ファイナンス理論 · 第17回 · 動画1 · インタラクティブ教材

一銘柄だけ持つのはなぜ損か:三銘柄のフロンティアと、株価が連動する理由

I重要な公式

公式名称説明
E[Rp]=∑iωi E[Ri]\mathsf{E}[R_p] = \sum_{i} \omega_i\,\mathsf{E}[R_i],  ∑iωi=1\sum_i \omega_i = 1ポートフォリオの平均ウェイトの組1つが、ポートフォリオ1つ、つまり (σp,E[Rp])(\sigma_p, \mathsf{E}[R_p]) 平面上の1点を決めます
σp2=∑i∑jωi ωj σij\sigma_p^2 = \sum_{i}\sum_{j} \omega_i\,\omega_j\,\sigma_{ij},  σij=ρij σi σj\sigma_{ij} = \rho_{ij}\,\sigma_i\,\sigma_jポートフォリオの分散共分散行列のマスはすべて効きます。σp\sigma_p は、σi\sigma_i の加重平均にはなりません(すべての ρij=1\rho_{ij} = 1 の場合を除く)
pp が qq に優越する:E[Rp]≥E[Rq]\mathsf{E}[R_p] \ge \mathsf{E}[R_q] かつ σp≤σq\sigma_p \le \sigma_q(少なくとも一方は厳密)優越pp は qq の北西の象限にあります
ω=(0,…,0,1,0,…,0)\omega = (0, \ldots, 0, 1, 0, \ldots, 0)個別の株実現可能なポートフォリオであることに変わりはありません。3銘柄以上なら弾丸の内側にあるので、優越されます

ポイント:証券を1つ増やしても、損をすることはありえません。そのウェイトを0にすれば、それまでのポートフォリオはすべて選べるので、効率的フロンティアは北西に動くか、悪くてもそのままです。

IIどの組み合わせも1つの点

ウェイトの組1つが、ポートフォリオ1つです。動画と同じく空売りを認めて描いた弾丸型の曲線では、その内側の点にはどれも、真上と真左により良いポートフォリオがあります。

III証券をもう1つ

モトローラを加えても、GMとIBMだけのポートフォリオはすべて(ウェイト0で)選べるので、上側の枝は北西にしか動きません。

IV株価が連動する理由

共通の景気循環と、株式をいっせいに売らせるパニックが相関を高め、分散投資で取り除けるリスクを小さくします。

💡 パニックがなければ、この説明用のモデルでは、景気循環の割合がどの2銘柄のあいだでも真の相関になります。48か月分のシミュレーションは、それを推定するにすぎません。割合が100%、つまり ρ=1\rho = 1 の場合に達するまでは、分散投資はリスクを下げます。

V確認クイズ

問1 · どれがどれに優越するか

条件(説明用):架空の3銘柄(年次リターン)。

銘柄平均σ相関
アスター (A)6%6\%14%14\%ρAB=0.3\rho_{AB} = 0.3
バーチ (B)9%9\%20%20\%ρAC=0.2\rho_{AC} = 0.2
シダー (C)13%13\%30%30\%ρBC=0.4\rho_{BC} = 0.4

1銘柄ずつ比べたとき、3銘柄のどれかがほかの銘柄に優越していますか?

ポートフォリオ QQ のウェイトは (0.4, 0.3, 0.3)(0.4,\ 0.3,\ 0.3) で、E[RQ]=9%\mathsf{E}[R_Q] = 9\%、σQ≈15.2%\sigma_Q \approx 15.2\% です。QQ はどの個別銘柄に優越しますか?

✅ 正解です! どの銘柄もほかの銘柄に優越しませんが、QQ はバーチと同じ平均で、リスクが約 4.84.8 ポイント低くなっています。ですから、バーチ100%は優越されます。動画のIBM 100%とまったく同じです。
❌ リスクが低いのは、優越の半分にすぎません。 アスターは σ\sigma が低い代わりに、平均も低い(6%6\% 対 9%9\%)ので、バーチの北西ではなく南西にあります。
❌ 平均が高いのは、優越の半分にすぎません。 シダーは稼ぎが多いものの、30%30\% のリスクを負うので、ほかの銘柄の北東にあります。良くも悪くもありません。
❌ 惜しい! 優越するには、平均が同じかより高く、かつ、σ\sigma が同じかより低いことが必要です。
❌ アスターを確かめましょう。 QQ は平均ではアスターに勝ちますが、15.2%>14%15.2\% > 14\% なので、QQ はアスターの北東にあります。優越はしません。
❌ それこそが、動画が覆した直感です。 ρ<1\rho < 1 なので、組み合わせの σ\sigma は、3つの σ\sigma の加重平均を下回ります。QQ とバーチを比べてみましょう。
❌ 惜しい! QQ の (15.2%, 9%)(15.2\%,\ 9\%) を、各銘柄の (σ,平均)(\sigma, \text{平均}) と1つずつ比べましょう。
解答を見る

銘柄どうしの比較。リスクの順に 14%<20%<30%14\% < 20\% < 30\% と並べると、平均も 6%<9%<13%6\% < 9\% < 13\% と上がっていきます。右へ進むたびに上へも進むので、どの2銘柄も互いに北東と南西の関係にあり、どの銘柄もほかの銘柄に優越しません(動画のGMとIBMと同じです)。

QQ と各銘柄の比較。

  • バーチ (20%,9%)(20\%, 9\%):平均が同じで 15.2%<20%15.2\% < 20\% なので、QQ はバーチに優越します。
  • アスター (14%,6%)(14\%, 6\%):QQ は平均が高いものの σ\sigma も高いので、優越しません。
  • シダー (30%,13%)(30\%, 13\%):QQ はリスクが低いものの平均も低いので、優越しません。

QQ が優越するのはバーチだけです。

問2 · 加重平均の落とし穴

条件:問1の銘柄です。あるポートフォリオは、アスターを 70%70\%、バーチを 30%30\% 持ちます(シダーはなし)。

その標準偏差 σp\sigma_p はいくつですか?

このポートフォリオは、アスター100%に優越しますか?

✅ 正解です! リスクの高い銘柄に 30%30\% を移したのに、リスクは下がりました。ρAB=0.3\rho_{AB} = 0.3 が 11 を大きく下回っているからです。アスター100%は、2銘柄の組み合わせにさえ優越されます。
❌ それは σ\sigma の加重平均です。 0.7(14)+0.3(20)0.7(14) + 0.3(20) が正しいのは、ρAB=1\rho_{AB} = 1 のときだけです。ρAB=0.3\rho_{AB} = 0.3 なら、分散の公式はもっと小さい値を与えます。
❌ 共分散の項が抜けています。 ρAB=0.3≠0\rho_{AB} = 0.3 \ne 0 なので、2 ωA ωB σAB2\,\omega_A\,\omega_B\,\sigma_{AB} を加えます(σAB=84\sigma_{AB} = 84)。
❌ あと一歩:交差項は2回現れます。 分散の表には、非対角のマスが σAB\sigma_{AB} と σBA\sigma_{BA} の2つあるので、係数 22 がつきます。
❌ 惜しい! σp2=ωA2σA2+ωB2σB2+2 ωAωB ρAB σAσB\sigma_p^2 = \omega_A^2\sigma_A^2 + \omega_B^2\sigma_B^2 + 2\,\omega_A\omega_B\,\rho_{AB}\,\sigma_A\sigma_B を使い、平方根をとりましょう。
❌ 数字を確かめましょう。 その推論は、σ\sigma を加重平均として扱っています。分散の公式では、約 12.9%<14%12.9\% < 14\% になります。
❌ 比べる相手が違います。 問われているのはアスター (14%,6%)(14\%, 6\%) です。ここでの比較の基準はバーチではありません。
❌ 負の相関は必要ありません。 ρ\rho が 11 を十分に下回っていれば、どの値でもそうなりえます。ここでは ρAB=0.3\rho_{AB} = 0.3 で足ります。
❌ 惜しい! (σp,E[Rp])(\sigma_p, \mathsf{E}[R_p]) を、アスターの (14%,6%)(14\%, 6\%) と比べましょう。
解答を見る

平均:E[Rp]=0.7(6%)+0.3(9%)=4.2%+2.7%=6.9%\mathsf{E}[R_p] = 0.7(6\%) + 0.3(9\%) = 4.2\% + 2.7\% = 6.9\%.

共分散:σAB=ρAB σAσB=0.3×14×20=84\sigma_{AB} = \rho_{AB}\,\sigma_A\sigma_B = 0.3 \times 14 \times 20 = 84(単位は %2\%^2)。

分散:

σp2=0.72(196)+0.32(400)+2(0.7)(0.3)(84)=96.04+36+35.28=167.32\sigma_p^2 = 0.7^2(196) + 0.3^2(400) + 2(0.7)(0.3)(84) = 96.04 + 36 + 35.28 = 167.32 σp=167.32≈12.9%\sigma_p = \sqrt{167.32} \approx 12.9\%

アスターと比べると、6.9%>6%6.9\% > 6\% かつ 12.9%<14%12.9\% < 14\% なので、この組み合わせはアスターの北西にあり、アスターに優越します。

問3 · 3銘柄の組み合わせとバーチ

条件:問1の銘柄です。あるポートフォリオは、アスター、バーチ、シダーに ω=(0.3, 0.3, 0.4)\omega = (0.3,\ 0.3,\ 0.4) のウェイトを置きます。

その標準偏差 σp\sigma_p はいくつですか?

このポートフォリオは、バーチ100%、つまり (20%,9%)(20\%, 9\%) から見てどこにありますか?

✅ 正解です! (17.0%, 9.7%)(17.0\%,\ 9.7\%) は (20%, 9%)(20\%,\ 9\%) の北西にあります。全額をバーチに投じるよりも、リターンが高く、リスクが低いのです。
❌ それは σ\sigma の加重平均です。 0.3(14)+0.3(20)+0.4(30)0.3(14) + 0.3(20) + 0.4(30) が正しいのは、すべての相関が 11 の場合だけです。
❌ あと一歩:交差項はそれぞれ2回現れます。 非対角の3つのペアが、それぞれ 2 ωiωjσij2\,\omega_i\omega_j\sigma_{ij} ずつ寄与します。
❌ 共分散が抜けています。 相関が正なので、3つの交差項が分散に 92.8892.88 を加えます。
❌ 惜しい! ウェイトをかけた3つの分散と、ウェイトをかけて2倍した3つの共分散を足し、平方根をとりましょう。
❌ リスクを確かめましょう。 17.0%<20%17.0\% < 20\% なので、この組み合わせはバーチの右ではなく左にあります。
❌ 惜しい! 平均は 0.3(6)+0.3(9)+0.4(13)=9.7%0.3(6) + 0.3(9) + 0.4(13) = 9.7\% です。両方の座標をバーチと比べましょう。
解答を見る

共分散(単位は %2\%^2):σAB=0.3(14)(20)=84\sigma_{AB} = 0.3(14)(20) = 84、σAC=0.2(14)(30)=84\sigma_{AC} = 0.2(14)(30) = 84、σBC=0.4(20)(30)=240\sigma_{BC} = 0.4(20)(30) = 240。

平均:E[Rp]=0.3(6)+0.3(9)+0.4(13)=1.8+2.7+5.2=9.7%\mathsf{E}[R_p] = 0.3(6) + 0.3(9) + 0.4(13) = 1.8 + 2.7 + 5.2 = 9.7\%.

分散:まず対角の項、次に2倍した交差項です。

0.09(196)+0.09(400)+0.16(900)=17.64+36+144=197.640.09(196) + 0.09(400) + 0.16(900) = 17.64 + 36 + 144 = 197.64 2(0.3)(0.3)(84)+2(0.3)(0.4)(84)+2(0.3)(0.4)(240)=15.12+20.16+57.6=92.882(0.3)(0.3)(84) + 2(0.3)(0.4)(84) + 2(0.3)(0.4)(240) = 15.12 + 20.16 + 57.6 = 92.88 σp2=197.64+92.88=290.52,σp=290.52≈17.0%\sigma_p^2 = 197.64 + 92.88 = 290.52, \qquad \sigma_p = \sqrt{290.52} \approx 17.0\%

バーチと比べると、9.7%>9%9.7\% > 9\% かつ 17.0%<20%17.0\% < 20\% なので、この組み合わせはバーチの北西にあり、バーチに優越します。

問4 · 単独では誰も持たない4つ目の銘柄

条件:4つ目の架空の銘柄、ドッグウッドが選択肢に加わります。平均 5%5\%、σ=40%\sigma = 40\% で、アスター、バーチ、シダーのどれとも無相関です。単独では、アスターに優越されます。効率的フロンティアはどうなりますか?

✅ 正解です! ωD=0\omega_D = 0 とすれば、それまでのポートフォリオはすべて選べます。ここでは、フロンティアは実際に改善します。無相関のドッグウッドを少し買い持ちすると、最小分散の σ\sigma が約 12.8%12.8\% から約 12.2%12.2\% に下がります。
❌ 単独で優越されるからといって、組み合わせの中で役に立たないわけではありません。 GM、IBM、モトローラもそれぞれ優越されていますが、フロンティア上のポートフォリオは3つすべてを持ちます。ドッグウッドは相関が0なので、分散投資に役立ちます。
❌ それを持つ義務はありません。 ωD=0\omega_D = 0 なら、それまでのポートフォリオはすべて実現可能なので、フロンティアのどの部分も悪くなりえません。
❌ 含める義務はありません。 それまでの最小分散ポートフォリオは、今も選べます。新しい最小分散ポートフォリオは少なくとも同じだけ良く、ここでは実際により良くなります。
❌ 惜しい! ドッグウッドのウェイトが0のとき、それまでのポートフォリオがどうなるかを考えましょう。
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失うものはありません。アスター、バーチ、シダーのどんなポートフォリオも、ωD=0\omega_D = 0 の4銘柄のポートフォリオであり、平均も σ\sigma も変わりません。ですから、どのリスク水準でも達成できる最高の平均は下がりえず、どの平均でも達成できる最小の σ\sigma は上がりえません。フロンティアは北西に動くか、そのままです。

たいていは得るものがあります。単独で優越されることは、その銘柄が組み合わせの中でもつ価値については何も語りません。ドッグウッドはほかの3銘柄と無相関なので、少しのウェイトなら、それ自身の分散をほとんど加えずにリスクを分散できます。フロンティアを数値的に解くと(空売りあり)、最小分散の σ\sigma は約 12.8%12.8\% から約 12.2%12.2\% に下がり、ドッグウッドには約 9%9\% が置かれます。

正解数:0 / 4