からどのポートフォリオを組むかです。

II優越か、トレードオフか

ある資産が別の資産に優越するのは、リスクが低く、同時に期待リターンが高い場合だけです。

III北西へ進む

どの点から見ても、北は期待リターンが増える方向、西はリスクが減る方向で、北西に進めばその両方が得られます。

IVその差が価格の誤りだとしたら

タンジーを買ってアンバーを空売りすると両者の価格が動き、価格の変化は期待リターンを逆向きに動かします。

💡 売買でスプレッドが閉じるのは、それが本物の価格の誤りであるときだけです。タンジーのロングとアンバーのショートの組み合わせは無リスクではありません。また、市場が価格を付けるのは各株を単独で持ったときのリスクではなく、各株がポートフォリオにもたらすものなので、均衡のグラフの上ではこの差が残りうるのです。

V確認クイズ

問1 · 優越か、トレードオフか

条件: 説明用のリスク・リターンのグラフ上に4つの株があり、それぞれを年率パーセントで (SD,平均)(SD, \text{平均}) と表します:ソレル (16,6)(16, 6)、タンジー (22,11)(22, 11)、アンバー (39,5)(39, 5)、レン (33,9)(33, 9)。優越ではなくトレードオフになっているのはどの組ですか?

✅ 正解です! レンはリターンが高い(9%>6%9\% > 6\%)もののリスクも高い(33%>16%33\% > 16\%)ので、ソレルからレンへ移ると、リスクと引き換えにリターンを得ることになります。
❌ 惜しい! タンジーはどちらの軸でもレンを上回っています。リスクは 22%<33%22\% < 33\%、平均は 11%>9%11\% > 9\% なので、タンジーがレンに優越します。
❌ 惜しい! ソレルはリスクが低く(16%<39%16\% < 39\%)、リターンも高い(6%>5%6\% > 5\%)ので、平均の差は1ポイントしかなくても、ソレルがアンバーに優越します。
❌ 惜しい! レンはリスクが低く(33%<39%33\% < 39\%)、リターンも高い(9%>5%9\% > 5\%)ので、レンがアンバーに優越します。
解答を見る

各組を両方の軸で比べます。優越には、低いほうの標準偏差と高いほうの平均が、同じ株のものであることが必要です。

  • タンジー対レン:22%<33%22\% < 33\% かつ 11%>9%11\% > 9\%。タンジーが優越します。
  • ソレル対アンバー:16%<39%16\% < 39\% かつ 6%>5%6\% > 5\%。ソレルが優越します。
  • レン対アンバー:33%<39%33\% < 39\% かつ 9%>5%9\% > 5\%。レンが優越します。
  • ソレル対レン:16%<33%16\% < 33\% だが 6%<9%6\% < 9\%。リスクの低い株はリターンも低いので、これはトレードオフです。

トレードオフでは、どちらを選んでも筋が通ります。レンの3ポイント多い期待リターンを望む投資家は、17ポイント多い標準偏差を受け入れなければなりません。

問2 · 最高のリターンだけでは足りない

条件: 同じ説明用のグラフで、ベッチは (44,13)(44, 13) にあります。5つの株のなかで期待リターンが最も高く、標準偏差も最も高い株です。ある同級生は、ベッチはほかのすべての株に優越すると言います。それは正しいですか?

✅ 正解です! ある株に優越するには、ベッチの標準偏差がその株より低くなければなりませんが、グラフ上に 44%44\% よりリスクの高い株はありません。
❌ 惜しい! それは縦軸しか見ていません。優越にはリスクが低いことも必要で、ベッチの標準偏差はグラフ上で最も高いのです。
❌ 惜しい! リスクが低いだけでは優越になりません。タンジーの平均 11%11\% はベッチの 13%13\% より低いので、タンジー対ベッチはトレードオフです。
❌ 惜しい! アンバーの標準偏差 39%39\% は、ベッチの 44%44\% より低い値です。ベッチはリターンが高いもののリスクも高いので、この組もトレードオフです。
解答を見る

「A は B に優越する」には、SD[RA]<SD[RB]SD[R_A] < SD[R_B] かつ E[RA]>E[RB]E[R_A] > E[R_B] が必要です。ベッチの標準偏差 44%44\% はグラフ上で最大なので、ほかのどの株に対しても1つ目の条件が成り立ちません。ベッチは何にも優越できないのです。

また、13%13\% より高いリターンの株はないので、ベッチに優越する株もありません。ベッチとの比較はどれもトレードオフで、動画でゼネラル・モーターズとモトローラのあいだに見たのと同じ関係です。

問3 · グラフ上の方向を読む

条件: 再び説明用のグラフで、年率パーセントの (SD,平均)(SD, \text{平均}) は、ソレル (16,6)(16, 6)、タンジー (22,11)(22, 11)、アンバー (39,5)(39, 5)、ベッチ (44,13)(44, 13)、レン (33,9)(33, 9) です。

ほかの4つの株のうち、アンバーに優越するのはいくつですか?

ソレルからタンジーに乗り換えると、投資家の点はどちらへ動きますか?

✅ 正解です! ソレル、タンジー、レンはいずれもアンバーの北西にあります。また、ソレルからタンジーへの移動は上(6%→11%6\% \to 11\%)かつ右(16%→22%16\% \to 22\%)です。
❌ 数を確認しましょう。 各株について、アンバーに対する2つの条件を確かめます。標準偏差が 39%39\% より低く、平均が 5%5\% より高いことです。
❌ ベッチを確認しましょう。 ベッチの平均はアンバーを上回りますが、標準偏差 44%44\% はアンバーの 39%39\% より高いので、ベッチ対アンバーはトレードオフです。
❌ 方向を確認しましょう。 北は上(期待リターンが増える)、東は右(リスクが増える)です。ソレルとタンジーの数字を、軸ごとに別々に比べましょう。
❌ 横方向の動きを確認しましょう。 平均はたしかに上がりますが、標準偏差も 16%16\% から 22%22\% に上がります。これは西ではなく東への移動です。
解答を見る

パート1。 ある株がアンバー (39,5)(39, 5) に優越するのは、標準偏差が 39%39\% より低く、平均が 5%5\% より高いときです。

  • ソレル:16<3916 < 39 かつ 6>56 > 5。優越します。
  • タンジー:22<3922 < 39 かつ 11>511 > 5。優越します。
  • レン:33<3933 < 39 かつ 9>59 > 5。優越します。
  • ベッチ:44>3944 > 39。リスクの条件を満たさないので、トレードオフです。

アンバーに優越する株は3つです。動画のメルクに対するマクドナルドのように、アンバーは、それぞれを単独で持てば、自分に優越する株より見劣りします。

パート2。 ソレルからタンジーへ:ΔE=11%−6%=+5\Delta E = 11\% - 6\% = +5 ポイント(北)、ΔSD=22%−16%=+6\Delta SD = 22\% - 16\% = +6 ポイント(東)。北東はトレードオフです。それに見合うかどうかは、増えるリスクに対して、増えるリターンを投資家がどれだけ重視するかで決まります。

問4 · その差は埋まらなければならないのか

条件: あるコラムニストがこう書いています。「アンバーはタンジーの南東にあるので、市場はアンバーの価格を誤っている。タンジーをロングしてアンバーをショートし、差が埋まるまでただでお金を集めよう」。動画の学術的な見方に合う反論はどれですか?

✅ 正解です! 点は、売買のあとに価格が落ち着いた位置で、需要と供給が一致しています。単独で持てばアンバーはタンジーより見劣りしますが、投資家が持つのはポートフォリオです。
❌ 惜しい! タンジーのロングとアンバーのショートは無リスクではなく、ほかの証券を加えても無リスクに近づけられるだけです。単独で持った2つの株のあいだの差が、埋まらなければならない理由はありません。
❌ 惜しい! ポートフォリオ理論は予測をしません。グラフはそのまま受け取ります。そして効率的市場では、予測できるパターンはすでに価格に織り込まれています。
❌ 惜しい! 重要なのはアンバーが単独でどう見えるかではなく、ポートフォリオに何をもたらすかです。均衡価格のもとでアンバーは保有されているので、その期待リターンをタンジーより上へ押し上げるものは何もありません。
解答を見る

動画は2つの議論を比べます。その差が本物の価格の誤りなら、タンジーを買えばその価格は上がって期待リターンは下がり、アンバーを空売りすればその逆が起こります。そうした売買によって差は埋まります。価格の誤りなら、まさにそうなるべきなのです。

経済学者の答えは、グラフはすでにそうした売買の結果を示している、というものです。どの点も、市場が公正とみなす期待リターンの位置にあり、需要と供給が一致しています。市場が価格を付けるのは、株を単独で持ったときのリスクではなく、その株がポートフォリオにもたらすものなので、単独では優越されて見える株も、その場所にとどまりえます。タンジーのロングとアンバーのショートというポジションは無リスクではないので、差が閉じることを強いるものは何もありません。

価格が均衡にあるなら、投資家に残された決定はただ一つ、これらの証券からどのポートフォリオを組むかです。

正解数:0 / 4