ファイナンス理論 · 第16回 · 動画5 · インタラクティブ教材

Tビルを組み入れる:直線、レバレッジ、そして弾丸型の上半分

I重要な公式

公式名称説明
E[Rp]=ωTBill RTBill+ωSTK μSTK\text{E}[R_p] = \omega_{\text{TBill}}\,R_{\text{TBill}} + \omega_{\text{STK}}\,\mu_{\text{STK}}期待リターンこれまでどおり、2つの平均の加重平均です
Var[Rp]=ωSTK2 σSTK2\text{Var}[R_p] = \omega_{\text{STK}}^2\,\sigma_{\text{STK}}^2Tビルを含む場合の分散Tビル自身の分散の項も、共分散の項も0です
σp=ωSTK σSTK\sigma_p = \omega_{\text{STK}}\,\sigma_{\text{STK}}(ωSTK≥0\omega_{\text{STK}} \ge 0 のとき)標準偏差平均と同じく株式のウェイトの一次式なので、組み合わせは1本の直線の上に並びます
ωTBill=1−ωSTK<0\omega_{\text{TBill}} = 1 - \omega_{\text{STK}} < 0レバレッジTビルを空売りすることは、Tビル金利でお金を借りることです。点は同じ直線に沿って株式の先へ押し出されます

ポイント:リスクのある資産を2つ組み合わせると弾丸型の曲線を描き、無リスク資産とリスクのある資産を1つ組み合わせると直線を描きます。弾丸型のうち持つ価値があるのは、最小分散の点から上の上半分だけです。それが効率的フロンティアです。

IITビルが弾丸型を直線に変える

σTBill=0\sigma_{\text{TBill}} = 0 なので、E[Rp]\text{E}[R_p] も σp\sigma_p も ωSTK\omega_{\text{STK}} の一次式になり、どの組み合わせも1本の直線の上に乗ります。

IIIレバレッジは悪い月を何倍にもする

レバレッジをかけたリターンは、ファンドのリターンの ωSTK\omega_{\text{STK}} 倍から借入コストを引いたものなので、わずかな損失で自己資本が吹き飛ぶことがあります。

💡 2008年には、レバレッジをかけたポジションは株価指数よりはるかに荒っぽく、推定していた相関は1に向かって跳ね上がりました。そのため本当のリスクは、レバレッジを決めるときに想定した σ\sigma よりはるかに大きかったのです。

IV弾丸型の上半分だけ

下半分のどのポートフォリオにも、その真上に、同じ σp\sigma_p で平均が高い相手があります。

💡 この理論はフロンティアの作り方を教えてくれますが、その上のどこにいるべきかは教えてくれません。弾丸型の先端の近くにいる慎重な貯蓄者も、月2%を狙うヘッジファンドも、リスクと報酬に対する自分自身の選好で選ぶのです。

V確認クイズ

問1 · 貸付の組み合わせ

条件(説明用):Tビルはリスクなしで月 0.25%0.25\% を支払い、ケストレル指数は月次で μ=0.9%\mu = 0.9\%、σ=5%\sigma = 5\% です。Tビルに 30%30\%、ケストレルに 70%70\% を投資します。ポートフォリオの月次の期待リターンと標準偏差を求めてください。

E[Rp]\text{E}[R_p] はいくつですか?

σp\sigma_p はいくつですか?

✅ 正解です! 平均は加重平均で 0.3×0.25+0.7×0.9=0.705%0.3 \times 0.25 + 0.7 \times 0.9 = 0.705\% です。分散に残るのは株式の項だけなので、σp=0.7×5=3.5%\sigma_p = 0.7 \times 5 = 3.5\% です。
❌ 惜しい! 0.575%0.575\% は 0.25%0.25\% と 0.9%0.9\% の単純平均で、50/5050/50 の組み合わせの値です。それぞれの平均に、それ自身のポートフォリオのウェイトをかけてください。
❌ ウェイトが逆です。 0.445%0.445\% はTビル金利に 0.70.7、ケストレルに 0.30.3 をかけています。70%70\% はケストレルのウェイトです。
❌ 項が1つ抜けています。 0.7×0.9=0.63%0.7 \times 0.9 = 0.63\% はケストレルの寄与だけです。Tビルの 30%30\% も 0.3×0.25=0.075%0.3 \times 0.25 = 0.075\% を稼ぎます。
❌ 惜しい! 0.7×5≈4.18\sqrt{0.7} \times 5 \approx 4.18 はウェイトの平方根をとっています。分散は 0.72×520.7^2 \times 5^2 で、その平方根は 0.7×50.7 \times 5 です。
❌ 惜しい! 0.72×5=2.450.7^2 \times 5 = 2.45 はウェイトを2乗していますが、σ\sigma を2乗していません。Var[Rp]=0.72×52=12.25\text{Var}[R_p] = 0.7^2 \times 5^2 = 12.25 なので、σp=12.25=3.5%\sigma_p = \sqrt{12.25} = 3.5\% です。
❌ それは分散です。 0.72×52=12.250.7^2 \times 5^2 = 12.25 は %2\%^2 単位の Var[Rp]\text{Var}[R_p] です。標準偏差を求めるには平方根をとってください。
❌ 平均を確かめてください。 それぞれの平均にポートフォリオのウェイトをかけて足します。
❌ リスクを確かめてください。 σTBill=0\sigma_{\text{TBill}} = 0 なので、分散に残るのは株式の項だけです。
解答を見る

ウェイトは ωTBill=0.3\omega_{\text{TBill}} = 0.3 と ωSTK=0.7\omega_{\text{STK}} = 0.7 で、合計は1です。

E[Rp]=0.3×0.25+0.7×0.9=0.075+0.63=0.705%\text{E}[R_p] = 0.3 \times 0.25 + 0.7 \times 0.9 = 0.075 + 0.63 = 0.705\%

Tビルのリターンはランダムではないので、その分散は0で、ケストレルとの共分散も0です:

Var[Rp]=0.32×02+0.72×52+2×0.3×0.7×0=12.25 (%2)\text{Var}[R_p] = 0.3^2 \times 0^2 + 0.7^2 \times 5^2 + 2 \times 0.3 \times 0.7 \times 0 = 12.25\ (\%^2) σp=12.25=0.7×5=3.5%\sigma_p = \sqrt{12.25} = 0.7 \times 5 = 3.5\%

このポートフォリオは月 3.5%3.5\% の標準偏差で月 0.705%0.705\% を稼ぎます。Tビルとケストレルを結ぶ線分上の点です。

問2 · 借入のコスト

条件(説明用):同じTビル(月 0.25%0.25\%)とケストレル指数(月次で μ=0.9%\mu = 0.9\%、σ=5%\sigma = 5\%)があります。自分の資産の 75%75\% をTビル金利で借り、手持ちのお金全部と合わせてケストレルに投資するので、ωSTK=1.75\omega_{\text{STK}} = 1.75 です。月次の期待リターンを求めてください。

✅ 正解です! 1.75×0.9−0.75×0.25=1.575−0.1875=1.3875%1.75 \times 0.9 - 0.75 \times 0.25 = 1.575 - 0.1875 = 1.3875\% です。借りたお金はケストレルのリターンを稼ぎますが、Tビル金利のコストがかかります。
❌ 借入はただではありません。 1.75×0.9=1.575%1.75 \times 0.9 = 1.575\% は利息を無視しています。Tビルのウェイトは −0.75-0.75 なので、0.75×0.25=0.1875%0.75 \times 0.25 = 0.1875\% を払います。
❌ 符号の間違いです。 1.7625%1.7625\% は利息を足しています。ωTBill=−0.75\omega_{\text{TBill}} = -0.75 なので、Tビルの項は −0.75×0.25-0.75 \times 0.25 で、コストです。
❌ 惜しい! レバレッジはウェイトを変えるので、平均も変わります。期待リターンはリスクと一緒に直線を登っていきます。
解答を見る

資産の 75%75\% を借りることは、Tビルの売りポジションです。ωTBill=−0.75\omega_{\text{TBill}} = -0.75、ωSTK=1.75\omega_{\text{STK}} = 1.75 で、合計はやはり1です。

E[Rp]=−0.75×0.25+1.75×0.9=−0.1875+1.575=1.3875%\text{E}[R_p] = -0.75 \times 0.25 + 1.75 \times 0.9 = -0.1875 + 1.575 = 1.3875\%

リスクは一定の比率で上がり、σp=1.75×5=8.75%\sigma_p = 1.75 \times 5 = 8.75\%(月次)です。ですから、レバレッジをかけた点は、Tビルとケストレルを結ぶ直線を破線で延長した部分の、ケストレルより先にあります。

問3 · 目標リターンを達成する

条件(説明用):Tビルは月 0.25%0.25\%、ケストレル指数は月次で μ=0.9%\mu = 0.9\%、σ=5%\sigma = 5\% です。この2つだけで、月 1.16%1.16\% の期待リターンを得たいとします。必要な株式のウェイトと、そのときの標準偏差を求めてください。

ωSTK\omega_{\text{STK}} はいくつですか?

σp\sigma_p はいくつですか?

✅ 正解です! 株式のウェイトが1単位増えるごとに、Tビル金利に 0.9−0.25=0.650.9 - 0.25 = 0.65 ポイントが上乗せされます。よって ωSTK=0.91/0.65=1.4\omega_{\text{STK}} = 0.91 / 0.65 = 1.4、σp=1.4×5=7%\sigma_p = 1.4 \times 5 = 7\% で、資産の 40%40\% を借りることになります。
❌ 惜しい! 1.16/0.9≈1.291.16 / 0.9 \approx 1.29 はTビルの項を忘れています。ωTBill=1−ωSTK\omega_{\text{TBill}} = 1 - \omega_{\text{STK}} なので、平均は 0.25+0.65 ωSTK0.25 + 0.65\,\omega_{\text{STK}} です。
❌ 惜しい! 1.16/0.65≈1.781.16 / 0.65 \approx 1.78 は目標全体を 0.650.65 で割っています。まず、どの組み合わせでも出発点になる 0.25%0.25\% を引いてください:(1.16−0.25)/0.65(1.16 - 0.25) / 0.65。
❌ あと1ステップです。 1.16−0.25=0.911.16 - 0.25 = 0.91 は必要な上乗せ分のリターンです。株式のウェイト1単位がもたらすのはそのうち 0.650.65 だけなので、0.650.65 で割ってください。
❌ 惜しい! ≈6.44%\approx 6.44\% は 5%5\% にウェイト 1.16/0.9≈1.291.16 / 0.9 \approx 1.29 をかけたものです。このウェイトはTビルの項を落としていて、稼ぐのは 1.16%1.16\% 未満です。
❌ 惜しい! ≈8.92%\approx 8.92\% は 5%5\% にウェイト 1.16/0.65≈1.781.16 / 0.65 \approx 1.78 をかけたもので、このウェイトでは目標リターンを超えてしまいます。
❌ 惜しい! 1.42×5=9.81.4^2 \times 5 = 9.8 はウェイトを2乗していますが、σ\sigma を2乗していません。σp=1.42×52=1.4×5\sigma_p = \sqrt{1.4^2 \times 5^2} = 1.4 \times 5 です。
❌ ウェイトを確かめてください。 平均を 0.25+(0.9−0.25) ωSTK0.25 + (0.9 - 0.25)\,\omega_{\text{STK}} と書き、ωSTK\omega_{\text{STK}} について解きます。
❌ リスクを確かめてください。 実際に 1.16%1.16\% を達成するウェイトで、σp=ωSTK×5%\sigma_p = \omega_{\text{STK}} \times 5\% を計算します。
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平均の式に ωTBill=1−ωSTK\omega_{\text{TBill}} = 1 - \omega_{\text{STK}} を代入します:

E[Rp]=(1−ωSTK)×0.25+ωSTK×0.9=0.25+0.65 ωSTK\text{E}[R_p] = (1 - \omega_{\text{STK}}) \times 0.25 + \omega_{\text{STK}} \times 0.9 = 0.25 + 0.65\,\omega_{\text{STK}} 0.25+0.65 ωSTK=1.16⇒ωSTK=0.910.65=1.40.25 + 0.65\,\omega_{\text{STK}} = 1.16 \quad\Rightarrow\quad \omega_{\text{STK}} = \frac{0.91}{0.65} = 1.4

よって ωTBill=−0.4\omega_{\text{TBill}} = -0.4 です。自分のお金 $100 ごとに、Tビル金利で $40 を借り、ケストレルを $140 分持つことになります。

σp=1.4×5=7%\sigma_p = 1.4 \times 5 = 7\%

確認:−0.4×0.25+1.4×0.9=−0.1+1.26=1.16%-0.4 \times 0.25 + 1.4 \times 0.9 = -0.1 + 1.26 = 1.16\%(月次)。

問4 · リスクのあるポートフォリオから真上へ

条件(説明用):リスクのある株からなるポートフォリオQは、月次で σ=6%\sigma = 6\%、E[R]=0.95%\text{E}[R] = 0.95\% です。Tビルは月 0.25%0.25\% を支払い、ケストレル指数は月次で μ=0.9%\mu = 0.9\%、σ=5%\sigma = 5\% で、Tビル金利で借入ができます。標準偏差がQと同じ 6%6\% になるTビルとケストレルの組み合わせの期待リターンを求め、その組み合わせがQに優越するかどうかを判断してください。

σp=6%\sigma_p = 6\% の組み合わせの期待リターンは?

この組み合わせはQに優越しますか?

✅ 正解です! ωSTK=6/5=1.2\omega_{\text{STK}} = 6/5 = 1.2 で、ちょうど 6%6\% のリスクで E[Rp]=−0.2×0.25+1.2×0.9=1.03%\text{E}[R_p] = -0.2 \times 0.25 + 1.2 \times 0.9 = 1.03\% になります。Qから直線まで真上に移れば、リスクを増やさずに 0.080.08 ポイント得をします。
❌ 借入はただではありません。 1.2×0.9=1.08%1.2 \times 0.9 = 1.08\% はTビルのウェイト −0.2-0.2 を落としています。そのコストは 0.2×0.25=0.05%0.2 \times 0.25 = 0.05\% です。
❌ 符号の間違いです。 1.13%1.13\% は借りた 20%20\% の利息を足しています。ωTBill=−0.2\omega_{\text{TBill}} = -0.2 なので、これはコストで、−0.05%-0.05\% です。
❌ 出発点が抜けています。 1.2×(0.9−0.25)=0.781.2 \times (0.9 - 0.25) = 0.78 はTビルを上回る分のリターンだけです。0.25%0.25\% を足し戻してください。
❌ 惜しい! σTBill=0\sigma_{\text{TBill}} = 0 なので、借入が隠れた分散を加えることはありません。σp=1.2×5=6%\sigma_p = 1.2 \times 5 = 6\% ちょうどです。
❌ 惜しい! Qとケストレルだけを比べると、トレードオフ(リターンもリスクも大きい)になります。比べるべき相手は、Q自身と同じ 6%6\% のリスクを持つ組み合わせで、そちらのほうが多く稼ぎます。
❌ 平均を確かめてください。 σp=5 ωSTK=6\sigma_p = 5\,\omega_{\text{STK}} = 6 から ωSTK\omega_{\text{STK}} を求め、両方のウェイトを使います。
❌ 比較を確かめてください。 優越とは、平均が同じか高く、リスクが同じか低く、しかも少なくとも一方が厳密に成り立つことです。
解答を見る

ステップ1:ウェイト。Tビルとケストレルを結ぶ直線上では σp=5 ωSTK\sigma_p = 5\,\omega_{\text{STK}} なので、σp=6%\sigma_p = 6\% には ωSTK=1.2\omega_{\text{STK}} = 1.2、ωTBill=−0.2\omega_{\text{TBill}} = -0.2 が必要です(資産の 20%20\% を借りる)。

ステップ2:平均。

E[Rp]=−0.2×0.25+1.2×0.9=−0.05+1.08=1.03%\text{E}[R_p] = -0.2 \times 0.25 + 1.2 \times 0.9 = -0.05 + 1.08 = 1.03\%

ステップ3:比較する。組み合わせとQはリスクが同じ 6%6\% で、組み合わせのほうが平均が高い(1.03%>0.95%1.03\% > 0.95\%)ので、組み合わせがQに優越します。これは弾丸型の下半分から移るのと同じ動きです。まっすぐ上へ、まったく同じリスクでより高いリターンへ移るのです。

正解数:0 / 4