ファイナンス理論 · 第17回 · 動画3 · インタラクティブ教材

いちばん急な直線:貸付、借入、そしてシャープ・レシオ

I重要な公式

公式名称説明
E[Rp]=rf+ωT (E[RT]−rf)\mathsf{E}[R_p] = r_f + \omega_T\,(\mathsf{E}[R_T] - r_f)接線0<ωT<10 < \omega_T < 1:rfr_f で貸付、ωT=1\omega_T = 1:全額を投資、ωT>1\omega_T > 1:rfr_f で借入
σp=∣ωT∣ σT\sigma_p = \lvert\omega_T\rvert\,\sigma_T直線に沿ったリスク絶対値によって、空売りの側(ωT<0\omega_T < 0)は rfr_f より下で右側に折り返されます
シャープ・レシオ≡E[Rp]−rfσp\text{シャープ・レシオ} \equiv \dfrac{\mathsf{E}[R_p] - r_f}{\sigma_p}シャープ・レシオボラティリティ1単位あたりのリスクプレミアム。rfr_f から pp を通る直線の傾きで、高いほど良いことになります
max⁡ω1,…,ω21シャープ・レシオ  ≥  max⁡ω21=0シャープ・レシオ\displaystyle\max_{\omega_1,\dots,\omega_{21}} \text{シャープ・レシオ} \;\ge\; \max_{\omega_{21}=0} \text{シャープ・レシオ}証券を加えるそれまでのポートフォリオはまだ選べるので、最良のシャープ・レシオが下がることはありません

ポイント:接点ポートフォリオ TT は、リスクのあるポートフォリオの中でシャープ・レシオが最大です。そして、TT とTビルの組み合わせはどれも、rfr_f で貸していても借りていても、まったく同じシャープ・レシオをもちます。

II貸付、借入、空売り

ウェイト ωT\omega_T 1つで、直線上の位置が決まります。σp=∣ωT∣ σT\sigma_p = \lvert\omega_T\rvert\,\sigma_T により、空売りの側は右下へ折り返されます。

IIIシャープ・レシオは傾き

rf=2%r_f = 2\% から実現可能なポートフォリオ PP を通る直線は、縦の変化が E[RP]−rf\mathsf{E}[R_P] - r_f、横の変化が σP\sigma_P です。どの直線も、TT の直線より急にはなりません。

IV新しい銘柄は直線を上向きに傾けるだけ

銘柄21のウェイトを ω21=0\omega_{21} = 0 から自由にしても、最良のシャープ・レシオは上がるだけで、下がることはありません。

💡 この図で TT と組み合わせるのは、銘柄21の買い持ちだけです。銘柄21を空売りしたり、それまでの20銘柄のウェイトも組み直したりすれば、さらに良くなりえます。ですから、本当の新しい最大値は、表示されているシャープ・レシオ以上です。

V確認クイズ

問1 · シャープ・レシオ

条件(説明用、年率):Tビルの利回りは rf=2%r_f = 2\% です。ポートフォリオ AA は E[RA]=15%\mathsf{E}[R_A] = 15\%、σA=26%\sigma_A = 26\% です。AA のシャープ・レシオを求めてください。

✅ 正解です! AA はTビルを 1313 ポイント上回って稼ぎ、ボラティリティは 2626 ポイントです。リスク1単位あたり 0.50.5 のリスクプレミアムです。
❌ rfr_f が抜けています。 15/26≈0.57715/26 \approx 0.577 は、期待リターン全体を σ\sigma で割っています。分子はリスクプレミアム 15%−2%15\% - 2\% です。
❌ 上下が逆です。 26/13=226/13 = 2 は、横の変化を縦の変化で割っています。シャープ・レシオは、縦の変化を横の変化で割ったもの、(E[RA]−rf)/σA(\mathsf{E}[R_A] - r_f)/\sigma_A です。
❌ それは分散で割っています。 13/262≈0.01913/26^2 \approx 0.019。分母は標準偏差 σA=26%\sigma_A = 26\% で、σA2\sigma_A^2 ではありません。
❌ 惜しい! 期待リターンから rfr_f を引き、σA\sigma_A で割りましょう。
解答を見る
シャープ・レシオA=E[RA]−rfσA=15%−2%26%=1326=0.5\text{シャープ・レシオ}_A = \frac{\mathsf{E}[R_A] - r_f}{\sigma_A} = \frac{15\% - 2\%}{26\%} = \frac{13}{26} = 0.5

幾何学的には、0.50.5 は、Tビルの点 (0,2%)(0, 2\%) から AA の点 (26%,15%)(26\%, 15\%) を通る直線の傾きです。縦の変化 1313、横の変化 2626 です。

問2 · Tビルの点より下

条件(説明用、年率):rf=2%r_f = 2\% で、接点ポートフォリオは E[RT]=12%\mathsf{E}[R_T] = 12\%、σT=16%\sigma_T = 16\% です。資産の半分に当たる額の TT を空売りし(ωT=−0.5\omega_T = -0.5)、その売却代金と自分のお金の全部をTビルに入れます。E[Rp]\mathsf{E}[R_p] と σp\sigma_p を求めてください。

E[Rp]\mathsf{E}[R_p] はいくつですか?

σp\sigma_p はいくつですか?

✅ 正解です! −3%-3\% で、リスクは 8%8\% です。貸付のポートフォリオ ωT=0.5\omega_T = 0.5 は同じ 8%8\% のリスクで 7%7\% を稼ぐので、空売りのポジションは何の見返りもなく 1010 ポイントを手放しています。
❌ 符号が落ちています。 7%7\% は、ωT=+0.5\omega_T = +0.5 の貸付のポートフォリオです。ωT=−0.5\omega_T = -0.5 なら、項 ωT(E[RT]−rf)\omega_T(\mathsf{E}[R_T] - r_f) は −5%-5\% です。
❌ 差をとっていません。 2%+(−0.5)(12%)=−4%2\% + (-0.5)(12\%) = -4\% は、ωT\omega_T に E[RT]\mathsf{E}[R_T] をかけています。かけるべきなのは、差 E[RT]−rf=10%\mathsf{E}[R_T] - r_f = 10\% です。
❌ Tビルが抜けています。 −0.5×12%=−6%-0.5 \times 12\% = -6\% は、空売りの分だけを数えています。Tビルに入れた 150%150\% が 1.5×2%=3%1.5 \times 2\% = 3\% を稼ぎます。
❌ E[Rp]\mathsf{E}[R_p] を確かめましょう。 E[Rp]=rf+ωT(E[RT]−rf)\mathsf{E}[R_p] = r_f + \omega_T(\mathsf{E}[R_T] - r_f) に ωT=−0.5\omega_T = -0.5 を代入します。
❌ 標準偏差が負になることはありません。 σp2=ωT2σT2\sigma_p^2 = \omega_T^2\sigma_T^2 なので、σp=∣ωT∣ σT\sigma_p = \lvert\omega_T\rvert\,\sigma_T です。この絶対値のために、直線は縦軸で折り返されるのです。
❌ 惜しい! 0.52×16=40.5^2 \times 16 = 4 は、ウェイトを2乗していますが、σT\sigma_T を2乗していません。σp=0.25×256=8%\sigma_p = \sqrt{0.25 \times 256} = 8\% です。
❌ ウェイトが違います。 1.5×16=241.5 \times 16 = 24 は、Tビルのウェイトを使っています。Tビルにはリスクがないので、∣ωT∣=0.5\lvert\omega_T\rvert = 0.5 だけが σT\sigma_T にかかります。
❌ σp\sigma_p を確かめましょう。 リスクがあるのは TT への投資分だけです:σp=∣ωT∣ σT\sigma_p = \lvert\omega_T\rvert\,\sigma_T。
解答を見る

ウェイトは、ωT=−0.5\omega_T = -0.5 を TT に、1−ωT=1.51 - \omega_T = 1.5 をTビルに置きます。

E[Rp]=rf+ωT(E[RT]−rf)=2%+(−0.5)(12%−2%)=2%−5%=−3%\mathsf{E}[R_p] = r_f + \omega_T(\mathsf{E}[R_T] - r_f) = 2\% + (-0.5)(12\% - 2\%) = 2\% - 5\% = -3\%

ウェイトから直接確かめると:1.5×2%+(−0.5)×12%=3%−6%=−3%1.5 \times 2\% + (-0.5) \times 12\% = 3\% - 6\% = -3\%。

σp2=ωT2 σT2=0.25×256=64⇒σp=∣−0.5∣×16%=8%\sigma_p^2 = \omega_T^2\,\sigma_T^2 = 0.25 \times 256 = 64 \quad\Rightarrow\quad \sigma_p = \lvert -0.5 \rvert \times 16\% = 8\%

点 (8%,−3%)(8\%, -3\%) は、Tビルの点から右下へ延びる、折り返した直線の上にあります。Tビルだけを持つよりリスクが高く、リターンが低いのです。

問3 · 借入のほうが高くつく

条件(説明用、年率):Tビルの利回りは 2%2\% ですが、借入は 6%6\% でしかできません。接点ポートフォリオは E[RT]=12%\mathsf{E}[R_T] = 12\%、σT=16%\sigma_T = 16\% です。資産の4分の1を 6%6\% で借り、ωT=1.25\omega_T = 1.25 を持ちます(TT そのものにレバレッジをかけるのは単純な比較の基準で、借入金利が 6%6\% のときにこれだけのリスクをとる最良の方法ではありません)。E[Rp]\mathsf{E}[R_p] と、2%2\% のTビル金利を基準に測ったシャープ・レシオを求めてください。

E[Rp]\mathsf{E}[R_p] はいくつですか?

シャープ・レシオ (E[Rp]−2%)/σp(\mathsf{E}[R_p] - 2\%)/\sigma_p はいくつですか?

✅ 正解です! 6%6\% で借りると、2%2\% で借りる場合よりリターンが1ポイント減り、シャープ・レシオは 0.6250.625 から 0.5750.575 に下がります。高いほうの金利で TT にレバレッジをかけると、2%2\% から出る直線より下に落ちるのです。これは、このリスクでの最良のポジションでもありません。借入金利が 6%6\% なら、最良の集合は TT からフロンティアに沿って2つ目の接点 T2T_2 まで進み、T2T_2 より先でだけ借入をします。
❌ 借りたお金はただではありません。 1.25×12%=15%1.25 \times 12\% = 15\% は、借りた4分の1にかかる利息を無視しています。0.25×6%=1.5%0.25 \times 6\% = 1.5\% を引きます。
❌ 金利が違います。 14.5%14.5\% は、借入に 2%2\% を課しています。ここでは借入コストは 6%6\% なので、0.25×6%0.25 \times 6\% を引きます。
❌ 惜しい! 12%12\% は TT そのものです。資産の 125%125\% を TT に投じると、リターンもリスクも変わります。
❌ E[Rp]\mathsf{E}[R_p] を確かめましょう。 1.25×12%1.25 \times 12\% から、0.250.25 を 6%6\% で借りた分の利息を引きます。
❌ 金利が等しい場合だけです。 シャープ・レシオが TT の 0.6250.625 のままなのは、rfr_f で借りる場合です。6%6\% では、レバレッジをかけたポートフォリオはその直線より下にあります。
❌ rfr_f が抜けています。 13.5/20=0.67513.5/20 = 0.675 は、期待リターン全体を使っています。分子は E[Rp]−2%\mathsf{E}[R_p] - 2\% です。
❌ 基準が違います。 (13.5−6)/20=0.375(13.5 - 6)/20 = 0.375 は、借入金利を引いています。この問題では、リスクプレミアムを 2%2\% のTビル金利を基準に測ります。
❌ シャープ・レシオを確かめましょう。 まず σp=1.25×16%\sigma_p = 1.25 \times 16\%、次に (E[Rp]−2%)/σp(\mathsf{E}[R_p] - 2\%)/\sigma_p です。
解答を見る

資産の 1.251.25 を TT に投じ、0.250.25 を 6%6\% で借りています。

E[Rp]=1.25×12%−0.25×6%=15%−1.5%=13.5%\mathsf{E}[R_p] = 1.25 \times 12\% - 0.25 \times 6\% = 15\% - 1.5\% = 13.5\%

借入はそれ自体のリスクを加えないので、σp=1.25×16%=20%\sigma_p = 1.25 \times 16\% = 20\% となり、

シャープ・レシオ=13.5%−2%20%=11.520=0.575\text{シャープ・レシオ} = \frac{13.5\% - 2\%}{20\%} = \frac{11.5}{20} = 0.575

借入金利が 2%2\% なら、同じポジションは 15%−0.5%=14.5%15\% - 0.5\% = 14.5\% を稼ぎ、シャープ・レシオは 12.5/20=0.62512.5/20 = 0.625 で、TT と同じです。ですから、(20%,13.5%)(20\%, 13.5\%) は達成できる最良の集合の上にはありません。金利が等しくなければ、最良の経路はもう1本の直線ではありません。貸付の直線から TT でなめらかにフロンティアへ移り、フロンティアに沿って2つ目の接点 T2T_2 まで上がり、そこで初めて、6%6\% から T2T_2 を通るよりゆるやかな直線に沿って進みます。最初の図の説明用のフロンティアでは、σ=20%\sigma = 20\% のフロンティア上のポートフォリオは、借入をまったくせずに約 14.1%14.1\% を稼ぎます。そして、T2T_2 よりリスクの高いポジションは T2T_2 にレバレッジをかけるのであって、TT にではありません。

問4 · いちばん急な直線、そしてもう1つの銘柄

条件(説明用、年率):rf=2%r_f = 2\% です。同じ20銘柄から組んだ、リスクのある3つのポートフォリオがあります:AA は (σ,E[R])=(26%,15%)(\sigma, \mathsf{E}[R]) = (26\%, 15\%)、BB は (14%,9%)(14\%, 9\%)、CC は (20%,13%)(20\%, 13\%) です。

シャープ・レシオが最も高いのはどれですか?

21番目の銘柄が選択肢に加わります。その銘柄自体のシャープ・レシオは 0.30.3 で、CC との相関は 0.90.9 です。いま選べる最良のシャープ・レシオは…

✅ 正解です! CC を通る直線は、2%2\% から出る3本の中で最も急です。そして、証券を加えると制約条件 ω21=0\omega_{21} = 0 が外れるので、最良の直線は上向きに回転するか、そのままです。
❌ リターンだけでは比率は決まりません。 AA の 1313 ポイントのプレミアムには、2626 ポイントのリスクがかかります:(15−2)/26=0.5(15 - 2)/26 = 0.5。
❌ リスクだけでは比率は決まりません。 BB はTビルを 77 ポイントしか上回らず、リスクは 1414 ポイントです:(9−2)/14=0.5(9 - 2)/14 = 0.5。
❌ 同率ではありますが、最高ではありません。 AA と BB はどちらも 0.50.5 で、CC は (13−2)/20=0.55(13 - 2)/20 = 0.55 です。
❌ 順位を確かめましょう。 各ポートフォリオについて (E[R]−2%)/σ(\mathsf{E}[R] - 2\%)/\sigma を計算します。
❌ それを買う義務はありません。 ω21=0\omega_{21} = 0 なら CC を持ったまま、CC のシャープ・レシオを保てるので、最大値が下がることはありません。
❌ 既存の相関は変わりません。 相関は固定されたパラメータです。新しい銘柄が加えるのは、選ぶべきウェイトが1つだけで、そのウェイトは0にできます。
❌ 負の相関は必要ありません。 相関が +1+1 より小さければ、組み合わせは左に曲がります。直線が上向きに回転するかどうかは、その銘柄の期待リターンにもよります。
❌ 惜しい! 銘柄を加えた後も、それまでの最良のポートフォリオがまだ選べるかを考えましょう。
解答を見る
シャープ・レシオA=15−226=0.5,シャープ・レシオB=9−214=0.5,シャープ・レシオC=13−220=0.55\text{シャープ・レシオ}_A = \frac{15 - 2}{26} = 0.5, \qquad \text{シャープ・レシオ}_B = \frac{9 - 2}{14} = 0.5, \qquad \text{シャープ・レシオ}_C = \frac{13 - 2}{20} = 0.55

Tビルの点から出る直線が最も急なのは CC なので、この3つの中では、これが接点ポートフォリオの候補です。AA と BB は、2%2\% から出る、よりゆるやかな同じ直線の上にあります。

21番目の銘柄を加えると:以前は ω1,…,ω21\omega_1, \dots, \omega_{21} を、ω21=0\omega_{21} = 0 という条件のもとで選んでいました。いまは ω21\omega_{21} を自由に選べます。それまで持てたポートフォリオは、CC も含めて、すべてまだ選べるので、

max⁡ω1,…,ω21シャープ・レシオ  ≥  max⁡ω21=0シャープ・レシオ  ≥  0.55\max_{\omega_1,\dots,\omega_{21}} \text{シャープ・レシオ} \;\ge\; \max_{\omega_{21}=0} \text{シャープ・レシオ} \;\ge\; 0.55

新しい銘柄のシャープ・レシオが低いことや相関が高いことで決まるのは、最良のシャープ・レシオが上がるかどうか、そしてどれだけ上がるかだけです。どちらも、それを 0.550.55 より下に押し下げることはできません。

正解数:0 / 4