ファイナンス理論 · 第16回 · 動画1 · インタラクティブ教材

ポートフォリオのリスクは対角の外にある:平均と分散、共分散の支配

I重要な公式

公式名称説明
μp=E[Rp]=ω1μ1+ω2μ2+⋯+ωnμn\mu_p = \text{E}[R_p] = \omega_1\mu_1 + \omega_2\mu_2 + \cdots + \omega_n\mu_nポートフォリオの平均会計恒等式 Rp=ω1R1+⋯+ωnRnR_p = \omega_1 R_1 + \cdots + \omega_n R_n から導かれます。平均は、各平均の加重平均です
σi2=Var[Ri]=E[(Ri−μi)2]\sigma_i^2 = \text{Var}[R_i] = \text{E}[(R_i - \mu_i)^2]1つの証券の分散その平方根が標準偏差 σi\sigma_i で、リスク・リターンのグラフ上のリスクの座標になります
Var[Rp]=∑i=1n∑j=1nωiωjσij\text{Var}[R_p] = \displaystyle\sum_{i=1}^{n}\sum_{j=1}^{n} \omega_i\omega_j\sigma_{ij}ポートフォリオの分散表の n2n^2 個のマスをすべて足し合わせます。i=ji = j のマスは ωi2σi2\omega_i^2\sigma_i^2 です
σij=Cov[Ri,Rj]=σiσjρij\sigma_{ij} = \text{Cov}[R_i, R_j] = \sigma_i\sigma_j\rho_{ij}共分散2つの標準偏差と相関の積です。ρij<0\rho_{ij} < 0 なら負になります

ポイント: 表の対角には nn 個の分散が、対角の外には n2−n=n(n−1)n^2 - n = n(n-1) 個の共分散が並びます。ですから nn が大きくなるにつれ、ポートフォリオのリスクは主に、株どうしがどう連動するかで決まるようになります。

II表のすべてのマス

ポートフォリオの分散は9つのマスすべての和で、負の共分散はそこから差し引かれます(説明用の株です。入力が矛盾しないよう、スライダーの範囲を限っています)。

IIIマスを数える

nn 銘柄の表には分散のマスが nn 個、共分散のマスが n2−nn^2 - n 個あるので、すぐに共分散が大半を占めるようになります。

IV平均は加重平均になるが、リスクはならない

ポートフォリオの平均は各平均の加重平均です。では、標準偏差はどこに来るでしょうか?(説明用の月次の平均:アルダー 0.6%0.6\%、バーチ 0.9%0.9\%、シダー 1.4%1.4\%)

V確認クイズ

問1 · ある月の実現したリターン

条件: 説明用のポートフォリオが、アルダーを20%、バーチを30%、シダーを50%保有しています。先月のリターンは、アルダー 3%3\%、バーチ −2%-2\%、シダー 4%4\% でした。この月のポートフォリオの実現したリターンを求めてください。

✅ 正解です! Rp=∑iωiRiR_p = \sum_i \omega_i R_i は会計恒等式です。実際に得たリターンは、各株で得たリターンの加重平均です。
❌ 惜しい! それは単純平均 (3−2+4)/3(3 - 2 + 4)/3 です。シダーにはお金の半分が入っているので、その 4%4\% は半分の重みで効きます。
❌ 惜しい! バーチは 2%2\% 下がりました。その項は 0.3×(−2%)=−0.6%0.3 \times (-2\%) = -0.6\% で、差し引かれます。
❌ 惜しい! それは3つのリターンをウェイトなしで足しています。各リターンにはそのウェイトをかけます。ウェイトの合計は1です。
❌ 惜しい! 各株のリターンに、ポートフォリオに占める割合で重みをつけましょう。
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ウェイトの合計は1です(0.2+0.3+0.5=10.2 + 0.3 + 0.5 = 1)。実現したリターンは、各株の実現したリターンの加重和です。

Rp=0.2×3%+0.3×(−2%)+0.5×4%=0.6%−0.6%+2.0%=2.0%R_p = 0.2 \times 3\% + 0.3 \times (-2\%) + 0.5 \times 4\% = 0.6\% - 0.6\% + 2.0\% = 2.0\%

同じ式の期待値をとると μp=∑iωiμi\mu_p = \sum_i \omega_i \mu_i が得られます。恒等式は毎月成り立ち、平均の公式はそこから導かれるのです。

問2 · 非対角のマス1つ

条件: 説明用のポートフォリオで、アルダーはウェイト 0.200.20、月次の標準偏差 5%5\%、バーチはウェイト 0.300.30、月次の標準偏差 8%8\% で、両者の相関は ρAB=−0.3\rho_{AB} = -0.3 です。ポートフォリオの分散の表にあるマス1つ、ωAωBσAB\omega_A\omega_B\sigma_{AB} の値を %2\%^2 単位で求めてください。

✅ 正解です! 0.20×0.30×5×8×(−0.3)=−0.720.20 \times 0.30 \times 5 \times 8 \times (-0.3) = -0.72 です。共分散が負なので、このマスはポートフォリオの分散を下げます。
❌ 惜しい! −12-12 は共分散 σAB=5×8×(−0.3)\sigma_{AB} = 5 \times 8 \times (-0.3) そのものです。マスには2つのウェイト、ωAωB=0.06\omega_A\omega_B = 0.06 もかかります。
❌ 惜しいですが… −1.44-1.44 は、鏡像の位置にある2つのマス ωAωBσAB\omega_A\omega_B\sigma_{AB} と ωBωAσBA\omega_B\omega_A\sigma_{BA} を合わせた値です。問われているのはマス1つです。
❌ 惜しい! 相関が負なので、共分散もマスも負になります。
❌ 惜しい! 2つのウェイト、2つの標準偏差、相関をすべてかけ合わせましょう。
解答を見る

まず共分散は σAB=σAσBρAB=5×8×(−0.3)=−12 %2\sigma_{AB} = \sigma_A\sigma_B\rho_{AB} = 5 \times 8 \times (-0.3) = -12\ \%^2 です。

マスには両方のウェイトがかかります。

ωAωBσAB=0.20×0.30×(−12)=0.06×(−12)=−0.72 %2\omega_A\omega_B\sigma_{AB} = 0.20 \times 0.30 \times (-12) = 0.06 \times (-12) = -0.72\ \%^2

鏡像の位置にあるマス ωBωAσBA\omega_B\omega_A\sigma_{BA} も同じ値なので、アルダーとバーチの組は、すべてのマスの和に 2×(−0.72)=−1.44 %22 \times (-0.72) = -1.44\ \%^2 を寄与します。

問3 · 表全体

条件: 説明用のポートフォリオが、アルダーを25%、バーチを25%、シダーを50%保有しています。月次の標準偏差はそれぞれ 5%5\%、8%8\%、12%12\%、相関は ρAB=0.2\rho_{AB} = 0.2、ρAC=0.5\rho_{AC} = 0.5、ρBC=−0.3\rho_{BC} = -0.3 です。ポートフォリオの月次の分散と標準偏差を求めてください。

Var[R_p] はいくつですか?

SD[R_p] はいくつですか?

✅ 正解です! 9つのマスすべてを足すと 42.8625 %242.8625\ \%^2 なので、σp≈6.55%\sigma_p \approx 6.55\%(月あたり)です。標準偏差の加重平均 9.25%9.25\% を大きく下回ります。
❌ 惜しいですが… それは各共分散を1回しか数えていません。それぞれの組は (i,j)(i, j) と (j,i)(j, i) の2つのマスを占めるので、非対角の値はどれも2回現れます。
❌ 惜しい! それは分散の加重平均 ∑iωiσi2\sum_i \omega_i\sigma_i^2 です。ポートフォリオの分散はそうではありません。各分散には ωi2\omega_i^2 がかかり、さらに共分散のマスを加えなければなりません。
❌ 惜しい! バーチ–シダーのマスは ρBC=−0.3\rho_{BC} = -0.3 なので負になり、合計から差し引かれます。
❌ 惜しい! 9つのマス ωiωjσiσjρij\omega_i\omega_j\sigma_i\sigma_j\rho_{ij} をすべて足しましょう。
❌ 惜しい! 9.25%9.25\% は標準偏差の加重平均です。標準偏差は加重平均にはなりません。ポートフォリオの分散の平方根をとりましょう。
❌ 惜しいですが… 41.5625≈6.45\sqrt{41.5625} \approx 6.45 は対角だけを使っています。共分散のマスが、差し引きで +1.3 %2+1.3\ \%^2 を加えます。
❌ 惜しい! 94.25≈9.71\sqrt{94.25} \approx 9.71 は分散の加重平均の平方根で、ポートフォリオの分散ではありません。
❌ 惜しい! ポートフォリオの分散の平方根をとりましょう。
解答を見る

対角(重みをつけた分散、ωi2σi2\omega_i^2\sigma_i^2):

0.252×25+0.252×64+0.52×144=1.5625+4+36=41.56250.25^2 \times 25 + 0.25^2 \times 64 + 0.5^2 \times 144 = 1.5625 + 4 + 36 = 41.5625

非対角(各組は2回現れる、2 ωiωjσiσjρij2\,\omega_i\omega_j\sigma_i\sigma_j\rho_{ij}):

  • アルダー–バーチ:2×0.25×0.25×5×8×0.2=12 \times 0.25 \times 0.25 \times 5 \times 8 \times 0.2 = 1
  • アルダー–シダー:2×0.25×0.5×5×12×0.5=7.52 \times 0.25 \times 0.5 \times 5 \times 12 \times 0.5 = 7.5
  • バーチ–シダー:2×0.25×0.5×8×12×(−0.3)=−7.22 \times 0.25 \times 0.5 \times 8 \times 12 \times (-0.3) = -7.2
Var[Rp]=41.5625+1+7.5−7.2=42.8625 %2≈42.86 %2\text{Var}[R_p] = 41.5625 + 1 + 7.5 - 7.2 = 42.8625\ \%^2 \approx 42.86\ \%^2 SD[Rp]=42.8625≈6.55% (月あたり)\text{SD}[R_p] = \sqrt{42.8625} \approx 6.55\%\ \text{(月あたり)}

問4 · 31番目の株を加える

条件: すでに30銘柄を保有するポートフォリオに、31番目の株としてドッグウッドを加えます。分散の表で共分散のマスがいくつ増えるかを求めてください。

✅ 正解です! ドッグウッドには新しい行と列が1つずつ加わります。新しいマスは61個で、そのうちドッグウッド自身の分散は1つだけです。
❌ 惜しいですが… ドッグウッドは新しい組を30個つくりますが、それぞれの組は表の2つのマス、つまりドッグウッドの行に1つ、列に1つを占めます。
❌ 惜しいですが… 312−302=6131^2 - 30^2 = 61 は、対角にあるドッグウッド自身の分散を含めた、新しいマスすべての数です。
❌ 惜しい! 31×30=93031 \times 30 = 930 は新しい表にある共分散のマスの総数で、増えた数ではありません。
❌ 惜しい! 共分散の数 n(n−1)n(n-1) を、加える前と後で比べましょう。
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nn 銘柄の表にある共分散のマスの数は n2−n=n(n−1)n^2 - n = n(n-1) です。

31×30−30×29=930−870=6031 \times 30 - 30 \times 29 = 930 - 870 = 60

別の見方をすると、表のマスは 302=90030^2 = 900 個から 312=96131^2 = 961 個に増え、新しいマスは61個です。1つはドッグウッドの分散で、残りの60個は、すでに保有している30銘柄との共分散です(行に30個、列に30個)。ドッグウッドが単独でどれほど変動が大きくても、その分散は961個のうちの1マスにすぎません。

正解数:0 / 4