ファイナンス理論 · 第16回 · 動画2 · インタラクティブ教材

二つの株と一つの共分散:リスクとリターンの関係はなぜ弾丸型になるのか

I重要な公式

公式名称説明
E[Rp]=ωaμa+ωbμbE[R_p] = \omega_a \mu_a + \omega_b \mu_b(ただし ωa+ωb=1\omega_a + \omega_b = 1)二資産の期待リターン平均は、2つの平均の単純な加重平均です
Var[Rp]=ωa2σa2+ωb2σb2+2 ωaωb Cov[Ra,Rb]\text{Var}[R_p] = \omega_a^2 \sigma_a^2 + \omega_b^2 \sigma_b^2 + 2\,\omega_a \omega_b \,\text{Cov}[R_a, R_b]二資産の分散2×2の表の和です。対角の2つのマスに、同じ値の非対角の2つのマスを足すので、係数 22 がつきます
Var[Rp]=ωa2σa2+ωb2σb2+2 ωaωb σaσb ρab\text{Var}[R_p] = \omega_a^2 \sigma_a^2 + \omega_b^2 \sigma_b^2 + 2\,\omega_a \omega_b \,\sigma_a \sigma_b \,\rho_{ab}(ただし −1≤ρab≤1-1 \le \rho_{ab} \le 1)相関で表した形両方のウェイトが正なら、ρab\rho_{ab} が大きいほど分散も大きくなります
μannual≈12 μmonthly,σannual=12 σmonthly\mu_{\text{annual}} \approx 12\,\mu_{\text{monthly}}, \quad \sigma_{\text{annual}} = \sqrt{12}\,\sigma_{\text{monthly}}年率換算複利は無視します。各月が無相関で分散が一定なので、1年の分散は 12 σmonthly212\,\sigma^2_{\text{monthly}} になります

ポイント: 平均は加重平均になりますが、リスクはなりません。ゼネラル・モーターズ(GM)とモトローラに半分ずつ投資すると、期待リターンは月 0.5(1.08)+0.5(1.75)=1.415%0.5(1.08) + 0.5(1.75) = 1.415\%(動画の表では丸めて 1.42%1.42\%)で、ちょうど真ん中です。ところが標準偏差は約 6.68%6.68\% で、真ん中の 7.98%7.98\% に届きません。トレードオフを弾丸型(ブレット)の曲線に曲げているのは、ρ=0.37<1\rho = 0.37 < 1 を含む交差項なのです。

II2×2の分散の表

ポートフォリオの分散は4つのマスの和で、非対角の2つのマスはいつも同じ値です。

III弾丸型の曲線に隠れたウェイト

ゼネラル・モーターズとモトローラの曲線上の点は、どれも1つのウェイトの選び方に対応していますが、どちらの軸にもウェイトは現れません。

IV年率換算:平均は12倍、リスクは√12倍

各月が無相関で分散が等しければ、分散は月数に比例して増えるので、標準偏差はその平方根に比例してしか増えません。

💡 大きさの目安:株式市場の予想ボラティリティを測るVIX指数は、2008年11月20日に 80.8680.86 で取引を終え、2026年9月16日時点では 17.7117.71 でした。ですから動画に出てくる年率約 40%40\% は、落ち着いた市場では、1つの保有資産としては非常に大きなリスクです。

V確認クイズ

問1 · 60/40の組み合わせ

条件: 架空の2つの株(説明用の月次の数値):エンバーは μ=0.9%\mu = 0.9\%、σ=5%\sigma = 5\%、フリントは μ=1.6%\mu = 1.6\%、σ=11%\sigma = 11\% で、ρ=0.25\rho = 0.25 です。あるポートフォリオが、エンバーを 60%60\%、フリントを 40%40\% 保有しています。その期待リターンと標準偏差を求めてください。

月あたりの期待リターンは?

月あたりの標準偏差は?

✅ 正解です! 平均は加重平均の 1.18%1.18\% ですが、リスクは約 5.91%5.91\% で、2つの標準偏差の加重平均 7.40%7.40\% を大きく下回ります。
❌ 惜しい! 1.25%1.25\% は 0.9%0.9\% と 1.6%1.6\% の単純平均です。ウェイトは半分ずつではなく、0.60.6 と 0.40.4 です。
❌ ウェイトが入れ替わっています。 1.32%1.32\% はフリントに 0.60.6 をかけています。60%60\% のウェイトはエンバーのものです。
❌ 惜しい! ウェイトを2乗するのは分散だけです。平均では ω\omega そのものを使い、0.6+0.4=10.6 + 0.4 = 1 です。
❌ 惜しい! E[Rp]=ωEμE+ωFμFE[R_p] = \omega_E \mu_E + \omega_F \mu_F を使いましょう。
❌ それは直線上の答えです。 0.6(5)+0.4(11)=7.400.6(5) + 0.4(11) = 7.40 は標準偏差の加重平均で、正しいのは ρ=1\rho = 1 のときだけです。ここでは交差項はもっと小さくなります。
❌ 平方根をとりましょう。 34.9634.96 は %2\%^2 単位の分散です。標準偏差はその平方根です。
❌ 係数2が抜けています。 交差項は2×2の表の非対角の2つのマスの両方に現れるので、2×0.6×0.4×5×11×0.25=6.62 \times 0.6 \times 0.4 \times 5 \times 11 \times 0.25 = 6.6 になります。3.33.3 ではありません。
❌ 惜しい! 4つのマスから分散を組み立て、その平方根をとりましょう。
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平均:

E[Rp]=0.6(0.9)+0.4(1.6)=0.54+0.64=1.18%E[R_p] = 0.6(0.9) + 0.4(1.6) = 0.54 + 0.64 = 1.18\%

分散(%2\%^2 単位。リターンは月あたりの%):

Var[Rp]=0.62(52)+0.42(112)+2(0.6)(0.4)(5)(11)(0.25)=9+19.36+6.6=34.96\text{Var}[R_p] = 0.6^2(5^2) + 0.4^2(11^2) + 2(0.6)(0.4)(5)(11)(0.25) = 9 + 19.36 + 6.6 = 34.96 σp=34.96≈5.91%\sigma_p = \sqrt{34.96} \approx 5.91\%

リスクは約 1.491.49 ポイント、加重平均 0.6(5)+0.4(11)=7.40%0.6(5) + 0.4(11) = 7.40\% を下回ります。ρ=0.25<1\rho = 0.25 < 1 だからです。

問2 · 一方を空売りし、もう一方にレバレッジをかける

条件: 同じエンバーとフリントです(説明用:月あたり 0.9%0.9\% / 5%5\% と 1.6%1.6\% / 11%11\%、ρ=0.25\rho = 0.25)。エンバーを空売りし、その代金をフリントに投資します(ωフリント=1.2\omega_{\text{フリント}} = 1.2、ωエンバー=−0.2\omega_{\text{エンバー}} = -0.2)。ポートフォリオの月次の標準偏差を求めてください。

✅ 正解です! ウェイトの一方が負なので、交差項は差し引かれます。174.24+1−6.6=168.64174.24 + 1 - 6.6 = 168.64 なので、σp≈12.99%\sigma_p \approx 12.99\% です。
❌ 交差項の符号を確かめましょう。 2 ωEωF2\,\omega_E \omega_F は 2(−0.2)(1.2)=−0.482(-0.2)(1.2) = -0.48 なので、交差項はマイナスの符号で入ります。6.66.6 を足すと 181.84181.84、13.48%13.48\% になってしまいます。
❌ それは標準偏差の加重平均です。 1.2(11)−0.2(5)=12.201.2(11) - 0.2(5) = 12.20 がリスクになるのは ρ=1\rho = 1 のときだけです。ρ=0.25\rho = 0.25 なら、4つのマスから分散を組み立てましょう。
❌ 交差項が抜けています。 174.24+1≈13.24\sqrt{174.24 + 1} \approx 13.24 には 2(−0.2)(1.2)(5)(11)(0.25)=−6.62(-0.2)(1.2)(5)(11)(0.25) = -6.6 が入っていません。
❌ 惜しい! ωE=−0.2\omega_E = -0.2 として、相関で表した形を使いましょう。
解答を見る

ウェイトの合計はやはり1です(1.2+(−0.2)=11.2 + (-0.2) = 1)。

Var[Rp]=1.22(112)+(−0.2)2(52)+2(1.2)(−0.2)(11)(5)(0.25)\text{Var}[R_p] = 1.2^2(11^2) + (-0.2)^2(5^2) + 2(1.2)(-0.2)(11)(5)(0.25) =174.24+1−6.6=168.64,σp=168.64≈12.99%= 174.24 + 1 - 6.6 = 168.64, \qquad \sigma_p = \sqrt{168.64} \approx 12.99\%

2乗したウェイトは符号にかかわらず正ですが、積 ωEωF\omega_E \omega_F は負なので、交差項は差し引かれます。期待リターンは 1.2(1.6)+(−0.2)(0.9)=1.92−0.18=1.74%1.2(1.6) + (-0.2)(0.9) = 1.92 - 0.18 = 1.74\% で、フリント自身の 1.6%1.6\% を上回り、リスクもフリントの 11%11\% を上回ります。このポートフォリオは、曲線上でフリントの先にあるのです。

問3 · 月次から年率へ

条件: 架空のファンド(説明用)の月次の平均は 1.1%1.1\%、月次の標準偏差は 7%7\% です。各月のリターンは互いに無相関で、月次の分散は一定と仮定します。年率の標準偏差と、複利を考えた年率の平均を求めてください。

年率の標準偏差は?

複利を考えた年率の平均は?

✅ 正解です! 分散は 1212 倍になるので、リスクは 12\sqrt{12} 倍、つまり年 ≈24.25%\approx 24.25\% です。複利で考えた平均は (1.011)12−1≈14.03%(1.011)^{12} - 1 \approx 14.03\% です。
❌ 平方根をとる対象が違います。 12×7≈9.17\sqrt{12 \times 7} \approx 9.17 ではありません。分散は 12×72=588 %212 \times 7^2 = 588\ \%^2 で、588=12×7\sqrt{588} = \sqrt{12} \times 7 です。
❌ それは各月がそろって動くとみなしています。 標準偏差に 1212 をかけるのは、どの2つの月も完全に相関していると仮定することです。各月が無相関なら、1212 倍になるのは分散のほうです。
❌ 向きが逆です。 1年は1か月よりリスクが大きいので、12\sqrt{12} で割るのではなく、かけます。
❌ 惜しい! Var[R1+⋯+R12]=12 σmonthly2\text{Var}[R_1 + \dots + R_{12}] = 12\,\sigma^2_{\text{monthly}} から始めましょう。
❌ それは複利を無視しています。 12×1.1%=13.2%12 \times 1.1\% = 13.2\% は単純な計算です。複利を考えるなら、1を足して12乗し、1を引きます。
❌ 1を引きましょう。 (1.011)12≈1.1403(1.011)^{12} \approx 1.1403 は成長倍率です。リターンは 1.1403−11.1403 - 1 です。
❌ 単位を確かめましょう。 (1.011)12−1≈0.1403(1.011)^{12} - 1 \approx 0.1403 は小数なので、14.03%14.03\% です。1.14%1.14\% ではありません。
❌ 惜しい! (1+μmonthly)12−1(1 + \mu_{\text{monthly}})^{12} - 1 を使い、μ\mu は小数で入れましょう。
解答を見る

リスク。各月が無相関なら、和の分散に含まれる共分散の項はすべて消え、各月が同じ 72=49 %27^2 = 49\ \%^2 ずつ寄与します。

Var[R1+⋯+R12]=12×49=588 %2,σannual=588=12×7≈24.25%\text{Var}[R_1 + \dots + R_{12}] = 12 \times 49 = 588\ \%^2, \qquad \sigma_{\text{annual}} = \sqrt{588} = \sqrt{12} \times 7 \approx 24.25\%

平均。複利を無視すれば 12×1.1%=13.2%12 \times 1.1\% = 13.2\% です。複利を考えると、次のようになります。

(1+0.011)12−1≈1.1403−1=0.1403≈14.03%(1 + 0.011)^{12} - 1 \approx 1.1403 - 1 = 0.1403 \approx 14.03\%

問4 · 相関が高まると

条件: 上と同じエンバーとフリント(説明用)ですが、相関が 0.250.25 から 0.650.65 に高まったとします。次の各ポートフォリオの標準偏差がどうなるかを求めてください。(i) エンバー 60%60\%、フリント 40%40\%(もとは約 5.91%5.91\%)、(ii) エンバー −20%-20\%、フリント 120%120\%(もとは約 12.99%12.99\%)。

(i) 60/40のポートフォリオは?

(ii) エンバーを空売りしたポートフォリオは?

✅ 正解です! 相関が高まると分散が大きくなるのは、両方のウェイトが正のときだけです。空売りのポジションがあると交差項はマイナスの符号をもつので、相関が高まると分散は小さくなります。
❌ 符号を確かめましょう。 両方のウェイトが正なので、2 ωEωFσEσF=26.4>02\,\omega_E \omega_F \sigma_E \sigma_F = 26.4 > 0 が ρ\rho にかかります。ρ\rho が大きくなると分散は増え、減ることはありません。
❌ 相関は効いてきます。 どちらかのウェイトが0でないかぎり、ρ\rho は交差項 2 ωEωFσEσF2\,\omega_E \omega_F \sigma_E \sigma_F にかかるので、相関が変われば分散も変わります。
❌ 空売りのポジションがあると、そうはなりません。 ここでは 2 ωEωFσEσF=2(−0.2)(1.2)(5)(11)=−26.42\,\omega_E \omega_F \sigma_E \sigma_F = 2(-0.2)(1.2)(5)(11) = -26.4 なので、ρ\rho を大きくすると交差項はさらに負になり、分散は小さくなります。
❌ 惜しい! ρ=0.65\rho = 0.65 として、60/40のポートフォリオの分散を計算し直しましょう。
❌ 惜しい! ρ=0.65\rho = 0.65 とし、ωE=−0.2\omega_E = -0.2 のまま、エンバーを空売りしたポートフォリオの分散を計算し直しましょう。
解答を見る

変わるのは交差項だけです。その係数 2 ωEωFσEσF2\,\omega_E \omega_F \sigma_E \sigma_F が向きを決めます。

(i) 2(0.6)(0.4)(5)(11)=26.4>02(0.6)(0.4)(5)(11) = 26.4 > 0:

Var[Rp]=9+19.36+26.4(0.65)=9+19.36+17.16=45.52,σp≈6.75%\text{Var}[R_p] = 9 + 19.36 + 26.4(0.65) = 9 + 19.36 + 17.16 = 45.52, \qquad \sigma_p \approx 6.75\%

(ii) 2(−0.2)(1.2)(5)(11)=−26.4<02(-0.2)(1.2)(5)(11) = -26.4 < 0:

Var[Rp]=1+174.24−26.4(0.65)=175.24−17.16=158.08,σp≈12.57%\text{Var}[R_p] = 1 + 174.24 - 26.4(0.65) = 175.24 - 17.16 = 158.08, \qquad \sigma_p \approx 12.57\%

両方のウェイトが正なら、ρ\rho が大きいほどリスクは大きくなります。一方のウェイトが負なら、ρ\rho が大きいほどリスクは小さくなります。空売りのポジションが、買いポジションをより多く相殺するようになるからです。

正解数:0 / 4