ファイナンス理論 · 第18回 · 動画3 · インタラクティブ教材

リスク資産が国債より低いリターンになる理由:証券市場線

I重要な公式

公式名称価格づけの対象
E[Rp]=Rf+σpσm(E[Rm]−Rf)\mathsf{E}[R_p] = R_f + \dfrac{\sigma_p}{\sigma_m}\left(\mathsf{E}[R_m] - R_f\right)資本市場線効率的ポートフォリオだけ:標準偏差に対する期待リターン
E[Ri]=Rf+βi(E[Rm]−Rf)\mathsf{E}[R_i] = R_f + \beta_i\left(\mathsf{E}[R_m] - R_f\right)証券市場線(CAPM)効率的かどうかにかかわらず、すべての資産:ベータに対する期待リターン
βi=Cov[Ri,Rm]Var[Rm]\beta_i = \dfrac{\text{Cov}[R_i, R_m]}{\text{Var}[R_m]}ベータ市場の動きに対する感応度。プレミアムを稼ぐのは、このリスクだけ
E[Ri]<0  ⟺  βi<−RfE[Rm]−Rf\mathsf{E}[R_i] < 0 \iff \beta_i < -\dfrac{R_f}{\mathsf{E}[R_m] - R_f}負の期待リターン証券市場線がゼロを横切るところ

ポイント:βi=1\beta_i = 1 なら E[Ri]=E[Rm]\mathsf{E}[R_i] = \mathsf{E}[R_m]、βi=0\beta_i = 0 なら、資産の変動がどれほど大きくても E[Ri]=Rf\mathsf{E}[R_i] = R_f です。βi<0\beta_i < 0 なら E[Ri]\mathsf{E}[R_i] は RfR_f を下回ります。市場リスクに対するヘッジには、お金を払う価値があるからです。

II1本の直線上の3つの特殊ケース

Rf=2%R_f = 2\%、プレミアム 5.5%5.5\% のとき、資産の期待リターンはベータだけで決まります。市場の 7.5%7.5\% から、ゼロを下回るところまで。

IIIベータがゼロでもリスクはゼロではない

ベータがゼロの資産は、市場と同じくらい大きく揺れ動くことがあっても、期待リターンはTビルと同じ 2%2\% だけです。無リスク資産ではありません。下の経路は説明用で、40年間の平均がちょうどその期待リターンになるようにつくってあります。

IVヘッジは今日の価格が高い

1年後の期待ペイオフ $100 を、証券市場線の率で割り引きます。ベータが低いほど、価格は高くなります。

💡 測定されたベータはほとんどすべて正で、0.50.5 から 1.51.5 の間に集まっています。ベータがゼロ前後の金鉱株が、現実の例でヘッジにいちばん近いものです。ですから、この曲線の左側にある資産は、見つけるのがとても難しいのです。

V確認クイズ

問1 · 直線上の1点

条件(説明用、年率):Rf=2%R_f = 2\%、市場リスクプレミアム E[Rm]−Rf=5.5%\mathsf{E}[R_m] - R_f = 5.5\% です。ある株式は βi=1.2\beta_i = 1.2 です。証券市場線による、その期待リターンを求めてください。

✅ 正解です! 1.21.2 個分の 5.5%5.5\% のプレミアムを、2%2\% に上乗せします。株式は 1.11.1 ポイントだけ市場の 7.5%7.5\% を上回ります。市場に対して1対1より大きく動くからです。
❌ 切片が抜けています。1.2×5.5%=6.6%1.2 \times 5.5\% = 6.6\% はプレミアムの項だけです。直線は Rf=2%R_f = 2\% から始まるので、それを足しましょう。
❌ かける相手が違います。2%+1.2×7.5%=11%2\% + 1.2 \times 7.5\% = 11\% は、ベータを E[Rm]\mathsf{E}[R_m] にかけています。ベータはプレミアム E[Rm]−Rf=5.5%\mathsf{E}[R_m] - R_f = 5.5\% にかけます。そうしないと RfR_f を二重に数えることになります。
❌ 惜しい! 1.2×7.5%=9%1.2 \times 7.5\% = 9\% は、市場のリターン全体を拡大しています。証券市場線は Rf+βi(E[Rm]−Rf)R_f + \beta_i(\mathsf{E}[R_m] - R_f) です。
❌ 惜しい! RfR_f から出発し、βi\beta_i × 市場リスクプレミアムを足しましょう。
解答を見る
E[Ri]=Rf+βi(E[Rm]−Rf)=2%+1.2×5.5%=2%+6.6%=8.6%\mathsf{E}[R_i] = R_f + \beta_i\left(\mathsf{E}[R_m] - R_f\right) = 2\% + 1.2 \times 5.5\% = 2\% + 6.6\% = 8.6\%

市場そのもの(β=1\beta = 1)は 2%+5.5%=7.5%2\% + 5.5\% = 7.5\% を稼ぎます。ベータが 1.21.2 なら、プレミアムの5分の1、つまり 1.11.1 ポイントが上乗せされます。

問2 · 変動は大きいのにベータはゼロ

条件(説明用、年率):Rf=2%R_f = 2\%、市場リスクプレミアムは 5.5%5.5\% です。資産 ZZ は、年率の標準偏差が 28%28\% で、市場との共分散はゼロです。CAPMによる ZZ の期待リターンがTビルと比べてどうなるかを答えてください。

✅ 正解です! βZ=0/Var[Rm]=0\beta_Z = 0/\text{Var}[R_m] = 0 なので、E[RZ]=Rf+0×5.5%\mathsf{E}[R_Z] = R_f + 0 \times 5.5\% です。ZZ のリスクはどれも市場と連動しないので、どれにも報酬は払われません。
❌ 価格づけされるのはボラティリティではありません。証券市場線が報酬を払うのは、市場との共分散に対してだけです。ZZ の 28%28\% の揺れは市場の揺れと無関係なので、プレミアムを稼ぎません。
❌ それには負のベータが必要です。ヘッジは市場が下がると上がります。つまり共分散が負で、β<0\beta < 0 です。共分散がゼロなら、市場リスクを増やしも打ち消しもしません。
❌ それは資本市場線の制約です。資本市場線が価格づけするのは効率的ポートフォリオだけですが、証券市場線は、効率的かどうかにかかわらず、すべての資産を価格づけします。
❌ 惜しい! 共分散から βZ\beta_Z を計算し、それを証券市場線の上に置きましょう。
解答を見る
βZ=Cov[RZ,Rm]Var[Rm]=0Var[Rm]=0\beta_Z = \frac{\text{Cov}[R_Z, R_m]}{\text{Var}[R_m]} = \frac{0}{\text{Var}[R_m]} = 0 E[RZ]=Rf+0×(E[Rm]−Rf)=Rf=2%\mathsf{E}[R_Z] = R_f + 0 \times \left(\mathsf{E}[R_m] - R_f\right) = R_f = 2\%

ZZ は直線の切片の位置、Tビルと同じ高さにあります。それでも、2つは別の資産です。Tビルのリターンは前もってわかっていますが、ZZ のリターンは、ふつう上下に 28%28\% 前後揺れます。無リスクのリターンを稼ぐのは、平均としてだけです。

問3 · 交差点の先

条件(説明用、年率):Rf=2%R_f = 2\%、市場リスクプレミアムは 5.5%5.5\% です。ある資産は βi=−0.4\beta_i = -0.4 です。その期待リターンと、証券市場線の期待リターンが負になるベータの境目を求めてください。

E[Ri]\mathsf{E}[R_i] はいくつですか?

ベータがいくつより小さいと E[Ri]<0\mathsf{E}[R_i] < 0 になりますか?

✅ 正解です! −0.4-0.4 は交差点 −411≈−0.364-\tfrac{4}{11} \approx -0.364 を少し越えたところにあるので、このリスク資産は年 0.2%0.2\% 損をすると期待されます。それでも投資家がお金を払って持つのは、市場リスクをヘッジしてくれるからです。
❌ 符号が抜けています。2%+0.4×5.5%=4.2%2\% + 0.4 \times 5.5\% = 4.2\% は、ベータを +0.4+0.4 として扱っています。βi=−0.4\beta_i = -0.4 なら、プレミアムの項は −2.2%-2.2\% です。
❌ 切片が抜けています。−0.4×5.5%=−2.2%-0.4 \times 5.5\% = -2.2\% はプレミアムの項だけです。Rf=2%R_f = 2\% を足しましょう。
❌ かける相手が違います。2%−0.4×7.5%=−1%2\% - 0.4 \times 7.5\% = -1\% は、ベータを E[Rm]\mathsf{E}[R_m] にかけています。正しくはプレミアム 5.5%5.5\% にかけます。
❌ E[Ri]\mathsf{E}[R_i] を確認しましょう。Rf+βi(E[Rm]−Rf)R_f + \beta_i(\mathsf{E}[R_m] - R_f) に βi=−0.4\beta_i = -0.4 を使いましょう。
❌ それは RfR_f を下回り始めるところです。ベータが負なら E[Ri]\mathsf{E}[R_i] は必ず 2%2\% を下回りますが、プレミアムの項が切片の 2%2\% 全体を上回るまでは、正のままです。
❌ 分母が違います。−2/7.5-2/7.5 は E[Rm]\mathsf{E}[R_m] で割っています。直線はベータ1単位あたり 5.55.5 ポイント下がるので、境目は −Rf/(E[Rm]−Rf)-R_f/(\mathsf{E}[R_m] - R_f) です。
❌ 分子と分母が逆です。−5.5/2-5.5/2 は比を逆にしています。2%+βi×5.5%<02\% + \beta_i \times 5.5\% < 0 を βi\beta_i について解きましょう。
❌ 境目を確認しましょう。Rf+βi(E[Rm]−Rf)<0R_f + \beta_i(\mathsf{E}[R_m] - R_f) < 0 とおいて、βi\beta_i について解きましょう。
解答を見る
E[Ri]=2%+(−0.4)(5.5%)=2%−2.2%=−0.2%\mathsf{E}[R_i] = 2\% + (-0.4)(5.5\%) = 2\% - 2.2\% = -0.2\%

プレミアムの項が切片を上回るとき、期待リターンは負になります:

2%+βi×5.5%<0  ⟺  βi<−25.5=−411≈−0.3642\% + \beta_i \times 5.5\% < 0 \iff \beta_i < -\frac{2}{5.5} = -\frac{4}{11} \approx -0.364

−0.4<−0.364-0.4 < -0.364 なので、この資産の期待リターンはゼロを下回ります。上で求めた −0.2%-0.2\% と一致します。ベータが −0.364-0.364 と 00 の間なら、稼ぐのは 2%2\% より少ないものの、まだゼロよりは多くなります。

問4 · ヘッジの価格づけ

条件(説明用、年率):Rf=2%R_f = 2\%、市場リスクプレミアムは 5.5%5.5\% です。資産 HH(βH=−0.4\beta_H = -0.4)と SS(βS=1.2\beta_S = 1.2)は、どちらも1年後に $1,000 を支払うと期待され、それ以外の支払いはありません。期待ペイオフを、それぞれの証券市場線の率で1年分割り引いて、今日の価格を求めてください。

HH の今日の価格はいくらですか?

今日、HH は SS よりいくら高いですか?

✅ 正解です! 同じ $1,000 の期待ペイオフでも、ヘッジとしてなら、ベータの高い株式より約 $81 高くなります。しかもヘッジは、その期待ペイオフより高い価格になります。買いが入ることで、期待リターンが −0.2%-0.2\% になるまで価格が押し上げられるのです。
❌ ベータを無視しています。$1,000 / 1.02 は、ベータがゼロの資産の率 RfR_f で割り引いています。HH の率は 2%−0.4×5.5%=−0.2%2\% - 0.4 \times 5.5\% = -0.2\% です。
❌ 符号が抜けています。$1,000 / 1.042 は +4.2%+4.2\% を使っています。負のベータは割引率を RfR_f より下げ、ここでは −0.2%-0.2\% にします。
❌ 切片が抜けています。$1,000 / 0.978 は、プレミアムの項だけの −2.2%-2.2\% で割り引いています。RfR_f を足すと −0.2%-0.2\% になります。
❌ HH の価格を確認しましょう。証券市場線から HH の率を求め、$1,000 を「1+その率」で割りましょう。
❌ ペイオフは同じでも、リスクが違います。期待ペイオフが等しくても価格が等しくなるのは、同じ率で割り引く場合だけです。HH と SS はベータが違います。
❌ 割り引いていません。$1,000 × (8.6% − (−0.2%)) = $88 は、率の差をペイオフにかけたものです。それぞれの価格 $1,000 / (1 + 率) を計算してから、引きましょう。
❌ 率が違います。$1,000 / 0.99 − $1,000 / 1.11 は Rf+β E[Rm]R_f + \beta\,\mathsf{E}[R_m] を使っています。正しい率は −0.2%-0.2\%(HH)と 8.6%8.6\%(SS)です。
❌ 差を確認しましょう。SS を 2%+1.2×5.5%=8.6%2\% + 1.2 \times 5.5\% = 8.6\% で価格づけし、それを HH の価格から引きましょう。
解答を見る

証券市場線から求めた割引率:

rH=2%+(−0.4)(5.5%)=−0.2%,rS=2%+1.2×5.5%=8.6%r_H = 2\% + (-0.4)(5.5\%) = -0.2\%, \qquad r_S = 2\% + 1.2 \times 5.5\% = 8.6\%

1年分割り引いた価格:

HH: $1,000 / 0.998 ≈ $1,002.00

SS: $1,000 / 1.086 ≈ $920.81

差:$1,002.00 − $920.81 ≈ $81.19

HH の価格は期待ペイオフを上回っているので、期待リターンは負です。投資家がそれを受け入れるのは、HH が、市場が下がるときに支払いを生みやすいからです。

正解数:0 / 4