ファイナンス理論 · 第18回 · 動画4 · インタラクティブ教材

ポートフォリオのベータは加重平均:マイクロソフトとジレットの資本コスト

I重要な公式

公式名称説明
βp=ω1β1+⋯+ωnβn\beta_p = \omega_1 \beta_1 + \cdots + \omega_n \beta_nポートフォリオのベータ共分散はそれぞれの引数について線形なので、Cov[Rp,Rm]=∑iωiCov[Ri,Rm]\text{Cov}[R_p, R_m] = \sum_i \omega_i \text{Cov}[R_i, R_m] を Var[Rm]\text{Var}[R_m] で割ると、ベータの加重平均になります
σp2=∑iωi2σi2+∑i≠jωiωjCov[Ri,Rj]\sigma_p^2 = \sum_i \omega_i^2 \sigma_i^2 + \sum_{i \ne j} \omega_i \omega_j \text{Cov}[R_i, R_j]ポートフォリオの分散線形ではありません。交差項があるので、構成銘柄を1つずつ見ても読み取れません
E[Rp]=Rf+βp(E[Rm]−Rf)\text{E}[R_p] = R_f + \beta_p \left( \text{E}[R_m] - R_f \right)ポートフォリオやプロジェクトの証券市場線ウェイトの合計は1なので、RfR_f は1回だけ現れます。リスク調整の部分は、βp\beta_p × 市場リスクプレミアムです
Δσp2≈2ωiσm2(βi−1)\Delta \sigma_p^2 \approx 2\omega_i \sigma_m^2 (\beta_i - 1)市場ファンドから株 ii へ小さなウェイト ωi\omega_i を移すβi>1\beta_i > 1 なら分散は増え、βi<1\beta_i < 1 なら減ります

ポイント:要求収益率、資本の機会費用、リスク調整後割引率は、同じ1つの量です。プロジェクトなら、類似銘柄のベータをとって証券市場線に入れれば、出てくるのがそのプロジェクトの割引率です。

IIベータは平均がとれるので、ポートフォリオは証券市場線に乗る

Rf=4%R_f = 4\%、プレミアム 7.5%7.5\% のもとで、3銘柄の組み合わせは、そのベータの加重平均で価格づけされます。

III市場ファンドに1銘柄を少しだけ加える

ファンド MM から1銘柄へ小さなウェイトを移すと、一次近似では、βi>1\beta_i > 1 のときに限って分散が増えます。

💡 この近似が成り立つのは、ウェイト ωi\omega_i が小さいときです。ωi\omega_i よりはるかに速く小さくなる ωi2\omega_i^2 の項を落としているからです。それらの項を合計すると ωi2(σm2−2 Cov[Ri,Rm]+σi2)=ωi2 Var[Ri−Rm]\omega_i^2\left(\sigma_m^2 - 2\,\text{Cov}[R_i, R_m] + \sigma_i^2\right) = \omega_i^2\,\text{Var}[R_i - R_m] で、これは決して負になりません。ですから、ウェイトが大きければ、βi<1\beta_i < 1 の株でも結果的に分散を増やすことがあります。その取引が得かどうかは、証券市場線がその追加のリスクに割り当てる期待リターンにもかかっています。

IV類似銘柄からプロジェクトを価格づけする

プロジェクトの割引率は、類似銘柄のベータでの証券市場線のリターン、つまり RfR_f にリスク調整を足したものです。

V確認クイズ

問1 · ポートフォリオのベータ

条件: あるポートフォリオは、β=1.3\beta = 1.3 の株に 20%20\%、β=0.6\beta = 0.6 の株に 30%30\%、β=0.9\beta = 0.9 の株に 50%50\% を投じています。このポートフォリオのベータを求めてください。

✅ 正解です! 0.2(1.3)+0.3(0.6)+0.5(0.9)=0.26+0.18+0.45=0.890.2(1.3) + 0.3(0.6) + 0.5(0.9) = 0.26 + 0.18 + 0.45 = 0.89. 各ベータには、その株自身の比率でウェイトをかけます。
❌ 惜しい! ウェイトと組み合わせるベータを取り違えています(0.2×0.6+0.3×0.9+0.5×1.30.2 \times 0.6 + 0.3 \times 0.9 + 0.5 \times 1.3)。50%50\% のウェイトは β=0.9\beta = 0.9 の株のものです。
❌ 惜しい! (1.3+0.6+0.9)/3≈0.93(1.3 + 0.6 + 0.9)/3 \approx 0.93 は均等加重の平均です。ポートフォリオのベータでは、各ベータに、ポートフォリオのうちその株が占める割合でウェイトをかけます。
❌ 惜しい! 0.5×0.9=0.450.5 \times 0.9 = 0.45 は、いちばん大きな保有分の項にすぎません。ほかの2銘柄の項も足しましょう。
❌ 惜しい! βp=ω1β1+ω2β2+ω3β3\beta_p = \omega_1 \beta_1 + \omega_2 \beta_2 + \omega_3 \beta_3 を使いましょう。
解答を見る

市場との共分散はウェイトについて線形なので、ベータも線形です:

βp=0.2(1.3)+0.3(0.6)+0.5(0.9)=0.26+0.18+0.45=0.89\beta_p = 0.2(1.3) + 0.3(0.6) + 0.5(0.9) = 0.26 + 0.18 + 0.45 = 0.89

ウェイトはどれも0以上で合計が1なので、βp\beta_p は必ず、ポートフォリオの中で最も小さいベータと最も大きいベータのあいだにあります。

問2 · ポートフォリオの要求リターン

条件: Rf=4%R_f = 4\%(年率)、市場リスクプレミアム E[Rm]−Rf=7.5%\text{E}[R_m] - R_f = 7.5\%(年率)です。あるポートフォリオは、β=1.3\beta = 1.3 の株に 30%30\%、β=0.6\beta = 0.6 の株に 50%50\%、β=0.9\beta = 0.9 の株に 20%20\% を投じています。証券市場線がこのポートフォリオに要求する期待リターンを求めてください。

✅ 正解です! βp=0.87\beta_p = 0.87 なので、E[Rp]=4%+0.87×7.5%=4%+6.525%=10.525%\text{E}[R_p] = 4\% + 0.87 \times 7.5\% = 4\% + 6.525\% = 10.525\%(年率)です。
❌ 惜しいですが… 6.525%6.525\% は、リスク調整 βp×7.5%\beta_p \times 7.5\% の部分にすぎません。無リスク金利を足しましょう。ウェイトの合計は1なので、RfR_f はちょうど1回だけ現れます。
❌ 惜しい! これは均等加重のベータ (1.3+0.6+0.9)/3≈0.933(1.3 + 0.6 + 0.9)/3 \approx 0.933 を使っています。各ベータに保有比率でウェイトをかけると、βp=0.87\beta_p = 0.87 です。
❌ 惜しい! これは 4%+0.87×11.5%4\% + 0.87 \times 11.5\% で、βp\beta_p に市場の期待リターン全体 11.5%11.5\% をかけています。証券市場線でベータにかけるのは、プレミアム E[Rm]−Rf=7.5%\text{E}[R_m] - R_f = 7.5\% です。
❌ 惜しい! まず βp\beta_p を求め、次に E[Rp]=Rf+βp(E[Rm]−Rf)\text{E}[R_p] = R_f + \beta_p(\text{E}[R_m] - R_f) を使いましょう。
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ステップ1:ポートフォリオのベータ。

βp=0.3(1.3)+0.5(0.6)+0.2(0.9)=0.39+0.30+0.18=0.87\beta_p = 0.3(1.3) + 0.5(0.6) + 0.2(0.9) = 0.39 + 0.30 + 0.18 = 0.87

ステップ2:証券市場線。

E[Rp]=4%+0.87×7.5%=4%+6.525%=10.525%\text{E}[R_p] = 4\% + 0.87 \times 7.5\% = 4\% + 6.525\% = 10.525\%

検算:各株自身の証券市場線のリターンは 13.75%13.75\%、8.5%8.5\%、10.75%10.75\% で、0.3(13.75%)+0.5(8.5%)+0.2(10.75%)=4.125%+4.25%+2.15%=10.525%0.3(13.75\%) + 0.5(8.5\%) + 0.2(10.75\%) = 4.125\% + 4.25\% + 2.15\% = 10.525\% と、同じ数字になります。

問3 · 市場ファンドに加える

条件: あなたは分散 σm2\sigma_m^2 の市場ファンド MM だけを持っています。資金の 5%5\% を MM から β=0.6\beta = 0.6 の株へ移します。ポートフォリオの分散の変化のおよその値を求めてください。

✅ 正解です! 2(0.05)σm2(0.6−1)=−0.04 σm22(0.05)\sigma_m^2(0.6 - 1) = -0.04\,\sigma_m^2 です。この株の MM との共分散 0.6 σm20.6\,\sigma_m^2 は、あなたがすでに抱えている分散を下回っています。
❌ 符号を確かめましょう。 βi−1=0.6−1=−0.4\beta_i - 1 = 0.6 - 1 = -0.4 は負なので、分散は減ります。β<1\beta < 1 の株が加える共分散は、それが置き換える σm2\sigma_m^2 より小さいのです。
❌ 惜しい! 2(0.05)(0.6)=0.062(0.05)(0.6) = 0.06 は、βi−1\beta_i - 1 の代わりに βi\beta_i を使っています。ウェイトは MM から移すので、効いてくるのは、この株の共分散が σm2\sigma_m^2 と比べてどうかです。
❌ 惜しいですが… 符号は合っていますが、係数 22 が抜けています。交差項は 2ωi(1−ωi)Cov[Ri,Rm]2\omega_i(1 - \omega_i)\text{Cov}[R_i, R_m] です。
❌ 惜しい! Δσp2≈2ωiσm2(βi−1)\Delta \sigma_p^2 \approx 2\omega_i \sigma_m^2 (\beta_i - 1) を使いましょう。
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株にウェイト ωi\omega_i、MM に 1−ωi1 - \omega_i を置くと:

σp2=(1−ωi)2σm2+2ωi(1−ωi)Cov[Ri,Rm]+ωi2σi2\sigma_p^2 = (1 - \omega_i)^2 \sigma_m^2 + 2\omega_i(1 - \omega_i)\text{Cov}[R_i, R_m] + \omega_i^2 \sigma_i^2

ωi2\omega_i^2 の項を落とすと、σm2\sigma_m^2 からの変化は

Δσp2≈2ωi(Cov[Ri,Rm]−σm2)=2ωiσm2(βi−1)\Delta \sigma_p^2 \approx 2\omega_i\left(\text{Cov}[R_i, R_m] - \sigma_m^2\right) = 2\omega_i \sigma_m^2 (\beta_i - 1) =2(0.05)σm2(0.6−1)=−0.04 σm2= 2(0.05)\sigma_m^2(0.6 - 1) = -0.04\,\sigma_m^2

分散は、市場の分散の約 4%4\% だけ減ります。

問4 · 会社の率か、プロジェクトの率か

条件: ある会社には3つの事業部があり、会社の価値のそれぞれ 50%50\%、30%30\%、20%20\% を占めています。3つの事業の類似銘柄のベータは 0.90.9、1.31.3、0.60.6 です。Rf=4%R_f = 4\%、市場リスクプレミアムは 7.5%7.5\% で、どちらも年率です。会社のベータを求め、次に β=0.6\beta = 0.6 の事業での新しいプロジェクトの割引率を求めてください。

会社のベータはいくつですか?

プロジェクトの割引率はいくつですか?

✅ 正解です! 会社のベータは 0.960.96(資本コスト 11.2%11.2\%)ですが、プロジェクトが負うのは、それ自身の事業のリスクです:4%+0.6×7.5%=8.5%4\% + 0.6 \times 7.5\% = 8.5\%。
❌ 惜しい! (0.9+1.3+0.6)/3≈0.93(0.9 + 1.3 + 0.6)/3 \approx 0.93 は、3つの事業部を同じ大きさとして扱っています。各ベータには、その事業部が会社の価値に占める割合でウェイトをかけましょう。
❌ 惜しい! 0.5(1.3)+0.3(0.6)+0.2(0.9)=1.010.5(1.3) + 0.3(0.6) + 0.2(0.9) = 1.01 は、比率と組み合わせるベータを取り違えています。50%50\% の事業部の類似銘柄は β=0.9\beta = 0.9、30%30\% の事業部は β=1.3\beta = 1.3、20%20\% の事業部は β=0.6\beta = 0.6 です。
❌ 惜しい! 1.31.3 は、最もリスクの高い事業部のベータです。会社はその事業部からなるポートフォリオなので、会社のベータは事業部のベータの価値加重平均です。
❌ 会社のベータを確かめましょう。 各事業部のベータに、価値に占める割合でウェイトをかけます:0.5(0.9)+0.3(1.3)+0.2(0.6)0.5(0.9) + 0.3(1.3) + 0.2(0.6)。
❌ 惜しい! 11.2%11.2\% は、β=0.96\beta = 0.96 で価格づけした会社自身の資本コストです。プロジェクトは、それ自身の類似銘柄のベータで価格づけします。それを手がける会社の平均的なリスクではありません。
❌ 惜しいですが… 0.6×7.5%=4.5%0.6 \times 7.5\% = 4.5\% は、リスク調整の部分にすぎません。Rf=4%R_f = 4\% を足しましょう。
❌ 惜しい! 10.75%10.75\% は、いちばん大きな事業部(β=0.9\beta = 0.9)の価格づけです。このプロジェクトは β=0.6\beta = 0.6 の事業に属します。
❌ 惜しい! 類似銘柄のベータを Rf+β(E[Rm]−Rf)R_f + \beta(\text{E}[R_m] - R_f) に入れましょう。
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会社のベータ(事業部からなるポートフォリオ):

βfirm=0.5(0.9)+0.3(1.3)+0.2(0.6)=0.45+0.39+0.12=0.96\beta_{\text{firm}} = 0.5(0.9) + 0.3(1.3) + 0.2(0.6) = 0.45 + 0.39 + 0.12 = 0.96

会社全体の要求リターンは 4%+0.96×7.5%=4%+7.2%=11.2%4\% + 0.96 \times 7.5\% = 4\% + 7.2\% = 11.2\% です。

プロジェクトの率。プロジェクトのリスクは β=0.6\beta = 0.6 の事業のリスクなので、その類似銘柄が率を決めます:

E[R]=4%+0.6×7.5%=4%+4.5%=8.5%\text{E}[R] = 4\% + 0.6 \times 7.5\% = 4\% + 4.5\% = 8.5\%

11.2%11.2\% で割り引くと、このプロジェクトを過小評価してしまいます。そのキャッシュフローは、会社の平均的な事業よりも市場へのエクスポージャーが小さいからです。

正解数:0 / 4