ファイナンス理論 · 第17回 · 動画5 · インタラクティブ教材

同じ直線、違う席:無差別曲線とポートフォリオ理論の四つの結論

I重要な公式

公式名称説明
E[Rp]=rf+w (E[RT]−rf),σp=w σT\text{E}[R_p] = r_f + w\,(\text{E}[R_T] - r_f), \quad \sigma_p = w\,\sigma_T接線すべての投資家の選択肢:w<1w < 1 なら rfr_f で貸付、w=1w = 1 なら全額を接点ポートフォリオに投資、w>1w > 1 なら借入
ΔE1<ΔE2<ΔE3\Delta \text{E}_1 < \Delta \text{E}_2 < \Delta \text{E}_3(等しい刻み Δσ\Delta\sigma ごとに)下に凸の無差別曲線リスクが1ポイント増えるごとに、失う満足は前より大きくなる(限界効用の逓減)ので、より大きな期待リターンの増加が必要になります
σp≤∑iwi σi(wi≥0)\sigma_p \le \sum_i w_i\,\sigma_i \quad (w_i \ge 0)結論1:分散投資ρ<1\rho < 1 なら厳密に小さくなります。GMとIBMに半分ずつ投資すると 27.82≈5.27%\sqrt{27.82} \approx 5.27\% で、2つの平均の約 6.29%6.29\% を下回ります
Var[Rp]≈平均共分散\text{Var}[R_p] \approx \text{平均共分散}結論2:重要なのは共分散銘柄数の多い等ウェイト・ポートフォリオでは、株どうしが共有する(システマティック)リスクだけが残ります

ポイント:結論3と4:効率的フロンティア上のポートフォリオを保有し、無リスク資産があるなら、接点ポートフォリオをTビルと組み合わせて保有します。無差別曲線が選ぶのは ww、つまり直線上のどこに座るかだけです。最適点は、届く範囲でいちばん高い曲線が直線に接する点です。これらはすべて、標準偏差がリスクのすべてであり、期待リターン、ボラティリティ、共分散を所与とする、という仮定の上に立っています。

II自分の曲線をつくる

月次の (6%, 1.4%)(6\%,\ 1.4\%) から出発し、リスクの等しい刻みごとに求めるリターンの増加がどんどん大きくなると、曲線は曲がります。

III届く範囲でいちばん高い曲線

届くのは接線上の点だけなので、最良の曲線は接線にちょうど接する曲線です。

IV違う席、1本の直線

リスク回避の度合いが決めるのは、直線上のどこに座るかです。保有するリスクのあるポートフォリオは、けっして変わりません。

💡 この理論は静学的です。Tビル金利や、達成できる最高のシャープ・レシオが変われば直線が動き、すべての投資家が最適点を求め直さなければなりません。

V確認クイズ

問1 · 表から曲線を読む

条件(説明用の数字、年率): ある投資家にとって、(σ,E[R])=(5%, 3%)(\sigma, \text{E}[R]) = (5\%,\ 3\%)、(10%, 4.5%)(10\%,\ 4.5\%)、(15%, 7%)(15\%,\ 7\%) のどれでも満足は同じです。リスクの2つ目の刻み(10%10\% から 15%15\% へ)が求める追加の期待リターンと、それが示す曲線の形を求めてください。

✅ 正解です! 1つ目の 55 ポイントの刻みにはリターン 1.51.5 ポイント、2つ目には 2.52.5 ポイントが必要です。リスクとともに傾きが大きくなる、これが下に凸の曲線のふくらみです。
❌ 惜しい! +1.5+1.5 は1つ目の刻み 4.5%−3%4.5\% - 3\% です。2つ目の刻みは 7%−4.5%=2.57\% - 4.5\% = 2.5 ポイントなので、刻みごとの増加は等しくありません。
❌ 増加は正しいのですが、形が違います。 同じリスクの刻みで増加が大きくなるということは、傾きが大きくなっているということです。曲線はお椀のように上へ曲がっていて、これは下に凸です。
❌ それは合計です。 7%−3%=47\% - 3\% = 4 ポイントは、5%5\% から 15%15\% までの2つの刻みをあわせたものです。2つ目の刻みだけなら 7%−4.5%=2.57\% - 4.5\% = 2.5 ポイントです。
❌ 惜しい! σ=10%\sigma = 10\% と σ=15%\sigma = 15\% での期待リターンの差をとり、1つ目の刻みと比べましょう。
解答を見る

3つの点は、リスクについて 55 ポイントずつ等間隔に並んでいます。期待リターンの増加は次のとおりです。

4.5%−3%=1.5 ポイント,7%−4.5%=2.5 ポイント4.5\% - 3\% = 1.5 \text{ ポイント}, \qquad 7\% - 4.5\% = 2.5 \text{ ポイント}

リスク1ポイントあたりにすると、1つ目の刻みでは 1.5/5=0.31.5/5 = 0.3、2つ目では 2.5/5=0.52.5/5 = 0.5 です。リスクが大きくなるにつれて傾きが大きくなるので、曲線は下に凸、つまりお椀のような形です。リスクが1ポイント増えるたびに、前より大きな見返りが必要になるのです。

問2 · 厳密に選好されるポートフォリオ

条件: 問1と同じ投資家で、(5%, 3%)(5\%,\ 3\%)、(10%, 4.5%)(10\%,\ 4.5\%)、(15%, 7%)(15\%,\ 7\%) のどれでも無差別です。この投資家が (10%, 4.5%)(10\%,\ 4.5\%) より厳密に選好するポートフォリオを求めてください。

✅ 正解です! (5%, 3.2%)(5\%,\ 3.2\%) は (5%, 3%)(5\%,\ 3\%) と同じリスクで、リターンがより大きいので、(10%, 4.5%)(10\%,\ 4.5\%) とちょうど同じだけ良い点を上回ります。
❌ リターンが大きいだけでは足りません。 σ=15%\sigma = 15\% では、この投資家は同じだけ満足するのに 7%7\% が必要です。6%6\% では足りないので、(15%, 6%)(15\%,\ 6\%) はより悪いのです。
❌ リスクは小さいのですが、より良くはありません。 (5%, 3%)(5\%,\ 3\%) は同じ無差別曲線の上にあります。そこでの満足は同じで、厳密に高いわけではありません。
❌ 惜しい! (10%, 4.5%)(10\%,\ 4.5\%) と同じリスクで期待リターンが小さいので、満足は下がります。
解答を見る

それぞれの候補を、同じ σ\sigma での曲線上の点と比べます。

  • (15%, 6%)(15\%,\ 6\%):曲線上の点は 7%7\%(15%15\% のとき)です。6%<7%6\% < 7\% なので曲線より下にあり、より悪い。
  • (5%, 3%)(5\%,\ 3\%):曲線上にあり、同じだけ良いが、厳密により良いわけではない。
  • (10%, 4.4%)(10\%,\ 4.4\%):曲線上の点 (10%, 4.5%)(10\%,\ 4.5\%) より下にあり、より悪い。
  • (5%, 3.2%)(5\%,\ 3.2\%):同じリスクで 3.2%>3%3.2\% > 3\% なので、曲線より上、つまりより高い曲線の上にあり、より良い。

ポートフォリオが厳密に選好されるのは、より高い曲線、つまり北西の側にあるときです。期待リターンが高いだけでは、そうはなりません。

問3 · 最適点を読む

条件(説明用の数字、年率): rf=1%r_f = 1\% で、接点ポートフォリオは E[RT]=9%\text{E}[R_T] = 9\%、σT=16%\sigma_T = 16\% です。ある投資家の、届く範囲でいちばん高い無差別曲線は、σ=6%\sigma = 6\% で接線に接します。最適点での期待リターンと、投資家の資産の配分を求めてください。

最適点での E[R]\text{E}[R] はいくらですか?

投資家の資産はどう配分されていますか?

✅ 正解です! w=6/16=0.375w = 6/16 = 0.375 なので E[R]=1%+0.375×8%=4%\text{E}[R] = 1\% + 0.375 \times 8\% = 4\% で、62.5%62.5\% を 1%1\% のTビルで貸し付けています。
❌ 切片が抜けています。 0.5×6%=3%0.5 \times 6\% = 3\% は直線に沿った上昇分です。直線は rf=1%r_f = 1\% から始まるので、それを足しましょう。
❌ 項が1つ抜けています。 0.375×9%=3.375%0.375 \times 9\% = 3.375\% は接点ポートフォリオの寄与だけです。Tビルの 62.5%62.5\% が、さらに 0.625×1%=0.625%0.625 \times 1\% = 0.625\% を稼ぎます。
❌ 惜しい! 1%+0.375×9%1\% + 0.375 \times 9\% では、Tビル金利を二重に数えています。直線が上がる幅を決めるのはプレミアム E[RT]−rf=8%\text{E}[R_T] - r_f = 8\% で、9%9\% ではありません。
❌ ウェイトが逆です。 接点ポートフォリオのウェイトは σ/σT=6/16=0.375\sigma / \sigma_T = 6/16 = 0.375 で、残りの 0.6250.625 がTビルに入ります。
❌ 惜しい! σ=6%\sigma = 6\% は σT=16%\sigma_T = 16\% より小さいので、最適点はTビルと接点ポートフォリオのあいだにあります。借入ではなく貸付です。
❌ リスクのあるポートフォリオは全員同じです。 接点ポートフォリオ以外のリスクのあるポートフォリオはどれも接線より下にあるので、σ=6%\sigma = 6\% では直線上の組み合わせのほうが多くを稼ぎます。選好が変えるのはTビルとの組み合わせで、リスクのあるポートフォリオではありません。
❌ リターンを確かめましょう。 E[R]=rf+w (E[RT]−rf)\text{E}[R] = r_f + w\,(\text{E}[R_T] - r_f) を、w=σ/σTw = \sigma / \sigma_T として使いましょう。
❌ 配分を確かめましょう。 接線上では σ=w σT\sigma = w\,\sigma_T です。ww について解き、残りをTビルに入れましょう。
解答を見る

直線上のどの点も、Tビルと接点ポートフォリオの組み合わせで、σ=w σT\sigma = w\,\sigma_T です。

w=σσT=616=0.375,1−w=0.625w = \frac{\sigma}{\sigma_T} = \frac{6}{16} = 0.375, \qquad 1 - w = 0.625 E[R]=rf+w (E[RT]−rf)=1%+0.375×(9%−1%)=1%+3%=4%\text{E}[R] = r_f + w\,(\text{E}[R_T] - r_f) = 1\% + 0.375 \times (9\% - 1\%) = 1\% + 3\% = 4\%

加重平均で確かめると、0.625×1%+0.375×9%=0.625%+3.375%=4%0.625 \times 1\% + 0.375 \times 9\% = 0.625\% + 3.375\% = 4\% です。この投資家は資産の 62.5%62.5\% を 1%1\% で貸し付け、37.5%37.5\% を接点ポートフォリオで持っています。Tビルと接点ポートフォリオのあいだの点で、かなりリスク回避的な投資家です。

問4 · 2人の投資家、1つのリスクのあるポートフォリオ

条件(説明用の数字、年率): rf=1%r_f = 1\% で、接点ポートフォリオ(E[RT]=9%\text{E}[R_T] = 9\%、σT=16%\sigma_T = 16\%)は株Mが 40%40\%、株Nが 60%60\% です。アナの最適点は σ=3%\sigma = 3\%、ベンの最適点は σ=26%\sigma = 26\% にあります。ベンの資産に占める株Mの保有割合と、アナの株式保有におけるM : Nの比率を求めてください。

ベンの資産に占める株Mの保有割合

アナの株式保有におけるM : Nの比率

✅ 正解です! ベンは接点ポートフォリオを w=26/16=1.625w = 26/16 = 1.625 保有するので、資産の 1.625×40%=65%1.625 \times 40\% = 65\% が株Mです。アナの保有ははるかに少ないものの、比率は同じ 2:32 : 3 です。
❌ 倍率がかかっていません。 40%40\% は接点ポートフォリオに占める株Mの割合です。ベンは資産の 1.6251.625 倍をそのポートフォリオに投じているので、ww を掛けましょう。
❌ それは株Nです。 1.625×60%=97.5%1.625 \times 60\% = 97.5\% はベンの株Nの保有です。株Mは接点ポートフォリオの 40%40\% です。
❌ それはリスクのあるポジション全体です。 162.5%162.5\% は w=26/16w = 26/16、つまりベンが接点ポートフォリオに投じた合計です。株Mはその 40%40\% にすぎません。
❌ 逆です。 接点ポートフォリオのうち株Mは 40%40\%、株Nは 60%60\% なので、M : N は 40:60=2:340 : 60 = 2 : 3 です。
❌ それこそが典型的な誤解です。 リスク回避は、アナを直線に沿ってTビルの側へ動かすだけです。アナが持つリスクのある部分は、同じ比率の、同じ接点ポートフォリオです。
❌ 必要ありません。 アナの無差別曲線が決めるのは、接点ポートフォリオにどれだけ投じるかだけです。その中のM : Nの配分は、全員に共通で決まっています。
❌ ベンの保有を確かめましょう。 w=σ/σTw = \sigma / \sigma_T を求め、接点ポートフォリオに占める株Mの割合を掛けましょう。
❌ アナの比率を確かめましょう。 アナがどんな ww を選んでも、2つの株には同じ ww が掛かります。
解答を見る

どの投資家も、接点ポートフォリオに w=σ/σTw = \sigma / \sigma_T、Tビルに 1−w1 - w を投じます。

wベン=2616=1.625:M=1.625×40%=65%,N=1.625×60%=97.5%,Tビル=1−1.625=−62.5%w_{\text{ベン}} = \frac{26}{16} = 1.625: \quad \text{M} = 1.625 \times 40\% = 65\%, \quad \text{N} = 1.625 \times 60\% = 97.5\%, \quad \text{Tビル} = 1 - 1.625 = -62.5\% wアナ=316=0.1875:M=7.5%,N=11.25%,Tビル=81.25%w_{\text{アナ}} = \frac{3}{16} = 0.1875: \quad \text{M} = 7.5\%, \quad \text{N} = 11.25\%, \quad \text{Tビル} = 81.25\%

ベンは資産の 62.5%62.5\% を 1%1\% で借り入れ、アナは 81.25%81.25\% を貸し付けます。それでも2人とも、株Mと株Nを 65:97.5=7.5:11.25=2:365 : 97.5 = 7.5 : 11.25 = 2 : 3、つまり接点ポートフォリオそのものの比率で持っています。これが結論4です。選好が選ぶのはTビルとの組み合わせで、リスクのあるポートフォリオではけっしてありません。

正解数:0 / 4