ファイナンス理論 · 第17回 · 動画3 · インタラクティブ教材
いちばん急な直線:貸付、借入、そしてシャープ・レシオ
I重要な公式
ポイント:接点ポートフォリオ T は、リスクのあるポートフォリオの中でシャープ・レシオが最大です。そして、T とTビルの組み合わせはどれも、rf で貸していても借りていても、まったく同じシャープ・レシオをもちます。
II貸付、借入、空売り
ウェイト ωT 1つで、直線上の位置が決まります。σp=∣ωT∣σT により、空売りの側は右下へ折り返されます。
IIIシャープ・レシオは傾き
rf=2% から実現可能なポートフォリオ P を通る直線は、縦の変化が E[RP]−rf、横の変化が σP です。どの直線も、T の直線より急にはなりません。
IV新しい銘柄は直線を上向きに傾けるだけ
銘柄21のウェイトを ω21=0 から自由にしても、最良のシャープ・レシオは上がるだけで、下がることはありません。
💡 この図で T と組み合わせるのは、銘柄21の買い持ちだけです。銘柄21を空売りしたり、それまでの20銘柄のウェイトも組み直したりすれば、さらに良くなりえます。ですから、本当の新しい最大値は、表示されているシャープ・レシオ以上です。
V確認クイズ
問1 · シャープ・レシオ
条件(説明用、年率):Tビルの利回りは rf=2% です。ポートフォリオ A は E[RA]=15%、σA=26% です。A のシャープ・レシオを求めてください。
✅ 正解です! A はTビルを
13 ポイント上回って稼ぎ、ボラティリティは
26 ポイントです。リスク1単位あたり
0.5 のリスクプレミアムです。
❌ rf が抜けています。 15/26≈0.577 は、期待リターン全体を
σ で割っています。分子はリスクプレミアム
15%−2% です。
❌ 上下が逆です。 26/13=2 は、横の変化を縦の変化で割っています。シャープ・レシオは、縦の変化を横の変化で割ったもの、
(E[RA]−rf)/σA です。
❌ それは分散で割っています。 13/262≈0.019。分母は標準偏差
σA=26% で、
σA2 ではありません。
❌ 惜しい! 期待リターンから
rf を引き、
σA で割りましょう。
解答を見る
シャープ・レシオA=σAE[RA]−rf=26%15%−2%=2613=0.5
幾何学的には、0.5 は、Tビルの点 (0,2%) から A の点 (26%,15%) を通る直線の傾きです。縦の変化 13、横の変化 26 です。
問2 · Tビルの点より下
条件(説明用、年率):rf=2% で、接点ポートフォリオは E[RT]=12%、σT=16% です。資産の半分に当たる額の T を空売りし(ωT=−0.5)、その売却代金と自分のお金の全部をTビルに入れます。E[Rp] と σp を求めてください。
E[Rp] はいくつですか?
σp はいくつですか?
✅ 正解です! −3% で、リスクは
8% です。貸付のポートフォリオ
ωT=0.5 は同じ
8% のリスクで
7% を稼ぐので、空売りのポジションは何の見返りもなく
10 ポイントを手放しています。
❌ 符号が落ちています。 7% は、
ωT=+0.5 の貸付のポートフォリオです。
ωT=−0.5 なら、項
ωT(E[RT]−rf) は
−5% です。
❌ 差をとっていません。 2%+(−0.5)(12%)=−4% は、
ωT に
E[RT] をかけています。かけるべきなのは、差
E[RT]−rf=10% です。
❌ Tビルが抜けています。 −0.5×12%=−6% は、空売りの分だけを数えています。Tビルに入れた
150% が
1.5×2%=3% を稼ぎます。
❌ E[Rp] を確かめましょう。 E[Rp]=rf+ωT(E[RT]−rf) に
ωT=−0.5 を代入します。
❌ 標準偏差が負になることはありません。 σp2=ωT2σT2 なので、
σp=∣ωT∣σT です。この絶対値のために、直線は縦軸で折り返されるのです。
❌ 惜しい! 0.52×16=4 は、ウェイトを2乗していますが、
σT を2乗していません。
σp=0.25×256=8% です。
❌ ウェイトが違います。 1.5×16=24 は、Tビルのウェイトを使っています。Tビルにはリスクがないので、
∣ωT∣=0.5 だけが
σT にかかります。
❌ σp を確かめましょう。 リスクがあるのは
T への投資分だけです:
σp=∣ωT∣σT。
解答を見る
ウェイトは、ωT=−0.5 を T に、1−ωT=1.5 をTビルに置きます。
E[Rp]=rf+ωT(E[RT]−rf)=2%+(−0.5)(12%−2%)=2%−5%=−3%
ウェイトから直接確かめると:1.5×2%+(−0.5)×12%=3%−6%=−3%。
σp2=ωT2σT2=0.25×256=64⇒σp=∣−0.5∣×16%=8%
点 (8%,−3%) は、Tビルの点から右下へ延びる、折り返した直線の上にあります。Tビルだけを持つよりリスクが高く、リターンが低いのです。
問3 · 借入のほうが高くつく
条件(説明用、年率):Tビルの利回りは 2% ですが、借入は 6% でしかできません。接点ポートフォリオは E[RT]=12%、σT=16% です。資産の4分の1を 6% で借り、ωT=1.25 を持ちます(T そのものにレバレッジをかけるのは単純な比較の基準で、借入金利が 6% のときにこれだけのリスクをとる最良の方法ではありません)。E[Rp] と、2% のTビル金利を基準に測ったシャープ・レシオを求めてください。
E[Rp] はいくつですか?
シャープ・レシオ (E[Rp]−2%)/σp はいくつですか?
✅ 正解です! 6% で借りると、
2% で借りる場合よりリターンが1ポイント減り、シャープ・レシオは
0.625 から
0.575 に下がります。高いほうの金利で
T にレバレッジをかけると、
2% から出る直線より下に落ちるのです。これは、このリスクでの最良のポジションでもありません。借入金利が
6% なら、最良の集合は
T からフロンティアに沿って2つ目の接点
T2 まで進み、
T2 より先でだけ借入をします。
❌ 借りたお金はただではありません。 1.25×12%=15% は、借りた4分の1にかかる利息を無視しています。
0.25×6%=1.5% を引きます。
❌ 金利が違います。 14.5% は、借入に
2% を課しています。ここでは借入コストは
6% なので、
0.25×6% を引きます。
❌ 惜しい! 12% は
T そのものです。資産の
125% を
T に投じると、リターンもリスクも変わります。
❌ E[Rp] を確かめましょう。 1.25×12% から、
0.25 を
6% で借りた分の利息を引きます。
❌ 金利が等しい場合だけです。 シャープ・レシオが
T の
0.625 のままなのは、
rf で借りる場合です。
6% では、レバレッジをかけたポートフォリオはその直線より下にあります。
❌ rf が抜けています。 13.5/20=0.675 は、期待リターン全体を使っています。分子は
E[Rp]−2% です。
❌ 基準が違います。 (13.5−6)/20=0.375 は、借入金利を引いています。この問題では、リスクプレミアムを
2% のTビル金利を基準に測ります。
❌ シャープ・レシオを確かめましょう。 まず
σp=1.25×16%、次に
(E[Rp]−2%)/σp です。
解答を見る
資産の 1.25 を T に投じ、0.25 を 6% で借りています。
E[Rp]=1.25×12%−0.25×6%=15%−1.5%=13.5%
借入はそれ自体のリスクを加えないので、σp=1.25×16%=20% となり、
シャープ・レシオ=20%13.5%−2%=2011.5=0.575
借入金利が 2% なら、同じポジションは 15%−0.5%=14.5% を稼ぎ、シャープ・レシオは 12.5/20=0.625 で、T と同じです。ですから、(20%,13.5%) は達成できる最良の集合の上にはありません。金利が等しくなければ、最良の経路はもう1本の直線ではありません。貸付の直線から T でなめらかにフロンティアへ移り、フロンティアに沿って2つ目の接点 T2 まで上がり、そこで初めて、6% から T2 を通るよりゆるやかな直線に沿って進みます。最初の図の説明用のフロンティアでは、σ=20% のフロンティア上のポートフォリオは、借入をまったくせずに約 14.1% を稼ぎます。そして、T2 よりリスクの高いポジションは T2 にレバレッジをかけるのであって、T にではありません。
問4 · いちばん急な直線、そしてもう1つの銘柄
条件(説明用、年率):rf=2% です。同じ20銘柄から組んだ、リスクのある3つのポートフォリオがあります:A は (σ,E[R])=(26%,15%)、B は (14%,9%)、C は (20%,13%) です。
シャープ・レシオが最も高いのはどれですか?
21番目の銘柄が選択肢に加わります。その銘柄自体のシャープ・レシオは 0.3 で、C との相関は 0.9 です。いま選べる最良のシャープ・レシオは…
✅ 正解です! C を通る直線は、
2% から出る3本の中で最も急です。そして、証券を加えると制約条件
ω21=0 が外れるので、最良の直線は上向きに回転するか、そのままです。
❌ リターンだけでは比率は決まりません。 A の
13 ポイントのプレミアムには、
26 ポイントのリスクがかかります:
(15−2)/26=0.5。
❌ リスクだけでは比率は決まりません。 B はTビルを
7 ポイントしか上回らず、リスクは
14 ポイントです:
(9−2)/14=0.5。
❌ 同率ではありますが、最高ではありません。 A と
B はどちらも
0.5 で、
C は
(13−2)/20=0.55 です。
❌ 順位を確かめましょう。 各ポートフォリオについて
(E[R]−2%)/σ を計算します。
❌ それを買う義務はありません。 ω21=0 なら
C を持ったまま、
C のシャープ・レシオを保てるので、最大値が下がることはありません。
❌ 既存の相関は変わりません。 相関は固定されたパラメータです。新しい銘柄が加えるのは、選ぶべきウェイトが1つだけで、そのウェイトは0にできます。
❌ 負の相関は必要ありません。 相関が
+1 より小さければ、組み合わせは左に曲がります。直線が上向きに回転するかどうかは、その銘柄の期待リターンにもよります。
❌ 惜しい! 銘柄を加えた後も、それまでの最良のポートフォリオがまだ選べるかを考えましょう。
解答を見る
シャープ・レシオA=2615−2=0.5,シャープ・レシオB=149−2=0.5,シャープ・レシオC=2013−2=0.55
Tビルの点から出る直線が最も急なのは C なので、この3つの中では、これが接点ポートフォリオの候補です。A と B は、2% から出る、よりゆるやかな同じ直線の上にあります。
21番目の銘柄を加えると:以前は ω1,…,ω21 を、ω21=0 という条件のもとで選んでいました。いまは ω21 を自由に選べます。それまで持てたポートフォリオは、C も含めて、すべてまだ選べるので、
ω1,…,ω21maxシャープ・レシオ≥ω21=0maxシャープ・レシオ≥0.55
新しい銘柄のシャープ・レシオが低いことや相関が高いことで決まるのは、最良のシャープ・レシオが上がるかどうか、そしてどれだけ上がるかだけです。どちらも、それを 0.55 より下に押し下げることはできません。
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